私たちにの身体には(良くも悪くも)「可塑性」が備わっている。

 

この記事では、そんな「可塑性」「可塑的変化」について、疼痛にフォーカスを当てて記載している。

 

目次

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可塑性とは

 

可塑性という言葉はもともと物理学の用語で、外から力が加わって生じた変形が、その力がなくなっても元の形に戻らない性質のことである。

 

例えばゴムのボールを押して離すと、すぐ元の丸い形に戻る。

 

これはゴムのボールが「弾性」を持っているからである。

 

一方、粘土の塊では押したところが凹んで、その形が残ったまま元に戻らなくなる。

 

「可塑性」とはこの様な性質のことであり、脳における記憶も可塑性のなせる業と言える。

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痛みにおける可塑的変化

 

通常は痛み刺激が加わると侵害受容器が刺激を受けて興奮し、その情報を信号化し、その信号が脳に伝わって「痛い」と感じる。

 

そして、痛み刺激がなくなれば侵害受容器の興奮もなくなり、痛みも消える。

 

また、再び侵害刺激が加われば、侵害受容器は興奮し、信号が出て痛むというように、刺激に応じて受容器が興奮し、刺激が無くなれば興奮はおさまる。

 

これが正常な痛みの系の働きであり、ゴムのボールと同様に、弾性がある状態と言える。

 

しかし強い痛みが長く続くと、痛み系そのものが、いわば粘土の塊と同じように、元に戻らなくなる場合がある。

 

そして、痛み系の可塑的変化が慢性痛に関与してしまうことになる。

 

 

痛みに関する可塑的変化が生じる部位

 

これまでの実験で、慢性痛によって脊髄や脳に(正常時には生じないような)可塑的変化が起こることが確認されている。

 

つまり、脳・脊髄を合わせた『中枢神経』のどこかに、可塑的変化が起こる可能性を示唆している。

 

 

痛み記憶

 

前述した脳の記憶も可塑的変化の賜物であるが、同じ仕組みが痛み系でも働くことになる。

 

つまり痛みの刺激が繰り返し入ってしまうと、それが一種の記憶のようになって、慢性痛になってしまう可能性がある。

 

ただし、痛み系に可塑的変化が生じてしまうのと同じように、「変化した痛み系」に対して新たな可塑性を利用する試みは可能であり、これにより痛みの緩和が起こることも十分あり得る。

 

そして、このような「痛み系の可塑的変化」に対してどうアプローチしていくかが、慢性痛の治療において重要なポイントとなってくる。