この記事では、『実用性歩行(能力)』という用語について解説していく。

 

実用性歩行能力とは

 

実用性歩行能力』とは、歩行と同時に行っている日常生活行為の行いやすさや自立度を指標にした能力である。

 

例えば、トイレまで行って排泄が出来るか、掃除機をきちんとかけられるか、テーブルの周りを歩きながらテーブルをうまく拭けるか、皿や食器をうまく持ち運べるかなどの能力は『実用性歩行能力』と表現することができる。

 

 

歩行の実用性の指標における重要度の順番は以下の通り。

 

  1. 歩行の安定性(現実に転ぶ危険性がどれだけあるか)
  2. 歩行の耐久性(1回連続、また1日にどれだけ無理なく歩けるか)
  3. 歩行のスピード(無理なくどれだけ早く歩けるか)
  4. 歩容

 

ポイントは「歩容」の重要度が低い点にある。

 

もちろん歩容は正常に近いに越したことはない。

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一方で、正常からのズレが、そのまま歩行の実用性の指標とはならない。

 

例えば、杖や装具を用いない歩行は一見正常に近いようだが、それらを用いた場合に比べて、決して安定的ではなく、耐久性もスピードも低く、実用性は低くなる。

 

リハビリテーションにおいて、歩行のうち「基的動作(機能障害の一部)」としてのものが重視されすぎて、「基本的動作」にのみに着目された訓練は避けなければならない。

 

つまりは「実用性歩行」を向上させることを目的とした訓練がなされる必要がある。

 

「日常生活行為」としての実用性を持った歩行と、基本的動作としての歩行とは全く異なるものである。

 

従って「基本的動作」としての訓練を繰り返すことで、必ずしも「実用性歩行能力」が自然と向上するとは限らない。

 

また、「実用性歩行能力」の向上に向けたアプローチ(リハのみではなく介護も含む)は、基本的動作主体のアプローチに比べ、はるかに有効に機能することもある。

 

このような現状も踏まえ、この両者の違いを強調するために「実用性歩行」という用語がわざわざ用いられる場合がある。

 

 

『実用性① 歩行の安定性』の関連記事

 

安定性とは、ふらついたり、よろめいたり、転倒したりしないかを指す。

 

安定性の評価に関しては、以下のテスト(+カットオフ値)がある。

(クリックすると、記事にアクセスできる)

 

テスト カットオフ値
膝伸展筋力 1.2Nm・kg
FRテスト 15cm未満
片脚立位保持テスト(開眼) 5秒以下
TUGテスト 13.5秒以上
歩行速度 毎秒1m未満(横断歩道が渡りきれない)
5回立ち座りテスト 14秒以上
立位ステッピングテスト 17秒以上

 

また、私たちは「歩行だけに集中している」のではなく、様々に注意を分散しながら歩いている。

 

従って、実用性(安全な歩行)を考えた場合はデュアルタスク(二重課題)といった側面も重要となってくる。

 

デュアルタスク(二重課題)で転倒予防

 

 

『実用性② 歩行の耐久性』の関連記事

 

もしも屋外を歩行するのであれば、連続歩行が可能な距離も重要となる。

 

どんなに安全に歩けても、すぐに疲れてしまっては外出が難しい。

※数十メートルしか歩けないのであれば(屋外歩行における)実用性は乏しい。

 

そして、「1回に連続してどの程度歩けるか」という歩行耐久性、あるいは規定時間内にどの程度の距離が歩行できるかは一概に言えないが、6分間歩行テストにおいて400m程度以上の距離が一つの指標とされている。

 

6分間歩行テストを動画で解説

 

 

『実用性③ 歩行スピード』の関連記事

 

例えば、信号が赤になる前に横断歩道を渡り切れるかなど、「必要最低限の歩行スピード」が求められる場合がある。

 

そんな歩行スピードの評価は以下を参考にしてほしい。

 

10m歩行テストで高齢者の歩行速度を評価しよう