この記事では、理学療法士についての様々な事(専門性、メリット・デメリット、開業権など)を記載していく。

 

理学療法とは

 

日本の法律で理学療法とは以下の様に定められている。

 

『身体に障害のあるものに対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えること』

 

 

この法律で理学療法士とは『厚生労働大臣の免許を受けて理学療法士の名称を用いて医師の指示の下に、理学療法を行うことを業とする者』を指す。

 

 

理学療法士は名称独占であって業務独占ではない

 

理学療法士は名称独占であって業務独占ではない。

 

日本では、国家試験に合格した理学療法士はどこで仕事をしても「私は理学療法士です」と名乗ることができる。

 

※一方で、理学療法士の資格を有していないものが「理学療法士」を名乗った場合は違法となる。

 

しかし、理学療法士は名称を独占できるだけで、「理学療法」という業務を独占することは出来ない。

 

例えば理学療法士がいない職場において、医師が理学療法士以外の職業(例えば作業療法士)に患者の理学療法を処方して、医師の指示の下に行えば、それは「作業療法士が理学療法を提供した」ということになるが、それは問題ないということになる。

 

※同様に介護福祉士でも、医師の指示のもとで理学療法を提供することが出来る(単に診療報酬が発生しないだけである)

 

※業務独占とは、特定の資格を有する者に一定の領域の業務を行うことが許されることをいう。国民の生命や財産を守るためにあるとされている。

 

※名称独占とは、資格を有しないものが該当資格の名称又はこれと紛らわしい名称を使用すること禁止することをいう。国民の利便、業務の資質向上のためにあるとされている。

 

 

専門性を「日本で理学療法士が生まれた経緯」から考える

 

1965年、日本に理学療法士という国家資格が導入された。

 

理学療法士という資格が導入される以前は、整形外科の病院ではマッサージ師や柔道整復師が、運動療法や物理療法を行うことがあった。

 

あるいは医師の指示のもとで、看護師や無資格者が行うこともあった。

 

しかし、医学の進歩とともに、これらの職業とは別に理学療法の専門家が求められるようになったことが、日本に理学療法士が導入される経緯とされている。

 

つまり、理学療法士の専門性を考えるにあたって「チーム医療」というのは、一つのキーワードと言えるのではないだろうか?

 

しかし一方、ネット上で以下な内容で盛り上がっていることがある。

 

『理学療法士が自費診療を始めた場合に、柔道整復師やあん摩指圧マッサージ師と比べて技術力もマーケティング能力も劣っている。理学療法士は病院という場所にいるから成り立つのであって、病院の外では生き残っていけない』

 

 

しかし、(海外の理学療法は別として)日本における歴史的経緯をみてみると「病院におけるチーム医療に特化したリハビリの専門家の一つ」として理学療法士が誕生している。

 

つまりは、柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師とは学んでいる内容は異なっている(もちろん重複している部分もあるが)と言える。

 

これは例えるなら、柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師に
『彼らは(心疾患・呼吸器疾患などの)急性期におけるりクス管理も含めたアプローチをするには知識も技術も劣りすぎている。院内での脳卒中片麻痺へも同様だ。チーム医療に必要な医学的知識も一部の整形外科的なものに偏っている。話にならない』
などと、理学療法士の土俵である「院内」に彼らを引きずり込んで比較するという無茶苦茶な議論と同じである。

 

ただし、ベースラインでは上記のように比較できないが、その後の自己研鑽次第では、多少は各々のフィールドで活躍できる土台が形成される可能性はある。

 

例えば柔道整復師やあん摩マッサージ師が、整形外科クリニックなどで働きながら、学校では学ばなかった知識・技術を習得していくこともあるだろう(整形外科を標榜する病院以外で働いたり、その分野での知識を吸収することは稀かもしれないが)。

 

同様に理学療法士も、整形外科領域で働くのであれば、柔道整復師やあんあまマッサージ指圧師が受けた教育であったり、「開業している人寄りな研修会」に参加することが院内での治療成績に繋がることもあるだろうし、独学でマーケティングなどを勉強すれば、「開業(ただし整体など)」するための土台が自然と出来上がってくることもあり得る。

 

ただし、話を戻して「そもそも開業する気のない理学療法士」と「開業権を有している他職種」の優劣を、「開業して経営していけるだけのスキル(マーケティング能力なども含む)を有しているか」のという視点で議論すること自体が意味不明、理解不能という事になる。

 

※整体を開業しようとしているにも関わらず、これらのスキルが不十分で悩んでいる理学療法士との優劣であれば分からなくもないが、、、

 

 

理学療法士と開業権

 

「国家資格」であるあんまマッサージ師や柔道整復師による施術は、整体師・カイロプラクター・オステオパスと同様に「民間療法」に該当し、医師の指示が無くても行うことができる。

 

※ただし、民間療法とは言っても条件付きで、一部保険適用も認められる場合がある。

 

医師の指示が不要ということはすなわち、柔道整復師やあんあまマッサージ指圧師を標榜して独立(つまり開業)し、マッサージや柔道整復(柔道から生まれた日本の伝統療法。ほねつぎとも呼ばれる)を施術として用いることが可能となる。

 

一方で、理学療法士が理学慮法を行う際には、必ず医師の指示が必要となる。

 

資格名

資格の種類

医師の指示

理学療法士

国家資格

必要

あん摩マッサージ指圧師

国家資格

不要(脱臼・骨折時の施術には医師の同意が必要)

柔道整復師

国家資格

不要(脱臼・骨折時の長期的な施術には医師の同意が必要)

はり師

国家資格

不要

きゅう師

国家資格

不要

整体師

資格なし

不要

カイロプラクター

オステオパス

民間資格

不要

 

ちなみに、あんまマッサージ指圧師の業務独占であるはずの「マッサージ」を理学療法士も行うことがあるが、それは「医師の指示のもとでなされる理学療法の一環」としての行為である。

 

つまり、開業権を持たない理学療法士が整体院という形で開業し、理学療法士という資格を持っているからということでマッサージによる施術を標榜すると違法となる。

関連記事⇒『HP:理学療法のマッサージ(種類・手技・効果・違法性)

 

ただし、介護予防事業などで、診療の補助に当たらない範囲の業務であれば、医師の指示がなくても、理学療法士として行うことは可能となっている。

 

※詳細は、理学療法士協会のHPに掲載されている以下の通知も参照。

 

厚生労働省医政局通知(理学療法士の名称の使用等について)について

 

平成25 年11 月27 日、厚生労働省医政局から重要な通知が都道府県に出されました。

協会執行部としては、介護予防事業等において、診療の補助に該当しない範囲の業務を行うときは、「理学療法士」の名称を用いることや医師の指示を不要とする通知が周知されたという事実を重く受け止めています。

会員の皆様においても、理学療法士に求められる社会的な期待と責任を十分に自覚し、これまで以上に医療職として、他の医療職種と連携して適切な理学療法を提供してください。

 

 

< 通知文 >

理学療法士が、介護予防事業等において、身体に障害のない者に対して、転倒防止の指導等の診療の補助に該当しない範囲の業務を行うことがあるが、このように理学療法以外の業務を行う時であっても、「理学療法士」という名称を使用することは何ら問題がないこと。また、このような診療の補助に該当しない範囲の業務を行う時は、医師の指示は不要であること。

 

< 経 緯 >

1)昭和40 年に制定された「理学療法士及び作業療法士法」では、理学療法士の対象は、「身体に障害のある者」に限定されました。

 

2)法律制定時、理学療法士の業務対象は、脳血管障害・切断・脊損・頚損・骨折・難病がその殆どを占めていました。

 

3)昭和60 年代(奈良会長)に理学療法士及び作業療法士法の改正案を検討しました。

 

4)少子・高齢社会の到来とともに、理学療法を活用した所謂予防理学療法の推進が求められるようになってきました。

 

5)予防理学療法を実施する際に、「理学療法士を名乗って良いのか」「医師の指示は必要か」という疑問が浮上してきました。

 

6)平成22 年度に厚生労働省医政局主管で「チーム医療推進会議」が開催され、本会会長が委員に選定されました。加えて、方策ワーキングチームに小川副会長が就任しました。

 

7)平成25 年度に入り、看護師以外の職種の業務範囲についての論議が始まりました。

 

8)現行法での理学療法士の業務の対象である「身体に障害のある者」に「身体に障害のおそれのある者」を追加する法律改正を提案しました。

 

 

< 考え方 >

1)開業権について

開業権とは、診療の補助に該当することを、医師の指示なしに行うことです。今回の通知は診療の補助行為以外に対するもので、いわゆる予防理学療法時の業務指針と受け止めることが大切です。

 

2)自由診療について
「診療」という言葉は、医師の行為を指すものであり、医療職である理学療法士の行為に含まれることは全くありません。

 

 

< 本会としての今後の対応 >

現在、厚生労働省とは多角的に話し合いや交渉を行っています。

そうした中で、老健局との関係では介護予防、保険局との関係では生活習慣病予防、労働基準局との関係では腰痛予防が俎上に上がっています。

これらは、いずれも予防理学療法に類するものです。

 

本会としては、新しい国家的ニーズにしっかりと応えることができるように、多角的な研修を平成26 年度事業から立ち上げ、過去にないような予算配分を行います。

 

そして、質の高い予防理学療法を確立し、少子・高齢社会に寄与できる理学療法士を目指します。

 

 

理学療法士のメリット・デメリット

 

(柔道整復師やあんまマッサージ指圧師と比較した)理学療法士のデメリットを挙げるとすると、開業権がないことであろうか。

 

逆にメリットを挙げるとすると、(柔道整復師・あんまマッサージ指圧師と比較して)様々な分野に関与でき、病院・施設などの就職先が多岐にわたるといったところだろうか。

 

そして、理学療法士を職業として選んだ人たちは、前者のデメリットよりも、後者のメリットに魅力を感じた人たちも多いのではないだろうか?

 

しかし一方で、最近は理学療法士でありながら、整体師として自費開業する人達も存在する。

 

彼らが整体師になった理由に関しては、共感できる人もいれば、言っていることが自己矛盾して意味不明な人たちだったり、単に他人をカモにして詐欺を働きたいだけだなと感じてしまう人であったりと様々である。

関連記事⇒『理学療法士・作業療法士の開業権ムリ!メリットも無し!

 

巷では、「同じ整体院(あるいは、それに類似した物も含む)であっても理学療法士・作業療法士が開業しているなら信頼できる」と思っている人もいるかもしれないが、全くの事実誤認である。

 

 

理学療法士の専門性

 

理学療法士の専門性について、前述した『専門性を「日本で理学療法士が生まれた経緯」から考える』で多少の言及をしてきたが、、昨今の専門性に関してもう少し深堀して考えてみる。

 

時代とともに理学療法士の職域は拡大している。

 

そして、理学療法に関連する定義など作られた時代は介護保険制度すら始まっておらず、「理学療法」は病院という閉鎖的な場所でのみなされる行為を想定しており、ミスマッチも甚だしい。

 

したがって、理学療法士協会は時代に沿ったように定義を拡大解釈しながら現代に至る。

 

※その一例は前述した介護予防事業や「理学療法士・作業療法士の開業権は将来もムリ!メリットもなし」を参照

 

また、ミスマッチが起こって定義を拡大解釈しているのは作業療法士も同じである。

⇒『作業療法士の専門性/メリット/理学療法士違い

 

ちなみに以下は、『理学療法士協会50年史』に掲載されていた「施設別会員数の推移(会員が、どん職場で働いているか)」と「会員が働いている施設数の推移」となる。

 

施設別会員数の推移(会員がどんな職場で働いているか):

 

※会員数が爆発的に増えているのが分かる。

※医療施設で働く会員が、今も昔も多いということが分かる

 

 

会員が働いている施設数の推移:

 

※会員が働く施設は、医療施設より福祉施設のほうが増加率が高いことが分かる。

※特に、理学療法士を採用している老人福祉施設数は昔と比べて増えているのが分かる(10年間で3倍に増えている)。

 

 

 

話を介護保険制度内で働く理学療法士に戻すと、

 

介護保険制度に理学療法士・作業療法士が参入できた以上、これらの職種が専門性という垣根を越えてリハビリテーションを実施していかなければならないのは必然と言える。

 

なぜなら、介護保険分野で理学療法士・作業療法士に求められているのは各々の専門性というよりは、「リハビリテーションの専門職としての専門性」だからである。

 

例えば、ケアマネージャーが訪問リハビリを依頼する場合、担当セラピストが理学療法士だから避けるとか、作業療法士だから選ぶということは無い。

事実として、私に所には作業療法的な問題解決が適している利用者を紹介していくれるケアマネージャーも多い(そして私も「理学療法士だから専門外だ。作業療法士のいる事業所に依頼しなおしてください」とは言わず引き受ける)。

 

もし、時代に即していない「冒頭の純粋な理学療法」のみを実施たいなら、まずは「理学療法しか我々はやらない」と主張して介護保険分野から抜けることが第一歩となる。

 

「理学療法士の専門性が薄れきている」と悲観する人々の気持ちは分からなくもない。

 

ただ、「分からなくもない」ということを前提にしたうえで、時代に即した対応をしていかなければ理学療法士という職業は生き残れないといことも強く主張しておきたい。

 

「理学療法士の専門性」に意固地になって、古臭い「(拡大解釈のなされていない純粋な)理学療法士の定義」を大切にしたい気持ちも分からなくはないが、であるならば(例えば介護保険分野など)いくつかの職域を捨てねばならない。

 

※理由は、前述したように介護保険で求められているのは「理学療法に固執した者たち」ではなく、「作業療法も含めて(他職種にコーディネートする能力も含めた)リハビリテーションに精通したのセラピスト」であるからだ。

 

そして時代に逆行して「理学療法のみ」に拘るのであれば、非常に限られた職域の中で(膨大に生み出される理学療法士達がこれからも続出してくることを考えると)、職にあぶれて路頭に迷う者たちが続出することも、当然のことながら織り込んでおかなければならない。

 

もちろん、理学療法士の専門性に固執する人々は、これらの事も織り込んだうえでの発言だとは思うのだが、念のため記載しておく。

 

「理学療法士(専門性/メリット/開業権/将来性など)」の関連記事

 

作業療法士とは?!(専門性・メリット・理学療法士との違い)