セロトニンはトリプトファンという必須アミノ酸を原料として作られており、トリプトファンは一般的な食材にも含まれている成分である。

 

この記事ではセロトニンを増やす手段として、「食事」「トリプトファン」にフォーカスを当てて記載していく。

 

目次

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はじめに

 

慢性疼痛患者の前頭前野は萎縮していることがあり、それにより意思決定能力が低下する可能性が指摘されているが、こうした前頭前野の機能不全にもセロトニンを含めた神経伝達物質の影響が考えられる。

 

このセロトニンの合成には血液のトリプトファン(tryptophan:アミノ酸の一種でセロトニン・メラトニンなどの前駆体として重要な成分)が関わり、それは飲食によって摂取が可能とされている。

 

したがって、食欲不足による摂取量の低下は、トリプトファン不足に繋がり、最終的にはセロトニンの合成に影響を及ぼすと考えられ、痛みによる食欲減退を予防する意味でも、食事療法を含めた学際的アプローチが必要だと言われている。

 

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トリプトファンとは

 

セロトニンの材料となるトリプトファンは必須アミノ酸(タンパク質の基となる栄養素)の一つである。

 

私たちの体を構成しているタンパク質は20種類あると言われており、そのうちトリプトファンを含む8種類は体内で合成することができず、食物から補給しなければならない。

 

従って、もし欠けてしまうと(体内で合成できないため)体に多大な弊害を引き起こすため「必須アミノ酸」と呼ばれている。

 

食物として体内に取り込まれたトリプトファンは、脳内に運ばれて、ビタミンB6・ナイアシン・マグネシウムとともにセロトニンを合成する。

 

トリプトファンは、バランスの良い食事をしている限り不足することはないが、トリプトファンを多く含む食材を強いて挙げるとすると以下が該当する。

 

  • 大豆や大豆加工食品(納豆・豆腐・みそ・醤油など)
  • ゴマ
  • かつお節
  • カシューナッツ
  • ピーナッツ
  • しらす干し
  • わかめ
  • 牛乳・ヨーグルト・プロセスチーズ
  • 卵黄
  • アボガド
  • バナナ

・・・・・・・・・・・など。

 

 

また、体内に取り込まれたトリプトファンは、脳内に運ばれてビタミンB6・ナイアシン・マグネシウムとともにセロトニンを合成するため、これらを含んだ食材も合わせて摂取することが望ましい。

 

ビタミンB6を多く含む食材は以下が該当する。

  • サンマ・イワシ・カツオ・サバ・タイ・ニシン・マグロなどの魚
  • 豚のモモ肉、牛レバー
  • 大豆、小麦麦芽、玄米、
  • ニンニク、トウガラシ、ショウガなどの香辛料
  • バナナ

・・・・・・・・・・・など

 

※ただし、動物性タンパク質はセロトニンが脳内に取り込まれるのを妨げてしまうと言われている。したがってセロトニンの原料不足を招かないためにも(極端な)肉食生活は避けた方が良いかもしれない。

 

また、脳のエネルギー源であるブドウ糖を補給するためには炭水化物が必要となってくるため、果糖・佐藤・ハチミツ・デンプンなども一緒に摂取することが望ましい。

 

そして上記の「トリプトファン」「ビタミンB6」「糖類」という3つの条件を満たす食材としては以下が該当する。

 

バナナ

 

※ちなみに、脳科学者である茂木敬一郎さんも、いくつかのTV番組でセロトニンに言及し、その分泌を高める食材としてバナナを推奨していた。

 

ただし、トリプトファンな大量に摂取しなければならない栄養素ではいため、(重複するが)バランスの良い食事をしている限り不足することはない。

 

※炭水化物は脳のエネルギー源であるだけでなく、「トリプトファンが脳内に取り込まれるのを助ける」という役割も果たしているため、ダイエットのために炭水化物を控えたりるのは(極端になり過ぎると)、脳のエネルギー不足だけでなく、セロトニンの原材料不足をも招いてしまうこととなるかもしれない。

 

※朝の出勤前に朝食をとる時間がない時は、バナナ一本でも食べておくと、セロトニン的に(あるいは一般論としてエネルギー源となるブドウ糖を摂取するという意味でも)元気になれるかもしれない。

 

 

ゆっくり食事することの重要性

 

また、セロトニンは咀嚼運動によって分泌が促進されることが知られている。

 

例えばガムを噛む実験では、5分ほど経過するとセロトニン神経の活性化が見られたといデータもある。

 

ガムを噛むことがリラックス出来ることは一般的に知られており、リラックスできるだけでなく気分のリフレッシュも期待できる(もちろん個人差あり)。

 

そして、この「リラックス+リフレッシュ」というイメージはセロトニンの作用にピッタリといえる。

 

セロトニンは平常心を演出する物質なため、気分が落ち込んでいたり、イライラした気分な時、いずれの場面でも機能を発揮してくれる。

 

気分にむらがある時は、ガムを噛むことでセロトニンの分泌を促進させるのも一考かもしれない。

 

※もちろん、噛むことによる上記の恩恵は、セロトニン以外でも説明出来る可能性があり、実際には様々な要因が複雑に絡んだ結果ともいえるかもしれない。

 

ちなに、ガムを噛むと5分ほどでセロトニンの量に変化が現れ、その後セロトニンが増え始める。

 

ただし、30分以上噛み続けてもセロトニンの増加には影響がなくなるため、ガムを噛むことでセロトニンの分泌を促進しようと思った場合「最低5分以上、ただし30分噛み続けても意味はない」というのを覚えておくとよいかもしれない。

 

・・・・・・・・・話を食事に戻して、この「ガムをかむという咀嚼の重要性」は食事にも当てはまり、早食いの弊害はいくつもあるが、「セロトニンの視点」から考えてもよろしくないと言える。

 

 

まとめ

 

まとめとして、きちんと咀嚼しながら食事をすることは「自然なセロトニン分泌の促進」という意味で大切となる。

 

食事でセロトニンの原料を摂取しつつ、咀嚼運動でセロトニン神経が活性化されれば、二重の意味でセロトニン神経に効果があると言える。