この記事では、モノアミン神経の一つである「セロトニン神経」について包括的な解説を行っていく。

 

セロトニンとは

 

セロトニンはノルアドレナリンと共に、「(分泌不足が)うつ病との因果関係があるのではないか?」と指摘されている脳内物質である。

 

そして、どちらも覚醒を司る興奮物質であるが、ノルアドレナリンが怒りや戦闘状態を作る物質なのに対し、セロトニンは覚醒とリラックスをもたらす。

 

※「興奮物質」と「リラックス」が結びつきにくいかもしれないが、セロトニンにはその様な作用があるとされる。

 

セロトニン神経はノルアドレナリン神経と同じような場所にはりめぐらされているが、セロトニンはノルアドレナリンと異なり「外部からの刺激に反応しにくい」という特徴を持っている。

 

※ノルアドレナリンは、ストレス刺激によって多量に分泌してみたり、ストレス刺激が無くなって急激に分泌が低下したりといった「外部からの刺激に敏感に反応しやすい」といった特徴がある。

 

そして、ノルアドレナリンやドーパミンなどの脳内物質のバランスをとり、脳内の覚醒と興奮を適度にコントロールする作用があり、この「調整役」としての作用が前述した「興奮物質にも関わらずリラックスにも作用する物質」な所以といえる。

 

ノルアドレナリンを「ホットな覚醒」と表現するならば、セロトニンは「クールな覚醒」と表現することができるかもしれない。

 

クールに覚醒しているため、集中力も高まると同時に落ち着いた行動が可能となる。

 

 

セロトニン神経について

 

セロトニンは、脳の縫線核という部分で作られ、脳全体に運ばれる。

 

※ちなみに、後述するが腸でも作られたり、脳内伝達物質としてだけでなく、脳内も含めた全身の血中にも存在する。

 

セロトニン神経は、脳全体の神経細胞に指令を送って様々な要素を「調節」する働きを有しており、例えば以下などがあげられる。

 

・覚醒レベル・気分の調節

・自律神経の調節

・痛みの調節

 

 

覚醒レベル・気分の調節

 

例えば、大脳皮質には意識レベルを調節する働きがあるが、その大脳皮質にセロトニン神経が作用し、覚醒レベルを高めてくれたりもする。

 

そして、眠っている時はセロトニンは放出が抑制され(メラトニンが優位となり)、目が覚めると脳内にセロトニンが放出されて人間は覚醒し、活動を開始することとなる。

 

私たちは、眠っている間は意識がなくなるが、朝起きると覚醒する。

 

意識がすっきりとして爽快な状態もあれば、ぼんやりしている状態もある。あるいはイライラしたり憂鬱になることもある。つまり、一口に意識といっても様々なレベル・状態がある。

 

そしてセロトニン神経が適度に働いていると、朝起きた際のスッキリ爽快な意識の状態を作り出してくれる。

 

 

自律神経の調節

 

セロトニンは自律神経を調節する役割を持っている。

 

心肺機能・代謝などを管理する自律神経は、交感神経と副交感神経という2つの神経によって成り立っており、(極端に説明すると)副交感神経は眠っているときの神経で、交感神経は起きて活動をしているときの神経と表現できる。

 

そして(自律神経も前述した意識の覚醒と絡めて記載するとすると)朝起きると、自律神経のバランスが変わり副交感神経から交感神経にシフトする。

 

このとき、片方の神経の活動がゼロになるというわけではなく、厳密には交感神経と副交感神経が互いにシーソーのようにバランスを保ちながら、強くなったり弱くなったりを繰り返している。

 

そしてセロトニン神経は自律神経に対し、このシフトがうまくいくように働きかけている。

 

朝起きた時に交感神経の方が優位にならなければ、目覚めた後の活動がスムーズにいかない。

 

したがってセロトニン神経は、交感神経を適度に緊張させ、体をスタンバイ状態にしてくれる作用を持つとされている。

 

 

痛み感覚の抑制

 

セロトニンは気分を調節する役割があると前述したが、情動とも密接に関与している「痛み」を抑制する作用を持つ。

関連記事⇒『情動と痛みは密接に関係しているよ

 

また、内因性疼痛抑制系の一つである「下降性疼痛抑制系」にもセロトニンは関与しており、痛みの感覚的側面に対して直接的な鎮痛作用も及ぼしている。

関連記事⇒「下降性疼痛抑制系とは?

 

例えばセロトニントレーニングとして推奨されているリズム運動(咀嚼運動)が疼痛に与える影響を検証した実験があったりする。

 

『20分間ガムを噛み続け、その最中にランダムに痛みを与えるという実験をしたところ、血液中のセロトニン濃度が増加するに比例して、痛み刺激に対する反射は減っていた。』

 

この実験結果は、痛みがなくなったというわけではなく、セロトニン神経の活性化によって、痛みがコントロールできるようになったと解釈されている。

 

つまりは「痛みによって生じるストレス反応への耐久性が正常化する」と表現したほうが適切かもしれない。

 

痛みは体にとって緊急事態を教える大切な働きをしてくれるため大切である。

 

一方で、痛みを実際より大きく感じる状態は、危機管管理システムが正しく働いていないこととなり、体が痛みに過剰反応を示している状態といえる。そしてセロトニン神経は、痛みによる過剰反応を抑制してくれる作用があると言える。

 

 

セロトニンと様々な物質・脳部位の因果関係

 

セロトニン神経は、他のモノアミン神経であるノルアドレナリン神経やドーパミン神経などとも密接に関わっている。

 

例えば、ドーパミン神経が興奮することで適度にドーパミンが放出されることが望ましいが、セロトニンの機能が低下してしまうとドーパミンが過剰放出され、逆に不安障害をきたしたり、攻撃的になったりする。

 

この例から考えると、セロトニンは行動に対して調整的に働くと解釈できるかもしれない。

 

またセロトニンは単に攻撃を抑制するだけでなく、攻撃を含む危険行動を抑制するように働くことが分子生物学的研究によって明らかにされている。

 

更に自律神経の調節、攻撃性の調節や不安といった心的な気分の調整も行う。

 

次に、ノルアドレナリンとの因果関係で考えてみる。

 

例えば(ストレス刺激を受けることで)ノルアドレナリンが過剰放出されることによってストレス反応を生じさせるが、これが強くなるとパニック障害が引き起こされることがある。

 

この際にも、セロトニンが適切に分泌されれば、感情は安定すると考えられている。

 

このことから、セロトニンの低下は抑うつを引き起こすことも広く知られている。

 

私たちの心は外界や内面の影響を受けて、絶えず変化している。

 

嬉しいことがあれば気持も高揚するが、つらいこと、悲しいことがあると、気分が沈むこともある。

 

人間の心というのはそのようにできているため、そういった変化が起こることは決して悪いことではない。

 

しかしその振り幅が大きすぎたり、いつまでも舞い上がっている、いつまでも落ち込んでいるという状態になってしまうのは問題である。

 

自分で自分の気持ちがコントロールできなくなってしまい、日常生活にも支障をきたす場合があるからだ。

 

セロトニン神経には、そういった状態にならないよう、心のバランスを保ってくれる作用がある

 

自律神経と同様に、セロトニン神経はすべての点において丁度良いバランスを取ってくれる効果がある。

 

 

セロトニンと病気・不調の関連性

 

寝起きが悪い、気持ちよく起きれない、といった状態は、起きた時にセロトニン神経が活発に活動を開始せず、からだが重いとか寝覚めが悪いといった状態を表しているのかもしれない。

 

セロトニンによって起こる病気は、うつ病が第一に挙げられる。

 

脳内物質のバランスを取って、気分を落ち着かせながらも活動的にするのがセロトニンの仕事なため、そのバランスが崩れると、セロトニンの「脳内物質の調整役」としての機能が働かず、脳内物質の多くに影響が出てしまう。

 

うつ病はセロトニンの不足によって起こるということが言われており、これを「モノアミン仮説」と呼ぶ(うつ病の薬剤を参考にモノアミン仮説をもう少し掘り下げる)。

 

他にも、セロトニンは「脳内物質の調整役」として、人間の体を自分の意思とは関係なくコントロールしているため、以下のような症状が起こる可能性がある。

 

・急な動悸、呼吸苦、痛みの感受性増大などの身体所見

・不安感・強迫観念・気持ちが落ち込んで楽しくないなど

 

 

薬剤やサプリメントによる副作用

 

セロトニンを増やす方法として、SSRI(選択的再取り込み阻害薬)があり、この薬剤を用いることでうつ症状などが軽減されることがある。

 

ただし副作用もある。

 

この副作用は、トリプトファン(セロトニンの原料である必須アミノ酸)をサプリメントで摂取する際も同様であり、セロトニン症候群として知られている。

 

セロトニン症候群には、以下のような症状が挙げられ、これらのうち3つ以上の症状が出るとセロトニン症候群と診断される。

・精神神経系の状態の変化

・焦燥感

・過剰発汗

・悪寒

・振戦

・下痢

・協調障害

・発熱

・・・・・・・・・・・など

 

話を「セロトニンを増やす作用のあるSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)」に戻すと、この薬剤は厳密には「分泌されたセロトニンを(再吸収させずに)留まらせておく作用」がある。

 

従って、「セロトニン神経を活性化させることで、セロトニンの分泌を増やす作用」を有しているわけではない。

 

SSRIの機序を以下に記載する。

 

・セロトニン神経から分泌されたセロトニンは、全てセロトニン受容体へ届くわけではない。

・セロトニンの一部は「セロトニン・トランスポーター」という運搬役に運ばれて、セロトニン神経に再度取り込まれたり、血中へと移動してしまう。

・SSRIは、この「セロトニン・トランスポーター」の働きを抑制させることで、セロトニンを神経細胞間に留まらせる作用がある

 

重複するが、SSIR(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は文字通り、セロトニンの再取り込みを阻害していることで、脳内にセロトニンが留まった状態を作り出しているに過ぎない。

 

つまり、セロトニンの分泌を促進させるわけではない。

 

脳内のセロトニンが増えるのは、見掛け上のことなのだ。

 

また、SSRIには(薬剤なので当然ながら)副作用もあるため、使用しないに越したことはない。

 

そして、「セロトニンの分泌促進」にフォーカスを当て、尚且つ薬剤に頼らない方法として、セロトニントレーニングなどがある。

 

 

薬剤に頼らずセロトニンを増やそう

 

SSRIは(薬剤なので当然ながら)副作用もある。

 

従って、症状が軽度(軽い気分の沈み込みや、軽い寝つきの悪さ、軽い不安や強迫観念)な場合は使用しないに越したことは無い。

 

そして、薬剤に頼らず他の手段でセロトニンの分泌を増やす手段が望ましい。

 

以下にセロトニンを増やす方法をリンクするので是非参考にしてほしい。

 

⇒『セロトニンとメラトニン♪光と上手く付き合おう

⇒『セロトニントレーニング

⇒『セロトニンを食事で増やそう