昨日、「専門性スキルを高めるセミナーのご案内」と題して以下のファックスが職場に届いた。

 

興味深かったので宣伝させていただく。

 

※値段も(恐らく)座学で1日のみなセミナーの割に高額な印象を受けるし、決して推奨しているわけではない。

 

※あくまで「興味深い」と思っただけな点に注意して頂きたい。

 

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目次

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変形性膝関節症の疼痛に対する理学療法

 

内容は以下になる。

 

「動き」と「脳」のそれぞれの観点から膝関節症をみる!

 

第一講演:

変形性膝関節症の疼痛における器質的因子に対する理学療法

(疼痛における動きの観点)

 

第二講演:

変形性膝関節症の疼痛における神経科学的心理社会因子に対する理学療法

(疼痛における脳の観点)

 

第三講演:

講師陣によるディスカッション・質疑応答

 

詳しくは以下を参照

ジャパンライム社主催:変形性膝関節症の疼痛に対する理学療法

 

 

参加する価値あり??

 

私は非常に興味深く感じたが、皆さんはどうだろうか?

 

ポイントはやはり、「神経科学的心理社会的因子」に対する理学療法だと感じる。

 

「神経科学的心理社会的因子」というのは、おそらく「疼痛を単なる心因性」のみと捉えるのではなく、「感作」や「脳の可塑的変化」も含めて捉えているのだと思われる(多分・・)。

 

このセミナーに限らず、最近はこういう要素を取り入れたセミナーが増えている印象を受ける。

 

これらの要素の重要性は以前から当然の様に指摘されてきたが、これらが最近の研究によって客観的に他者へ報告し易くなってきていることが影響しているのだと思われる。

 

もちろん、「全ての疼痛は末梢組織が原因で起こっている」や「全ての(慢性)疼痛は心因性(あるいは既に末梢には原因が無い)で起こっている」という二元論ではなく、これら両方を考慮する方が望ましいという考えは皆の共通認識であると思われる。

 

そして今回の「変形性膝関節症の疼痛に対する理学療法」は、変形性膝関節症の疼痛を「器質的因子」と「神経科学的心理社会的因子」の両因子へフォーカスして、セットで講演している辺りはバランスがとれたセミナーである印象を受ける。

 

重複するが、慢性疼痛であっても「器質的因子」が優位な場合は当然ある。

 

※でなければ、例えば(マリガンコンセプト・マッケンジー法など様々なコンセプトによる)メカニカルな負荷で起こる(慢性疼痛に対する)即時的な効果の説明がつかない。

 

※個人的には「器質的因子」というよりも「侵害受容性要素(で尚且つメカニカルな因子)」と表現したいところである(そのほうが、このブログやリンク先サイトとの整合性がとれるから)。

 

一方で、「神経科学的心理社会的因子」が優位な場合も、臨床を通して感じる場合があるのも事実である。

 

※個人的には「神経科学的心理社会因子」というよりも「神経因性要素・心因性要素」と表現したいところである(そのほうが、このブログやリンク先サイトとの整合性がとれるから)。

 

 

変形性膝関節症の疼痛に対する理学療法 関連文献

 

今回の「変形性膝関節症の疼痛に対する理学療法」に関連した文献の一部を引用してみる。

 

理学療法士はICFの概念の基に、評価結果から患者の問題点を推測し、設定したゴールを達成するために、最適と考えられる運動療法・物理療法・義肢装具療法を行う。

 

この過程で理学療法士が機能障害の仮説を立てる際に、もっとも考慮すべきものは診断された疾患の病態である。

 

たとえば、変形性膝関節症の診断名で理学療法を処方された患者の疼痛の原因を考えるとき、まず、画像で確認された軟骨の減少、内反変形などが思い浮かぶであろう。

 

しかし、疾患でなく機能障害を対象とする理学療法において、疾患名のイメージに重度に依存し過ぎると、真の問題点を見つけにくくなる場合がある。

 

すなわち、構造的(画像上の)破綻が、臨床症状と一致していないにもかかわらず、それが原因であると思い込んでしまうことが大きな問題となる。

 

Ikeuchiらは、内側型変形性関節症患者に対し、歩行時の詳細な疼痛評価を行い、関節ブロック後の疼痛の変化を検討した。

 

その結果、関節ブロックが有効であった患者は61%であり、無効であった31%は、高齢で、罹患歴が長く、疼痛部位が広範であったと報告している。

 

これは、理学療法士が変形性関節症の疼痛の原因が関節内に存在すると思い込んだまま臨床推論を進めてしまう、すなわち、診断名のイメージにとらわれ過ぎていると、本当の原因を見つけ出すことが困難となることを意味している。

 

40歳以上の変形性膝関節症の有病率は男性42.6%、女性62.4%であり、高齢者で膝周囲の疼痛を主訴とする患者の単純レントゲンを撮影すれば、変形性膝関節症の所見が見つかる確率は非常に高い。

 

運動器疾患の中でも、腰痛においては医師の診察や画像検査で腰痛の原因が特定されないものを非特異性腰痛と捉えることが当たり前となってきている。

 

理学療法士は他の運動器疾患においても、疾患名や画像所見を十分に参考にしながら、しかし、思い込みに注意しながら機能障害の評価を行い、臨床推論を進めることが重要であると考えられる。

『理学療法学第42巻第8号 795~796項(2015)運動器理学療法のパラダイムシフト』より引用〜

 

関連記事

⇒『ICFまとめ一覧

⇒『エビデンスの限界

⇒『機能不全(機能障害・機能異常)とは?

 

理学療法雑誌に掲載されていたもので、他にも興味深い文献が掲載されていたりするので是非観覧してみてほしい。

 

※こういう情報が手に入るのも理学療法士協会に入会しているメリットと言えるかもしれない。⇒『理学療法士協会に入会するメリットとは??

 

※この文献は、必ずしも「変形性関節症の疼痛の原因が関節内に存在しない=神経科学的心理社会因子」としているわけではない点には注意して頂きたい(当然「関節外」の末梢組織に原因がある場合もあり得る)。

 

 

関連記事

 

理学療法士の専門性を発揮するにおいて、(このセミナーでいうところの)器質的因子・神経生理学的心理社会因子は両方とも重要だと感じる。

 

以下は「神経生理学的心理社会因子」と関係がありそうな記事を集めていたので、興味があれば参照して頂きたい。

 

 

プラシーボ効果まとめ

徒手療法を含めた「理学療法」を実施する場合、(良くも悪くも)プラセボ・ノセボ効果が加味されることとなる。そんなプラセボ・ノセボ効果についてまとめた記事となる。

 

 

(外部リンク)クリニカルリーズニングの前提条件とは

臨床推論をするにあたって、その前提条件として「神経生理学的心理社会因子」がどの程度かを把握しておくことは重要となる(当然、前提条件としてではなく様々な評価と並行して把握していくこともあり得る)。
この記事では、(末梢組織のみならず)神経生理学的心理社会因子にも着目することの重要性を理解してもらうための記事となる。

 

 

(外部リンク)ぺインリハビリテーション

痛みの基礎知識や、「侵害受容性疼痛」「神経因性疼痛」「心因性疼痛」に分類し、包括的な視野でペインリハビリテーションを考える際のヒントとしてまとめた記事となる。

 

 

(外部リンク)認知行動療法とは?痛みに対するリハビリへの応用

理学療法を提供する際に、「神経生理学的心理社会因子」へも考慮するためのヒントとして認知行動療法をまとめた記事となる。