この記事では、「肩甲骨の可動性を高めよう」と題して、肩甲骨のモビライゼーション(肩甲胸郭関節の動きを引き出す徒手療法)の動画を集めてみた。

 

肩甲胸郭関節の動きを引き出すので、肩甲骨のモビライゼーションは「関節モビライゼーション」に分類されるのかもしれない。

 

一方で、肩甲胸郭関節は滑膜関節ではなく、肩甲骨に張り巡らされた様々な筋群によって制限を受けているので(それらの筋群をほぐすという意味で)「軟部組織モビライゼーション」に分類される可能性もある。

 

まぁ、どーでもいい話だが。

 

 

肩甲骨の運動用語

 

『徒手筋力検査(MMT)』などで用いられる一般的な肩甲骨運動の用語は以下がある。

 

①肩甲骨の挙上

 

②肩甲骨の外転

 

③肩甲骨の上方回旋

 

④肩甲骨の下制

 

⑤肩甲骨の下方回旋

 

⑥肩甲骨の内転

 

 

でもって、肩甲骨のモビライゼーションでは上記の動きを引きだしたり『肩甲骨の前傾』という用語が使用されれる場合もある。

 

 

肩甲骨のモビライゼーション

 

 

以下の動画が肩甲骨(肩甲胸郭関節)のモビライゼーションとして、一般的なものとなる。

 

 

動画では、以下の順序で肩甲骨を動かしている。

 

①肩甲骨の挙上(Elevation)

②肩甲骨の下制(Depression)

③肩甲骨の外転(プロトリュージョン:Protraction)

④肩甲骨の内転 (リトラクション:Retraction)

⑤肩甲骨の上方回旋(Upward rotation)

⑥肩甲骨の下方回旋(downward rotation)

⑦肩甲骨の前傾(ウィンギング:Winging)

 

 

対象者には、なるべく療法士側へ寄ってもらっておいた方が、実施しやすい。

 

更に、対象者と療法士の間のスペースをクッションなどで埋めることで、肩甲骨を操作した際に対象者の体がブレ難くなり、リラックスしてもらい易い。

 

※クッションでスペースを埋めない場合は、対象者にベッドの端を把持してもらっておいた方が肩甲骨が動かしやすくなる。

 

※「把持する」と言っても肩甲骨周囲筋が緊張するほどギュッと掴んおいてもらう訳ではない。

 

 

ちなみに、対象者の前腕を、療法士の脇で挟み固定した状態で肩甲骨を動かすことで「肩甲上腕関節における末梢(上腕から遠位)を固定して中枢(肩甲骨)を可動させていること」になり、
軽微な肩甲上腕関節へのモビライゼーション(刺激)を加えているという事になる。

 

※この場合、粗暴に扱うと肩甲上腕関節を傷めるので注意する。肩甲骨の動きも(動画の様に)大きくなくて構わない(目的が違うので)。

 

※末梢固定して中枢動かすことによる関節モビライゼーションということになる。

 

※例えば、上腕を固定して、肩甲骨下方回旋方向へ可動することで、相対的に肩甲上腕関節の外転方向への刺激が加わっているということになる。

 

上記の動画は、基本に「超」忠実に実施しているが、以下の動画は「より臨床的な肩甲骨モビライゼーション」と言える。

 

 

 

あるいは、必ずしも肩甲骨のモビライゼーションは側臥位でなければ実施できないという訳ではなく、以下の動画では、腹臥位・背臥位など様々な肢位で肩甲骨を動かしている。

 

 

 

あるいは肩甲骨に付着している様々な軟部組織にフォーカスを当てたアプローチも織り交ぜており、こうなってくると「肩甲骨モビライゼーション」というタイトルに適しているか微妙ではあるが、より実践的なアプローチと言えるかもしれない。

 

また、冒頭の動画で肩甲胸郭関節の動きを評価したのちに、これらの軟部組織テクニックを実施し、再び冒頭の動画で再評価するというのもアリかもしれない。

 

 

一般的な肩障害患者への肩甲骨モビライゼーションは有効か?

 

「一般的な肩関節障害に対する肩甲骨(肩甲胸郭関節)モビライゼーションの有効性」に関して、「理学療法診療ガイドライン第一版 ダイジェスト版 P465」では、以下のように記載されている。

 

推奨レベルA

 

肩甲骨モビライゼーションにより、肩ROM、肩甲骨上方回旋可動域と機能改善の即自的効果が期待できると報告されている。

 

また、肩甲骨モビライゼーションに肩甲上腕関節を組み合わせた方法では、3か月に及ぶ効果が期待できるとしている。

 

 

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②肩甲上腕関節・肩甲胸郭関節の運動を制限する筋群が短縮していない

そして、肩甲骨モビライゼーションは②に問題が生じている場合に重要なテクニックとなるため、肩甲上腕リズムをイメージするうえでも是非観覧してみてもらいたい。

 

 

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