この記事では膝窩筋(Popliteus muscle)に関する基本情報とともに、リハビリ(理学療法)としてマッサージやストレッチングについても記載していく。

 

目次

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膝窩筋の基礎情報

 

膝窩筋の基礎情報は以下となる。

 

起始

大腿骨の外側上顆

膝関節の外側側副靭帯

膝関節包

外側半月

停止 脛骨の後面でヒラメ筋線の近位方
作用

膝関節を屈曲

下腿を内旋

神経 脛骨神経
筋連結 ヒラメ筋(腱膜)、後脛骨筋(腱膜)および長趾屈筋(腱膜)と連結

膝窩筋
膝窩筋は三角形の筋であり、膝窩部で腓腹筋の深部にある。

 

膝窩筋は、関節包内で付着する唯一の膝関節筋である。

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膝窩筋は膝屈筋の中で唯一の単関節筋

 

膝関節を屈曲させる筋は、膝窩筋以外には以下が挙げられる。

 

  • ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)
  • 薄筋
  • 縫工筋
  • 腓腹筋

 

そんな中で『膝窩筋』以外は全て二関節筋となる(大腿二頭筋短頭は除く)。

 

そして、二関節筋がパワフルな作用を持つ一方で、単関節筋はスタビライザーとして機能するという一般論から考えても、膝窩筋は他の膝屈筋には無い特殊な機能を有している可能性が高い。

 

 

膝窩筋の特殊な作用

 

膝窩筋は膝関節屈筋群の中で唯一の単関節筋であることを前述した。

 

ただし、小さい筋であるが故に「膝関屈曲トルクに与える影響は極僅か」とされている。

 

※まぁ、どう考えてもハムストリングスなんかの方がパワフルだ。

 

なので、膝窩筋の作用は「もっと特殊な作用だ」とされている。

 

そんな特殊な作用としては以下が言われている。

  • 下腿の内旋作用で伸展ロックを解除
  • 膝関節の動的安定性
  • (外側半月に付着していることから)膝関節屈曲時に(膝窩筋が収縮することで)外側半月を後方へ引くことでインピンジメントが起こるのを予防する。

 

 

膝窩筋による膝伸展ロックの解除

 

膝関節は完全伸展位でロックされる。

 

※従って膝伸展筋群に頼らずに立位を保持したい場合、膝を完全伸展していると「靭帯性の支持(ロック)」されて安楽に保持できる場合がある。

 

そして、一端伸展ロックされた膝関節が屈曲の準備をするとき、膝窩筋は下腿の内旋トルクを発生して、関節のロックを解除するのを助けるとされている。

 

つまり、スクリューホームムーブメントにおける「膝伸展に付随して下腿の外旋が生じ、膝屈曲に付随して下腿の内旋が生じる」という骨運動から考えた場合に、膝を屈曲する際の「最初のきっかけづくり」としてロックを解除する働きがあるということになる。

 

※膝のロックを解除して屈曲させるには、比較的固定された脛骨上で大腿骨が僅かに外旋する必要がある。

 

※そして、膝窩筋が大腿骨を外旋回(つまり、相対的には脛骨の内旋)する能力は、膝窩筋の走行をみれば明らかである。

 

前述した他の膝屈筋群の力線は、(膝関節が伸展位の時は)ほぼ垂直であることを考えても、膝窩筋の様な特殊な走行を有した単関節筋は膝関節のロックを解除するにあたって重要な筋だと思われる。

 

 

膝窩筋による膝関節の動的安定性

 

個人的に着目している膝窩筋の重要な役割は「膝関節の動的安定性」だと感じる。

 

文献によると、膝窩筋は後十字靱帯を補強する機能を有していて、脛骨の後方滑りや膝関節の内反および外旋も制御しているとされている。

 

あるいは、膝関節の外側と内側の両方を動的に安定させることを補助しているとも言われている。

 

(重複するが)膝窩筋の遠心性収縮によって側副靭帯や十字靭帯、関節包などの膝周囲軟部組織へのストレスを減じていると考えられる。

 

余談として、鵞足筋群は、膝関節の内側に重要な動的安定性を与えるとともに、内側側副靭帯と後内側関節包とともに膝関節の外旋と外反にかかる応力に抵抗する。

 

つまり、有している機能の一部が類似しており、ともに鵞足炎や膝窩筋腱炎といった機能異常を生じる可能性がある。

関連記事⇒『鵞足炎の解消・予防に必要な情報を公開するよ

 

 

膝窩筋の過緊張

 

膝窩筋の機能として「膝周囲の動的安定性を高める」と記載した。

 

これは裏を返せば、「加齢による退行変性を含む身体の機能異常によって膝関節の不安定性が増大すれば、膝窩筋の過緊張を招き、その過緊張が新たな機能異常(筋スパズム・痛み)を招く可能性がある」という事になる。

 

事実として、膝関節に問題を抱えている人は、膝窩筋にも機能異常(筋スパズム・痛み)を有していることがある。

 

そして、膝窩筋の機能異常(筋スパズム・痛み)は二次的な問題である可能性がある一方で、アプローチをすることで症状が即自的に緩和することもあるため、「膝痛と膝窩筋」の因果関係は覚えておいても損は無い知識と言える。

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膝窩筋のリハビリ(理学療法)

 

ここから先は、リハビリ(理学療法)として、ダイレクトストレッチとマッサージについて記載してく。

 

膝窩筋のダイレクトストレッチ

 

膝窩筋に直接押圧を加える手法でダイレクトストレッチを施行する。

 

※筋腹を押すと、押された部位は伸長(ストレッチ)されるので「ダイレクトストレッチ」と呼ばれる。

 

トリガーポイントが形成されていることもあるため、圧が強くなりすぎないよう注意する。

 

膝窩筋のダイレクトストレッチ①:

 

背臥位で治療側の膝を立てた状態(膝屈曲位)でリラックスしてもらい、膝窩筋へ押圧を加える。

 

※膝窩筋を短縮位で圧迫するため、低刺激のアプローチとなる。

 

※筋腹を横断するようなマッサージ(横断マッサージ)を施行しても良い。

 

※背臥位でのアプローチなため、高齢者でも実施しやすい(別にむずかしくなければ側臥位でやっても良いが)

 

 

膝窩筋のダイレクトストレッチ②:

 

背臥位・側臥位・腹臥位いずれでも良いので、膝関節を伸展させた状態でリラックスしてもらい、膝窩筋へ押圧を加える。

 

※膝窩筋を伸長位で圧迫するため、強刺激のアプローチとなる。

 

※筋腹を横断するようなマッサージ(横断マッサージ)を施行してもい。

 

※どんな肢位でも良いが、「固定をシッカリしする」「リラックスしてもらう」という条件を満たすよう工夫しなければ上手くいかない可能性がある。

 

 

膝窩筋の機能的マッサージ

 

これは腹臥位で実施することが基本となる。

 

対象者は腹臥位で、療法士は尾側へ位置する。

 

(右膝窩筋)をマッサージするのであれば、対象者の右下腿遠位部を、療法士の右手で把持する。

 

そして、左手の尺側を右膝窩筋に当てる。

 

膝窩筋のマッサージ①:

 

療法士の右手で対象者の膝屈曲+下腿内旋すると同時に、左手で右膝窩筋を縦断あるいは横断方向へマッサージする。

 

これをリズミカルに実施(低刺激なマッサージとなる)。

 

 

膝窩筋のマッサージ②:

 

療法士の左手で右膝窩筋を圧迫しつつ、療法士の右手で対象者の膝伸展+下腿外旋方向へ操作する。

 

これをリズミカルに実施(①と比べて強刺激なマッサージとなる)

 

どちらも「関節運動を伴いながらのマッサージ」といことで「機能的マッサージ」となる。

関連記事⇒『横断的マッサージと機能的マッサージ(+違い)

 

※腹臥位で実施するので、膝蓋骨がベッドへ圧迫されて痛みが出てしまう場合がある。それを防ぐために、大腿遠位に重ねたタオルを敷いて「少し膝蓋骨をベッドから浮かせた状態」にすると痛みが少ない。

 

※膝窩筋の反射的短縮によって生じる膝関節(最終域における)伸展・外旋制限にも効果的とされている。

 

 

膝窩筋のセルフマッサージ

 

以下の動画は、ゴルフボールを用いた膝窩筋のセルフマッサージになる。

 

膝窩筋にボールを当ててグリグリと刺激を加えている。

 

 

 

膝窩筋は膝伸展にも作用する?

 

最後に余談を記載して終わりにする。

 

基本情報に膝窩筋の作用を「膝関節の屈曲」と記載した。

 

そして、多くの解剖書でも膝窩筋の作用は「膝の屈曲」と記載されている。

 

しかし一方で、少数ではあるが膝伸展として作用すると記載されている書籍もある。

 

※例えば『書籍: カパンジー機能解剖学 下肢』など。

 

また、『書籍:骨格筋の形と触察法』では以下の様に記載されている。

 

膝窩筋の起始腱は、膝関節の運動軸(大腿骨の外側上顆付近)よりも遠位部から始まる。

 

よって、膝窩筋が単独で収縮すると膝関節の伸展・内旋が起こるはずである。

 

まぁ諸説あるが、一般論としては「膝窩筋=膝屈筋」と覚えておこう。

 

 

関連記事

 

膝窩筋以外のストレッチングに興味がある方は、以下の記事にまとめているのでチェックしてみてほしい。

 

ストレッチング、ちゃんと知っている?