この記事では、リハビリ(理学療法)で活用される頻度の高い概念でるOKC(Open Kinetic Chain)とCKC(Closed Kinetic Chain)について記載していく。

 

※OKCは『開放性運動連鎖』、CKCは『閉鎖性運動連鎖』とも呼ばれる。

 

OKC・CKCとは? 定義と違いについて

 

OKCとCKCという表現が使われだしたのは1990年代に入ってからで、スポーツ傷害のリハビリテーション(特に前十字靱帯損傷再建術後の再建靭帯にかかる負荷)が研究されるなかで盛んに使われるようになった。

 

OKCとCKCは、1995年にSteindlerが定義したのが最初だとされており、SteindlerはCKCとOKCを以下のように定義している。

 

OKC:

⇒連動する関節のうち遠位部の関節が自由に動くことができる場合の運動である

 

CKC:

⇒遠位部の関節の自由な動きが外力により制限されているような場合の運動である

 

 

一方で、この定義の使用をめぐっては世界的に混乱しており、現在はOKCとCKCという用語を以下のように使い分けている場合が多い。

 

OKC:

⇒非荷重位での単関節の動き

 

CKC:

⇒荷重位での多関節の動き

 

 

OKCとCKCの疑問点

 

OKCとCKCの具体例は以下となる。

 

OKC

⇒端座位で膝を伸展するような運動様式

 

CKC

⇒スクワット動作のように足部を床に接地した荷重下で膝を伸展するような運動様式

 

 

しかし、上記の様にスッキリした例がある一方で、以下のような疑問も指摘されている。

 

手を振る動作は「非荷重位ではあるが、単関節の動きではない」が、OKCとCKCのどちらなのか?

 

※Steindlerは自身の定義に沿って「手を振る動作」はOKCとした

 

 

椅座位で膝を伸展するような運動様式はOKCだが、この様な「単関節での運動」に抵抗運動が加わった場合はOKCなのか、CKCなのか

 

※例えば、PNFパターンや「背臥位でのキッキング(療法士が足部に加えた抵抗に抗して、蹴るように足を伸ばしてもらう)」の様に「多関節にわたっての運動パターンに対する抵抗運動」などは一見するとCKCだと思ってしまう。

 

しかし、「背臥位でのキッキング」と「スクワット」を同じCKCトレーニングとしてひとくくりにした場合、明らかに筋収縮が異なっていることが筋電図で確認されいる(特に股関節の伸筋筋や外転筋や内転筋など)。

 

確かに、この2つは「荷重位での多関節の動き」ではあるが「キッキングは(抵抗運動とは言いながらも)遠位部の動きが制限されていない(つまり、筋の反作用が起こっていない)」といった違いによる点が大きい

 

※同様に、スポーツジムで『仰向けに寝た状態からバーベルを持ち上げるような動作」は一見するとCKCトレーニングな気もするが、類似した運動である「腕立て伏せ(床に手をついた状態での運動)とでは(仮に同じ負荷量であったとしても)筋活動が異なる。

 

※これもスクワットと同様に、「荷重位での多関節の動き」ではあるが「バーベルトレーニングは(抵抗運動とは言いながらも)遠位部の動きが制限されていない(つまり筋の反作用が起こっていない」といった違いによる点が大きい

 

※重複するが、「キッキング」も「バーベル運動」も『中枢が固定されて末梢が動く』のに対して、「スクワット」も「腕立て伏せ」は『末梢が固定されて、中枢が動く』という違いがある。

 

 

PNFパターンにおけるCKC・OKCの解釈を引用

 

ここでは、『書籍:アドバンス版 図解 理学療法技術ガイド―より深く広い理学療法技術の習得をめざして 実践PNF P359-361』におけるPNFパターンの解釈を引用しておく。

 

連動療法の形態には二つの分類がある。

 

一つは開放運動連鎖open kinetic chain(OKC)で、もう一つは閉鎖運動連釧closed kinetic chain(CKC)である。

 

開放動連鎖とは四肢遠位端が床や対物と接触しない、自由な系による通勤での筋力評価・強化マシーンや1940年代に考えられ実践され続けたている漸増抵抗運度などが代表的なものである。

 

閉鎖性運動連鎖とは四肢遠位端が床や対物と接触し抵抗を受け、常に密接な接触を保つ閉じた系による運動である。

 

1960年代に考えられ実践されている固有受容性訓練(proprioceptive exerise)が代表的なものである。

 

1950年代に考えられ実践されているPNFは主にセラピストの徒手による足底へ抵抗を加えるという観点からは不十分な閉鎖運動連鎖に位置づけられる。

 

このような1940年代から1960年代の代表的な運動療法の変遷により、現在の統一化された運動療法の適応順序としてはOKCから開始して、徐々にCKCに移行するための準備訓練としてPNFを用い、最後に自分の体重負荷を利用するCKCを用いるようになっている。

 

※上記ではPNFを「不十分な閉鎖性運動連鎖」という表現を用いている。

※要は「OKCではないが、十分なCKCとも言い難い」「CKCの準備訓練としての活用も可能」といった感じ。

 

※ここで表現されているPNFとは、様々な促通要素の中で「PNFパターン」について述べていると思われる。

 

※PNFパターンの具体例は以下の記事を参考にしてみてほしい(観覧することで「不十分な閉鎖性運動連鎖」がイメージできると思う。)

⇒『四肢(上肢・下肢)のPNFパターンを動画で紹介!

 

 

CKCとOKCの線引きが難しいものは各セラピストが何を目的にしているかで、勝手に解釈すればよいという話

 

いずれにしても、床面に末梢が固定された状態での運動、例えば「スクワット」や「腕立て伏せ」などはCKCと表現して間違いないと思われる。

 

以下の動画はスクワット(CKC)により多くの筋群が賦活していることを分かりやすく示している。

※厳密には動画でしめされている以上の多くの筋が賦活している

(例えばインナーユニット股関節外転筋など)

 

 

一方で、キッキングや(スタンダードな)臥位でのPNFパターンなどはCKCなイメージがあるが、厳密には異なるのかもしれない。

 

ただし、「単なる座位での膝伸展運動」と「キッキング」の間でも明らかに異なった筋活動が下肢に起こっているので、結局のところCKCとOKCの線引きは難しくなる。

 

なので、冒頭でも示したように世界で混乱が起きており、結局のところは「各々で都合の良いように解釈すればOK」な類の用語なのかもしれない。

※重要なのは言葉の定義と言うより、どの様な反応を引き出したいかという事なだけなので。

 

個人的には「末梢へ抵抗を加えた状態での多関節の運動」はCKCと捉えている(間違っているかどうかは不明)。

 

つまり(床へ末梢が接地した上での運動は当然のこととして)、キッキングや(スタンダードな)臥位でのPNFパターンも私の中ではCKCと解釈している。

 

一方で、座位での膝伸展運動などの「単関節の運動」は、どんなに強い抵抗をかけたとしても、私の中ではOKCとなる。
高齢者の膝伸展筋力増強

 

 

CKCとOKCの具体例と歩行

 

ここから先は、歩行を例にしてCKCとOKCについて記載していく。

 

歩行におけるOKCとCKC

 

歩行はOKCとCKCの繰り返し動作と言える。

 

歩行は各下肢の「荷重支持(立脚)相」と「非荷重支持(遊脚)相」に分けられる。

 

そして、歩行の非荷重支持相では、下肢はOKCとして機能する。

※この時、股関節、膝関節、足関節の運動は独立している。

 

一方で、歩行の荷重支持相では、下肢はCKCとして機能する。
そして、疼痛によって生じる関節の異常運動は、隣接する関節に異常な代償を引き起こす。

※例えば、膝が痛いのであれば立脚相において股関節・足関節などの運動にも影響を及ぼす。

 

これらの異常な代償運動は代償を行う関節の軟部組織に過度の機械的ストレスをもたらし、その結果として他部位にも疼痛などの症状を引き起こす可能性がある。

 

これらの事から、荷重支持関節における疼痛の状態の正確な評価には、周囲全ての関節の機能を評価する必要があると言える。

 

あるいは同様の理由から、「ある関節(あるいは組織)に対するリハビリ(理学療法)は、隣接する関節(あるいは組織)へのリハビリ(理学療法)も含まれている場合がある。

 

例えば、歩行中の距骨下関における過度な回内(外反)が、代償的運動によって膝痛を生み出している可能性がある。

 

その様な場合においては、異常な距骨下関節の運動への介入を行わず、膝関節のみをリハビリ(理学療法)の対象にしていては効果が出せないという事になる。

関連記事⇒『運動連鎖による理学療法の魅力と限界

 

 

OKCリハビリ(理学慮法)のデメリット(=CKCのメリット)

 

リハビリ(理学療法)における筋力トレーニングは臥位・座位にて(OKCにて)実施されることも多い。

 

一方で、筋力トレーニングの対象が「下肢筋力」である場合、基本的に下肢筋力が発揮されるシチュエーションは「足を床に着地させた状態」なため、荷重位でのトレーニングが重要となる。

 

例えば、立ち上がりや立位保持、歩行に必要な筋力を強化しようと思った場合、OKCで「一部の関節(あるいは筋群)のみにフォーカスを当てたトレーニングは非生理的な運動ということになる。

 

また、OKCで鍛えられた「一部の関節(あるいは筋群)」が立ち上がりや立位保持・歩行時に有効に働くとは限らない。

 

これは「特異性の原則」として重要な考えと言える。

関連記事⇒『過負荷の原則と特異性の原則を考慮した筋力トレーニング

 

従って、運動負荷や難易度を考慮してOKCによる運動を実施するにしても、いずれかの段階でCKCのトレーニングも組み入れていくほうが機能的なリハビリ(理学療法)ということになる。

 

 

CKCリハビリ(理学療法)のデメリット(OKCのメリット)

 

ここまでOKCのデメリットを記載してきたが、OKCにもメリットはある。

 

例えば術後早期のリハビリにおいて、OKCでの運動は負荷が強すぎる場合であっても、OKCでの低負荷な運動は可能といったケースもある。

 

※キッキング(背臥位で下肢を伸展する動作に療法士が軽微な抵抗をかける)やギプス固定中の等尺性収縮などおCKCであるとするならばCKCも術後早期に可能ということになり、OKCのメリットともいえないかもしれないが・・・

 

また、「CKCのほうが機能的」と表現したが、荷重していない時でも機能的な働きは必要であり、例えば歩行時の遊脚相は機能的ではないのかということになる。

 

つまり、「機能的な活動」というのは荷重位・非荷重位ともに必要であり, どちらか一方の使用よりは両方のトレーニングがより機能的といえるのかもしれない。

 

あるいは、「このOKCでのトレーニングは何を意図しているのか?」を考えて、それが荷重位で機能する能力の獲得であるとするならば、「いずれかの段階でCKCに移行する」というのが理想なのかもしれない。

 

 

CKC・OKCの関連記事

 

CKC(閉鎖性運動連鎖)・OKC(解放性運動連鎖)を考えるにあたって、「そもそも運動連鎖って何だ」という点も理解しえ置くに越したことはない。

そんな『運動連鎖』に言及した記事は以下になる。

 

運動連鎖を誰でもイメージできるように解説!

 

 

CKC・OKCに沿ったトレーニングとして、この記事では以下を紹介している。

興味のある筋があれば観覧してみてほしい(必ずしもCKC・OKC両方のトレーニングが掲載されているわけではない点には注意してほしい)。

 

大殿筋とブリッジ運動

なんちゃってCKCとして「ブリッジ運動」を、厳密な意味でのCKCとして「ランジ運動」を紹介している。

 

腸腰筋の役割は沢山あるよ

大腰筋トレーニングとしてはOKC運動を紹介している。

 

外旋六筋の特徴まとめ

外旋六筋のトレーニングとしてOKCの運動を紹介している。

 

中殿筋の最強ストレッチングはどれだ!

中殿筋のトレーニングとしてCKC・OKCの運動を紹介している。