この記事では、リハビリ(理学療法・作業療法)や医療・看護・介護の分野で使用される『QOL』について、QOLの評価尺度(SF36など)も含めて記載していく。

 

QOLの意味

 

QOLとは「Quality of Life」の略であり、日本語に翻訳すれば「生活の質」あるいは「人生の質」となる。

 

また、世界保健機構(WHO)ではQOLの意味を以下のように表現している。

 

「一個人が生活する文化や価値観の中で、目標や期待、基準、関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」

 

 

少し難しいが、もう少し分かりやすく「健康に生きれているかに対する認識」と表現している人もいる。

 

ただし、上記で使われている『健康』という用語は、「身体的に元気かどうか」だけを指している訳ではない点には注意してほしい。

 

この際の「健康」とは、WHOによる「健康とは、単に病気ではないだけでなく、身体的、精神的、および社会的に良好な状態を指す」という概念に基づいた、幅広い意味として捉えてほしい。

 

以下がQOLを構成する要素である。画像引用:第14回 浜松オンコロジーフォーラム

 

 

※身体の健康面のみならず、「日常生活の役割」や「信念・生きがい・平穏な気持ちなど」など様々な要素でQOLが構成していることがわかる。

 

 

QOLとは主観的尺度

 

「QOLが高い(良い)」とは、何を意味するのだろうか?

 

例えば、同じ生活や仕事をしていてもQOLは同じではないだろう。

 

「お金があっても不老不死になれないことに絶望感を抱いている大富豪」がいる一方で、「お金が無く、体調に問題を抱えながらも、自ら多くの幸せを見つけて、前向きに過ごしている人」も存在する。

 

はたして、どちらがQOLが高くて、どちらがQOLが低いのであろうか?

 

それは、本人達に直接聞いてみないと分からない。

 

そして、この例から分かるように重要な点は、QOLは他人の尺度によっては図り難い概念であるという点だ。

 

「あの人はお金がないからQOLが低いはずだ」とか「あの人は高齢にもかかわらず、病気を患ったことが無いなんて、QOLが高いに違いない」などと他者の物差しで測ることは難しい。

 

QOLが高いかどうかは、個人それぞれの考え方や価値観によって左右され、その人の持つ主観的幸福観の程度がその人のQOLを決定することになる。

 

 

QOLを「マズローの欲求階層説」で考える

 

「主観的幸福感」を考えた際、マズローの欲求階層説が引き合いに出されることがる。

 

マズローの欲求階層は以下の通り。

画像引用:モチベーションアップの法則

 

 

これをQOLに当てはめて考えると、例えば以下などになる。

 

1:生理的欲求

 

バイタルサインが不安定なときや重症疾患の場合、最下層の「生理的欲求」を欲しているという事になる。

 

この段階で、より上位の成分を論じてもあまり意味がない(まずはバイタルを安定させよう)。

 

急性期病院(急性期疾患)では、生理的欲求を満たすことが至上命題なため、「QOL」 に着目され出す頃には、転院・退院していることが多いケースもある。

 

 

2:安全性の欲求

 

リハビリ(理学療法・作業療法)で考えた場合、一人でどの程度『日常生活活動(ADL)』が行えるかで、この欲求の充足度合いを把握できるかもしれない。

 

 

3:所属と愛情の欲求

 

このレベルの欲求になってくると『他者との交流(近所づきあい、仕事などが含まれる)』にもフォーカスが当たる。

 

つまり、『IADL(手段的生活活動)』であったり、『ICFにおける参加』が重要視されることになる。

 

※前述した安全性の欲求でも『IADL能力』は重要だが、このレベルでは更に重要となってくるという意味。

 

このレベルになってくると、欲求を満たすだけの身体機能はもちろんのこと、自身の精神状態(モチベーション)、経済状況、信念など、様々な要因が絡んでくる。

 

 

 『マズローの欲求階層』を私たちにも当てはめてみよう

 

これより更に上位の欲求である『自己尊重・承認の欲求』や『自己実現の欲求』に関しても、満たされているほどに

 

『QOLが高い』

 

と表現できる。

 

でもって『マズローの欲求階層』における、もっと一般的な解釈については以下を参照してみてほしい。

 

マズローの欲求階層説! 自身がどの階層かチェックしてみよう♪

 

 

健康関連QOLと非健康関連QOL

 

医療として『QOL』を考えた場合、以下の2つに分類される。

 

  • 健康関連QOL
  • 非健康関連QOL

 

健康関連QOL(health-related QOL:HQOL)とは、「個人の健康に由来するQOL」を指す。

 

そして、この際の「健康」の意味は、前述したWHOの概念における「健康」ではなく、私達に馴染みのある「疾患と関連深い意味での健康」を指す。

 

そして、医療分野でQOLが使われる際は「疾患によって影響を受け、医療によって変化していく患者の身体的・精神的・社会的な側面」が着目されるため、『健康関連QOL』にフォーカスされやすい。

 

一方で、非健康関連QOLは、「健康とは直接関連はないが間接的に健康に影響するQOL」を指し、人格、経済、政治、環境などが含まれる。

 

 

左側が(前述した)『QOLの構成要素』であるのに対して、右側が『健康関連QOLの構成要素』になる。

 

この画像対比は「QOLからスピチュアリティや社会面(の一部)を除外したもの」が『健康関連QOL』といったザックリとしたイメージを持ちやすいのではないだろうか?

画像引用:第14回 浜松オンコロジーフォーラム

 

 

 

健康関連QOLの評価尺度

 

QOLを測定するために、最もよく用いられるものがQOL評価尺度である。

 

QOL研究で良く用いられている代表的な健康関連QOLの評価尺度としては以下があげられる。

 

 

特徴

評価尺度

質問

領域

選好に基づく尺度

単一指標(効用値)算出

Euro Qol

(EQ-5D)

5

5領域:

移動、身の回りの管理、普段の活動、痛み/不快感、不安/ふさぎこみ

プロファイル型

包括的尺度

標準値があり、健常者や他疾患との比較が可能

SF-36

36

8領域:

身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、心の健康

疾患特異的尺度

感度(反応性)に優れる、

臨床的意義

脳卒中

SSQOL

49

12領域:

元気さ、家族生活、言語、移動、気分、性格、セルフケア、社会生活、思考・記憶、上肢機能、視覚、仕事

COPD

CRQ

20

4領域:

呼吸困難、感情、疲労、病気による支配感

がん

EORTC

QLQ-C30

30

機能:

身体、役割、認知、情緒、社会、全般的QOL

 

症状:

嘔気嘔吐、倦怠感、呼吸困難、痛み、睡眠障害、食欲不振、下痢、経済

関節

リウマチ

AIMS 2

57

12領域:

移動能、歩行能、手指機能、上肢機能、身の回り、家事遂行能、社交、家族・友人からの支援、痛み、仕事、精神的緊張、気分

骨粗鬆症

JOQOL 2000

38

6領域:

疼痛、日常生活活動(身の回り、家事、移動)、娯楽・社会的活動、総合的健康度、姿勢・体形、転倒・心理的要素

 

皆さんは知っている評価尺度があるだろうか?

 

個人的には『SF36』をよく見かける。

 

例えば以下など。

慢性腰痛とQOL(SF-36)
画像引用:関節痛の予防理学療法

 

あるいは、徒手療法においても、アプローチによる改善を、身体機能のみならず、SF-36などを用いてQOLの観点からも評価しようと試みている学派もあったりする。

 

 

SF-36とは?

 

ここでは、QOL評価尺度のうち、SF-36について記載していく。

 

先ほどの表に示した通り、SF-36とは包括的尺度に分類される。

 

そして、包括的尺度は以下の特徴を持っている。

 

  • 一般に健康と言われる人から様々な疾患を持つ人まで共通して有する要素によって構成されている。

 

  • なので、健康な状態から病気までのQOLを連続的に測定可能。

 

  • また、異なった疾患間でも比較可能。

 

 

そんな「QOLの包括的尺度」の代表がSF-36(The 36-item short form of the Medical Outcome Study Questionnaire)である。

 

SF-36は、以下の8つの健康概念からなり、36項目から構成されている。

 

  • 身体機能
  • 日常役割機能(身体)
  • 体の痛み
  • 全体的健康感
  • 活力
  • 社会生活機能
  • 日常役割機能(精神)
  • 心の健康

 

 

SF-36のメリットは、国際的に最も普及しているQOL評価尺度であること、国民標準値があり比較可能な点である。

 

また、質問数を12項目や8項目に減らしたSF12SF8も開発され、これらには以下のメリットがある。

 

  • 質問数が多すぎる対象でも調査が可能
  • 大規模調査などに簡便に用いることが可能

 

 

QOLの評価尺度を活用する際の注意点

 

QOL評価尺度は、患者一人一人のQOL評価には必ずしも十分ではないことが指摘されており、「このQOL評価で50点から70点になったので、QOLが良くなった」で終わりにしてはならない。

 

そして、リハビリ(理学療法・作業療法)において重要なのは「評価尺度によって採点された点数」ではなく、「その点数に至った行間を読むこと」にある。

 

つまりは、患者それぞれの物語(narrative)に耳を傾け、それを記録することも重要で、その様な試みも立派なQOLの評価となる。

 

QOLが変化した要因は、孫が会いに来てくれたことかもしれないし、娘から頼りにされた事かもしれない。

 

点数ではなく、なぜQOL尺度が改善されたかのかを読み解くことが大切なのだ。

 

患者のQOL状態を知る手掛かりを得るために「最近、変わったことはありましたか?」「いま、楽しいことは何ですか?」「目標にしていることは何ですか?」といった質問は使いやすいと思われる。

 

 

リハビリ(理学療法・作業療法)で用いられる『客観的QOL』とは

 

「QOLとは主観的幸福感の度合いで決まるため、客観的に評価するのは難しい」と前述したが、リハビリテーション(理学療法・作業療法)の世界では、『客観的QOL』という用語が使われることがある。

 

具体的には、QOLを『客観的QOL』と『主観的QOL』の2つに分け、

 

客観的QOLをさらに以下の3つに分類するという考えだ。

 

①生物レベルのQOL(生命の質)

②個人レベルのQOL(生活の質)

③社会レベルのQOL(人生の質)

 

客観的QOLを図にすると以下になる

※画像:上田敏 リハビリテーション医学の世界より

 

 

上記からも分かるように、これらはICFでいう所の以下に該当する。

 

・生物レベルのQOL⇒心身機能(関連記事:心身機能・身体構造) 

・個人レベルのQOL⇒活動(関連記事:活動と参加+違い

・社会レベルのQOL⇒参加(関連記事:活動と参加+違い

 

そうなってくると、リハビリ(理学療法・作業療法)で一般的な『心身機能に対する評価法』であったり、以下などのメジャーな『ADL評価法』によって(一つの側面ではあるものの)QOLについて(ここでいう所の客観的な)評価が可能と言えなくもない。

 

・メジャーなADL評価法①:FIM

⇒『FIMの評価項目・点数をガッツリ網羅!これさえ読めば安心です。

 

・メジャーなADL評価法②:バーサルインデックス

⇒『バーサルインデックス(Barthel Index)の判定基準

 

ちなみに、この考えは『客観的QOL』にばかり着目し、『主観的QOL』を度外視しているという訳ではないので誤解しないでほしい。

 

※例えば「客観的QOLが高いことが、必ずしも主観的QOLの高さに結びつかない」などとも指摘している。

 

この点に関しては、以下の書籍も参考にしてみてほしい。

 

 

この考えはリハビリ(理学療法・作業療法)には馴染みやすいかも

 

この考えは、「ADLなど客観的に評価可能な指標をベースにQOLを考える」といった手法であり、QOLを解釈するための様々な切り口の一つである。

 

でもって、「この考えを基に実践した評価では、QOLを適切に捉えることは出来ない」との意見も当然ながら存在する(だからこそSF36などが存在し、SF36ですら完璧にQOLを評価することは不可能であろう)。

 

しかし一方で、リハビリテーション(理学療法・作業療法)に馴染みやすい考えであることは確かである。

 

※従来のQOLは範囲が広すぎる。でもって、客観的に評価可能な指標をベースにしたほうが臨床に活用しやすい。

 

※QOLを『主観的尺度』として幅広くとらえた場合、セラピストがQOLにどこまで深く踏み込んでアプローチをする必要があるのかといった議論もある。

 

※臨床でいちいちSF36をやってる場合じゃない(そもそも、お金も必要になる)。

 

でもって、ここで記載した情報も参考にしながらICFに沿ったリハビリ(理学療法・作業療法)を展開していくことが求められる。

 

 

QOL関連記事

 

リハビリ(理学療法・作業療法)を考える上で、ICF(生活機能分類)による「人間を包括的に捉える視点」は重要になってくる。

 

以下のリンク先に、ICFをまとめた記事があるので、興味があればこちらも参考にしていただき、問題解決に役立てていもらいたい。

 

理学・作業療法士が知っておくべきICFのまとめ一覧