この記事では、COPDのリハビリ(理学療法)として、運動(筋力トレーニングや全身持久力トレーニング)の重要性を記載していく。

 

呼吸器リハビリテーション:はじめに

 

COPDに対する「呼吸リハビリテーション」の考え方は、昔とは異なってきている。

 

以前は、COPDにおけるリハビリ(理学療法)は、呼吸筋を鍛えたり、胸郭の可動性を高める(マッサージ・ストレッチング・関節モビライゼーションなど)が中心であった。

 

しかし、これらリハビリにおける有用性(エビデンス)は決して高いとは言えず、むしろ有用性が一番証明されているのは「歩くこと」を中心にした運動メニューとなっている。

 

つまり、COPDには呼吸器を鍛えるのではなく、身体(筋力・体力)を鍛えるべきという考えが重要となっている。

 

※+αとして前述した従来のリハビリ(理学療法)が好奏することもあるので軽視できない。

 

※この記事で主張したいのは、従来通りのリハビリ(理学療法)に終始してしまい、エビデンスのあるリハビリを軽視してしまうことである。

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COPDに対する運動の効果

 

COPDにおける運動は重要である。

 

「呼吸器が悪く、体を動かすとすぐ息切れをする」といった状態では、運動をしない方が良いと思うことがあるかもしれない。

 

しかし現在、呼吸リハビリテーションとして運動は、有効な治療として高く評価されている。

 

すなわち、「呼吸器が悪くとも運動すべき」ということになる。

 

COPDに対する運動については、アメリカの専門学会がガイドラインを示している。

※Ries AL, et al.:CHEST.2007;131:4S-42S

 

このガイドラインでは、下肢のトレーニングを種目に取り入れた運動プログラムは、呼吸困難感や健康状態の改善に有効であり、実施を強く推奨している。

 

また、筋力トレーニングや上肢トレーニングを運動プログラムに加えることも有効であり、これも強く推奨している。

 

運動の強度については、強度の高い運動は効果も高いが、長期間の運動の継続を考慮すると、低強度の運動でも臨床的には有効であるとされている。

 

※エビデンスのあるリハビリが継続してもらえるかどうかは別問題。

 

※特にCOPD患者の様に「運動をすると苦しくなる」という特徴を持っている場合は、「継続性してもらえるか」といった点も踏まえて強度を設定していく必要がある。

 

※ただし、この記事では「継続性」という点にはあまり言及せず、運動の重要性にフォースして記載している点には注意してほしい。

 

※この記事では、「COPDと運動」にフォーカスを当てているが、運動の重要性は(拘束性呼吸器疾患も含めた)換気障害全般に言えることである。

 

※そのため、COPDと記載しているが「呼吸器疾患全般」に置き変えて観覧してみてほしい。

 

 

歩くことが肺に与える影響

 

ここから先は、歩行が肺機能に与える影響を記載していく。

 

呼吸器と筋収縮の因果関係

 

筋肉は以下のようにして収縮が起こり、体を動かしている。

 

①人は一定量の酸素を口や鼻から吸い込んで肺に入れ、肺で血液中に酸素を取り入れる。

②酸素を取り入れた血液が全身をめぐる(四肢末梢の筋群にもいきわたる)。

③筋肉に酸素が取り込まれ、糖質と反応してエネルギーが生まれ筋肉が動かされる。

 

 

呼吸器疾患と下肢機能の因果関係

 

呼吸器疾患では、動くと息が切れて苦しいため安静を選択する。

下肢を中心とした全身の筋機能が衰え、筋量も減少する。

血中の酸素のうち、下肢の筋群に入る酸素量が減る

(筋機能低下・筋量減少が起こっているから)

下肢の筋群に酸素を少しでも多く取り込もうと、ハアハアとした息で呼吸数を増やしたり、酸素マスクを着用したりする。

 

※つまり、息切れ増加や酸素マスクなしでの歩行が困難な状況に陥る。

 

このような患者に対して一時的に酸素マスクを装着してもらい、歩行を中心とした運動療法をリハビリメニューに取り入れていく。

 

※運動の効果で再び足の筋肉の機能が回復し、筋量も増えてくると、活動時に下肢筋群に入る(血中)酸素量が増え、息切れや酸素マスクなしでの歩行が容易となる。

 

 

COPDに運動療法が重要って知ってた?

 

ここまでの解説で、何となくCOPDにおける運動療法(筋力トレーニング・全身持久力トレーニング)の重要性に関して、理屈がイメージ出来てきたのではないだろうか?

 

運動療法によって前述したような機序が起こり、例え肺の機能は改善しなくとも以下の様な事が起こる可能性がある。

 

  • 下肢の筋群に血液中の酸素を取り込み易くなり、運動機能が改善する
  • 少ない呼吸量で歩けるようになるので、息切れが改善し、酸素ボンベをつけなくとも良くなる
  • 呼吸が苦しくなって入院する回数や、入院している日数も減る
  • 日常生活における活動や生活の質(QOL)が改善する。

 

 

COPD(を含めた呼吸器疾患)に運動療法を行う条件

 

ここまで記載してきた「運動療法」の対象は以下の通り。

 

  • 標準的治療によって病状が安定していること
  • 十分に排淡されていること
  • 十分なエネルギー所要量が確保されていること(低栄養状態ではないこと)
  • 呼吸器疾患により、健常の人と比べて動けない、歩けないなどの日常生活での様々な制限があること
  • 呼吸リハビリの施行を妨げる因子や不安定な合併症がないこと
  • 患者さん自身にリハビリを行う積極的な意思があること

 

つまりは、皆が思っているよりも多くのCOPD患者が呼吸リハビリテーションを行う資格があり、積極的に呼吸リハビリ・運動療法を行うべきと言える。

 

※ただし、実際に「安静にしていても息が苦しい人に(酸素マスクを着用した状態で最初は始めるといっても)積極的に運動をしてもらう」というのは、運動の理由説明、エビデンスの提示などなど、モチベーションを上げるための様々な動機付けの工夫が必要となってくるかもしれない。

 

※この事から、必ずしも理想と現実は異なるかもしれないが、このエビデンスは知っておくことは役に立つと思われる。

 

前述した「呼吸リハビリの施行を妨げる因子や不安定な合併症」としては以下が挙げられる。

  • コントロール不良の循環器疾患
  • 急性炎症
  • 重度の精神疾患

・・・・・・・・・・・・などなど

 

※「高齢」というだけでは、必ずしも「呼吸リハビリの施行を妨げる因子」にはならない。

 

 

運動の強度・中止基準・運動療法の原則

 

COPDに対する運動の強度は以下で決定する(参考文献:図解 理学療法技術ガイド第2版)。

 

経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2):

SpO2が90~85%以上

※酸素マスクを着用した状態で運動するなど、可能な限り酸素飽和度は上げておく。

※SpO2は『パルスオキシメーター』で簡単に測定できる。

 

最大予測心拍数:

最大予測心拍数(220-年齢)の60~80%を目安とする。

 

自覚的運動強度(ボルグスケール):

ボルグスケールは「ややきつい~きつい」の範囲で実施する。

関連記事⇒『ボルグスケールを解説!

 

 

運動の中止基準

 

中止基準は以下の通り。

 

  • SpO2が80%以下に低下
  • 年齢別最大心拍数80%以上の上昇
  • 呼吸数30回/分以上の増加
  • 自覚症状としての息切れ・疲労感も指標とする。

 

 

運動療法の原則

 

COPDにおける運動療法の原則は以下の通り。

 

  • 運動中は口すぼめ呼吸(+人によっては腹式呼吸)を行う
  • 動作は呼気で行う
  • 目的筋は可能な限り単独で強化する。

    ※つまりCKCよりOKCトレーニングの方がCOPDの棋力トレーニングには向いている。⇒『CKCとOKC(+違い)

  • 酸素療法を受け血得る患者は動作時の酸素流量で行う(安静時の酸素流量のままやらない)。

 

 

COPDに対する運動療法の具体例

 

COPDに対する運動療法の重要性が理解できれば、詳細なメニューはその患者に合わせて無限大に存在するが、いくつか簡単な例を記載して終わりにする。

 

①歩行:
歩行は簡便で、距離や時間、心拍数などを指標として患者に自主練習してもらうことも可能となる。

方法は、患者の任意の速さで歩行させる自由歩行を行う。

その他、万歩計を利用する方法がある。

 

②自転車エルゴメーター・トレッドミル:

自転車エルゴメーターとトレドミルは以下の利点がある。

・場所をとらない

・正確な負荷量や時間の設定が行いやすい

従って、患者のモチベーションも得やすい。

また、負荷量を調節することで、下肢筋の筋力・筋持久力の増強効果を調節できるという利点もある。

 

③四肢・体幹筋の筋力トレーニング:

四肢筋の筋力強化は鉄アレイや重錘バンドを持ち、この時も呼気時にのみ運動を行わせる。

※前述したようにOKCトレーニングの方がCOPDには望ましい。

また、COPDの運動におけるエビデンスと、運動りの継続性を踏まえると、呼吸困難感を緩和するためのストレッチと上肢や下肢の比較的低負荷での筋力トレーニングを組み合わせた運動プログラムの実施が、COPDのための運動として有益であると考えられる。

 

 

肺機能と寿命がイコールではないという希望!

 

COPD患者の生命予後と肺機能の重症度との間に、強い相関関係があるとは言えないとの指摘もある。

 

※よほど肺機能が低下して、正常の1/3以下の程度になれば、余命は明らかに短いが、低下の程度が1/3~1/2くらいの中等度の人では、生命予後に差は認められないという意味。

 

これとは逆に、肺機能の重症度に、運動能力、呼吸困難感、栄養状態を加味して生命予後を検討すると以下のことが明らかとなっている。
 

「肺機能が落ち、運動能力が低く、呼吸困難感が強く、栄養状態が悪い人ほど生命予後が悪い」

 

特に、運動機能の程度や、息切れの程度が生命予後の決め手になっている。

 

そして前述したように、呼吸リハビリによって「運動機能の程度」や「息切れの程度」は改善する可能性がある。

 

そして、この点が「呼吸リハビリが生命予後に効果的である」という一つの根拠にもなっている。

 

※結構アグレッシブな内容を記載したが、実際はパルスオキシメーター(脈拍と動脈血酸素飽和度を簡便に測定できる機械)をチェックしながら慎重に実施していく。

関連記事⇒『パルスオキシメーターの使い方・正常値を解説!

 

 

高齢者の生活不活発病+COPD=寝たきり?

 

なんだか、同じことを延々と記載しているように思うが、重要な点なので、もう少し付き合ってみてほしい。

 

高齢者のCOPDは生活不活発病(廃用症候群)を伴いやすく、負のスパイラルに陥ってしまう可能性が高くなる。

 

具体的には以下の機序

・COPDによる労作時呼吸困難(安静にしていれば比較的楽)

・動きたくなくなる

・生活不活発病の進行

・つまり、筋力低下・体力低下が起こる。

・ますます活動時が大変になり、呼吸困難症状も悪化する。

・ますます動きたくなくなる。

・・・・・・・この様な悪循環が起こってしまう。

関連記事⇒『生活不活発病を解説!!

 

こんな悪循環から脱却するためにも運動療法は重要なのだ。

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終わりに

 

運動療法を取り入れた呼吸リハビリの有用性は、心臓リハビリや脳卒中のリハビリと遜色ないレベルにまで高まっている。

 

運動療法は継続して定期的に行う。維持プログラムとしては、全身持久力トレーニングや筋力トレーニングが主体で、運動習慣がライフスタイルに組み込まれることが望ましい。

 

そして、他の呼吸理学療法と併用すしながら、その効果を薬物療法に上乗せすることも有効となる。

 

また、運動療法を効果的なものにするためにも栄養療法(食事療法)の併用が望ましい。

 

以下の記事では、COPDに対する治療として、(ここで記載した内容よりも)一般的な総論を解説している。

 

また、(この記事と異なり)運動療法を含めた様々な動画を添付しているので、COPDへのアプローチが視覚的にイメージしやすいと思う。

 

なので、ぜひ合わせて観覧して頂き、知識を整理してもらえればと思う。

 

COPDの治療を総まとめ(エビデンス・ガイドライン含む)

 

 

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