この記事はリハビリ(理学療法・作業療法)の対象として馴染み深い廃用症候群のまとめ一覧となる。

 

リハビリ・看護・介護に従事している人達には当たり前すぎる内容かもしれないが、まとめてみたので復習がてらに観覧してみてほしい。

 

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廃用症候群とは

 

一昔前までは、「病気になったら横になって安静にしているのが当然」と思われがちであった。

 

確かに術後などの急性期においては安静にしておくことが重要であったりすることもあるのだが、現在では(必要以上に)安静にしてしまう事による弊害が『廃用症候群』として強調されるようになっている。

 

身体の組織は適度な刺激(負荷)のないま長時間放置されると、その組織が本来持っている機能が低下してしまう。

 

これは、「現在の状況に身体が(良くも悪くも)馴染んでしまう」ことを意味し、誰にでも起こり得る。

 

※例えば、スポーツジムなどで筋トレをすればその状況に馴染んで筋肥大が起こるが、筋を使わなければその状況に馴染んで筋は萎んでいく。

 

廃用とは「十分に身体の機能を用いないことで廃れてしまう」ということを意味するので、例えば筋力が低下して動きにくくなったり、体力が低下して連続した活動が困難になったりといったことはイメージしやすいと思う。

 

また、廃用は認知機能にも影響を与えるため、抑うつ傾向になったり、高齢者であれば認知症に進展してしまう事もある。

 

 

生活不活発病(廃用症候群)の一覧表

 

ここまで廃用症候群の一部をパラパラと記載してきたが、以下が廃用症候群の一覧表である(この他にも色々ある)。

 

体の一部(局所)に起こるもの:

 

 

機能障害

症状・症候

関節

関節の可動域減少

関節拘縮

骨萎縮

骨粗鬆症

筋肉

筋委縮

筋力低下・耐久力低下

皮膚

皮膚萎縮

褥瘡

 

 

全身に影響するもの:

 

 

機能障害

症状・症候

心臓

心機能低下

起立性低血圧・頻脈

肺機能低下

息切れ・肺活量減少

消化器

消化器機能低下

食欲不振・便秘

膀胱

排尿機能低下

尿量増加・膀胱炎・結石

 

 

精神や神経の働きに影響するもの:

 

 

機能障害

症状・徴候

脳・神経

感覚運動調節機能の低下

姿勢保持・協調性困難

脳・神経

認知機能障害

認知症

神経

自律神経機能低下

自立神経不安定

精神

精神活動の低下

うつ状態

 

膀胱機能低下の他に直腸機能の低下も起こったりする。

 

長期臥床により腸管の蠕動機能が低下し、弛緩性の便秘が慢性的に起こってくる場合が多くみられる(重力の影響で下降していかないといったことも関係してくる)。

 

更には、全身の筋力が低下することで腹筋が弱くなり腹圧がかけられない。

 

もちろん臥床傾向によって覚醒レベルが低下している(ボーっとしている、シャキッとしない状態)も排泄障害に影響を及ぼす。

 

そうなってくると、下剤や涜腸に依存する結果を招く。

 

上記のような極論でなくとも、「寝たきりの人を離床させると、急に便意(ありは尿意)を催す」といったことは、リハビリ(理学療法・作業療法」のあるある話ではないだろうか?

 

 

廃用症候群の原因

 

廃用症候群は安静を必要とする患者のみならず、健常者でも生じることが実験でも証明され、運動不足がに原因があることが明らかとなっている。

 

従って、医療・介護の現場においては(過度に)安静にしすぎないことはもちろんのこと、「単に起きていれば良い」というだけでなく、積極的に運動をしていかなければ廃用症候群に陥ってしまう可能性がある点には注意が必要だ。

 

※廃用症候群は何も特別な疾患を有していなくとも起こり得る。

 

※例えば、「妻に先立たれて生きる希望を失った夫(特に疾患を有しているわけではない)」は、活動性低下(運動不足)によって廃用症候群に陥る可能性があるかもしれない。

 

以下の図は廃用症候群との因果関係を示した一例となる。

~小山珠美;廃用症候群トータルケアマネジメントにおける理論と実際p.270,日総研出版,1999より~
廃用症候群の成り立ち

廃用症候群の予防

 

廃用症候群の原因が「過度な安静」や「運動不足」であるとするならば、予防に重要な点は以下ということになる。

 

・過度に安静にしすぎない

・無理のない範囲での意識的な運動(活動)を心がける

 

 

過度に安静にしすぎない

 

過度に安静にしすぎないというのは、「ずっと寝たまま過ごさない」というのはもちろんのこと、寝たままで可能な運動を実施することも含まれる。

 

例えば、大腿骨を骨折して手術を受けた場合、すぐに股関節や膝関節を動かすことは難しいかもしれないが、足関節(足首)や足指だけでも動かすことは出来るだろうし、反対側下肢も(患部に響かない程度の運動であれば)可能なはずだ。

 

※下肢の末梢を動かすことは(後述する深部静脈血栓症を予防するうえでも重要となる)
あるいは、上肢などを積極的に動かすことも出来ると思う。

 

これらによって廃用症候群の一つである心肺機能の低下、筋萎縮、骨萎縮なども最低限は予防できる。

 

 

無理のない範囲で意識的な運動(活動)を心がける

 

使わない機能は誰であっても衰えてしまう。

 

従って、(無理のない範囲での)意識的な運動(活動)を心がけることは大切となる。

 

ただし、もともと運動(活動)に対するモチベーションが低い人は存在し、その様な人は廃用症候群に陥りやすい。

 

例えば高齢者の中には、「意欲的に運動(活動)をする人」と「そうでない人」が分かれてしまうことが結構あり、後者は「運動面倒くさい」「特にやりたい活動がない」「じっとしているのが楽」などといった声が聞こえてきたりする。

 

これらの人には一工夫必要となってくるのであるが、もし仮に意欲が持てない場合においても「廃用症候群(生活不活発病と言う表現の方が一般的に理解してもらいやすいが)」について説明はしてあげてほしい。

 

※あるいは、運動をしたがらない人でも、いざ「起きてみる」「少し体を動かしてみる」といった事で一気に表情が明るくなったり、「やぱり運動して良かった」ということになることも多い。

 

これは廃用症候群の一つである抑うつ・無為無欲状態などが、運動によって改善されたことに起因する。

 

※運動の目的は足腰を鍛えたり、体力を向上させたりと言った点に着目されがちだが、精神的にも好影響を与える可能性を秘めている。

 

※高齢者に対する運動の効果は以下の記事も参照

⇒『高齢者の筋力トレーニングの効果や方法

 

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廃用症候群に対するアプローチ

 

廃用症候群に陥ららないためにも、前述したように予防が重要となってくる。

 

医療・介護の現場においては100%予防は出来ないまでも、「生活不活発によって生じる弊害」を最小限に留めることは重要となる。

 

なぜなら『廃用症候群は容易に起こるが、それを改善(元に戻す)にはかなりの労力を伴うから』である

 

文献によって報告されていることはマチマチだが、1日中の安静によって生じた機能低下を回復させるには1週間かかり、1週間の安静によって生じた機能低下を回復するには1か月かかると言われている。

 

※特に高齢者ではいったん廃用症候群を起こしてしまうと若年層に比べて回復には時間がかかり、元の状態へ回復することは困難となってしまう事もある。

 

※例えば「認知機能が低下してしまうと、完全に元の状態に戻らないこともある」など、筋力や体力などに比べてイメージしてもらいやすいのではないだろうか?

 

なので、(無駄な労力を省くためにも、取り返しのつかない機能低下を起こしてしまわないためにも)予防が重要なのだが、予防が難しかった場合のアプローチも含めて、いくつかの症候・症状にフォーカスしてみる。

 

興味があるものに関してはリンク先へジャンプしてみてほしい。

※特に重要な知識はで示している

 

廃用性の関節拘縮

 

褥瘡(=床ずれ)

 

深部静脈血栓症

 

廃用性の筋萎縮

 

廃用性の骨萎縮

 

起立性低血圧

 

 

拘縮・褥瘡・深部静脈血栓症は、比較的患者が受け身であっても予防・治療することが可能である。

※むしろ誤用症候群に気をつける必要がある。

 

一方で、「筋萎縮・骨萎縮・起立性低血圧の予防・改善(や体力の維持・向上)に関しては患者に対する負荷が必須なため、その負荷が大きくなりすぎないよう注意する必要がある。

※要は過用症候群を起こす危険性がある。
 

つまり、適切な刺激(負荷)を加えるといったさじ加減が重要となる。

 

例えば、筋萎縮が生じたからとガンガン筋トレをしてもらおうと思っても、そう簡単にはいかないということになる。

 

これら誤用症候群・過用症候群に関しては以下の記事でも解説しているので、興味がある方はこちらも参照してみてほしい。

⇒『過用症候群と誤用症候群を具体例も示しながら解説!

 

 

また、高齢者の廃用症候群により転倒や、それに伴う骨折のリスクも高まってしまう。

※転倒による骨折では骨粗鬆症を素地とするものが多く、「大腿骨頸部骨折」「コーレス骨折(手首の骨折)」「脊椎圧迫骨折」が3大骨折と言われている。

 

そんな転倒予防に重要な「バランス能力に対するリハビリ」について記載した記事は以下になる。

⇒『バランス運動(トレー二ング)を総まとめ!高齢者の転倒予防に効く!

 

 

廃用症候群に関する苦労話

 

リハビリ・看護・介護に従事している人達で廃用症候群を知らない人はいないだろう。

 

しかし一方で、現場で廃用症候群を十分に予防できることが可能とは限らない。

 

例えば、個人病院ではマンパワーの問題によって離床が不十分であったり(完全に寝たきりという訳でなく、ある程度元気にならなければ離床させないなど)、医師・看護師が「疾患の治療」に手一杯で、廃用症候群は二の次、三の次になっている場合もあったりする。

 

※個人病院でも規模が大きかったりすると、上記の問題は解消されている場合も多いかもしれないが・・

 

※病院内での苦労話は以下を参照⇒『一人職場の苦悩・・・・辞めたい時の選択肢

 

上記の問題は介護分野も同様であるが、「疾患」ではなく「人」にフォーカスしている場合が介護分野では多いという意味で、廃用症候群(生活不活発病)に対する理解は深い印をうける。

 

ただし、訪問リハビリとして自宅に出向くと、難しい問題に直面して悩むことも多々ある。

 

例えば、廃用症候群の予防に家族の協力が不可欠だと思って説明したとしても、(理解はしてもらえるが)非協力的な人達もいたりする。

 

※訪問リハビリの苦労話は以下を参照

⇒『訪問リハビリに対する不安や悩みをシェアします

 

 

関連記事:廃用症候群から生活不活発病へ

 

廃用症候群は生活不活発病とも呼ばれる。

 

そして、介護分野では「廃用による弊害」という表現より「生活不活発による弊害」というほうがイメージしやすいという事から、生活不活発病という用語を用いる向きも増えており、そんな生活不活発病について述べている。

 

この記事と重複する部分もあるが、ここでは記載しきれなかった内容も含まれているので、併せて観覧してもらえば「廃用(生活不活発)によって生じる弊害」、それに対する予防・リハビリへの理解も深まると思う。

 

生活不活発病の理解がリハビリに必須な件