この記事では、リハビリ(理学療法・作業療法)の対象にもなりやすい『関節拘縮』について記載していく。

 

廃用症候群と絡めての記載なため、廃用症候群自体については後述するリンク先も合わせて観覧してみてほしい。

 

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目次

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拘縮とは

 

まずは「拘縮とは何か?」について定義も含めて記載していく。

 

関節可動域の制限因子

 

関節の可動域は様々な原因によって制限を受ける可能性があり、具体的には以下が挙げられる。

 

・筋収縮(筋の反射的短縮、痙縮などによる制限)

・拘縮(器質的変化の起こった関節周囲軟部組織による制限)

・強直

・脱臼偏位

・関節遊離体

・・・・・・・・・・・・・・など。

 

その中で、リハビリ(理学療法・作業療法)で改善が期待できるのは「筋収縮」「拘縮」によって生じた可動域制限であり、この記事では更に拘縮にフォーカスを当てて記載していく。

 

 

拘縮とは

 

拘縮とは、関節周囲軟部組織の器質的変化によって生じる可動域制限を指す。

 

ただし、定義は厳密に定まっておらず、例えば以下などが言われている。

 

Edwardら:

「関節自体あるいは、その周囲にあって関節を支持している結合組織すなわち筋・腱および関節包などが短縮した状態」

 

Kraus:

「筋・腱・靭帯・関節包などが本来もっている弾性を失った状態をいい、他動的な伸張によっても正常の長さにならないこと」

 

博田:

「治療者が治療可能な関節包・靭帯・筋・腱などの短縮」

 

半田:

「軟部組織の変化により何らかのROMが制限された状態。それが原因でADLに支障をきたしている状態。保存的治療で回復の可能性が認められる状態。」

 

 

そんな中で、拘縮に関して一番しっくりくる表現を『書籍:関節可動域制限』より引用しておく。

 

一般に、関節周囲軟部組織が原因で生じた関節可動域制限を拘縮(contracture)と呼んでおり、その英語表記であるcontractureは、「contract=収縮する」という動詞を抽象名詞化した言葉で、 元来、拘縮とは、関節によって隣り合う2つの体部が筋収縮の結果,互いに相近づいた状態が継続していることと定義されていた。

 

しかし今日、拘縮は「皮間や骨格筋,腱,靭帯,関節包などの関節周囲軟部組織の器質的変化に由来した関節可動域制限」と定義されており、筋収縮由来の関節可動域制限は拘縮には含まれない

 

つまり、筋収縮が発生していない状況下で関節周囲軟部組織の特性である柔軟性・伸張性が低下し、これが原因となって関節可動域制限が認められると拘縮が発生していると結論づけることができる

 

 

拘縮と強直の違い

 

少し脱線話になるが、拘縮とセットで語られることの多い『強直』に関しては、以下の様に言われている。

 

伊藤:

「関節相対面の癒着により、他動的に関節が動かなくなった状態」

 

半田:

「関節面の結合織性癒着と骨性癒着によってROMが制限された状態。それが原因でADLに支障をきたしている状態。保存的治療で回復の可能性がまったく認められない状態」

 

 

そんな中で、前述した『書籍:関節可動域制限』では以下の様に記述されている。

 

関節構成体自体が原因で生じた関節可動域制限を強直(ankylosis)と呼んでいるが、先天性の骨癒合症や関節リウマチなどでみられる軟骨破壊後の骨性強直などの例外を除いては、関節周囲軟部組織と関節構成体の変化が合併している場合が多く、強直を拘縮と厳密に区分することは難しい。

 

そのため、他動関節可動域がほとんど、もしくは完全に消失した状態を強直と呼んでおり、臨床でみられる強直の多くは拘縮が進行した結果、生じたものである。

 

このように、強直は関節内外の組織が非可逆的変化に至っていると推察されるため、リハビリテーションでは改善は難しく、観血的治療の適応を考える必要がある。

 

 

拘縮の原因

 

拘縮の原因は以下などが挙げられる。

 

・拘縮は骨折後などのギプス固定

・痛み

・痙縮

・安静臥床

 

 

そして、これらに共通して言えるのは『関節運動の減少によって拘縮は発生する』ということである。

 

従って廃用症候群予防のリハビリとして、関節を動かすことに加えて、早期離床は何よりも重要となってくる。

 

日常生活活動能力が車いすレベルにある対象者に比して、立位・歩行レベルにある対象者のほうが身体活動は高いということは、誰しもが理解していることであろう。

 

つまり、日常生活活動能力が低いと関節運動の時間も少なくなり、結果的に関節の不動が惹起されることになる。

 

事実、いくつかの先行研究では共通して日常生活活動能力が低いほど関節可動域制限の発生やその程度が著しくなることを示しており、日常生活活動能力は関節可動域制限の発生要因としてきわめて重要である。

 

また、見方を変えれば関節可動域制限が日常生活活動能力の低下を引き起こす要因ということもできよう。

 

~書籍:関節可動域制限より~

 
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生活動作レベルと拘縮発生順序と拘縮予防の可能性

 

拘縮予防には、「関節を動かすこと」や「早期離床」が重要な点を前述した。

 

そんな生活動作レベルと拘縮発生順序については、以下の様に言われている。

 

歩行介助~立位自立レベル

足関節背屈

歩行不能~立位自立レベル

足関節背屈、股屈曲

歩行不能~立位介助~座位自立レベル

足関節背屈、股屈曲、ハムストリングス

立位不能~座位・起き上がり自立レベル

足関節背屈、股屈曲、ハムストリングス、膝伸展、股内旋、

座位介助~起き上がり介助レベル

足関節背屈、股屈曲、ハムストリングス、膝伸展、股内旋、股外転

座位、起き上がり、寝返り不能レベル

足関節背屈、股屈曲、ハムストリングス、膝伸展、股内旋、股外転

~福屋靖子: 成人中枢神経障害の在宅における生活動作と関節拘縮の関係について. 理学療法学, 21:90-93, 1994~

 

上記の文献によると、拘縮の発生と麻痺の重症度との相関関係は認められず、1/3以上は非麻痺側肢にも拘縮がみられた結果から、廃用症候群による関節拘縮の発生が示唆されたとしている。

 

一方で、拘縮発生部位の広がりは生活動作レベルの広がりに反比例してるという事も、この文献では言及している。

 

これらを踏まえた上での「拘縮予防を日常生活活動と絡めた場合のポイント」は以下の2つとなる。

 

・生活の中に含まれる動作の種類がい多いほど拘縮予防になる

・それらの頻度や時間が多いほど拘縮予防になる。

 

 

また、これらの行為は(自立レベルである必要はなく)介助レベルであっても、実施することで拘縮予防に貢献できる可能性がある。

 

つまりは、リハビリとして理学療法士・作業療法士が実施する『関節可動域訓練』も拘縮予防に貢献できるが、それ以外の時間における日常生活活動を通しても拘縮予防が可能であることを意味している。

 

従って、早期離床や家族による(介助を伴う日常生活活動)は、それだけで拘縮予防に繋がると言える。

 

 

関連記事

 

以下の記事は、拘縮も含めた『廃用症候群』のまとめ記事になる。

 

拘縮以外の廃用症候群についても言及しているので、こちらも参照すれば廃用症候群の理解が深まると思う。

 

廃用症候群の恐怖!{高齢者のリハビリ/看護/介護で必須の知識}

 

 

また、この記事では拘縮の予防について廃用症候群と絡めて記載してきたが、拘縮に対するリハビリ(理学療法・作業療法)そのものに関して知りたい方には、以下の記事が参考になると思う(ただし少し専門的な内容になるが)。

 

エンドフィールで治療選択

 

「関節可動域の制限因子」と「関節可動域運動」の基礎知識