この記事は、『深部反射のテスト』についてまとめた記事である。

 

『反射』自体については、記事の最後のリンク先『反射検査(深部・表在・病的反射)まとめ一覧』も合わせて観覧してみてほしい。

※腱反射以外も含まれているが、それらも含めてこの記事では「深部腱反射」と表現して記載。

 

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目次

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深部腱反射のポイント

 

腱反射が左右対象であるか:

正常者でも腱反射は亢進あるいは消失していることは珍しくないため、、左右差を確認する。

左右共に亢進している際は、更に病的反射(バビンスキー反射など)を評価した結果として、錘体路の両側性障害(脳幹・脊髄障害など)の可能性などを考える材料となったりもする。

 

リラックスしてもらう:

被検者には楽な姿勢をとらせて全身の力を入れてリラックスしてもらう。

一方で、反射の出にくい人に対して、検査部位以外に敢えて(等尺性収縮などで)力を入れてもらい、反射を起こしやすくすることがあり『増強法』とも呼ばれる(基本はリラックス状態で検査)。

 

必要に応じて、腱の上に母指などを当てて、手指を介して腱を叩く:

・不快な疼痛刺激を与えないため

・母指などを介して腱を叩くことで、反射が減弱して関節運動が起こらなくとも、収縮の有無を確認することができる。

 

 

深部腱反射検査における打腱器(打診器)の使い方

 

反射検査の際に打腱器を使用するコツは『適当な強さの衝撃を急速に与えること』である。
打腱器,叩き方

左図⇒打腱器を軽く握り、手首の力を抜いて、図のように叩く。

 

右図上⇒良い方法例(打腱器を母指と示指の間で持ち、手首のみを使う。このようにすればハンマーの先端に速度が加わる)

 

右図下⇒悪い方法例(手で強く握って腕で叩くと、力ばかり必要で、速度が加わらない)

 

打腱器(打診器)を探している人は以下も参照。

深部腱反射の種類

 

深部反射検査の種類としては以下などがある。

・下顎反射

・後頭屈反射

・上腕二頭筋反射

・上腕三頭筋反射

・腕橈骨筋反射

・回内筋反射

・胸筋反射

・膝蓋腱反射

・アキレス腱反射

・下肢内転筋反射

 

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下顎反射

 

下顎反射の意義:

亢進の場合は、橋の三叉神経核より上位に病変があることを疑う反射

 

下顎反射の方法:

座位

被検者の口を軽く開口させ、被検者の下顎に検者の示指を当てる。

下顎に当てた検者の示指を打腱器でたたく。

深部反射 下顎反射

 

下顎反射の判定基準:

両側に咬筋の収縮が起こり、下顎が(閉口方向へ)上昇した場合、陽性と判定する。

※ただし、正常ではほとんど この反射は観察できない

 

 

後頭屈反射

 

後頭屈反射の意義:

陽性の場合は、延髄より上位で両側錘体路の障害があること(筋萎縮性側索硬化症など)を疑う。

 

後頭屈反射の方法:

座位。

被検者の頭部を軽度屈曲させ、首の力を抜くように指示をする。

検者の示指を被検者の上唇中央やや上に当てる。

上唇中央やや上に当てた検者の示指を打腱器で叩く。

深部反射 頭後屈反射

 

後頭屈反射の判定基準:

頭部の屈曲が起こった場合、陽性と判定する。

 

 

上腕二頭筋反射

 

上腕二頭筋反射の意義:

C5~6レベルの反射弓、もしくはその髄節より上位の錘体路障害を検査する。

例えば、亢進していれば頸髄5~6よりも中枢側の病変があると推定したり、逆に低下していれば末梢神経か頸髄5~6あたりの病変を考える・・・・など。

 

上腕二頭筋反射の方法:

背臥位 or 座位

被検者を肩関節を軽度外転・肘関節屈曲位とし、前腕を軽く回外させ、上肢の力を抜くように指示する。

検者の母指を被検者の上腕二頭筋腱に当てる。

上腕二頭筋腱に当てた検者の母指を打腱器で叩く。

深部反射 上腕二頭筋反射

 

上腕二頭筋反射の判定基準:

消失(-)       ⇒反射が得られない。

低下(±)       ⇒関節運動を伴わないわずかな筋収縮

正常(+)       ⇒若干の肘関節屈曲が認められる軽度の筋収縮

亢進(++)      ⇒肘関節屈曲が認められる

顕著な亢進(+++)⇒著明な肘関節屈曲が認められる。

 

※増強法⇒歯を食いしばるなど

 

 

上腕三頭筋反射

 

上腕三頭筋反射の意義:

C6~8レベルの反射弓、もしくはその髄節より上位の錘体路障害を検査する。

例えば、亢進していれば頸椎6~8よりも中枢側の病変であると推測したり、逆に低下していれば頸髄6~8あたりの病変か橈骨神経(末梢神経)の病変を考える・・・・など。

 

上腕三頭筋反射の方法:

背臥位 or 座位

検者は被検者の前腕を軽くつかみ、肘関節軽度屈曲位をとらせ、上腕の力を抜くように指示をする。

肘頭すぐ上の上腕三頭筋腱を打腱器で叩く。

深部反射 上腕三頭筋反射

 

上腕三頭筋反射の判定基準:

消失(-)       ⇒反射が得られない。

低下(±)       ⇒関節運動を伴わないわずかな筋収縮

正常(+)       ⇒若干の肘関節伸展が認められる軽度の筋収縮

亢進(++)      ⇒肘関節伸展が認められる

顕著な亢進(+++)⇒著明な肘関節伸展が認められる。

 

※増強法⇒歯を食いしばるなど

 

 

腕橈骨筋反射

 

腕橈骨筋反射の意義:

C5~6レベルの反射弓、もしくはその髄節より上位の錘体路障害を検査。

例えば、亢進すれば頸髄5~6よりも中枢側の病変であると推測したり、逆に低下していれば、頸髄5~6あたりの病変か橈骨神経の病変を考える・・・・など。

 

腕橈骨筋反射の方法:

背臥位 or 座位

被検者を肘関節屈曲位、前腕回内・回外の中間位または軽度回内位にさせ、上肢の力を抜くように指示する。

橈骨下端を走行する腕橈骨筋を(前腕と垂直に)打腱器で叩く。

深部反射 腕橈骨筋反射

検者の母指を被検者の橈骨下端に当て、その母指を介して叩いても良い。

 

腕橈骨筋反射の判定基準:

消失(-)       ⇒反射が得られない

低下(±)       ⇒関節運動を伴わないわずかな筋収縮

正常(+)       ⇒若干の肘関節屈曲が認められる軽度の筋収縮

亢進(++)      ⇒肘関節屈曲が認められる

顕著な亢進(+++)  ⇒著明な屈曲が認められる

 

 

回内筋反射

 

回内筋反射の意義:

C6~Th1レベルの反射弓、もしくはその髄節より上位の錘体路障害を検査する。

 

回内筋反射の方法:

背臥位 or 座位

被検者に上肢の力を抜くように指示する。

橈骨下端掌側面を走行する回内筋を(前腕と垂直に)打鍵器で叩く。

深部反射 回内筋反射

検者の母指を被検者の橈骨下端掌側面に当て、母指を介して叩いても良い。

 

回内筋反射の判定基準:

消失(-)       ⇒反射が得られない

低下(±)       ⇒関節運動を伴わないわずかな筋収縮

正常(+)       ⇒若干の前腕回内が認められる

亢進(++)      ⇒著明な前腕回内が認められる

 

 

胸筋反射

 

胸筋反射の意義:

C5~Th1レベルの反射弓、もしくはその髄節より上位の錘体路障害を検査する。

 

胸筋反射の方法:

背臥位

被検者の上肢を軽度外転させ、大胸筋の停止部にある腱に検者の母指(あるいは示指・中指)を当てる。

大胸筋の停止部位に当てた検者の母指(あるいは示指・中指)を打腱器で叩く。

深部反射 胸筋反射

胸筋反射の判定基準:

消失(-)       ⇒反射が得られない。

低下(±)       ⇒関節運動を伴わないわずかな筋収縮

正常(+)       ⇒若干、上肢の内転・内旋が認められる軽度の筋収縮

亢進(++)      ⇒上腕の内転・内旋が認められる。

顕著な亢進(+++)  ⇒著明な上腕の内転・内旋が認められる。

※この反射は、正常では出現しにくく、出現しても現象が軽度なため判定が難しい。

 

 

膝蓋腱反射

 

膝蓋腱反射の意義:

L2~4レベルの反射弓、もしくはその髄節より上位の錘体路障害を検査する。

例えば、腰髄2~4より上位の病変で亢進し、腰髄2~4あたりの病変あるいは大腿神経の病変で低下する・・・・など。

 

膝蓋腱反射の方法:

背臥位で実施する場合には、被検者の膝関節30~50°屈曲させた肢位で行う

座位で行う場合は、下腿を椅子から垂らした肢位で実施する。

膝蓋腱に当てた検者の指を打腱器で叩く。

深部反射 膝蓋腱反射

※検者の示指を被検者の膝蓋腱に当てる、示指を介して叩いても良い。

※手指を介して腱を叩くことで、反射が減弱して関節運動が起こらなくとも、収縮の有無を確認することができる。

 

膝蓋腱反射の判定基準:

消失(-)       ⇒反射が得られない。

低下(±)       ⇒関節運動を伴わないわずかな筋収縮

正常(+)       ⇒若干の膝伸展が認められる軽度の筋収縮

亢進(++)      ⇒膝伸展が認められる

顕著な亢進(+++)⇒著明な膝伸展が認められる

 

※増強法としては、被検者に自分の両指を組み合さて力いっぱい引っぱらせる(等尺性収縮)が挙げられる方法が挙げられる。

ジェンドラシック法

 

下肢内転筋反射

 

下肢内転筋反射の意義:

L3~4レベルの反射弓、もしくはその髄節より上位の錘体路障害を検査する。

 

下肢内転筋反射の方法:

背臥位。

被検者の下肢を軽度外転にさせる。

検者の示指および中指を被検者の大腿骨下端内側に当てる。

大腿骨下端内側に当てた検者の示指および中指を打腱器で叩く。

深部反射 下肢内転筋反射

※手指を介して腱を叩くことで、反射が減弱して関節運動が起こらなくとも、収縮の有無を確認することができる。

 

下肢内転筋反射の判定基準:

消失(-)       ⇒反射が得られない。

低下(±)       ⇒関節運動を伴わないわずかな筋収縮

正常(+)       ⇒若干の股関節内転が認められる軽度の筋収縮

亢進(++)      ⇒股関節内転が認められる

顕著な亢進(+++)  ⇒著明な股関節内転が認められる。

 

※増強法としては、膝蓋腱反射と同様な上肢筋の等尺性収縮を用いる。

 

 

アキレス腱反射

 

アキレス腱反射の意義:

L5~S1レベルの反射弓、もしくはその髄節より上位の錘体路障害を検査する。

 

アキレス腱反射の方法:

背臥位 or 座位。

座位で行う場合は、下肢を治療台から垂らした状態。

背臥位で行う場合には、被検者の股関節軽度外転・外旋、膝軽度屈曲(膝下に検者の膝を入れる)させた状態。

検者は足底を押すことで足関節を軽度背屈させることで、適度に筋を緊張させる。

その状態で、アキレス腱を直接打腱器で叩く。

深部反射 アキレス腱反射2

 

アキレス腱反射の判定基準:

消失(-)       ⇒反射が得られない。

低下(±)       ⇒関節運動を伴わないわずかな筋収縮

正常(+)       ⇒若干の足関節底屈が認められる軽度の筋収縮

亢進(++)      ⇒足関節底屈が認められる

顕著な亢進(+++)  ⇒著明な足関節底屈が認められる。

 

※増強としては以下がある。

・膝蓋腱反射テストと同様に、座位で上肢の等尺性収縮を用いる方法。

・膝立ち位にて足部を治療台から出した状態での方法。

深部反射 アキレス腱反射

 

 

脳卒中片麻痺におけるブルンストロームステージと腱反射の関係

 

腱反射は臨床上、重要な意味を持つ。

 

反射の程度によって上位中枢神経系の回復状態を推察することが出来るからだ。

 

筋緊張は弛緩状態であっても、腱反射が亢進している場合がみられるこの状態は、その筋の緊強が今後高まり、随意運動の回復の可能性を示唆している。

一方で、筋の緊張が運動を阻害するほど増大することが懸念されるので、その抑制を念頭に置きながら分離運動パターンの練習が重要となってくる。

腱反射とブルンストロームステージのの関係は以下の通り。

~伊藤 直禜:ブルンストローム・アプローチ,理学療法ハンドブック,第2巻 治療アプローチ より画像引用~

 

 

※患者は枠Aの状態が理想とされる。

 

※例えば患者がaの状態であるとすると、Aの方向に到達するようにアプローチすることとなる。

 

※stageⅡから次にⅢに進むとは限らない。むしろ、同じstageにとどまることも多いがAの方向に向けて手を尽くすことになる。(具体的にはstageⅡの段階においても坐位動作において、股関節内旋の片鱗を捜しだし、これを引きだしていくなど)。

 

関連記事

⇒『ブルンストロームステージ(脳卒中片麻痺の回復過程)と評価方法まとめ

 

 

異常筋緊張と深部腱反射の関係

 

以下の図は「脳卒中片麻痺の痙縮」や「パーキンソン病の固縮」「末梢神経障害」などにおける異常筋緊張と深部腱反射の関係を分かり易く示している。

 

 

 

整形外科的疾患における深部腱反射

 

椎間板ヘルニアや変形性関節症などで神経根が絞扼されると、深部腱反射が減弱する。

 

以下は、それらを分かり易く示したイラストなので活用してみてほしい。

 

 

 

関連記事

 

以下の記事は、反射検査の概要や検査などの総まとめ記事である。

この記事と合わせて観覧することで反射検査への理解が深まると思う。

 

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