この記事では、クライアントが有している「記憶バイアス」を必ず修正すべきかどうかを考察していく。

ポジティブな記憶バイアスを有している可能性

 

前回の記事で、慢性痛を有したクライアントは「負の記憶バイアス」を有している可能性があり、
例えば再評価の際に改善傾向がどの程度か問診しても、ポジティブな要素があるにもかかわらず、抜け落ちてしまっている可能性があることを記載した。

 

そうなると、実際には改善傾向にもかかわらず、「全く良くなっていない」などと、客観的事実とは異なった返答が返ってくる可能性もあり得る。

 

そして、この様な認知バイアスへの対策として、家族へも話を聞ける環境であれば、(家族は客観的な事実を記憶している可能性が高いため)積極的に問診へ参加してもらうことが有効となり得ることも付け加えた。

 

一方で、クライアント本人から「痛みが改善された」とポジティブな発言がある一方で、家族は「改善されたと本人は言っていますが、良くなっていない気がします」などの逆なパターンも有り得る。

 

※慢性痛が有する記憶バイアスが必ずしもネガティブであるとは限らない

 

このパターンでは、ポジティブな記憶バイアスによって、客観的事実と異なった記憶を有しているということになる。

 

あるいは、単にセラピストに気を使っているだけかもしれないが・・・・・・・・。

 

いずれにしても、客観的事実とクライアントの発言が異なるのであれば、それは負の認知バイアスと同様に修正すべきなのだろうか?

 

 

記憶バイアスは修正しなくて良い場合もある

 

一概には言えないが、認知行動療法の観点からは、ポジティブな認知バイアスを有しているのであれば、修正しないほうが良いケースもある。

 

これは、このブログや関連サイトを観覧して下さっている方なら何となく分かってもらえると思うが、
例として通所サービスにおける『歩行スピード」・『TUG』・『ファンクショナルリーチ』などのテストを実施することによる運動機能の効果判定で考えてみる。

 

利用者さん本人は「通所サービスに通って運動に励むことで、自分は速く歩けたり、バランスが良くなったりしている」とポジティブにとらえて頑張っているとする。

 

そして、そんな利用者さんに対して上記のテストを実施して「○○さんは元気になっていると思い込んでいるかもしれないが、実際の体力測定結果としては以前よりも悪くなっているようです」と客観的事実を告げるとする。

 

すると、利用者さんにはどの様な影響をもたらすかということだ。

 

 

認知バイアスを修正するか否かは、非適応認知かどうかで決まる

 

誤解してほしくないのは、あくまで「本人がポジティブにとらえているにも関わらず、ネガティブな客観的事実を突き付けること」が良くないケースも存在するということであり、一概には言えないという点だ。

 

例えば、中枢神経系の優位性が低い場合は、
再評価における問診の段階で、客観的事実として前回に定めたベースラインから改善傾向か・変化がないのか・悪化しているのかをハッキリとさせておかなければ、その日の評価や臨床推論が難しくなり、アヤフヤな治療になってしまう可能性がある。

関連記事⇒『HP:クリニカルリーズニングの前提条件とは

 

兎にも角にも、「認知バイアス=必ず修正しなければならないもの」ではなく、「非適応認知となっている場合の認知バイアスは修正すべき」という点を履き違えてはいけないということになる。

関連記事⇒『ブログ:適応認知と非適応認知