クライアントの症状に対して、医師が何らかの手段を講じることで「この治療で改善がみられた場合は原因確定」、あるいは「この治療改善がみられない場合は別に原因を求める」といった推論に活用する治療を『診断的治療』と呼びます。

 

例えば、以前に投稿した 『認知行動療法は慢性腰痛に効果があるのか?』の中で出てきた「腰椎分離部に対するブロック注射」は、腰痛の原因が腰椎分離部にあるのかどうかを確認するための『診断的治療』ということになります。

 

今回は、そんな医師が行う診断的治療について、「気管支ぜんそく」を例にして、記載していきます。

 

呼吸苦を訴えているクライアント

 

20代の女性が呼吸苦を訴えて病院を訪れました。

 

この女性は気管支ぜんそくの持病があるようです。
※この時点で医師は「喘息の持病があり、なおかつ息苦しさを訴えている場合は、圧倒的に喘息発作である可能性が高い」とのエビデンスから、気管支喘息である可能性の優先順位を1番目に持ってきます。

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そして診察室で、酸素飽和度、呼吸の状態(呼吸数や深さ)、呼吸音(聴診器で)など、簡便に行える評価を実施していくことになります。

 

※ここで、喘息で特徴的な呼吸音(呼気終末の雑音)が認められれば、気管支喘息の発作である可能性が一段と高まります
(極端な表現では、ヒューヒュー・ゼーゼーみたいな感じ)。

 

しかし、(酸素飽和度の低下は認められたものの)特徴的な呼吸音は認められない場合は、喘息発作だと確定することが出来ません。

 

そうなると医師は、サイレントチェスト(silent chest)の切り口からリーズニングしていきます。

 

サイレントチェストとは「気管支喘息が重症化して雑音がほとんど聞こえなくなることがある」という事を意味する言葉です。

 

したがって、雑音がはっきり聞こえない場合、医師は以下の2択を迫られます。

 

  • クライアントの症状は気管支喘息が重症化が原因だ

 

  • クライアントの症状は気管支喘息とは別の原因で起こっている

 

 

そして、どちらが正解かを確かめるための手段が「診断的治療」となり、この際に用いられる診断的治療は「ステロイドの点滴投与」や「気管支拡張薬の吸入」です。

 

これらは気管支喘息の発作に反応する治療なため、
これらの治療で改善されれば呼吸苦の原因が「気管支喘息の発作」で確定され、
もし改善されなければ気管支喘息が原因である可能性が除外され、別の可能性に対する臨床推論に注力することが可能となります。

 

この様に診断にも活用する治療を「診断的治療」と呼び、まず治療から始め、その反応を見ることが診断にも役立つということになります。

 

 

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理学療法における「評価と治療を兼ねた手法」は『試験的治療』などと呼ばれます。

 

例えば、可動域制限を有した関節に対して「PIRを含めた等尺性収縮後弛緩テクニック」を実施するという事は、
「PIRで改善すれば、可動域制限の原因は筋の反射的短縮」、「改善されないのであれば、反射的短縮以外の原因」という風に
「治療にも使えると同時に、評価にも使える」という意味で『試験的治療』と表現することも可能です。

 

等尺性収縮後弛緩テクニックを網羅します

 

 

また、マッケンジー法におけるメカニカルは負荷は、更に「診断的治療」に近い意味合いを持ってきます。

※ただし、マッケンジー法における評価の意味合いは「疾患の鑑別」ではなく「機能による分類」となります。

 

理学療法士は機能不全(機能障害・機能異常)に着目すべき!

 

マッケンジー法の概要を認定セラピストが分かりやすく解説!