この記事では関節リウマチの治療(リハビリも含む)の概要を記載していく。

 

関節リウマチとは

 

関節リウマチは自己免疫疾患の一つである。

 

免疫とは?

 

免疫とは、本来は自分を守るために体に備わっているシステムのことで、このシステムがあるおかげで、私たちは細菌やウィルスなどが外部から侵入してきても、それを攻撃・排除して病気にならないように出来ている。

 

外から入ってくる外的は「抗原」、それを攻撃し排除する物質は「抗体」と呼ばれ、抗体は白血球でつくられ、おかしなものがあると自分のものではない異物(非自己)かどうかを見極め、異物だけを排除するよう働く。

 

ところが、自分の体を形づくっている細胞や成分を間違って異物とみなして、それに反応する抗体(自己抗体)やリンパ球(自己反応性リンパ球)が出来てしまうことがある。

 

こうなると、自分で体の成分を攻撃したり、排除するようになり、その結果さまざまな症状が起こるようになる。

 

症状の中の一つに疼痛・こわばり・変形があるが、これは自分を攻撃する異常な免疫活動が関節の滑膜に起こった結果、滑膜に炎症が生じることに起因する(炎症とは免疫システムによる防御作用で、本来は体内に発生した異常を修復するといった働きがある)。

 

自己免疫疾患を起こす原因は下記の様に様々言われており、これらが複雑に絡み合って発症すると考えられている。

 

  • 遺伝
    なりやすい体質や素因を受け継ぐことがあるとされる。
  • 感染
    ある種のウィルスに感染すると、抗体を作るリンパ球の活動が活発になると考えられている。
  • 女性ホルモン
    女性ホルモンは、自己抗体の働きや、免疫反応を促す物質(サイトカイン)を活性化させやすいと考えられている。
  • 薬物や化学反応
    体内に入った物質が体の成分と結合し、その成分が変化すると、自分の成分なのに異物として認識されてしまい、自己免疫反応が起こることがある。
  • ストレス
    精神的なストレスだけでなく、外傷や外科的手術、妊娠・出産などの身体的ストレスも、自己免疫反応のリスク因子になる場合がある。

・・・・・・などなど。

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関節リウマチの進行プロセス

 

関節症状の進行機序として、まず何らかの刺激(ウィルス感染などなど)をきっかけにして、自己反応性のリンパ球が滑膜へと流れつくところから始まる。

 

  • 自己反応性リンパ球は、滑膜のたんぱく質を抗原とし、それに対する抗体をうみだして、抗原・抵体複合体をつくります。これが免疫細胞の標的になる。

  • 滑膜には、免疫細胞(T細胞を中心としたリンパ球やマクロファージなど)が入り込んでいく。
    ※T細胞は、滑膜のタンパク質成分の受容体を持っているため活性化されて勢いづき、滑膜の細胞と刺激し合って「炎症メディエーター」と呼ばれるサイトカインなどの物質を大量に作り出す。
    ※炎症メディエーターの「メディエーター」は調停者、媒介者といった意味がある。損傷した組織や炎症を起こした部位に放出される生理活性物質のことで、サイトカイン・プロスタグランディン・補体など様々な種類がある(その中に特に関節リウマチの炎症に関与する「炎症性サイトカイン」がある)。
    ※炎症性サイトカインには、血管を作らせたり、リンパ球を関節に向かわせたりT細胞や滑膜細胞を活性化するといった働きがある。また、破骨細胞を活性化させる働きもある。免疫異常によりサイトカインが過剰になる結果、免疫細胞を過剰に呼び集め、サイトカインとそれらの免疫細胞が合体して、滑膜を攻撃し、炎症を激化させる。また、関節内で過剰になったサイトカインが関節破壊も起こす。
    ※このサイトカインの働きを抑える薬を生物学的製剤と呼ぶ。

  • そこでは新たな血管が作られ、その血流に乗って、さらに多くの免疫細胞がやってくる。

  • それらの免疫細胞がやってきて更に多くのサイトカインを作り出す。

 

 

こうした活動によって傷つき炎症を起こした滑膜からは、おびただしい量の炎症を活性化させる物質であるサイトカインが分泌され、炎症症状(疼痛・腫脹・熱感など)を起こす。

 

また、症状が進むと軟骨の破壊が始まる。

 

炎症細胞やサイトカイン、骨を溶かす酵素などの有害物質は、関節の骨や人体、筋肉へ広がり、更には血液に乗って全身に及び、様々な障害を起こすようになる。

 

以上が、一般的に言われている関節リウマチの大まかな進行プロセスとなる。

 

 

最近の関節リウマチの現状

 

新しい治療薬の登場で、関節リウマチは、早期に発見・治療すれば、「完治」とはいかないまでも、「寛解状態」になることが可能となった。

 

「寛解状態」とは、関節リウマチと診断されても、関節の痛みや腫れなどの症状が少なく、検査の数値も安定し、日常生活も問題なく送ることの出来る状態を指す。

 

その人に適合した薬を使用することが出来れば、およそ7割の患者にとって「寛解状態」が可能だとも言われている。

 

しかし、その為には下記の2点が重要となってくる。

  1. 早期診断
  2. 治療効果の高い薬を早期から使用する

 

①に関して、2010年にヨーロッパリウマチ学会とアメリカリウマチ学会が、関節リウマチの新しい診断基準を発表した(厳密には、他の病気と関節リウマチを見分ける「分類基準」として発表されている)。

 

従来の関節リウマチの診断基準はある程度関節破壊が進行しないと関節リウマチの診断がつかないものであり発見が遅れることが多かった、日本でも早期発見を目的にこの新基準を採用している。

 

①一つ以上の関節に腫れや痛みがある

↓Yes

②他に当てはまる病気のないことが明らか

↓Yes

下記のスコアリング(点数表)で合計6点以上

↓Yes

関節リウマチと診断

 

 

スコアリング

点数

腫れまたは痛みのある関節の数

大関節の1か所

0

大関節の2~10か所

1

小関節の4~10か所

2

小関節の

3

最低1つの小関節を含む11か所以上

5

血液検査による免疫異常

リウマトイド因子、抗シトルリン化ペプチド(CCP)抗体の両方が陰性

0

リウマトイド因子、抗CCP抗体のいずれかが低値陽性(正常値上限の3倍まで)

2

リウマトイド因子、抗CCP抗体のいずれかが高値陽性(正常値上限の3倍超)

3

血液検査による炎症反応

CRP、赤血球沈降速度(ESR)の両方が正常

0

CRPESRのいずれかが異常値

1

症状の持続期間

6週間未満

0

6週間以上

1

 

血液検査では診断に必要な ①免疫異常 ②炎症反応 について調べることが出来る。

 

特に炎症反応は、診断を確定する際だけでなく、治療が始まってからも定期的にこれらの炎症反応を示す数値を見て、薬がきちんと聞いているかどうかを判断するためにも用いられるため、理学療法士にとっても重要な指標である。

 

ここでは、炎症反応でも特に大切な2つの指標について記載する。

 

  • 赤血球沈降速度(ESR):
    血液中の赤血球が沈むスピードを計る。
    方法としては、血液が固まらないように凝固剤を加え、静止したガラス管の中で赤血球の沈降速度(1時間あたり)をしらべる。
    関節リウマチの活動性が高いと赤血球沈降速度は速くなる。

 

  • CRP(C反応性たんぱく):
    急性期反応物質(炎症に関わるタンパク質)の一つ。
    炎症性サイトカインが増えると、肝臓を刺激して急性期反応物質を産生するが、とくにこのCRPは、ある期間に著しく増加するため、強い炎症が起きていることが分かる。
    一般的に、炎症の起こっている関節が多いほど、また、その関節が大きいほどCRPの値は高くなる。

 

 

関節リウマチの治療のゴール

 

治療の最終的なゴールは下記の3つの「寛解」を指す。

 

  • 臨床的寛解:

    関節の痛みや腫れもなく、検査の値も一定以下である状態

 

  • 構造的寛解:

    エックス線撮影などの画像診断で、新たな骨破壊が見当たらず、関節破壊の進行が抑えられている状態。

 

  • 機能的寛解:

    日常の生活面で体の動きが健康な人と同じ程度まで回復し、QOLが改善されている状態。

 

※寛解は、薬が効いている状態で達成されるため、通常「寛解状態」に至っても服薬は継続する。

 

※何年かにわたって寛解状態が維持できた時に限り、医師と患者との合意の上で服薬を中止し、それでも寛解状態が維持できるかどうかを診る。

 

※また、薬物療法を中止した場合も、病気の活動性が再び高まっていないかどうかチェックするために定期的に受診する必要がある。

 

 

関節リウマチに対する4つの治療方法

 

治療としては、以下の4つが基本軸となる。

  • 基礎療法
  • 薬物療法
  • リハビリテーション
  • 手術

 

 

基礎療法

 

病気を理解し、日常生活を管理しながら治療に取り組む。

 

  • 炎症が激しい時は安静に
  • 関節の保護(正座をしない・重たいものを持たないなど)
  • 環境整備(正座をしないためにベッド導入・手すり・スロープなど)
  • 冷え対策
  • 運動
  • 笑ったりと精神状態を安定化させる。

 

 

薬物療法

 

関節リウマチの関節破壊の進行に関して、従来は発症後7・8年経過してから徐々に進むと考えられてきた。

 

しかし、1980年代に行われた多くの研究で、関節リウマチ患者の関節びらんの個数を、時間を追って調べたところ「発症から2年間に急激に増える」ということが分かった。

 

その後も世界中でこのことを裏付ける調査結果が次々と発表され、今では、初期に関節破壊の進むスピードはその後の5倍であると考えられている。

 

つまり、関節リウマチの進行を抑えるには発症からの2年間、しかも出来る限り早い時期であればある程チャンスが大きいということが言える(診断がついてから3か月以内の投薬開始が望ましいとされる)。

 

そこで、この時期を「window of opportunity=好機=治療効果の最も高い限られた時間」と呼ぶようになった。

 

現在では、関節リウマチの治療を効果的に行うには以下の3要素が基本となる。

  1. 診断後速やかに抗リウマチ薬の投与を開始する
  2. 薬物の効果を少なくとも3か月ごとに見直す
  3. 見直しを治療目標が達成されるまで続ける

 

また、これらのことを踏まえて、薬の処方方針が下記のように変化した。

 

従来の薬物療法

 

まずは痛みや炎症の症状を緩和させる非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)を服用ながら経過観察しつつ、病状の悪化が明らかになった時点で副作用が少なく効き目もマイルドな抗リウマチ薬を加え、それでも効果がなければ徐々に強い薬を投与するというピラミッド方式の治療

 

 

現在の薬物療法

 

リウマチと診断された時点の早期から強い薬をしばらく服用した後、炎症の改善効果が確認され、寛解状態が維持できるようであれば、徐々に効き目の弱い(副作用の少ない)薬に変えていくステップダウン方式の治療

 

※ただし、この方式では最初から強い薬を使うため、副作用に注意する必要がある。また、患者自身が、こうした薬の使い方を含めた治療方針、及び薬の知識を理解した上で、生活全般をコントロールすることが不可欠。

 

例:まずは免疫抑制薬を投与。

⇒効果がなければ生物学的製薬や他の免疫抑制薬へ切り替える。

⇒効果があれば免疫調整薬などマイルドなものに変更していく。

 

 

リウマチ治療に使用される薬剤

 

リウマチ治療に用される薬剤は種類は、「抗リウマチ薬」・「生物学的製剤」・「ステロイド薬」「非ステロイド性抗炎症薬」に分類される。

 

  • 抗リウマチ薬

    関節リウマチは免疫機能の異常によって生じる病気であり、この免疫機能に働きかけて病気の活動性を下げる薬を総称して「抗リウマチ薬」と呼び、『免疫抑制薬』と『免疫調整薬』がある。

    免疫抑制薬は、体中の免疫や陽を押さえて、関節内での免疫動きも弱めようとする薬で、強力に作用する。中等症~重症の人に用いられることが多い。

    免疫調整薬は、正常な免疫機能には影響せず異常を起こしている免疫機能に働きかける薬で、おだやかに作用するタイプ。免疫抑制薬に比べて副作用が少ない。軽症の人に用いられることが多い。

 

  • 生物学的製剤

    抗リウマチ薬が、「免疫反応をコントロールする(もので関節破壊の進行を遅らせることが出来ても止めることはできない)薬」なのに対して、関節の炎症と破壊を「確実に封じ込めることのできる薬」のが生物学的製剤である。

    具体的には、炎症性サイトカインをピンポイントで制御し、関節破壊自体を止める薬であり、この薬を利用した治療法は「サイトカイン療法」とも呼ばれる。
    リウマチ先進国のアメリカでは初期段階から生物学的製剤を抗リウマチ薬と併用することが主流となっており、これによりリウマチの寛解率が上がり寿命も延びるとされている。

    しかし、下記のようなデメリットもある。

    ・認可されてからあまり年月がたっていないため長期使用による安全性が未知数(報告されている副作用としては、細菌性肺炎・間質性肺炎・結核・悪性リンパ腫などがあり、薬の影響により免疫力が低下することが原因と考えられる)。

    薬価が高く、患者の金銭的負担が大きい。

 

  • ステロイド薬

    ステロイドは副腎から分泌されるホルモンで約50種類あり、その中の一つであるコルチゾールというホルモンを人工的に合成したものがステロイド薬である。

    ステロイド薬は炎症性サイトカインや痛み物質のプロスタグランジンが合成するのを抑制することで、抗炎症・免疫抑制作用を発揮する。

    その効果は非常に強力であるが、下記のような副作用があることに注意する。

     

    ①服薬を中止すれば改善する軽い副作用

     ・ムーンフェイス(顔が満月のように丸くなる)

    ・中心性肥満(体幹に脂肪がついて手足が細くなる)

    ・食欲不振or異常な食欲増進、体重増加、むくみ、高血圧、多汗、不眠など

    ※これらはステロイド薬の量を減らすか、使用を中止すれば自然に改善される

     

    ②注意を要する重い副作用

     ・免疫力低下による感染⇒肺炎や肺結核

     ・骨粗鬆症

     

    ステロイド薬の服用を急にやめると、下記のような「ステロイド離脱症」が起きることがある。

    ○発熱・倦怠感・めまい・吐き気・血圧低下によるショック状態

    これは長期にわたってステロイド薬を服用することにより外からステロイドホルモンが補給されることに体が慣れてしまい、副腎皮質が怠けてホルモンを作らなくなることに起因する。そうした状態で、外部からのステロイドの供給が急に無くなると、体をより良い状態に維持するために必要なステロイドが一時的に得られなくなり、眩暈や吐き気などを引き起こすのである。

    関連記事⇒『ステロイド薬:超強力だが副作用もある諸刃の剣

 

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:エヌセイド)

    非ステロイド性抗炎症薬は、解熱・鎮痛・消炎のために使われ、長い間、関節リウマチを治療する第一の選択薬だった。現在の関節リウマチ治療は抗リウマチ薬を中心に方針を立てるようになったが、NSAIDsは、痛みを止める薬として、以前として関節リウマチの治療に欠かせないものである。

    関連記事⇒『非ステロイド性抗炎症薬:世界で最も売れている鎮痛薬

 

リハビリテーション

 

  • 関節を守り、機能を維持する。
  • 運動療法(関節の柔軟性を保ち、筋力を維持・増強する(リウマチ体操など)
  • 理学療法(温熱療法や音波などで関節を温めたり、筋肉を刺激する)
  • 作業療法(生活の動作を見直し自立を促す)
  • 装具療法(装具で関節の変形を予防・矯正し、保護する)

 

これらのリハビリを通して、前述した基礎療法へどんどん反映していくことが大切。

 

つまり患者の自主性・主体性があって初めてリハビリテーションは効果を発揮する。

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手術療法

 

痛みを和らげ、失われた運動機能を回復させる。

 

 

療養生活の7つのポイント

 

  1. ストレスをためず、安定した精神状態で過ごす

    ※イライラ・クヨクヨは病気を悪化させる。

     

  2. 住まいの環境を整える。

    ※段差を少なくし、関節への負担を少なくする自助具なども活用する。

     

  3. 運動と安静の両方が大切

    ※1日の間で、体を動かす時間と休める時間を配分する。睡眠は十分に。リウマチ体操は毎日少しずつでも続ける。

     

  4. 冷え、湿気には要注意。関節の痛みや、腫れを強めてしまう。

    ※夏の冷房は控えめに、自然の風と良く通しする。

     

  5. バランスの良い食事を、三食規則正しく。

    ※良質なたんぱく質やビタミン、ミネラルの豊富な食品をとりましょう。お酒は控えめに、タバコは辞める。

     

  6. 関節に負担をかけない動作を身につける。

    ※痛みを軽くし、変形を予防する。

    ※例:うつむいて本を読む姿勢は、首や肩を痛めます。30分以上続けるのは避ける。

     

  7. 出来ることは、なるべく自分で行うようにする。

    ※関節の機能や、筋力を維持出来る。