この記事では私の個人的な体験も含めながらプラセボ効果について解説していく。

 

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プラセボ効果とは

 

ラテン語の「I will please」にあたる言葉が由来の『プラセボ効果』とは、
「これを飲めば絶対に良くなる」と信じて薬を飲んだ場合に、たとえそれが砂糖を丸めたものなど薬理効果を持たない『偽薬』に過ぎなくとも、実際に具合がよくなったり症状が改善したりする現象を指す。

 

そして、この「偽薬によるプラセボ効果」は病院でも治療目的で使われることがある。

 

例えば、不眠を訴える入院患者に対して、薬の連用による薬物依存を防止するため、偽薬(例えばラムネなど)を与えることなどである。

 

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プラセボ効果を実感したエピソード

 

私自身も、学生時代に病院で夜勤介護のアルバイトをしていた際に、毎日不眠を訴える患者に対するプラセボ効果を体験する機会があった。

 

その高齢者は就寝時間になると頻回にコールを鳴らして睡眠剤を処方するよう訴えていた。

 

しかし、(睡眠薬に対する依存が強いからか、副作用からかは定かではないが)、医師からは睡眠剤は処方されていなかった。

 

何度も処方できないことを患者へ説明しに行き、その場では納得してもらえるのだが、認知症を患っていることもあってか、数分後には再びコールが鳴り、同じ会話が繰り返される。

 

訴える表情がかなり悲痛だったこともあり、何とかならないかと看護師に伝えたところ、最終的に「お菓子のラムネ」を薬代わりに処方することになった。

 

また、渡す際は、効果を最大限にするために「この薬は非常に強力だから、すぐに眠れるはずである」という旨を言い添えることが決まった。

 

すると、ラムネを飲んだ患者は数分も経たないうちに安心したように眠りについてしまったのである。

 

この光景は、遠い昔の出来事であるにもかかわらず、鮮明に残っていることから、今の私の医療に対する考え方にも何らかの影響を及ぼしているのではと考えることがある。

 

 

プラセボ効果が起こった=偽病ではない!!

 

偽薬を処方する際に、薬に対する期待感や、医療従事者に対する信頼感を抱いている場合は、偽薬であるにもかかわらず著効を示す場合がある。

 

しかし、偽薬が効果を奏した場合、その後にもし仮に信頼している医療従事者が偽薬を与えた事を知ったら、医療従事者は自分の病気を信じていなかったのかと不審を抱くかもしれない。

 

あるいは、症状が軽くなったのはプラセボ効果であることが分かった時、自分自身に当惑するかもしれない。

 

一部の医療従事者は、偽薬で痛みが治まった人に対して「本当は痛みを持っていなかった」と思ってしまう。

 

あるいは、意志の弱い人、暗示にかかり易い人が偽薬に反応しやすいと考えるかも知れない。

 

しかし、これらの考えは全て誤りだ。

 

なぜなら、医療従事者を含めたすべての人にもプラセボ効果は起こり得るからである。

 

プラセボは偽薬であるが、偽病を暴くための薬ではないことを理解する必要がある。