カテゴリー:痛みと認知・情動の記事一覧

リハビリ(理学療法・作業療法)の素材集

理学療法・作業療法士・リハビリテーションに関する様々な素材を情報発信していきます

カテゴリー:痛みと認知・情動

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    この記事では、理学療法士・作業療法士の治療対象となりやすい「慢性疼痛」という用語について考察していく。急性痛と慢性痛という分類痛みには様々な分類方法があり、例えば以下の様な分類が挙げられる。①痛みを症状で分ける分類(アロディニア・痛覚過敏・自発痛・灼熱痛など)②痛みの原因による分類(侵害受容性疼痛・神経因性疼痛・心因性疼痛)そんな中で、以前より「急性痛」・「慢性痛」という分け方が存在する。急性痛・慢性痛に関しては、どれくらい痛みが続いているかという「期間」で決められていることが多いものの、「期間」について統一した見解は存在ない。※国際疼痛学会は6か月以上持続するあるいは繰り返し発生する痛みを慢...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    一般的に情動と言う表現は、「歓喜・不安・苦悶・悲観・驚愕・激怒・恐怖」というような急激に起こされる一過性の強い感情の動きに以下の様な要素が伴った状態を指すことが多い。・顕著な表情・声・行動・自律神経系(発汗・心悸亢進・血圧上昇・呼吸数の増加・ひん尿・下痢などの主として交感神経系の興奮)や内分泌系を通して現れる生理的変動一方で、情動を「動物全般」ではなく「人間」にフォーカスをして考えた場合、「広く動物に共通した喜び、悲しみ、怒り、怖れ、嫌悪感のような本能的な欲求に関わる感情」と、「慈しみや憎しみ、尊敬や軽蔑など人間に独特な感情」や、「その感情によって生じる身体や表情の変化、行動の変化を含むもの」...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    この記事では、『感覚』『知覚』『認知』という用語に関して、理学療法の分野で一般的に使用されている解釈を中心に記載していく。感覚感覚(sensory)とは、外の環境または身体内に起こった刺激によって生体内の受容器が興奮し、脳の関連領野に情報が伝達され、それが意識にのぼった体験のこと。通常、意識にのぼった程度であり、それがどのような性質で何であるかの情報処理プロセスは含んでいない。知覚知覚(perception)とは、感覚を介して刺激の性質を把握する働きのことであり、感覚を意味づけること。例えば、触覚・圧覚受容器の興奮によって脳に伝達された情報に基づき、その物体が硬いか柔らかいかといった性質を弁別...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    不安とは恐れだが、それでは恐れとは何だろう。神経学的に説明すれば、恐れとは危険の記憶である。不安障害になると、脳は常に恐ろしかった時の記憶を再生しようとする。すべては扁桃体が警報を響かせた時に始まるが、通常のストレス反応と違って、不安障害の場合は警報解除信号が適切に作動しない。なにも問題はないとか、問題が片付いたからもうリラックスして良いなどと、認知の処理装置が教えてくれないのだ。体と精神の緊張がもたらす感覚入力によって心があまりにもざわついているので、状況を正しく把握できなくなる。こうした認識のずれが起きるのは、ひとつには前頭前野が扁桃体をしっかりコントロールしていないためだ。全般性不安障害...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    子供のころコッソリと友人の後ろに回り込み「膝カックン」を仕掛けて、驚かせたことはないだろうか?この様な行為をされた場合、予測不能なために、刺激が固有受容器に入って脳に達して筋に膝折れ予防を命令する前にバランスを崩してしまう。つまり、この様な外力に対応するためには、ある程度の『予測性』が重要である。痛みに関する予測性も同様で、痛みに対するリスクを脳で十分に吟味し、「自分にとってリスキーだと思うもの」に対しては、積極的に動かず、筋緊張を高めて過剰に防御するよう戦略を立てる。また、脳は情動に対して敏感で、少しでも怖いと思っていると非常に強い制限が簡単に出てしまう。例えば骨折が生じると、骨を過剰に治癒...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    オペラント条件付けに基づいた考えでは、継続的に報酬が与えられれば、その行動はより喚起されるだろうし、もし好ましくない結果やマイナスの結果が与えられれば、その行動は繰り返されなくなる。行動は強化因子に影響され、強化因子には正のものも、負のものもあり得る。例えば、正の強化因子としては「おいしい食事」「お金」「敬意や称賛が」などが、負の強化因子としては「まずい食事」「何らかの罰」などがあげられる。行動はオペラント条件づけでは、回避の様な恐怖反応は、不安の軽減につながることから強化される。回避行動が繰り返され、結果として不安が繰り返し軽減されると、その行動は学習され確立されていく。この様な恐怖反応は、...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    この記事では、「痛み行動」における悪循環に密接に関与している「痛みの恐怖-回避思考モデル」について記載している。痛みの恐怖-回避思考モデル組織損傷は「痛み体験(painexperience)」に繋がるが、その体験によって不安が生じなければ、痛みと「対峙(confronation)」することができ、「回復(recovery)」につながる。しかし、「組織損傷による痛み体験」が「ネガティブな情動(negativeaffectivity)」や「不要な病気の情報(threateningillnessinformation)」によって破滅的思考(catastrophising)」につながることがあり、これ...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    痛みとは、身体の組織損傷による不快な感覚的・情動的な経験である。他の刺激は繰り返せば慣れが生じる。しかし、痛みだけは、反復によって、むしろ増幅される。したがって、痛みを経験した者は、痛みの予感を恐れる。記憶が痛みを倍化させるのだ。~『ドラマ:無痛~診える眼~第6話』先天性無痛症の犯人が殺人を犯す直前に呟いた言葉より~関連記事⇒『痛みは生きていくうえで必須なものである』

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    扁桃体と前頭前野の結びつきには個人差がある。この事実からうかがえるのは、不安に強い人は前頭前野の抑制中枢を活性化し、抑制のメッセージを迅速かつ効率的に扁桃体に送ることで、不安反応をうまく沈めているとい可能性だ。結びつきが強ければ、前頭前野から扁桃体へとメッセージは瞬時に送られ、パニック反応を速やかに抑えられる。一方、不安に弱い人は、扁桃体を含めたパニックに関わる中枢がもともと反応しやすい。加えて前頭前野の働きが弱いため、不安のコントロールがうまく行きにくい。そのうえ、恐怖の中枢と抑制の中枢の結びつきが弱いため、不安を鎮めるのが人に比べてさらに困難になってしまう。恐怖を感じにくい人は、生まれつき...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    感情のコントロールを人がどれだけ上手く行えるか調べる、次のような実験がある。脳のスキャナーに横になった被験者に、爆発で重傷を負った人の体や切断されて血まみれになった腕など、衝撃的な映像を見せる。その際、画面に「注目」という文字が現れた時は、被験者はその場面に感情移入するように努め、画面に「再評価」という文字が現れた時は逆に、その場面から受ける感情が少しでもネガティブなもので無くなるよう、自分の感情をコントロールしなくてはならない。たとえば、「あの切断された腕は本物のようにみえるけれど、実はプラスチックで出来た偽物だ」と自分で自分に語りかけてみるのだ。これらの作業をしている時の脳の様子をスキャン...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    恐怖の回路の解剖学的理解からも、病的なレベルの不安を治療する新しい方法が考えられる。それは、扁桃体や恐怖そのものに焦点を合わせるのではなく、扁桃体を鎮める役割を持つ大脳皮質の中枢に働きかける方法である。感情をコントロールする中枢を強化すれば、恐怖心をコントロールしたり、不安を恒常的に弱めたりすることも可能となるのではないだろうか。この考えをもとに、感情をコントロールする能力を高めるための、多くの薬理学的療法や認知療法が考案されてきた。恐怖の標準的な消去プロセスとは、脳内に新しい記憶を効果的に打ち立てることで行われる。そして、このプロセスで恐怖心が抑制されるのは前頭前野の『内側前頭前野(+眼窩野...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    この記事では、リハビリ(理学療法)を提供するうえで重要な『行動変容』について、各ステージごとで療法士が大切にすべきポイントも踏まえて知識を整理していこうと思う。ちなみに、行動変容のステージは以下の5つで構成されている。前熟考(無関心)期熟考(関心)期準備期実行期維持期前熟考(無関心)期前熟考(無関心)期は「現在、自分の行動を変えようという気持ちが無く、将来(通常6か月以内)にも変えるつもりが無い段階」である。無関心であるが故に、行動変容は起こせない。熟考(関心)期熟考(関心)期は「現在は何も行動を起こしていないが、近い将来に行動を変える気持ちになっている段階」である。この時期に重要なことは、「...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    慢性痛を訴える患者の一定割合は抑うつ傾向を有していると言われている。これは、慢性痛により行動の制限や、社会への参加が著しく制約されていることが一因とされている。痛みが長期化することによる抑うつや不安感は、痛みに有効に対処できず、痛みが治まらないために生活が制限されているという思いが長引くために引き起こされていると考えられている。また、不安と回避の悪循環が痛みを慢性化させる「恐怖-逃避モデル」という説がある。人は痛みを感じると、何らかの深刻な障害の徴候と感じ、多かれ少なかれ不安を抱く。そして、不安に対しては、対峙するか逃避するかという2つの対処法がある。対峙すると適切な対応ができ不安は減衰する。...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    慢性痛をもつ患者は、しばしばうつ的である(Brown1990.Kerns&Haythornthwaite1988.Rudyetal1988)。Mersky(1999)は、痛みを持つ患者におけるうつ病の罹患率はおよそ10から30%であると指摘した。この指摘も含めて、痛みを有する患者における実際のうつ病の発生率は様々であり、10%から100%までの範囲でその報告がある(Browwn1990.Magni1987,Rudyetal1988,Turketal1987)。これに対して、一般人口におけるうつ病の発生率は9%から14%であるとされている(Turketal1987)。調査で観察されるこれらの相違...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    ワシントン大学の心理学者であるウィルバート・フォーダイス(WilbertBillEvansFordyce)は、客観的に観察される慢性痛患者の痛みに伴う行動を『痛み行動(painbehavior)』と名付け、慢性痛の治療対象として着目した。痛み行動の基礎となるオペラント条件付け私たちは、ある行動をとることで「やらなかった時よりも、やった時のほうがメリットがある」ということを体験すると、その行動の頻度が増える。例えば自分が仕事を頑張った際に、上司に褒めてもらったり、特別ボーナスが出たりすると、「仕事を頑張る」といった行動につながる。あるいは、自分のブログを「分かりやすい」「参考になった」などと褒め...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    fMRIとは、分かり易く言えば、巨大な磁石のようなものによって脳をめぐる血流を視覚化することができる機械である。これを使えば、人が様々な感情を抱いている際に、脳のどの部分が活性化するかが一目で分かる。活性化した部分には血液が集り、充血した状態になるからである。活動中の脳がどんな状態にあるかは謎に包まれていたが、fMRIの登場で大きく解明が進んだ。これにより様々な情動に脳のどの部分が関連しているかも、ピンポイントで分かるようになった。さらに明らかになったのは、こうした脳内の活動パターンに一定の安定性があることである。もしも、あなたの喜びの瞬間に脳のどこが活性化するかを調べたら、半年後に何か別の喜...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    別記事『負の情動は生きていく上で必須だが、慢性的な痛みにも関与してしまう』では、「慢性痛になってくると、痛みが感覚という側面よりも、情動という側面に支配されてしまうケースもあり得る」ということを紹介した。また、極論として「痛みの原因が治癒した後も、不快などの情動が残存してしまっていることで辛く感じてしまっている」こともあり得るのではということも付け加えた。そして、今回は前回の内容を補足する記事となる。感覚刺激は情動も伴った上で認知される痛み感覚は、その他の様々な情報(記憶や情動やなど)と統合されて認知されるため、認知される上で様々な修飾が生じる。そして、感覚が客観的な側面のみならず、様々な修飾...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    別記事『痛みは生きていくうえで必須なものである』では、「先天性無痛症は一次侵害受容ニューロン自体が存在しないため、痛みを全く感じることが出来ないとい」というエピソードを紹介した。そして、上記の記事では先天性無症を有した人たちは、痛みを感じないからこそ多くのけがや事故に見舞われる可能性も述べてみた。しかし一方で、痛みを感じることができるにもかかわらず、「脳のある部位」が欠損してしまっている場合も、多くの怪我や事故につながってしまうことが分かっている。そして、この「脳のある部分」とは『扁桃体』を指す。扁桃体は大脳辺縁系の一部であり、様々な情動喚起のプロセスとして関与する。また、扁桃体は情動の中でも...

  • 症状 - 痛みについて - 痛みと認知・情動

    前頭前野は報酬-嫌悪回路の一部をなし、この回路は痛み刺激に反応し、興奮・抑制することで痛みの感じ方に影響を与える。慢性痛が抑うつや認知障害を伴うことが多いのは、この回路の機能障害が関与していると言われており、慢性痛患者では前頭前野の活動低下(急性痛では活性化)とともに扁桃体や島皮質の過活動がみられる。鎮痛は報酬で、持続する痛みは嫌悪であり、この回路のバランスが崩れ混乱が生じることで、痛みの評価や予測、自己評価などの認知機能の障害に至り、意思決定や積極的な行動に障害をきたすことになる。慢性痛患者の前頭前野や視床で灰白質の減少、つまり脳委縮がみられることが報告されており、そのような機能的・器質的変...