この記事では、『てんかん(epilepsy)』と『痙攣(convulsion)』について解説していく。

 

この記事によって、てんかんと痙攣(けいれん)の違いも何となく理解してもらえると思う。

 

目次

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「てんかん」とは?

 

『てんかん(epilepsy)』のとは以下を指す(WHOの定義)。

 

「過剰な大脳ニューロン発射に由来する反復性発作を主徴とする慢性の脳疾患で、種々の誘因による」

 

つまり「てんかんは脳疾患の一つ」である。

 

※ただし、脳腫瘍などの明らかな基礎疾患に基づく発作は除く。

 

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てんかんの分類

 

てんかんの分類方法は様々存在するが、ここでは以下の3つにてんかん発作を大別したものを紹介する。

 

①部分発作(部分てんかん)

②全般発作(全般てんかん)

③分類不能発作

 

 

~①部分発作(部分てんかん)~

脳の一部に限局して起こったてんかん性異常波に対応した発作。

 

更に以下に細分類される。

・単純部分発作⇒意識障害を伴わないもの

・複雑部分発作⇒意識障害を伴うもの

・部分発作から始まって、2次性全般発作に発展するもの

 

 

~③全般発作(全般てんかん)~

 

発作のはじめから意識を失うことが多く、前兆を自覚しないのが原則。
痙撃を呈する発作は以下などと呼ばれる。

 

・強直間代発作(大発作)

・間代発作

・強直発作

 

その他、『ミオクローヌス発作』があり、この発作は「意識が保たれている場合」と「ごく短時間意識が喪失する場合」とがある。

 

 

~③分類不能発作~

 

部分発作(部分てんかん)にも全般発作(部分てんかん)にも該当しない発作が該当する。

 

 

「てんかん」と「失神」と「意識障害」の整理

 

「全般てんかんは意識を失うことが多い」と前述したが、一過性の意識障害のことを『失神』と呼ぶ(てんかんの一部は、失神を伴う事があるということ)。

 

そんな『失神』や『意識障害』についての整理は以下の記事も参照してほしい。

 

⇒『ジャパンコーマスケール-意識障害の意味・評価法・原因を考える

 

⇒『失神とは(意識障害シリーズ)―症状・原因・問診のコツを完全網羅!

 

 

 痙攣(けいれん)とは

 

痙攣(けいれん)は、別名「ひきつけ」とも呼ばれ、「筋の不随意性収縮(自身では意図しない筋収縮)」を指す。

 

痙攣の分類

 

痙攣は以下に分類される。

 

全身に及ぶ痙攣:

後述するが、てんかんなどで起こる痙攣は「全身に及ぶ痙攣」であることが多い。

 

 

部分的に起こる痙攣:

例えば、高齢者などで「夜にフクラハギがつる」などの訴えを聞くことがあったりするが、これは「部分的に起こる痙攣」ということになる。

関連記事⇒『こむら返り(腓腹筋痙攣)を解説

 

 

痙攣の原因

 

痙攣の原因としては、以下が挙げられる。

 

二次的なけいれん(誘因疾患が存在し、二次的に起こる痙攣):

  • 様々の頭蓋内疾患(脳血管障害・脳炎・髄膜炎・脳腫瘍・頭部外傷など)
  • 代謝性疾患(低血糖など)
  • 電解質異常(低ナトリウム血症など)
  • 心因性
  • 薬物(抗精神病薬など)

 

 

一次的なけいれん:

  • てんかん性けいれん

 

※てんかん性けいれんは、前述した二次的なけいれんとは異なり、脳の神経細胞の突発性の過剰発射に由来し、けいれん発作が反復して出現することが多い。

 

 

痙攣への対処法

 

二次的な痙攣への対処法:

二次的な痙攣(原因が明らかな痙攣)に対しては、基本的に誘発原疾患に対する治療が優先される。

 

※例えば低ナトリウム血症が原因で痙攣が起こっているのであれば、低ナトリウム血症の治療を行う。

 

また緊急を要する場合などは、対症療法としてジアゼパムの筋注・静注などにより痙攣を止めるケースもある。

 

 

一次的な痙攣(てんかん性けいれん)への対処法:

てんかん性けいれん発作に対する対応のとしては、周囲の危険物を遠ざけつつ経過観察

のみで良い(てんかん発作は、一般的に長時間持続することなく終始することが多い)。

ただし、高齢者では発作による骨折に注意が必要である。

 

 

その他の対処ポイントは以下の通り。

 

  • けいれん時には無理に身体を押さえつけるのは避ける
  • 口の中に物を入れない
  • 衣服を緩める
  • 発作終了時に嘔吐をする場合があるため頭を横に向ける

 

・・・・・・・・・・などなど。

 

 

てんかん重積状態

 

先ほど、「てんかん発作は一般には長時間持続することなく終止することが多い」と記載が、時に長時間にわたって遷延化(てんかん重積状態)こともあり、これを『てんかん重積状態』と呼ぶ。

 

『てんかん重積状態』の定義は以下の通り。

 

発作が通常の持続時間を超えて遷延化するか、発作が短い間隔で反復するため発作間欠期にも意識が回復せず、意識障害が長時間持続する状態

 

てんかん重積状態以下の2つに大別される。

 

・けいれん重積状態

・非けいれん性重積状態

 

特に前者では持続時間が長くなるほど全身や脳に及ぼす悪影響が強まり、脳浮腫などの合併障害を生ずる危険性が大きくなる。

 

 

「てんかん」と「けいれん」の違い

 

ここまでの記載で「てんかん」と「けいれん」の違いが何となく理解できたと思うが、簡単に解説して終わりにする。

 

結論を先に言ってしまうと違いは以下になる。

 

・「てんかん」は疾患である。

・「けいれん」は症状である。

 

てんかんとは「大脳皮質の神経細胞が異常に興奮して様々な症状が出る疾患(脳波に異常が出る)である」を指す。

 

そして、「様々な症状」の中に痙攣も入る。

 

なので「てんかん」で痙攣がおきることもある(てんかん性痙攣)が、てんかんは必ずしも痙攣を伴うわけではない。

 

 

これを「風邪(かぜ)」で例えると分かり易いかもしれない。

 

「風邪」という疾患で「のどの痛み」という症状が出ることがあるが、「のどの痛みがある=風邪ではない」のと同じ。

 

あるいは、「風邪」という疾患で、必ずしも「のどの痛み」という症状が出る訳ではないのと同じ。