この記事では、『手根間関節』『手根中手関節』『中手指節関節』『指節間関節』へフォーカスを当てて、特徴を記載している。

 

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手指の略語

 

手指には小さな関節がいくつもあり、感じで表現するとゴチャゴチャして分かりにくいからか、以下の様に略語で表現されることも多い。

 

・手根中手関節⇒CM関節(carpometacarpal joint

・中手指節関節⇒MP関節(metacarpophalangeal joint)

・近位指節間関節⇒PIP関節(proximal interphalangeal joint)

・遠位指節間関節⇒DIP関節(distal interphalangeal joint)

・指節間関節(母指のみ)⇒IP関節(interphalangeal joint)

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手根間関節とは

 

手根間関節とは、「手根骨(近位手根列と近位手根列)の間に形成される関節の総称」を指す。

 

そんな手根骨は、近位と遠位に4個づつ(計8個)あり以下の通り。

 

・近位手根列⇒豆状骨・三角骨・月状骨・舟状骨

・遠位手根列⇒大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鉤骨

 

 

でもって、特に近位列と遠位列との間の関節をまとめて『手根中央関節(遠位手根関節)』と表現することもある。

 

手根間関節はいずれも平面関節で、運動性は低いが全体に弾力性を示す。

 

でもって、手関節の運動時にも関節副運動が起こっており、これら手根間関節に機能障害が起こると、痛みや可動域制限が起こるので関節モビライゼーションなどによる治療対象となり得る。

 

※ちなみに、豆状骨は他の手根骨との間に関節を形成しない(なので、豆状骨の役割って何なの?と疑問視する人も多い)。

 

 

手根中手関節(CM関節)

 

手根中手関節(CM関節)は「手根骨の遠位列と第2~5中手骨の間の関節」を指す。

 

でもって、母指のCM関節だけが独立した関節包をもった鞍関節であり(他の4指に比べて)大きな可動性を有する。

 

・第1中手骨⇒大菱形骨と関節を形成(鞍関節)

・第2中手骨⇒大・小菱形骨と関節を形成

・第3中手骨⇒有頭骨と関節を形成

・第4中手骨⇒は有頭骨・有鉤骨と関節を形成

・第5中手骨⇒有鉤骨関節を形成

 

※第2・3中手骨と大・小菱形骨・有頭骨の連結は強固であり、ほとんど動かない。なので、空手のように握りこぶしで物を打つとき、衝撃は第2・第3中手骨から橈骨に伝わる。

 

※第4・5中手骨と有頭骨・有鉤骨の結合はゆるやかで、ある程度の動きをゆるす。なので、手を強く握ったとき第4・第5指の中手骨が動き、手の横のアーチが増強するのが観察される。

 

母指は他の4指に対して90°ずれた方向を向いており、これが「母指と他の指で物をつまむ運動」を可能にしている。

 

 

中手指節関節(MP関節)

 

中手指節関節(MP関節)は第1~5中手骨と基節骨がなす関節で、顆状関節に分類される。

 

中手骨骨頭(凸面)と基節骨底(凹面)の関節面からなり、屈曲・伸展以外に内・外転運動も行うことができる。

 

しかし屈曲位では両側副靭帯が緊張するため側方安定性はよくなる。

※なので、「屈曲位での外転」と「伸展位での外転」では明らかに外転可動域が異なるのが体感できる。

 

 

指節間関節(IP関節)

 

指節間関節(IP関節)は以下の2つに分けられる。

 

・基節骨と中節骨の間の近位指節間関節(PIP関節)

・中節骨と末節骨の間の遠位指節間関節(DIP関節)

 

ただし、母指は中節骨を欠くため、IP関節は1つである(なのDIP関節・PIP関節といった表現は出来ない)。

 

IP関節(PIP関節・DIP関節ともに)は蝶番関節である。

 

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手指に生じる変形の名称

 

最後に、手指に生じる変形の名称を紹介して終わりにする。

 

スワンネック変形

 

『スワンネック変形』とは以下を指す。

 

「手指のDIP関節の屈曲、PIP関節の過伸展が複合した変形」

 

 

白鳥の首のような変形をしていることから、スワンネック変形と呼ばれる。

 

内在筋の緊張が強い場合や、関節リウマチなどによって関節が生じやすい疾患で起こり易い。

 

 

ボタン穴変形

 

『ボタン穴変形』とは以下を指す。

 

「DIP関節の過伸展とPIP関節の屈曲が複合した変形」

 

 

ボタンをかけるときのような変形ということらしいが。。。

 

スワンネック変形と比較した場合、DIP・PIPの過伸展・屈曲が真逆になった変形という事になる。

 

指の背側腱膜が近位指節間(PIP)関節部で切断された場合や、異常に伸張された場合に起こる(あるいは関節リウマチなど)。

 

 

母指のZ字変形

 

スワンネック・ボタンホール変形と比べると馴染みのない変形かもしれないが、「母指のZ字変形」というのもある。

 

これは、スワンネック・ボタンホール変形と異なり「母指のみにフォーカスした変形の名称」である。

 

 

 

鷲手

 

鷲手は「虫様筋・骨間筋の麻痺」によって起こる。

 

 

尺骨神経麻痺では第4・第5指にのみ目立ち鉤爪指となる。

※尺骨神経麻痺では鷲手変形が有名だが、尺骨神経麻痺だけでは橈側2本の虫様筋が残存す
るため純粋な鷲手とはならない(正中神経麻痺を伴うと全指に著明となる)。

 

多発性神経炎や筋疾患にも起こる。

 

 

猿手

 

猿手は「母指球の筋が障害され、母指対立が障害された手」を指し、正中神経麻痺にみられる。

 

 

母指の運動(対立・屈曲)ができず、小さなものをつまむことが困難となり、母指球が萎縮して扁平となり、猿の手に似た状態になるので猿手と呼ばれる。

 

※力仕事をする中年の女性に多くみられるとの意見もある。

 

正中神経は、特に手根部(手首)で傷害を受けやすく、これは神経が手根管のなかを走りり、圧迫されやすいためである(手根管症候群)。

 

 

 

下垂手

 

下垂手は「手関節の背屈筋、手指の伸展が障害されて、幽霊の手のようにブランと手が垂れ下がる(なので下垂手と呼ばれる)」を指し、橈骨神経麻痺に特徴的である。

 

 

橈骨神経は、上腕骨の骨折でよく傷害される。

 

 

槌指

 

指背腱膜が末節骨に付着する部で切断された場合にみられるDIP屈曲位。

 

いわゆる「突指(つきゆび)」の後遺症としてみられることが多い。

 

 

関連記事

 

以下の記事では、猿手・鷲手・下垂手にフォーカスし、正中・尺骨・橈骨神経麻痺とも関連付けながら深堀解説している。

合わせて観覧してもらうと理解が深まると思う。

 

猿手・鷲手・下垂手(正中・尺骨・橈骨神経麻痺で生じる)をイラスト付きで紹介