治療手技1 海外における総合型の学派

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ドイツ徒手医学

①ドイツ筋骨格医学会日本アカデミー

僕が初めて、一通りのコンセプトとして筋骨格系理学療法を学べた学派です。非常に分かりやすく丁寧に指導して頂けました。

一方で、ドイツ本部が急に解体されて、会員が受講途中で何のフォローもないまま放り出されてしまうといった問題も起こってしまった学派でもあります。そして、2年間講習が再開されるかどうか不透明な期間が続いた後、ドイツに新たな本部が立ち上がり、日本でもドイツ筋骨格医学会日本アカデミーとして活動が再開されています。

関連書籍としては『最新徒手医学―痛みの診察法』や『最新徒手医学―痛みの治療法』や『整形外科における理学療法』があります。また、ドイツ徒手医学基礎と応用コースで多くの機能解剖を引用している本の訳本として『からだの構造と機能1』や『からだの構造と機能2』があります(理学療法士には知名度の高い、『カパンジー機能解剖学(全3巻セット)―カラー版』も多く引用されています)。

※ドイツ徒手医学に関するブログはこちら⇒『リハビリ(PT・OT)の素材集

※徒手医学の用語解説はこちら⇒『ブログ:徒手医学(マニュアルメディシンとは)

②日本臨床徒手医学協会

代表理事がドイツにて徒手医学を学んでいる事や、PDFに記載されているコース内容も以前私が学んだものに近いことから記載しました。また、会員専用ページから講習会資料を含めて様々な資料がダウンロードできる点が親切だと思います。

理学・作業療法士・医師だけでなく、柔道整復師も受講対象となる様です。

代表理事の著書として『非特異的腰痛の運動療法: 症状にあわせた実践的アプローチ非特異的腰痛の運動療法: 症状にあわせた実践的アプローチ』があります。

パリスコンセプト
(Paris concept)

パリスという理学療法士が発展させた学派で、徒手理学療法研究所が研修会を主催しています。僕が理学療法士になって一番最初に徒手療法の基礎に触れた学派です。基礎コース受講の後は、部位別に自分のペースで受講できる点がおススメです。参考書籍として『パリス・アプローチ 腰、骨盤編』や『パリス・アプローチ 実践編―徒手理学療法の試み』があります。

ノルディックシステム
(Nordic system)

カルテンボーンという理学療法士が発展させた学派で、日本では日本整形徒手療法協会が研修会を主催しています。後にEvjenthのストレッチング・筋力強化・協調性トレーニングなども取り入れているため、Kaltenborn-Evjenth systemと呼ばれたりもします。関連書籍としては『整形徒手理学療法』があります。日本では2年半かけて基礎コース50日+上級コース10日+臨床実習10日という膨大な時間をかけて学んでいきます。その分確かな能力は身につくと思われますので、時間的・金銭的に融通の利く方は是非!

治療手技2 海外における反応重視型の学派

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メイトランドコンセプト
(Maitland concept)

オーストラリア出身のメイトランドという理学療法士が発展させた学派です。ある文献の分類に従って反応重視型に載せました。実際に受講したことはありません。メイトランドコンセプトというと振幅を利用した『手技』をイメージしがちですが、クリニカルリーズニングを首座においた評価から治療までの概念は世界的にも評価されているようです。

関連書籍に『メイトランド 脊椎マニピュレーション』や『メイトランド四肢関節マニピュレーション』があります。

マリガンコンセプト
(Mulligan concept)

マリガンという理学療法士が発展させたテクニックです。上半身編と下半身編の各3日講習が理学療法士協会主催で開催されます。この講習では理学療法の研修にしては珍しくビデオ撮影も許可されているので、撮影するとボイスレコーダーのように「録音したは良いが一度も聞かない」といったことがなく、手技の復習に便利です。参加するとテクニックで使用する専用バンドがもらえたり、セルフエクササイズ用のアイテムが購入出来ます(どんなものかは『教本:マリガンのマニュアルセラピー』や『セラピストのためのマリガンコンセプト』参照)。

マッケンジー法
(The McKenzie Method of Mechanical Diagnosis and Therapy)

マッケンジーという理学療法士が発展させたコンセプトです。様々な力学的負荷加えた際の反応を参考にしながらクライアントに合った運動処方や生活指導をしていきます。クライアントの主体性を重要視し、セラピストによる徒手介入はあくまで補助的手段という位置づけになります。このコンセプトを理解していると、クライアントのみならず、自分の筋骨格系障害に対しても対処が容易になります。国際マッケンジー協会日本支部でコースが開催されており、受講に関して厳しい資格制限は設けていないため、医師やカイロプラクター・整体師など様々な職種の方が受講可能です。クライアントを招いて講師による多くのデモンストレーションを見学することが出来るのも、この講習の特徴といえます。

市販で購入できるマッケンジー法の専門書は無く、強いて挙げるなら『系統別・治療手技の展開 改訂第3版』の各論に記載されているだけとなります(講習会に参加した場合のみテキストがもらえます)。

一方で、一般書は多く出回っており、特に『自分で治せる! 腰痛改善マニュアル』は有名で、メディアにも取り上げられたことがあります。

治療手技3 日本における学派

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AKA-博田法

海外の理学療法学派を参考に、博田節夫という医師が日本で独自に発展させた手技です。
筋骨格系理学療法を診療に取り入れようとする医師の中ではAKA・マッケンジーが話題に出たり、引き合いにされることが多いですが、かたや手技を中心としたコンセプト・かたや患者教育中心なコンセプトと対照的です。
医師は『日本関節運動学的アプローチ医学会』で、理学療法士・作業療法士は『日本関節運動学的アプローチ医学会・理学・作業療法士会』(と医学会の両方)で受講可能です。

医学会の講習ではクライアントを招いてのデモンストレーションがみれる場合もあります。

関連書籍として『AKA 関節運動学的アプローチ 博田法』があります。

関節ファシリテーション

元々AKA-博田法の講師をされていた宇都宮初夫という理学療法士が発展させたコンセプトです。コンセプトは関節ファシリテーション学会で受講可能です。

関連書籍として『SJF 関節ファシリテーション』があります。

マイオチューニングアプローチ

関連書籍として『マイオチューニングアプローチ入門 痛みと麻痺に対する治療的手技』がります。

治療手技4 その他

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PNF法
(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation)

医師であり神経生理学者であったHerman Kabatが、Margaret KnottやDorothy Vossといった理学療法士とともに発展させたコンセプトです。日本PNF協会や日本PNF学会で受講可能な他、日本理学療法士協会が主催している講習会もあります。

徒手理学療法の各学派の特徴を整理するためのヒントになるイラスト

徒手理学療法には様々な学派がありますが、それらの特徴を整理するヒントとなるイラストを以下に記載しておきます。

※ただし、上手く整理されている感はあるが強引に当てはめている感も否めないので、あくまで「特徴をザックリと整理するため」に活用してみて下さい。

~画像引用『これだけは知っておきたい腰痛の病態とその理学療法アプローチ』より~