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理学療法(徒手療法)の用語解説

このサイトに掲載されている理学療法の専門用語(主に徒手療法関連の専門用語)を思いつきで載せています。

思いつきなので掲載の順序に特別な意味はありません。

 

 

 

マニュアルセラピー(manual therapy)

マニュアルセラピーの『マニュアル』は「徒手的な」という意味である。

 

したがってマニュアルセラピーは「徒手療法」と直訳することができ、筋骨格系疾患(運動器疾患)に対して用いる治療法の総称を指している。

 

また、マニュアルセラピーは「理学療法士が筋骨格系疾患に対して用いる治療法」を指していることが多く、『徒手理学療法』と表現されることが多い。

 

さらに言えば、最近は「理学療法士が徒手的に用いる治療法」は一つの要素に過ぎず、運動療法、心理学など多くの要素を含めた概念の総称を(広義な意味での)「マニュアルセラピー」ととらえる向きもある。

 

このように広義な意味で捉えた場合、マニュアルセラピーは非常に幅広い意味を持った用語と言える。

 

具体的には⇒『ブログ:マニュアルセラピーとは』を参照

 

統計の用語(感度・特異度、信頼性・妥当性など)

バイアス(bias):結果を誤らせる一連の傾向で、『偏り』のこと

選択バイアス⇒症例や対象を選択する際などに偏った集団になってしまうこと

測定バイアス⇒研究者によるデータの収集方法や被検者の知識などに起因して結果が偏ってしまうこと

 

 

κ係数:偶然によらずに一致する割合のこと

      κ係数が0~0.40  の間であれば、低い一致

      κ係数が0.41~0.60の間であれば、中等度の一致

      κ係数が0.61~0.80の間であれば、かなりの一致

      κ係数が0.8以上であれば、ほぼ完璧に一致

 

 

感度(sensitivity):病気の人が検査で陽性となる確率のこと

特異度(specificity):健康な人が検査で陰性となる確率のこと

  • 例えば、股関節唇損傷を有しているかについて、「感度は高いが特異度は低い」という特徴を持っているテストは、「関節唇損傷を有しているクライアントが陽性になる確率は高いが、関節唇損傷以外の人が陽性になる確率も高い」と解釈できる。
    すなわち、このテストが陽性であったるという所見はあまり意味をなさない。
    他方で、陰性であった場合は、「かなりの確率で関節唇損傷ではない」と解釈できる。
    このように感度の高いテストは、除外診断としての有用性が高いことを意味する。
  • 例えば、股関節唇損傷を有しているかについて、「感度は低いが特異度は高い」という特徴を持っているテストは、「関節唇損傷を有しているクライアントが陽性になる確率は低いが、関節唇損傷を有していない人が陽性になる確率も低い」と解釈できる。
    すなわち、このテストが陰性であったという所見はあまり意味をなさない(陰性でも関節唇損傷の可能性は十分にあり得る)。
    他方で、陽性であった場合は、「かなりの確率で関節唇損傷である」と解釈できる。
    このように特異度の高いテストは、確定診断としての有用性が高いことを意味する。

 

 

信頼性(reliability):テスト結果の正確さについての概念

  • 検者内信頼性
    同じ検査を複数回実施した時に、同じ測定結果を得るかどうかを調べる1人の検者の結果に対する信頼性
  • 検者間信頼性
    同じ検査で全く同じ結果を得ることができるかについて、2人以上の検者の結果に対する信頼性

再現性:同一被験者に、同一条件で、同一テストを行った場合に、同一(傾向)の結果が出るか

 

妥当性(validity):テストが測定しようとしているものを実際に測定している程度

 

 

オッズ(odds)比

  • ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す統計的な尺度のこと。オッズとは、あ る事象の起こる確率をpとして、p/(1−p)の値をいう。オッズ比はある事象の、1つの群と もう1つの群とにおけるオッズの比として定義される。
  • 例えば、男女それぞれ100人に先週ビールを飲んだかどうか聞いてみる。男性は80人が、女性は20人が先週ビールを飲んだと答えるとしよう。男性がビールを飲んだオッズは80対20つまり4/1=4で、女性は20対80つまり1/4=0.25である。4 / 0.25 = 16で、オッズ比は16となる。                            ~ウィキペディアより~

 

被刺激性・イリタビリティー(Irritability)

イリタビリティー(Irritability)

⇒ある関節運動(あるいは活動)によって症状が引き起こされる程度

 

イリタブル(Irritable)

⇒わずかな動作により、強い痛みが出現し、その痛みのために動作の中止を余儀なくされ、動作の中止後も痛みが持続し、痛みが動作前の状態に回復するまでに長時間を要すような状態

 

ノンイリタブル(Non-irritable)

⇒かなりの量の動作後に痛みが出現するが、その動作を中止するほどではなく、動作の周長後は、痛みは速やかに動作前のレベルに回復するような状態

 

 

 

イリタビリティーを評価するときの3つの視点1)

1.活動の強度
2.症状の強度
3.活動を休止してから、症状が消失あるいは軽減するまでの時間

 

 

評価・治療過程におけるイリタビリティーの評価2)

1.初日のイリタビリティーの評価:患者が行っている活動との関連をみる。
2.2日目のイリタビリティー評価:初日の評価・治療との関連をみる。
3.3日目のイリタビリティー評価:他動運動による治療とだけ関連する治療後のイリタビリティーを探求する。

~引用文献~
1)Maitland GD:Vertebral manipulation,5th ed.Butterworth,London.1986
2)Maitland GD:Peripheral manipulation,3rd ed.Butterworth-Heinemann,Oxford,1993

 

 

具体的には⇒イリタビリティーをチェックして重症度を確認しよう

 

 

レッドフラッグとイエローフラッグ

レッドフラッグ:

脊柱原性の疼痛が『悪性の病変(癌・感染症・馬尾神経障害など)』に由来している可能性があることを示す臨床所見または兆候。

 

具体的には

⇒『レッドフラッグを見つけるための問診例

⇒『ブログ:レッドフラッグはのチェックが腰痛治療に必須な件』 

 

 

イエローフラッグ:

脊柱原性の疼痛患者における慢性化への疑いを強めるべき症状または兆候で、心理社会因子を多く含む

 

※心理社会因子にはブルーフラッグ・イエローフラッグといった用語も存在する

具体的には⇒『ブログ:心理社会的要素

 

 

~引用文献~

理学療法士協会HP 理学療法診療ガイドライン第一版

 

関節包内運動

ここでは、複数存在する関節包内運動の定義や分類の中の一つを紹介していく。

 

 

 

関節包内運動とは滑膜関節における関節相互の運動の総称で、骨運動に無関係に生じる『副運動』と、骨運動に伴って生じる『構成運動』に分類される。

 

関節副運動(accessory movement)

 

関節副運動とは骨運動を伴わない関節面相互の運動のことである。

また、関節副運動は通常、一般の随意運動では起こらない運動で下記の2つのタイプがある。

  • 第1型:随意運動に抵抗が加わった時に起こり、関節の構造的な許容限界まで動く関節の運動。
  • 第2型:筋が完全にリラックスした状態で他動運動にのみ起こる関節面の動き         
    ~Gray's Anatomy ed 38 1995~

そして関節副運動2型は『関節の遊び(Joint play)』とも呼ばれ、下記の3種類がある。

  • 離開(distraction)
  • 滑り(sliding)
  • 回旋(spin)
  • 傾斜(tilting)

※圧迫(compression)も副運動2型に含めるのかは不明

※関節の遊びは最大ゆるみの位置(least-packed position:LPP)で最も大きくなる。

※関節の遊びを『評価』し、遊びが少なければ『関節モビリゼーション』を施行する。

 

 

関節構成運動(component movement)

 

関節構成運動とは自動および他動的な骨運動に伴って生じる関節面の運動で、下記の3つからなる。

  • 滑り(sliding)
  • 転がり(rolling)
  • 軸回旋(spin)

生体の関節では通常2つ以上の構成運動が組み合わさって起こる。例えば、大腿脛骨関節では屈曲位からの伸展運動において滑り・転がり・軸回旋が順に組み合わさって生じる。

これらの組み合わせはその関節の形態によって決定される。例えば、椎間関節や仙腸関節のような平面関節では滑り運動が中心となる。また膝関節のような一方が典型的な凸面で他方が平面に近いような関節では転がり運動が生じる。しかし膝関節においても関節面大きさの違いから、転がり運動だけではその接触面を失うため、滑り運動が組み合わさっておこり、その接触面積を保ちながら運動する。さらに股関節のように互いの関節面の曲率が一致し、関節頭が関節窩に深く入り込んでいるような関節では、関節面が転がる余地はなく、滑り運動が中心となる。

 

この構成運動を考慮したテクニックとしては『マリガンコンセプトの運動併用モビライゼーション』や『AKA博田法の構成運動技術』がある。

 

※余談として、一般的に言われている『関節モビライゼーション』というテクニックは、関節運動学で言うところの副運動2型(すなわちJoint play)を利用したテクニックである。

 

 

関節副運動2型に関しては、以下のブログ記事でイラスト付きで補足しているので、ピンとこなかった人はこちらも参考にして見てください。

 

⇒『ブログ関節副運動を補足します

 

 

治療肢位・静止肢位・現在の静止肢位

治療肢位:『問題関節』の『問題となる運動方向』における、自動運動の終わりの肢位の事。

    • 関節副運動テスト時に用いる。
    • モビライゼーション(鎮痛・可動域改善目的)を実施する肢位の一つである。
    • 『自動運動の終わり』と『他動運動の終わり』の間には弾性領域が存在する。

 

 

静止肢位

LPP(least-packed position)と同義。

    • 関節副運動テストにおける左右差比較に用いる。
    • 関節モビライゼーション(関節可動域改善目的)に用いる。

 

 

現在の静止肢位

痛みが最も少ない安楽な肢位のこと。

    • モビライゼーション(鎮痛目的)に用いる。

 

 

 

※関節副運動テストとして、まずは『静止肢位』にて左右差を評価し、治療後に関節副運動の左右差が改善されたかを再評価する。また、特定の方向に制限が生じている場合は、『治療肢位』にて評価をし、治療後に再評価をすることで、治療前の関節副運動の比較を行う。

 

※鎮痛目的の関節モビライゼーションでは『治療肢位』『現在の静止肢位』を用いる。イリタブルであったり急性痛であったりな重度な疼痛は『現在の静止肢位』でアプローチする。一方で、自動運動の制限が痛み(ERP:end rang pain)である場合には、『治療肢位』でのアプローチも試みる。

 

※可動域改善目的の関節モビライゼーションは『静止肢位』『治療肢位』で行う。特に関節包パターンにより複数の運動制限を有している場合は『静止肢位』での離開モビライゼーションが効率的かつ有効である。一方で、特定の方向のみに運動制限があり、尚且つその制限が関節包によるものだと判断された場合は『治療肢位』での治療も試みる。ただし、『治療肢位』での関節モビライゼーションとして滑り(sliding)を選択するのであれば、関節が圧迫されないよう十分留意する必要がある。

 

 

 

関節のLPPとCPP

関節には大きく分けて2つの位置があり、外力により容易に動揺するゆるみの位置と外力によっても動揺しないしまりの位置がある。

 

 

①しまりの位置(close-packed position:CPP)

 

しまりの位置は関節面相互の接触面積が広く、適合性が高い。周囲の靭帯、関節包が緊張しているため外力を加えても動揺しない。

しまりの位置は通常、その関節の可動範囲の最終域付近であることが多い。この位置では関節は機能的に安定しているため肢位を保つのに筋力を必要としない。

ただし、筋力を必要としない分、他の非収縮性組織にストレスが加わっている状態であり、過剰な外力が加わるとこれらの組織が損傷を起こしやすい位置でもある。

※これらのことから、CPPに近い位置で滑りのJoint play評価やmobilization(例えば肩甲上腕関節の屈曲治療肢位における上腕骨頭尾側滑りなど)を用いる必要があるのであれば、過剰な力が加わらないよう注意する。

※CPPに近い位置では関節への圧迫力が加わりやすくなっているため、学派によっては治療肢位での滑りmobilizationを実施する際は軽微な離開を加えることで関節への負担を軽減させている。

※CPPでの位置でmobilizationは施行してはならない。

 

 

 

②ゆるみの位置(loose-packed position)

 

しまりの位置以外をゆるみの位置という。この位置では関節相互の接触面積は狭く、適合性は低い。周囲の靭帯・関節包がゆるむため外力によって容易に動揺する。また、関節の適合性が低いため、肢位を保持するのに筋力が必要となる。ゆるみの位置で最もゆるんだ位置を『最大ゆるみの位置(least-packed position:LPP)』とよぶ。

※LPPでJoint play評価やmobilization(特に離開)を実施する。

※Loose-packed positionで評価しようとしても、Joint playがアンバランスな状態(一方への可動は緩んでいるが、他方では少し緊張しているといった状態)なので、正しい状態で評価するうえでもLPPでの評価を心がける。

 

~しまりの位置・ゆるみの位置の特徴一覧~

しまりの位置 ゆるみの位置
関節面の適合性が高い(接触面積が大きい) 関節面の適合性が低い(接触面積が小さい)
関節包・靭帯は緊張する

関節包・靭帯は弛緩する

外力に対して安定 外力に対して不安定・動揺する
肢位を維持するのに筋力不要

肢位を維持するのに筋力必要

力仕事に適している 力仕事に不適である
長時間固定すると痛みが生じる

固定しても痛みが生じにくい

 

 

~関節別のりまりの位置~

関節 肢位

関節

肢位

椎間関節

伸展

橈骨手根関節

橈側偏位で伸展

歯を食いしばる

指MP関節

完全伸展

肩甲上腕関節

外転および外旋

母指MP関節

完全屈曲

肩鎖関節

上腕30°外転

股関節

完全伸展及び内旋

胸鎖関節

最大限肩を挙上

膝関節

完全伸展及び脛骨外旋

腕尺関節

伸展

距腿関節

最大背屈

腕橈関節

肘90°屈曲・前腕5°外転回外

距骨下関節

回外(内がえし)

上橈尺関節

5°回外

横足根関節

回外(内がえし)

下橈尺関節

5°回外

足根中足関節

回外(内がえし)

 

 

~関節別の最大ゆるみの位置~

関節 肢位

関節

肢位

椎間関節

伸展と屈曲の中間位

橈骨手根関節

少し尺側偏位で中間位

軽度開口

手根中指関節

外転・内転と屈曲・伸展の中間位置

肩甲上腕関節

55°外転・30°水平内転

中手指節関節

軽度屈曲

肩鎖関節

基本的立位で上腕を体側に下げる

股関節

30°屈曲・30°外転及び軽度外旋

胸鎖関節

基本的立位で上腕を体側に下げる

膝関節

25°屈曲

腕尺関節

70°屈曲・10°回外

距腿関節

10°背屈、最大内反と外反の中間位

腕橈関節

完全伸展・完全回外

距骨下関節

各関節の中間位

上橈尺関節

70°屈曲・35°回外

横足根関節

各関節の中間位

下橈尺関節

10°回外

足根中足関節

各関節の中間位

 

 

関節包パターン

関節包の短縮では、関節包の線維走行により特徴的な可動域制限のパターンが生じるとされており、関節包パターン(Capsjlar pattem)と呼ぶ。この『関節包の緩みが無くなり関節包を締め付けている状態』はフードセーバー(食べ物を袋に入れた後に空気を抜いて圧縮した状態)をイメージすると理解しやすい。

 

 

  • 関節可動域制限が必ずしも関節包短縮だけで生じる訳では無いが、このパターンを呈するのであれば『関節包の短縮が主』と考えられ、関節モビライゼーションが有効となる。
    ※もちろん、実際は関節包パターンだけで決めつけず、エンドフィール評価等も複合して治療選択をすることになる。

  • 関節包の短縮が主な可動域制限で、制限が一方向のみでは無く、複数の運動方向に生じている場合、関節モビライゼーションは、『滑り』ではなく『離開』が効率的な可能性が高い。
    また、この際の離開モビライゼーションは『静止肢位』において施行することで、関節包全体へ効率的に伸張刺激を加えることができる。

 

各関節の関節包パターンは下記のとおりである。(制限の大きい順に表示)

関節 制限(制限の大きい順に表示)

関節

制限(制限の大きい順に表示)

開口制限

頚椎

側屈と回旋が等しく制限・伸展

環椎後頭関節

伸展と側屈が等しく制限

胸椎

側屈と回旋が等しく制限・伸展

肩甲上腕関節

外旋・外転・内旋

腰椎

側屈と回旋が等しく制限・伸展

肩鎖関節

過剰な可動域で疼痛

仙腸・恥骨結合

関節ストレスによって疼痛

腕尺関節

屈曲・伸展

股関節

屈曲・外転・内旋・伸展・外旋

※文献によって諸説あり

腕橈関節

屈曲・伸展・回外・回内

膝関節

屈曲・伸展

上橈尺関節

回外・回内

脛腓関節

関節ストレスによって疼痛

下橈尺関節

全可動域・過剰な回旋で疼痛

距腿関節

底屈・背屈

橈骨手根関節

屈曲と伸展が等しく制限

距骨下関節

内反制限

 

関節包パターン以外の全ての制限のパターンは『非関節包パターン』と呼ぶ。

関節包パターンの運動制限が『関節包全体の短縮により関節全体が障害されてるため、全て、あるいはほとんど運動方向に制限が生じる(制限の大きさは運動方向によって異なる)』のに対して、

非関節包パターンの運動制限は『1ないし2方向にみられ、他の運動方向には生じない』とされる。原因は、関節包部分短縮を含めた非収縮性組織、収縮性組織、関節内の障害など、様々な原因が考えられる。

 

 

筋の反射的短縮=筋ガーディング(muscle guarding)・筋スパズム(muscle spasm)

筋ガーディング:

『筋以外の何らかの原因』により、防衛のために筋が反射的に短縮してしまった状態。

 

筋スパズム:

筋ガーデニングによる筋の持続的収縮が続くことにより筋組織自体に代謝的変化が生じてしまい、『筋以外の何らかの原因』が除去された後も反射的に生じた筋短縮が残存している状態。律動的な筋収縮が持続してしまっているため、筋そのものが痛みの原因となってしまう。

 

※『何らかの原因』とは外傷・痛み・炎症・感染・感情的な緊張・不動などである。

※筋ガーディングも筋スパズムも「可動域制限」や「痛みの悪循環」の原因となりうる。

※筋ガーディング・筋スパズムともに、PIRなどの等尺性収縮後弛緩テクニックは適応となり、特に筋スパズムによる可動域制限・疼痛に対しては、有効な根本治的療法となり得る。また、関節モビライゼーション(カルテンボーンのグレードⅠ~Ⅱの並進運動やメイトランドのグレードⅠ~Ⅱの振幅)も適応となる。

 

 

 

このサイトでは便宜上、筋ガーディング・筋スパズムの事をまとめて『反射的短縮』と表現している。

それに対して、筋組織の構成体に再構築が生じてしまった短縮は『構造的短縮』と表現している。

 

※慢性的な筋短縮の場合、『反射的短縮』『構造的短縮』のどちらかにキッパリと分かれているという訳では無く、混在していることが多い。

 

 

筋の構造的短縮=筋拘縮

筋組織の構成体に再構築が生じてしまった短縮を、このHPでは『構造的短縮』と表現しているが、これは筋拘縮と同義である。

 

筋の構造的短縮(筋が完全に弛緩している状態における筋の伸張性低下)の主要因は、筋膜であるとされている。
そして、筋膜における下記のような変化が構造的短縮に関与していると言われている。

  1. 筋膜におけるコラーゲン含有量の増加
    組織内のコラーゲン含有量は、その伸張性を規定する要素の一つで、病的に組織内のコラーゲン含有量が増加すると組織の伸張性低下が起こり、このような現象を一般的に線維化(fibrosis)と呼ばれている。
    そして、一定期間の不動により筋周膜・筋内膜におけるコラーゲン含有量が有意に増えて肥厚してしまうことが動物実験により分かっている。


  2. 筋内膜におけるコラーゲン線維の配列変化の減少
    通常、骨格筋が伸張されるためには、筋膜の可動性が必要である。
    そして、筋膜は伸縮性が乏しい一方で、筋内膜を構成するコラーゲン線維が円滑に配列変化を起こすことで可動性を確保している。
    しかし、不動などにより筋線維の長軸方向に対して横走する線維が増えてしまうことで円滑な配列変化が生じなくなり、これが筋膜の可動性低下、そして筋の構造的短縮につながってしまう。


  3. コラーゲン架橋の変化
    筋膜におけるコラーゲンの分子と分子の端末に架橋(クロスリンク)が生成さており、これが筋膜を伸長した際の抗張力となる。そして、この架橋は成長とともに増加し、『生理的架橋』とも呼ばれる。
    一方で、加齢とともに生成される架橋のことを『老化架橋』と呼ばれる。そして、しかし、この架橋は老化のみならず不動によっても生じることが分かっていることや、(生理的架橋のような分子端末ではなく)分子間にランダムに生成されることから『分子間架橋』とも呼ばれる。そして、分子間架橋が生成されたコラーゲンが増加することにより筋膜の可動性低下、そして筋の構造的短縮につながってしまう。


  4. 基質の変化
    ヒアルロン酸やプロテオグリカンなどの基質はコラーゲン線維が配列変化を起こす際の摩擦や摩耗を軽減させる滑剤として機能すると言われている。
    そして、文献では不動によりヒアルロン酸が減少するという結果があり、この結果により『滑剤機能が低下した結果、コラーゲンの円滑な配列変化が生じなくなり、筋膜の可動性低下につながる』という仮説が成り立つ。
    しかし一方で、不動によりヒアルロン酸が増加するという結果もある。この文献におけるヒアルロン酸増加が筋膜可動性低下に繋がる理屈は『ヒアルロン酸の高い吸水性のため水分移動が減少し、これがコラーゲン線維の配列変化の減少を起こす』としている。
    いずれにしても、不動により基質に量的(質的にも)変化が生じてしまうことは確認されており、これらの変化が筋の伸張性に影響を及ぼしている可能性がある。

 

~筋膜以外の要因について~

冒頭で、「筋の構造的短縮の主要因は筋膜である」と記載したが、それ以外の要因として、筋線維の器質的変化も短縮に関与しており、その一つとして筋節(サルコメア)数の減少が挙げられる。
筋節とは横紋筋の筋原線維を構成する最小単位であり、筋を短縮位のままで固定することにより筋節数が減ることが分かっている(筋節長に関しては短くなったという実験報告がある一方で、変化がない、あるいは長くなったという報告もある)。
筋節数が減るということは、大雑把な表現として筋原線維が10の筋節で連なって形成されていると仮定して、この筋節数が6に減ってしまうと4ほど筋原線維は短くなってしまうということになる。
また、筋を短縮位で固定すると筋節数が減る一方で、筋を伸張位で固定すると筋節数が増えることも分かっている。
いずれにしても筋節数の増減は即時的に生じるものではないことは明らかである。すなわち、一度減少してしまった筋節を、再び増やそうと思った場合、セラピストによる介入だけでなく、日常生活に注意したり、定期的なセルフエクササイズを試みたりと、クライアント自身による積極的な行動によって「一定の期間を経ることで徐々に」増えてくると言える。

 

 

※構造的短縮に対するアプローチとしては、筋・筋膜に伸張などの機械的刺激を加える手段、すなわちストレッチング筋膜リリースなどが考えられる。

 

 

筋膜の可動性

骨格筋には、骨格筋全体を覆う最外層の筋上膜(epimysium)があり、骨格筋の内部には下記の2つの筋膜がある。

  1. 筋周膜(perimysium):骨格筋内部の幾つかの筋線維を束ね(=筋束)、それを覆う筋膜
  2. 筋内膜(endomysium):個々の筋線維を包み込んでいる筋膜

※筋上膜は筋外膜とも呼ばれる。
※筋上膜より表層にある膜組織である深筋膜・浅筋膜も含んで分類されることもある。
※広義の膜組織として、高密度平面組織シート(中隔・関節包・健膜・臓器包・支帯)、更にはこのネットワークを靭帯と腱の形で局所高密度化したものも含んで表現されることもあるが、このHPでは、骨格筋の伸張性に深く関与するとされている筋上膜・筋周膜・筋内膜について記載している。

 

 

筋膜は①細胞成分②細胞外成分③基質((粘性に富んだ半流動状態な成分)によって構成される。

  1. 細胞成分:線維芽細胞・脂肪細胞・肥満細胞・マクロファージなど
  2. 細胞外成分:コラーゲン線維・エラスチン線維
  3. 基質:水分・ヒアルロン酸・プロテオグリカンなど

 

 

 

ここから先は、筋膜の構成要素の中で、筋膜の可動性へ特に関与している『コラーゲン線維』『エラスチン線維』『基質』について記載する。

 

 

コラーゲン線維

  • 筋膜において、最も主要な成分である。
  • コラーゲン線維そのものに伸張性はないが、その一方で網目状の線維網を形成することでコラーゲン線維に配列変化が生じ、この変化によって可動性が生み出される。
  • 具体的には、骨格筋が弛緩した状態において様々な方向に配列されているコラーゲン線維が、骨格筋の伸張に伴いその配列も伸張された方向にほぼ平行になり、この配列変化によって筋膜に可動性を生み出すという仕組みとなっている。
  • 筋膜の中でも、特に筋内膜における個々のコラーゲン線維には十分な配列変化が生じること言われている。
  • 筋膜におけるコラーゲンの分子と分子の端末には架橋(クロスリンク)が生成さており、これが筋膜を伸長した際の配列変化に対する抗張力となる。そして、この架橋は成長とともに増加し、ある程度の強さ・硬さのコラーゲン線維に成熟する。

 

 

 

エラスチン線維
  • コラーゲン線維が伸張性の無い線維なのに対して、エラスチン線維は伸張性を有した線維である。
  • エラスチン線維はコラーゲン線維と組になって働いており、筋膜に伸張刺激が加わった際は、まずエラスチン線維の弾力がこれに応じ、さらに強く伸張された際にコラーゲン線維がゆっくりと配列変化を起こすことで伸張方向へ可動し、最後にコラーゲン線維の抗張力によって止まる(筋内膜にはエラスチン線が含まれないとされている)。

 

 

 

基質(水・ヒアルロン酸・プロテオグリカンなど)

  • 筋膜において、細胞成分や細胞外成分は、この基質内に存在する。基質は粘性に富んだ成分であり、コラーゲン線維間の空間を保持する役割を果たし、コラーゲン線維が配列変化を起こす際の摩擦や摩耗を軽減させる滑剤として機能すると言われている。
  • そして、(仮に筋が完全に弛緩しており反射的短縮の要素が完全に除去された状態において)筋を伸長した際のファーストストップで保持すると、時間とともに徐々に筋膜が伸びてくる現象は、この基質による粘性の影響が大きい。

 

 

~まとめとして筋膜のイメージ~

 

筋膜の主成分であるコラーゲン線維には伸張性が無いことや、コラーゲンの配列変化には時間を要すことから、瞬間的に伸張力を加えた際のイメージとしては、セーターのような柔らかく伸縮性に富んだ素材というより、ガーゼのような素材の方が適切と思われる(エラスチン線維も含まれているので多少の伸縮性はあるが)。そしてそのガーゼ様組織が幾重かの層になっており、その網目間や各層の隙間を粘り気のある基質が埋めているといったイメージが分かりやすいのではないだろうか。

 

 

~まとめとして筋膜に伸張刺激を加えた場合の変化~

  1. まずは伸縮性のあるエラスチン線維が伸びる
  2. ある程度伸ばされた時点で基質による粘り気により伸びなくなる
  3. 伸びなくなった後も伸張刺激を持続して加え続けると、(粘り気があるため)ゆっくりではあるが、徐々にコラーゲン線維が主成分なガーゼ様組織で形成された層間が滑走すると同時に、ガーゼ様な網目組織が引っ張られることで筋膜が可動する。
  4. 最後は伸縮性が無いコラーゲン線維の影響で可動がストップする。

※筋膜リリースは、これらのコラーゲン線維・エラスチン線維・基質の性質をSpring and Dashpot Modelとして考慮しながら実施していくことが大切である。 ⇒筋・筋膜リリースに関してはこちら。

 

 

弾性(elasticity)・粘性(viscosity)・粘弾性(viscoelasticity)

弾性:

  • 変位に比例する抗力のこと。
  • 具体的には加えられた外力に応じて変形し、力を除けば元の形状に戻る性質。
  • バネの様なイメージ
  • 筋収縮が全く起きていない状態の筋線維において、コネクチン(筋節のミオシンに入り込んでいくタンパク質)が弾性要素である。

 

 

粘性:

  • 速度に比例する抗力のこと。
  • 流体の粘っこさを示す。
  • ダッシュポットの様なイメージ。
  • 筋膜においては、プロテオグリカンを主成分とする基質が粘性要素である。

 

 

粘弾性:

  • 弾性・粘性が複合された性質のこと。
  • 物体に外力を与えると時間経過に伴って変形し、外力を除くと原形付近まで回復してひずみが残る性質

 

 

粘性要素は力学的モデルにおいて並列弾性要素に含まれ、その一部にダッシュポット(粘性要素を表す流体とピストンからなる系)を加えることにより表現されるが、厳密には直列弾性要素にも少なからず粘性要素は含まれている。

したがって、骨格筋の伸張性に関しては、弾性要素に粘性要素を加えた粘弾性要素として考えていく必要がある。

具体例としては、骨格筋を急激に伸張すると『瞬間的に強い抵抗(受動張力)を感じるが、時間とともにゆるんでくる現象』、更には『骨格筋を一定の力で伸張すると筋長が時間差をもって徐々に伸びてくる現象』などがあげられ、これらは速度に比例する粘性要素をよく表している。

そして、筋における粘性要素は筋膜に存在する液体成分、すなわちプロテオグリカンを主成分とする基質によって発揮されると考えられている。

 

 

神経系の機能解剖

 

~神経線維と結合組織~

  • 神経線維は神経における最小単位であり軸索・シュワン細胞・ミエリン鞘(軸索を覆う鞘)で形成されている。

  • 神経線維は『神経内膜』によって囲まれており、この神経内膜はヘンレ鞘(Henle’sheath)とも呼ばれている。
    各神経線維の電気的活動は神経内膜と髄鞘によって互いに絶縁されており、互いに影響を受けない。(関連記事⇒『ブログ:無随線維も絶縁されている』)

  • いくつかの神経線維は『神経周膜』で強固に束ねられており、この束を『神経束』と呼ぶ。
    神経周膜には以下の特徴がある。
    1. 過剰な緊張に対して、最初に反応し、末梢神経を保護する。(Sunderland 1991)
    2. 密性結合組織であり、それぞれの神経束を形成し、長軸方向の強度と弾性に優れている。
    3. 緊張に対して最も抵抗することができる結合組織である。
    4. 末梢神経は神経周膜の機能により18-22%の慎重に耐えることができ、末梢神経系の断裂を防いでいる(Sunderland&Bradley 1961; Sunderland 1991)

  • 神経束は更に『神経外膜』によって覆われており、いくつかの神経束によって『神経幹』が形成される(私たちが解剖などで肉学的に見えるのは、この神経幹に該当する)。

  • 神経外膜は神経にスポンジのような特徴があるため、圧迫が除かれたときに元の状態に戻ろうとする性質があるとされる。 そのため、「神経の緩衝剤」「神経のパット」などと呼ばれることもあり、圧迫から軸索を保護している。

  • 神経線維の構成体(軸索・シュワン細胞・ミエリン鞘)は『神経における伝導組織』であり、これらが障害された際の痛みは末梢神経因性疼痛に該当する。
    一方で神経内膜・神経周膜・神経外膜は『神経における結合組織』であり、これらが障害された際の痛みは侵害受容性疼痛に該当する。

 

~神経の血管支配~
  • 神経線維は、インパルス伝導及び軸索輸送を維持するために絶えずエネルギーを必要とする。
    したがって、末梢神経は、神経外膜・神経周膜・神経内膜内によく発達した相互に連絡する神経内微小血管系がある。

  • 内在性血管系は、神経外膜・神経周膜・神経内膜内の血管叢からなる。
    外在性血管系は、種々のレベルで神経幹に近づく血管からなり、神経幹を囲む結合組織内を走行し、表層及び深層に血液を供給する。
    このような内在性血管系と外在性血管系の吻合の発達により、神経は血管性疾患に比較的障害されにくい。

  • 軸索輸送により、神経細胞体で形成されたたんぱく、神経伝達物質、シナプス小胞、ミトコンドリアなどの細胞構成成分を末梢の軸索へ運ぶこととなる(順行性輸送)。
    しかし、正常な軸索輸送は様々な原因で障害され、たとえ微細損傷であっても神経の微細環境の変化が生じ、軸索輸送のスピードの変化や軸索原形質の性質の変化が起こることが知られている。
    また、軸索輸送にはエネルギーが必要とされ、輸送に必要なエネルギーは血液によって供給されている。したがって、ニューロンへの血流が障害されると軸索輸送スピードの低下あるいは停止が生じる。神経の血流障害は、比較的軽度な圧によっても変化するため、神経線維へのダメージがなくても軸索輸送は変化する。軸索輸送が障害されると、筋や皮膚などのターゲット組織の栄養変化や細胞体及び軸索へのダメージを引き起こし、痛みやしびれなどの病態生理学的な異常反応の原因となる。

  • 神経への血流は、神経の伸長が約8%を超えると次第に低下し、約15%で完全に遮断される。したがって、神経系の運動や伸張性に障害がある場合には、神経系にストレスが加わると栄養血管の血流が低下し、軸索が低酸素状態に陥り、異所性インパルスを発射してしまう。
    これらのことから、神経系にストレスが加わるような手技を用いる場合は、(持続的ではなく)間欠的に実施する必要がある。
    また、長時間の正座など、日常生活で長時間神経に圧迫や伸張ストレスが加わる姿勢を保持し続けることは避けた方が良い。

 

~神経結合組織の神経支配~
  • 神経内膜・神経周膜・神経外膜は広義の意味では「神経」と表現されるが、これらは結合組織でもあるため神経支配を受けている。
    神経線維の軸索からは枝分かれしたものが伸びており、これが結合組織(神経内膜・神経周膜・神経外膜)を支配している。
    すなわち「神経(狭義の神経)が神経(結合組織も含めた広義の神経)を支配している」と表現できるため、上記のように軸索から枝分かれした神経は『nervinervorum(神経の神経)』と呼ばれる。

  • nervinervorum以外では、前述した血管周囲の神経叢から枝分かれしてきた神経が、これらの結合組織(神経内膜・神経周膜・神経外膜)を支配している。
    すなわち、神経も神経支配を受けているため、これらの組織が傷ついた場合は痛みの原因となりえる。

  • まとめとして、結合組織は以下の要素により神経支配を受けている
    1. 内在性の神経支配⇒nervinervorumによる
    2. 外在性の神経支配⇒血管動神経による

 

~神経組織とメカニカルインタフェース~

 

神経系(主に末梢神経)の機能異常を考える場合、神経組織・メカニカルインタフェースという分け方を用いると整理がつきやすい。

ここでは、これまで述べてきた神経組織と、メカニカルインタフェースについて記載する。

  • 神経組織は以下の2つの要素からなる

    1. 伝導組織(=神経線維:狭義の神経)
      ⇒末梢神経因性疼痛(神経特有の疼痛)の原因になる
      ※伝導組織は「狭義の神経」と言える。
      ※伝導組織は、伝導に関与する組織である「軸索」・「細胞体」・「樹状突起」・「軸鞘」などを指す。

    2. 結合組織(+伝導組織=広義の神経)
      ⇒侵害受容性疼痛の原因になる
      ※結合組織と前述した伝導組織(狭義の神経)を合わせたものは「広義の神経」と言うことができる。


  • メカニカルインタフェース
    • 神経周囲にある組織(筋・骨・腱・椎間板・靭帯・筋膜・血管など)をメカニカルインタフェースと呼ぶ。
      例えば、手根管は正中神経のメカニカルインタフェースであり、椎間孔は脊髄神経や神経根のメカニカルインタフェースである。

    • 神経組織はメカニカルインターフェイスから機械的影響を受けることになる。

    • メカニカルインタフェースは神経の周囲にある組織すべてが該当するため、浮腫・骨棘・浸出液・血液・神経と周囲組織の癒着なども、「病的なメカニカルインターフェイス」に該当する。
      病的なメカニカルインタフェースは、神経系の運動性に影響を与えてしまう。
      また、 機械的ストレスに対する閾値の低下(機械感受性の上昇) も招くことになり、 本来なら問題ない程度のわずかな刺激(神経の滑走・伸張・圧迫など)でも症状が出現してしまうことになる。

    • すなわち、神経系の機能を考える場合、神経組織のみならず、メカニカルインタフェースにも着目する必要がある。

 

~神経系のメカニズム~

 

神経系の身体運動に対する適応は、滑走、伸張、圧迫という三つのメカニズムによって行われる。

 

滑走:

神経には機械的な機能を有しているが、その中には以下の2つのレベルでの滑走が含まれる。

  1. 神経外:神経系とインターフェイスとの間の滑走
    ※神経外の滑走では神経鞘(ミエリン鞘ではないので注意)が関与しているといわれている。
    ※神経鞘は多層性の薄い膜であり、腱鞘のように神経が滑走しやすいように機能いている。

  2. 神経内:神経束間の滑走
    ※神経外膜(柔らかい疎性結合組織)が関与している。

 

緊張:

関節運動における緊張は、以下のように生じる。

  • 関節可動域の最初で神経の緩みがなくなる
  • 関節可動域の拡大にと伴い、神経の滑走が起こる
  • 最終域に向かうにしたがって滑走が減少し、緊張が高まる。
    ※例えばSLRでは下記のように滑走と緊張が生じる。
    0°~35°で坐骨神経の緩みがなくなり35°以降に滑走がみられ70°~90°で終わる。また、60°以上から緊張が増加する。(Charnley,1951,Smith,1956)

 

圧迫:

神経組織はメカニカルインターフェースにより加えられた力に対して変形する。
例えば脊柱の伸展、同側の側屈により脊柱管・椎間孔が狭小化するし、メカニカルインタフェースが神経系に作用する。

主として、圧迫に抵抗する結合組織は「神経外膜」であり、神経外膜はクッションのように機能し、過剰な圧迫から神経系を保護する。
以下には、神経系の圧迫に関する簡便な概念を記載していく。

  • オープニング :
    • 神経周囲の空間が増加し、神経組織への圧迫が減少することを指す。
    • オープニングの例:
      ・胸郭出口症候群に対する肩甲骨挙上
      ・坐骨神経の圧迫を軽減するための梨状筋のリリース
      ・脊柱の屈曲と対側側屈(椎間孔の拡大による)による神経根圧迫の軽減

  • クロージング:
    • 神経周囲の空間が減少し、神経への圧迫が増加する。
    • クロージング方向の動きや姿勢によりメカニカルインターフェイス(手根管・足根刊・椎間孔・筋など)が神経を圧迫する。
      このような圧迫は正常現象(生理的圧迫)であるが、クロージングが過剰となると神経に障害が生じる可能性がある
    • クロージングの例:
      ・回外筋症候群:回外筋の過剰収縮による後骨間神経の圧迫
      ・回外筋の伸張による後骨間神経の圧迫
      ・梨状筋症候群:梨状筋の過剰収縮による坐骨神経の圧迫

 

~脊柱における神経系の緊張・圧迫の関係~
  • 脊柱を屈曲すると神経組織の緊張が高まり、神経組織への圧迫は減少する。
  • 脊柱を伸展すると神経組織の緊張が低下し、神経組織への圧迫は増加する。
  • 神経の滑走性や伸張性による症状は、脊柱屈曲により誘発される。
  • 脊柱屈曲により脊柱管が拡大し、脊柱神経組織の圧迫が減少するため、脊柱管・椎間孔狭窄症状は屈曲(前屈)により軽減し、伸展(立位・歩行)により増悪する。

神経系への刺激は、持続的伸張ではなく数秒以内の運動(刺激)にとどめるべきである

  • 神経系組織には粘弾性がみられる。セラピストはこの粘弾性の性質を利用して神経内の機械的機能に影響を与えることができる。神経組織に力を加えるとき安全な粘弾性効果は数秒以内に起こる (Tainら1980;MIllesiら1995) 。
  • 一方で、手技を長く保持すると神経内に虚血が生じ、神経組織にリスクを与える。
  • したがって、神経組織に対する粘弾性効果を狙う場合は、神経に対する持続的なストレッチング(伸張)なく、数秒以内の刺激にとどめるたほうが、安全といえる。

 

~神経障害の原因~

 

神経系に病理的過程を引き起こす原因として以下と2つが挙げられる。

  1. 血管性要因
  2. 機械的要因

1に関して、神経を栄養する血流が障害されることによって神経系が影響される場合がある。


2に関して、摩擦・圧迫・張力等の物理的外力によって神経系が影響される場合がある。

 

1・2の要因が混在する場合もあるが、神経圧迫の初期の段階では、血管性要因が優位であるとされる。
血管性要因が優位である場合には、神経組織への影響は必ずしも直接的かつ大きな外力を必要としていない。

 

20㎜Hg程度の比較的軽度の圧力増加によっても正常な血流を保つ圧勾配が障害され、通常の運動、姿勢、反復的な筋収縮などでも神経の栄養が障害される。


この様に、神経系の血管性要因に着目することは非常に重要となってくる。

例えば、手根管のようなトンネル内にある神経を栄養するためには、血液がトンネル内から神経線維内に十分に流入し、神経線維内に流入した血液は再びトンネル内に流出されなければならない。

しかし、トンネル圧が静脈圧よりも大きくなった場合は、静脈の排出が障害される。このような状況は20~30㎜Hgの低い圧でも起こる。手根管症候群におけるトンネル圧の増加は、屈筋腱の肥厚・滑膜組織の肥厚・浮腫によって生じる。

そして、静脈うっ血によって生じる低酸素によって神経栄養は障害される。

 

神経虚血では、直径の小さな線維よりも直径の大きな線維が速く障害され、痛みやしびれなどの症状の原因となる。

さらに低酸素状態が続くと毛細血管皮が損傷し、たんぱくを豊富に含んだ浮腫が漏出する。この漏出によって神経内膜の液体圧が上昇し、神経内圧が上昇する。


一方、たんぱくを豊富に含んだ浮腫は線維芽細胞の増殖を促進し、神経外膜組織、神経束内に線維症を生じさせる。線維化による神経内及び結合組織の容積の増加は、神経内圧を更に増加させ、悪循環が確立する。

未熟な軸索や神経朱が瘢痕化組織によって刺激されると異常なインパルス発射が出現するようになる。