この記事では、松葉杖に関して使い方などを紹介している。

 

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松葉杖の構造と基本的な使い方

 

まずは、松葉杖の構造と基本的な使い方を記載していく。

 

松葉杖の構造・使い方

 

松葉杖の基本的な構造は以下から構成される。

 

・腋樹当て(脇当て)

 

・支柱

 

・グリップ

 

・杖先および杖先ゴム

 

 

前述した「腋窩当て」と呼ばれる部分に関して、実際に腋窩で体重を支持するのではなく、腋窩より2~3横指程度下方(側胸部)に当て脇を締めて支持する。

 

なぜ腋窩で体重支持しないかの理由は以下の通り。

 

腋窩で体重を支持してしまうと、腋窩への過剰なストレスが起こり、圧迫性神経障害や血流障害が生じてしまう危険性があるから。

 

以前の松葉杖は、高さ調整にボルトやナットが使用されており時間がかかったが、最近の松葉杖は長短時間で調整できるようになっている。

 

 

 

松葉杖の長さ調整

 

松葉杖は使用する人に合わせた長さに調節してから使用する必要がある。

 

でもって、cane(T字杖など)は杖全体の長さ(杖先からグリップまでの長さ)のみを調整すれば良いのだが、松葉杖は以下の2つを調整する必要がある。

 

  • 杖先から腋窩当て(=松葉杖全体)の長さ
  • 杖先からグリップまでの長さ

 

 

松葉杖全体の長さ調節:

 

「松葉杖全体の長さ」は以下などの考えがある。

 

①腋窩から靴底までの長さに5cm加えた長さ

②腋窩から靴の前方15cmの長さである

③身長から41cmを引いた長さ

④身長の77%の長さ

 

でもって、上記の中で最も普及している方法は③である。

 

 

松葉杖の「杖先からグリップまで」の長さ調節:

 

「杖先からグリップまでの長さ」は、前述したcane(T字杖など)と同様で以下の通り。

・大転子の高さ

・あるいは橈骨茎状突起(おおよそ手首のシワが出来る部分)

 

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最終的な松葉杖の適合性判定

 

前述したような感じで松葉杖の長さを調整していくのだが、最終的な適合性判定は以下の2点がポイントとなる。

 

ポイント①:

 

足先前方15cmの地点からさらに外方に15crnの地点に松葉杖をついたとき、肘の屈曲角度が約30°であることを確認する(これも前述した「caneの長さ」と同じ)。

 

 

ポイント②:

 

腋窩と松葉杖の腋窩当てとの間に2~3横指の隙間があることを確認する(血管や神経を圧迫しないため)。

 

 

 

 

 

 

松葉杖歩行に必要な筋力

 

松葉杖歩行に必要な筋力は、(健側下肢以外では)以下が挙げられる。

 

  主動筋 作用
肩甲帯下制 広背筋、僧帽筋下部線維 上肢固定、肩甲骨挙上抑制
肩関節内転 広背筋、大胸筋

松葉杖を胸壁に固定(松葉杖は腋窩で支持するのではなく、脇を締めることで固定・支持する)

※理由は前述したとおり。

肩関節屈曲・伸展筋 三角筋 松葉杖を前後に振る(まぁ、必要最小限の筋力があり、推進力がつけばそこまで重要じゃないが)
肘関節伸展筋 上腕三頭筋

杖荷重時に肘をロックする

(肘完全伸展位による骨性のロックではないので誤解なきよう)

手関節伸展筋 橈・尺手根伸筋 杖の握りの保持、固定
手指屈筋 浅指屈筋、深指屈筋群 握りの把持、握りの振りだし方向の決定

 

 

松葉杖を使用した歩行

 

松葉杖を使用した歩行としては、以下の松葉杖は以下のイラストの様にして使用する。

 

※イラスト左が「小振り歩行」、右が「大振り歩行」になる。

 

 

ただし、以下などの理由で上記の様なダイナミックな歩行が難しく、他の松葉杖歩行を指導することも多い。

  • バランス能力(筋力も含む)に問題がある(関連⇒『バランスって何だ?』)
  • 小まめな方向転換が必要
  • 雨天で床が滑り易い

・・・・・などなど。

 

でもって、他の松葉杖歩行としては以下などが挙げられる。

 

 

松葉杖を使用した「2動作歩行」

 

両松葉(2本の松葉杖を使用)な2動作歩行として、以下を指導する。

 

※左下肢が患側と想定

 

①「右側松葉杖」と「左下肢(=患側)」を同時に出す。

 

②「左側松葉杖」と「右下肢(=健側)」を同時に出す

 

上記①②の2動作を繰り返すこによる歩行なので「2動作歩行」となる。

 

大振り・小振り歩行に比べて歩行スピードは低下するが、慎重に歩行をするのに適している。

 

 

松葉杖を使用した「4動作歩行」

 

 

上記が4動作歩行となる(左下肢が患側と想定)。

イラストの観覧順序は「右側⇒左側」なので注意してほしい(右側⇒左側ではない)。

 

  1. 「右側松葉杖」を出す。
  2. 「左下肢(=患側)」を出す。
  3. 「左側松葉杖」を出す。
  4. 「右下肢(=健側)」を出す。

 

 

片松葉による歩行もあるよ

 

この記事では両松葉(2本の松葉杖を使用する方法)による歩行を紹介したが、例えば整形術後から徐々に部分荷重が許可されいくケースにおいては、両松葉から片松葉(1本の松葉杖のみ使用)に切り替えたりしていく。

 

片松葉の歩行方法はcaneと同様であり以下の通り。

※一般的には健側の上肢で松葉杖を把持する。

 

片松葉による2動作歩行:

  1. 松葉杖と患側下肢を同時に出す。
  2. (松葉杖と患側下肢で荷重しながら)健側下肢を出す。

 

片松葉による3動作歩行:

  1. 松葉杖を出す。
  2. 患側下肢を出す
  3. (松葉杖と患側下肢で荷重しながら)健側下肢を出す

 

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松葉杖と階段昇降

 

階段昇降練習は、部分荷重歩行が確実になってから行い、2足1段(1段ごとに足を揃えて上がる方法)で行うのが安全である。

 

両松葉杖を使用した階段昇降の手順は以下の通り。

 

両松葉を使用した昇段:

  1. 昇りは健側下肢からの始動で、まず健側下肢を1段上に乗せる。
  2. 次に「患側下肢」と「両方の松葉杖」を健側下肢と同じ段に同時に乗せる。
  3. ①②を繰り返す。

 

両松葉を使用した降段:

  1. まず「患側下肢」と「両方の松葉杖」を1段下に降ろす。
  2. 次いで健側下肢を降ろす。
  3. ①②を繰り返す。

 

上記を簡潔にまとめると以下の通り。

 

昇段:「健側下肢」→「杖・患側下肢」の順

 

降段:「杖・患側下肢」→「健側下肢」の順

 

 

片松葉杖orT字杖を用いた階段昇降

 

片松葉杖(1本のみの松葉杖)やT字杖を用いた「部分荷重での階段昇降」も前述した両松葉杖の方法と同様で、「杖と患側下肢はコンビで動かす」と覚えておけば理解しやすい。

 

また、通常は階段に手すりが設置してあるので、その手すりも利用することで安全な階段昇降がしやすくなる。

 

 

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以下の記事は、松葉杖も含めた『杖(ケーンやクラッチ)』を包括的に解説している。

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また、歩行補助具自体の種類や選び方については以下も参照。

 

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