サザーランドの頭蓋領域のオステオパシー

サザーランドが提唱していたクラシカルな頭蓋領域のオステオパシーは勉強したことが無いため、文献的な歴史のみ記載しておこうと思います。

頭蓋領域のオステオパシーは、サザーランド(William Garner Satherland:1873-1954)というオステオパス(Doctor of Osteopathy)によって発展しました。

彼は、『頭蓋骨は縫合によって一体化されていて動くことは無い』と教育されていたものの、学生時代からその縫合に強い興味を持っていたとされています。

そして、『どんな構造も、そこには目的や機能がある』として、縫合にも動きがあるのではと考え、様々な研究を行ってきました(例えば、頭の様々なポイントに圧を加え、身体的および感情的に異なる変化や影響が認められたなど)。

また、サザーランドは潮の満ち引きのようなゆっくりとした動きを感じ、それを『「頭蓋骨の呼吸(一次呼吸)』として、「一次呼吸メカニズムは呼吸より上位にあるもので、体のあらゆる機能を調整している」と述べました。

彼は自分の考えを発表しましたが、この考えは長い間オステオパスの仲間に認められませんでした。そして、『頭蓋の概念』は1940年代になってようやくオステオパシーの中に広まっていくことになります。

サザーランドは、彼の50年という月日で研究と実践を重ねて、多くの発見と独自の前進を遂げました。その一つが、今日もオステオパシーの間で認められているバイオメカニカルな歯車モデルの発見です。また、彼の視点は徐々に骨から膜レベル(髄膜の相互張力膜としての機能)へと広がっていきました。

そして、頭蓋治療を行うに当たっての重要な原理として下記の5つは現在でも頭蓋治療を行う多くの学派にとって重要な要素とされています。

  1. 中枢神経固有の自動運動
  2. 脳脊髄液の波動性
  3. 頭蓋内及び髄腔内の膜組織の相互張力
  4. 頭蓋骨関節の可動性
  5. 両腸骨間の仙骨の不随意的運動

※他のオステオパシー手技(ストレインカウンターストレインや筋・筋膜リリースなど)を頭蓋領域に用いることも出来ますが、その場合は各手技特有の原理を用いて行うことになります。しかし、ここで言う『頭蓋領域のオステオパシー』とは上記5つの原理を用いているものを指します。

サザーランドが何十年もかけて行ってきたこれらの先駆的な概念を利用して、様々なDO達が更なる頭蓋オステオパシーのモデルを発展させていきました。
その中でもジョン・E・アプレジャーは頭蓋オステオパシーを頭蓋仙骨療法(Craniosacral Therapy)というコンセプトへと発展させ、1980年代以降に広範の人達(理学療法士を含めた多くのセラピスト、ボディーワーカー、更には一般の人達に至るまで)にも頭蓋オステオパシーを認知させる大きなきっかけを作りました。

※成人における頭蓋骨に関して、解剖学書などには頭蓋骨が動くといったことはあまり書かれていないように思います。そのこととも踏まえて『頭蓋骨は動くのか??』をブログにて考察してみたので、この分野に興味がある方は覗いてみてください。

詳しくはカースケのリハビリblog

頭蓋領域のオステオパシーの主な経歴

1899年:呼吸運動の際の蝶番関節の関節運動は、ちょうど魚のえら呼吸のように斜端面になていることに気が付く。

1932年:頭蓋理論をアメリカ・オステオパシー医師会(AOA:American Osteopathic Association)の学会で発表

1946年:頭蓋オステオパシー協会(Cranial Osteopathic Association)設立(後の頭蓋学会-Cranial Academy)

1950年:AOA委員会で正式に頭蓋理論がオステオパシー医学会の一部として認められる。

※つまり頭蓋領域のオステオパシーが認められるまでに50年かかったということになる。