関節副運動テストとは

関節副運動テストとは、関節副運動2型すなわちジョイントプレイ(関節の遊び)の評価になります。

⇒関節副運動の詳細は用語解説を参照

関節副運動テストの肢位

関節副運動テストは臥位(=非荷重位)にて『静止肢位』・『治療肢位』の2つの肢位で実施していきます。

  1. 『静止肢位』にて実施することで、ジョイントプレイの左右差を確認する。
  2. 特定の運動方向へ可動域制限がった場合は、エンドフィールやPIRによる試験的治療を施行して制限因子を推察し、関節原性と思わる場合には『治療肢位』にてジョイントプレイを評価する。

※『静止肢位』『治療肢位』の詳細は
用語解説参照

※非荷重位での関節評価・治療よりも、実際の訴えが多い荷重位に即した関節評価・治療が重要だとする学派もあります⇒詳細はマリガンコンセプト参照

クライアントがリラックス出来ていることが、この評価をする上で必須条件となります。

そのため、痛みや筋スパズムによりリラックスできない様なら、まずそれらを改善させなければ、正確なテストは出来ません。

評価が出来ない際の手段は幾つかありますが、メイトランドのグレードⅠ~Ⅱの振幅であったり、PIRが有効な場合があります。

また、あまりにもイリタブルな状態であれば、あえてテストは行わず他の手段を用いたり経過観察するという方針も間違いではありません。

静止肢位にしたとき、組織の一部が弱化しており、アライメントがずれている場合もあるので、副運動テストの前にアライメントチェック(視診・触診・エンドフィールも含めて)を実施しておく必要があります。

そしてアライメントがずれているのであれば、それを修正した状態に戻して副運動テストをするようにします。

例えば肩甲上腕関節にて上腕骨の腹側偏位が認められる場合、それ以上副運動テストで腹側へ動くわけはないので、骨頭を元に戻してから評価します。これをしなければ、腹側への動きが少ないといった偽陽性となり間違った治療介入をしてしまうという事になります。

 

関節副運動テストの可動方向・所見・ポイント

テストはKaltenbornのグレードⅡの範囲で行います。

(グレードⅡの詳細は⇒持続的な並進運動参照)

可動方向は下記の3つになります。

  • 離開:治療面に対して垂直へ離すような並進運動
  • 圧迫:治療面に対して垂直へ圧迫するような並進運動
  • 滑り:治療面に対して平行に滑らせるような並進運動

モビライゼーション,治療面

※脊柱(胸腰部)においては非常にジョイントプレイが少ないので振幅も併用したほうが評価しやすいとされています。

これらの方向へ可動させ、関節副運動の大きさや、疼痛について評価していきますが、その際には、これまでの評価(問診・視診・触診・自動・他動運動)を参考にしつつも、先入観を持たずに関節副運動の評価をしていくことが大切です。

また、関節運動学には『凹凸の法則 』なるものが存在するものの、関節構成運動が必ずしもこの法則に沿うものではないとも言われてきています。その点も踏まえて、「屈曲方向へ可動域制限がある⇒この関節は凸の法則だから○○方向への滑りをもっと引き出してあげれば、可動域が改善されるはず」などと法則を当てはめるのではなく、必ず関節副運動テストの結果を踏まえて治療選択をしていく必要があります。

とは言え、凹凸の法則を知っておくことは関節包内運動をイメージする上でも、関節副運動テスト時に優先順位を素早く見極めて効率的に介入していく上でも重要な知識と思われます。

そのため、『治療面』『並進運動』というキーワードも含めて下記に掲載しているので参考にしてみてください。

リンク
⇒『凹凸の法則

各可動方向における、所見から推察されるポイントは下記のとおりです(あくまで推察です)。

離開

  • 過剰な運動範囲:支持組織の損傷や緩み⇒関節モビライゼーション非適用
  • 運動範囲の制限:支持組織の拘縮⇒関節モビライゼーション適用
  • 痛みの増強:結合組織の損傷⇒関節モビライゼーション非適用
  • 痛みの減少:関節面の損傷⇒関節モビライゼーション適用

圧迫

  • 痛みの増強:関節面の損傷
  • 痛みの減少:(圧迫時の疼痛が治療前より減少したのであれば)関節の潤滑が改善した可能性

※圧迫の並進運動は、病態の推察として評価で用いることはあるが、関節モビライゼーション治療として用いない。

滑り

  • 過剰な滑り:支持組織の損傷や過度な緩み⇒関節モビライゼーション禁忌
  • 滑りの制限:支持組織の拘縮⇒関節モビライゼーション適用

※治療肢位における滑り評価は関節面に圧迫も加わらないよう慎重に行う。

過少運動性(haypomobility)と不安定性(instability)

ジョイントプレイが過少な場合を過少運動性(haypomobility)・過剰な場合を不安定性(instability)と呼びます。

また、ジョイントプレイが過剰でも関節機能障害が出現しておらず治療の必要性が無い場合は過剰運動性(hayper mobility)と呼び、不安定性とは区別して考えます。

例えば先天的に関節が多少ルーズでも日常生活には問題ないケースなどです。反張肘で「私、肘をこんなに反らすことが出来るよ」と見せてくれる人がいたり、スポーツ・TV番組で非常に関節が柔らかい人を見ることがあると思います。ただし、治療の必要が無いとは言っても、不安定性に移行する可能性にも留意しておく必要があると思われます。

※機能障害の有無にかかわらず、『ジョイントプレイが大きい状態』をひっくるめて過剰運動性と表現している文献も多いので注意してください。

関節不安定性に関して、『不安定=関節可動域の増大』というイメージがあるかもしれませんが、必ずしもこの限りではありません。 

例えば外反母趾のように不安定でアライメントがずれてしまった状態で自動運動・他動運動を行っても、マルアライメントでは無い状態で動かしているわけで、制限が生じてしまう可能性があります。 

つまり、どの関節においても『不安定な結果、アライメントが変わってしまい、その状態で動けば正常な軌跡で関節が動かず、関節可動域の減少という所見が得られる』ということも有り得るので注意が必要です。

関節不安定性に対する補完的なポイント

関節副運動テストの最終域において疼痛が誘発してしまう場合、関節副運動において不安定性と自身が判断した結果を補完する指標となります。

  • 例えば、腰部椎間関節に対して、棘突起圧迫テストという副運動テストがあります。この際、不安定性な関節は『他の分節に対してよく動く・動きすぎる』と感じます。そして、ズブズブっと腹側へ沈み込んだ最後における『疼痛』とうクライアント主観が得られる場合は、自分の『動きすぎているのではないか?』といった感覚を補完する指標になり得ると思われます。

棘突起圧迫テストの更に詳しいポイントはこちら⇒『リハビリ(理学・作業療法)の素材集

  • もちろん、不安定性な状態でのみ疼痛が出現する訳では無く、過少運動性の場合など、他のケースでも出現する場合があるので、あくまで補完的評価という位置づけになります。

また、関節不安定性に対する補完的評価として、個人的にはマリガンコンセプトも有用であると考えます。

  • とくに、このコンセプトにおける一部のテクニックで容易に(疼痛・可動域へ)好反応を示す反面、効果の持続に乏しいケースに関してです。
  • このような補完的評価にも応用できる点においてもマリガンテクニック習得は非常に有意義だと思っています。

詳細はこちら
⇒『マリガンコンセプトと関節不安定性

過少運動性・不安定性に対するアプローチ

関節が過少運動性と判断された場合のアプローチ

関節が不安定性と判断された場合のアプローチ

  • 姿勢指導
  • 安定性訓練
  • テーピング

などなど・・・・・・・・・・・

これらにより関節の安定化を図るとともに、関節への過剰なストレスを抑制します。

脊柱に関しては、不安定性分節があり、なおかつ隣接したレベルに過少運動性分節が存在する場合、関節モビライゼーションを実施することで過少運動性分節の動きを出してあげることで、問題となっている不安定分節のストレスを軽減させます。