筋・筋膜リリース(Myofasciarl release)
筋膜リリースの対象組織
筋膜リリースの対象となる『組織』とは、浅筋膜・深筋膜・筋上膜(筋外膜)・筋周膜・筋内膜に加え、高密度平面組織シート(中隔・関節包・健膜・臓器包・支帯)、更にはこのネットワークを靭帯と腱の形で局所高密度化したものも含んでいます。
これらの『組織』は身体全体を通じて連続的に緊張したネットワークを形成しているとされ、全ての器官・あらゆる筋肉・あらゆる神経・小さい筋線維さえも覆って連結しています。また、筋膜は機械的受容器や侵害受容器を含む多くの知覚性神経終末が高密度に分布しています。
更には、運動器官(筋紡錘・ゴルジ腱器官・神経・筋・腱・支帯・関節など)の構造全てに連結されていることから、運動器官の多くの機能障害を左右する可能性があるとしています。
筋膜リリースの対象となる『組織』は外傷・廃用・不良姿勢など様々な原因で変性(コラーゲン線維束のねじれによって筋膜内の基質が量的・質的な変化を起こし、正常なコラーゲンの配列変化から逸脱してしまう状態)してしまうとされています。
具体的に変性が生じる原因とされる項目を下記に記載します。
原因の性質 | 原因 |
---|---|
機械的 | 急性:捻挫・骨折・直接的な外傷 慢性:過用・姿勢・作業・スポーツ |
身体的(物理的) | 温度:熱・寒冷・風・湿度 精神的緊張:苦悶・葛藤・うつ |
化学的 | 栄養:過多・アンバランス・中毒 内分泌:ホルモン |
感染 | 代謝 |
固定・不動 | 構造的短縮(⇒詳しくは用語解説参照) |
筋膜リリースの目的と方法
筋膜リリースの目的は、単なる筋収縮(反射的短縮)のリリース(解除・解放)ではなく、『交差する組織の伸長と筋膜の基質の密度(粘稠度)を変化させることで、コラーゲン線維の配列変化を促すことにある』としています。
そして、コラーゲン線維・エラスチン線維・基質の性質をSpring and Dashpot Modelとして理解することが、筋膜リリースを施行する上で大切となります。Spring and DashpotModelに関しては、図とともに「系統別・治療手技の展開 改訂第3版 」にて分かりやすく解説されているので、興味のある方は参考にしてみてください。
具体的には、まず『組織』に伸張刺激を加えることで、スプリングに例えられているエラスチンが最初に引っ張られます。そして、その伸張力を持続させるように保持することで、ゆっくりと基質の密度が変化することによりコラーゲンの配列変化が生じ、組織の長さにも変化が生じます。
基質の密度が変化するには十分な時間が必要であり、文献によると90秒~120秒程度の持続的伸張が望ましいとされています。これによりコラーゲン線維が徐々にリリースされ、これは「バターが溶けるようにゆっくりと柔らかくなる」などと表現されます。
以下のブログ記事では、スキンローリングも含めて筋膜(浅筋膜)へのアプローチを記載しているので、こちらも参考にしてみてください。
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