横断マッサージ(deep transverse friction massage)

横断マッサージは、筋肉、腱、靭帯などの軟部組織の病変組織に対して、線維走行を横断する摩擦刺激を加えるテクニックです。

別名深部マッサージ(deep transverse friction massage)とも呼ばれ、1940年代前半にJames Cyriaxによりはじめられた整形徒手療法(orthopaedic manual therapy(OMT)のテクニックの一つとされています。

治療目的:
  • 軟部組織の運動性維持
  • 線維の癒着の防止
  • 筋・腱の弾力性を低下させている平行する線維間の癒着の剥離
  • 疼痛の軽減
  • 筋スパズムの減少
治療効果:
  • 機能的配列となっていない線維を機械的に分離し、横方向のコラーゲン線維の形成を阻止
  • 長軸方向のコラーゲン線維の形成を促進
  • 固有感覚受容器への刺激によって、正常な運動感覚や協調性の回復を促し、再損傷の危険性を軽減
  • 治療している筋と周囲の筋御反射性弛緩及び反射性充血
  • 機械的受容器への刺激による疼痛の軽減

機能的マッサージ(Functional massage)

機能的マッサージは、筋に対して用いるテクニックで、「筋線維に対して縦断伸張(関節運動)を伴いながらの縦断マッサージ」を指します。

このマッサージは、1950年代後半デンマーク医師のolesenにより、動けない患者に対して『関節を動かしながら筋を伸長しながら絞る手技をOlaf Evjenthが教えてもらった事から始まるとされています。

Olesenの手技が筋をグループとして施行するシンプルな手技であったのに対し、Evjenthは、個々の筋別に行う特殊な方法として機能的マッサージへと発展させており、この手技も横断マッサージと同様に整形徒手療法(orthopaedic manual therapy(OMT)の一つとして体系づけられています。

治療目的:
  • 筋の外傷などによる瘢痕形成や癒着の改善
  • 筋緊張亢進や短縮による活動過剰な筋肉の弛緩
  • 疼痛(特に筋の伸張時痛)の軽減
  • 最適な血液循環と神経伝導の回復
治療効果:
  • 横断マッサージで記載した治療効果
  • 当該組織へのコントロールされた可動性と伸長性の改善
  • 反復性の筋の縦軸方向への伸張刺激が、縦軸方向の引っ張りに強い膠原繊維の形成を刺激すること

治療の進め方

横断マッサージ・機能的マッサージそれぞれの詳細な実践方法に関しては、『アドバンス版 図解 理学療法技術ガイド』に記載されているので、興味のある方は参考にしてみてください。

ここでは、筋短縮・筋原性の疼痛に対する軟部組織モビライゼーションについて、ドイツのコンセプトを基に、ポイントや組み合わせ例を記載しておきます。

ポイント:
  • 静的なアプローチより関節運動を伴うアプローチのほうが刺激が強い。
    (言い方を変えれば、関節運動をの伴う刺激の方が機能的な刺激ということにもなる)
  • 筋線維に対して横軸方向へ刺激より、縦軸方向への刺激の方が強い。
  • 同じ横軸方向への刺激でも、筋線維を横断するより、(引っ掛けて)伸張する刺激のほうが強い。
  • 疼痛へ配慮する場合は、弱い刺激から強い刺激へ移行したほうが安全である。

これらのポイントを踏まえて軟部組織へ刺激を加えると、下記のような流れになります。

  1. 筋線維に対して、横断マッサージを施行する。
  2. 筋線維に対して、横断伸張を施行する。
  3. 関節運動(=縦断伸張)を伴いながらの横断マッサージを施行する。
  4. 機能的マッサージ(=縦断伸張+縦断マッサージ)を施行する。

横断マッサージ・機能的マッサージの関連ブログ

以下のブログでも「横断マッサージ」「機能的マッサージ」に言及しているので、興味がある方は観覧してみてください。
⇒『横断マッサージ・機能的マッサージ(+違い)