側弯症に対する運動療法として知られる「シュロス法」は、単なる姿勢改善体操ではなく、背骨や胸郭の3次元的な変形を考慮しながら行う側弯症特異的運動療法である。

 

海外ではPSSEの代表的な方法として研究・実践されているが、日本ではまだ慎重な見方もあり、装具療法や手術療法を置き換えるものではない。

 

この記事では、シュロス法の特徴、具体的な方法、よくある誤解、歴史、リハビリ効果に関するエビデンス、日本と海外での位置づけ、他の治療法との違いまで詳しく解説する。

 

シュロス法を過信せず、軽視もせず、側弯症リハビリの一つの選択肢として正しく理解したい方に向けた内容である。

 

目次

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はじめに:シュロス法は「姿勢を良くする体操」ではない

 

シュロス法は、主に側弯症に対して用いられる運動療法の一つである。

英語圏では、Physiotherapeutic Scoliosis-Specific Exercises、略してPSSE、つまり「側弯症特異的運動療法」の代表的な方法として扱われることが多い。

 

側弯症は、単に「背骨が横に曲がる病気」ではない。

実際には、前から見た側方への弯曲だけでなく、以下などを伴う、3次元的な脊柱・体幹変形として理解する必要がある。

  • 背骨や胸郭のねじれ
  • 身体を横から見たときの生理的弯曲の変化
  • 肩・骨盤・体幹の非対称性などを伴う

 

シュロス法も、この3次元的な変形を前提に、姿勢修正、呼吸、筋活動、身体認識、日常生活動作を組み合わせて行うアプローチである。

つまり、「姿勢を良くする体操」や「背骨をまっすぐにする運動」という単純なものではない。

この記事での基本的な立場

シュロス法は、側弯症に特化した保存療法の一つとして国際的に研究・実践されている。

ただし、すべての側弯症を改善させる万能法ではなく、専門医による診断、経過観察、装具療法、手術適応の判断を置き換えるものでもない。

本記事では、期待できる点と限界の両方を整理する。

 

シュロス法の紹介:側弯症に特化した3次元的な自己修正アプローチ

 

シュロス法は、ドイツで始まった側弯症に対する保存的運動療法である。

大きな特徴は、患者一人ひとりのカーブパターンに応じて、姿勢を3次元的に修正し、その修正姿勢を呼吸や筋活動、日常生活動作の中で再学習していく点にある。

 

一般的な体幹トレーニングでは、「腹筋を鍛える」「背筋を鍛える」「姿勢をまっすぐにする」といった説明になりやすい。

しかしシュロス法では、側弯のカーブが胸椎主体なのか、腰椎主体なのか、骨盤や肩甲帯がどのようにずれているのか、胸郭のどこが凹み、どこが突出しているのかを見ながら、修正方向を決める。

💡 ポイント

シュロス法の中心は、「同じ運動を全員に行うこと」ではなく、「その人の側弯パターンに合わせて、修正方向を学ぶこと」である。

 

シュロス法の基本要素を整理すると、次のようになる。

 

要素 内容
3次元的自己矯正 前額面・矢状面・水平面を考慮して姿勢を修正する
回旋呼吸 胸郭の凹側や非対称性を意識し、呼吸を使って修正を補助する
カーブパターン別運動 側弯のタイプに応じて、運動方向や姿勢を変える
姿勢認識 鏡、触覚、視覚情報を使い、自分の身体の非対称性を学ぶ
ADLへの統合 座位、立位、歩行、学習姿勢、荷物の持ち方などへ応用する

 

 

シュロス法の全体像を理解するための動画

 

以下の動画は、Stanford Medicine Children’s Healthによるシュロス概念を用いた理学療法の紹介動画である。

シュロス法が「1回受けて終わりの施術」ではなく、個別評価、自己修正、ホームエクササイズ、日常生活での姿勢管理を含む継続的なプログラムであることを理解しやすい内容である。

 

 

※動画は理解を助けるための参考資料である。動画を見て自己流で実施するのではなく、Cobb角、カーブパターン、成長段階、装具適応などを専門医・専門職に確認したうえで行う必要がある。

 

 

具体的方法:シュロス法では何を行うのか

 

1. まず側弯パターンを評価する

 

シュロス法の実際は、単なる「背骨体操」ではない。

 

最初に重要なのは、側弯パターンの評価である。

医学的には、X線画像によるCobb角、成長段階、進行リスク、装具適応の有無などが重要になる。

リハビリテーション場面では、肩や骨盤の高さ、体幹の傾き、肋骨隆起、腰部の突出、胸郭の動き、呼吸、立位・座位姿勢、歩行や日常動作なども観察対象になる。

 

ここで大切なのは、側弯症の治療方針は運動療法だけで決めるものではないという点である。

軽度では経過観察、中等度では装具治療、高度では手術治療が検討されることがあり、運動療法はその中で補助的・教育的な役割を持つ。

 

 

2. 3次元的自己矯正を学ぶ

 

次に、3次元的自己矯正を行う。

これは、単に「背筋を伸ばす」ことではない。側方へずれた体幹を修正し、ねじれを戻す方向へ誘導し、胸椎や腰椎の生理的なカーブを意識しながら、身体全体の配置を整える。

 

側弯症では、前から見た横方向の弯曲だけでなく、水平面上の回旋、矢状面上の平背や過度な前弯・後弯の変化も問題になる。

そのため、シュロス法では「横に戻す」だけでは不十分で、3つの面を同時に考える必要がある。

 

 

3. 呼吸を使って胸郭の非対称性に働きかける

 

シュロス法で特徴的なのが、呼吸を利用した修正である。

側弯症では、胸郭の一部が凹み、反対側が突出するような非対称性を伴うことがある。

そのため、凹側に空気を入れるように意識しながら、胸郭の動きを引き出す。

 

この呼吸は、しばしば「回旋呼吸」や「rotational breathing」として説明される。

ただし、呼吸だけで側弯が治るわけではない。

呼吸は、姿勢修正、身体認識、筋活動と組み合わせて使われる一要素である。

 

 

4. 修正姿勢を保持する筋活動を学ぶ

 

シュロス法では、修正した姿勢を保持するための筋活動を学習する。

ここでの目的は、単純な腹筋・背筋強化ではない。修正されたアライメントを自分で作り、その姿勢を一定時間保ち、必要に応じて座位・立位・歩行・日常動作に応用できるようにすることだ。

 

つまり、シュロス法の筋活動は「強い筋肉を作る」ことだけを目的にするのではなく、「より望ましい位置で身体を支えられるようにする」ための学習として理解する必要がある。

 

5. 日常生活動作へ統合する

 

最後に重要なのが、ADLへの統合である。

シュロス法では、運動室で正しい姿勢を作るだけでなく、日常生活の中でどのように座るか、勉強机に向かうか、立つか、荷物を持つか、歩くかを考える。

 

たとえば、座位で片側に体重をかける癖、リュックやバッグの持ち方、スマートフォンや学習時の姿勢、立位での骨盤の位置などは、側弯症患者にとって重要な観察ポイントになる。

 

動画① 具体的な理学療法場面をイメージするための動画

以下の動画は、Scottish Rite for Childrenによるシュロス法紹介動画である。

側弯症に対する理学療法が、単なるストレッチや筋トレではなく、個別化された姿勢修正、筋活動、呼吸、身体認識を含むことを視覚的に理解しやすい動画である。

 

※実演動画を見ると真似したくなるが、側弯症の運動療法はカーブタイプによって修正方向が異なる。自己流で行うと、意図した修正にならない可能性がある。

 

 

動画② 運動例を視覚的に理解するための補足動画

以下の動画は、Align Therapyによるシュロス法エクササイズの解説動画である。

座位や側臥位での運動例が示されており、シュロス法が単なる一般的な筋トレではなく、カーブの方向や身体の非対称性を考慮した運動であることを理解しやすい。

 

※動画内でも説明されている通り、紹介される運動は治療の代替ではない。実際の側弯症運動療法は、専門家が個々のカーブパターンに合わせて修正する必要がある。

 

 

シュロス法に対するよくある誤解

 

誤解1:シュロス法は姿勢を良くする体操である

シュロス法には、「姿勢を良くする体操」というイメージがつきやすい。

確かに姿勢修正は重要だが、シュロス法は一般的な姿勢改善体操ではない。

側弯症のカーブパターンに基づいて、3次元的に身体を修正する側弯症特異的運動療法である。

 

誤解2:呼吸法だけで側弯が治る

シュロス法では呼吸を使うが、呼吸だけで完結する方法ではない。

実際には、カーブパターンの評価、自己矯正、姿勢保持、筋活動、身体認識、日常生活動作への応用が組み合わされる。

「呼吸で胸郭を広げる」という説明は分かりやすい一方で、過度に単純化すると誤解を生む。呼吸は重要な要素だが、側弯症治療のすべてではない。

 

誤解3:軽い側弯なら自己流でやってよい

側弯症は、Cobb角だけでなく、年齢、成長段階、進行リスク、家族歴、装具適応などを総合的に評価する必要がある。

自己流の体操で安心してしまい、専門医の診察を受けないまま進行を見逃すことは避けるべきである。

 

誤解4:シュロス法は装具や手術の代わりになる

シュロス法は保存療法の一部として有用な可能性があるが、装具療法や手術療法を置き換えるものではない。

成長期の中等度側弯では装具療法が重要になる場合があり、高度側弯では手術が検討されることもある。

シュロス法を学ぶことは、患者が自分の身体を理解し、自己管理能力を高めるうえで有用である。

しかし、医学的な治療判断を不要にするものではない。

 

誤解5:エビデンスが十分でないなら意味がない

これは非常に重要な誤解である。

エビデンスが低い、または不十分というのは、「効果がない」と証明されたという意味ではない。

研究数が少ない、対象者が限られている、介入方法が統一されていない、追跡期間が短い、比較対象が異なるために、どの条件でどの程度効果があるかをまだ断定しにくいという意味である。

 

大切な補足

「エビデンスが低い=効果がない」ではない。

一方で、「少し研究がある=必ず効果がある」でもない。

現時点では、専門医の管理下で、装具療法や経過観察と矛盾しない形で、補助的・教育的な運動療法として検討するのが現実的である。

 

歴史:Katharina Schrothから現代のPSSEへ

 

シュロス法の創始者は、ドイツのKatharina Schrothである。

Katharina Schroth自身も側弯症を有していたとされ、自らの身体を観察しながら、鏡と呼吸を用いて体幹の非対称性を修正する方法を模索したことが、シュロス法の原型になったと説明されている。

 

その後、娘のChrista Lehnert-Schrothが方法の体系化と普及に貢献した。

さらに、Hans-Rudolf Weissらによって、古典的シュロス法は現代的に整理され、Schroth Best Practiceなどのプログラムへ展開していった。

 

ただし、現在「シュロス法」と呼ばれるものは一枚岩ではない。

BSPTS、Rigo Concept、ISST、Schroth Best Practiceなど、シュロス法に由来する複数の教育体系や流派が存在する。

そのため、「シュロス法」と一括りにしすぎず、古典的シュロス法、現代的なSchroth Best Practice、BSPTS/Rigo系のPSSEなどには違いがあると理解する必要がある。

💡 補足

シュロス法は歴史ある方法だが、現代ではPSSEの一つとして再整理されている。

つまり、「昔ながらの体操」ではなく、側弯症保存療法の中で発展し続けている概念として見る方が正確である。

 

エビデンス:シュロス法の効果はどこまで分かっているか

 

シュロス法のエビデンスを見る際には、評価指標を分けて考える必要がある。

代表的なのは、Cobb角、体幹回旋角、外観、QOL、筋持久力、痛み、装具との併用効果、長期的な進行抑制などである。

 

比較的よく引用される研究の一つに、Schreiberらのランダム化比較試験がある。

この研究では、思春期特発性側弯症患者を対象に、標準ケアにシュロスPSSEを追加した群と標準ケアのみの群を比較し、6か月時点ではシュロス群でCobb角に有利な結果が示された。

 

ただし、この研究は「標準ケアにシュロスPSSEを追加した場合」の検討であり、装具療法や経過観察を置き換える治療としてシュロス法単独を検証したものではない。

したがって、臨床的には「標準治療に追加する補助的介入として有望」と読むのが適切である。

 

 

2026年時点でのエビデンス整理

 

2023年のシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、シュロス法がCobb角、体幹回旋角、QOLに良い影響を与える可能性が報告されている。

一方で、対象者数、介入方法、追跡期間、比較対象にはばらつきがあり、すべての患者に同じ効果を期待できると断定することはできない。

 

2025年のPeerJのメタアナリシスでは、11件のRCT、計446名を対象に検討され、Schroth exercisesはCobb角の有意な低下とQOL改善に関連した。

一方で、体幹回旋角への効果は有意ではなく、Cobb角の平均変化は臨床的に重要とされる5度の閾値には達していないとされている。

この点は、読者に過度な期待を与えないために重要である。

 

さらに、2025年のFrontiers in Medicineのネットワークメタアナリシスでは、軽度〜中等度の思春期特発性側弯症に対する運動療法を比較し、Schroth exercisesはCobb角とATRに対して有効性が示された。

ただし、研究数の少なさ、研究間のばらつき、バイアスリスクにより、全体的なエビデンスの確実性は低いとされている。

 

 

Cobb角への影響

 

一部の研究では、シュロス法またはシュロスPSSEを標準ケアに追加することで、Cobb角の改善や進行抑制に有利な結果が示されている。

ただし、Cobb角は成長期の自然経過、装具装着時間、カーブタイプ、初期角度などの影響を受けるため、運動療法単独の効果として単純に解釈しないことが重要である。

 

なお、ここでいう「改善」や「良い影響」は、研究上の評価指標における変化を意味する。

すべての患者で見た目の変化やCobb角の改善が得られるという意味ではなく、成長段階、カーブタイプ、装具併用、実施頻度、継続期間によって結果は異なる。

 

 

体幹回旋角・外観への影響

 

側弯症は回旋変形を伴うため、Cobb角だけでなく、体幹回旋角や肋骨隆起、外観上の非対称性も重要な評価項目である。

シュロス法は3次元的自己修正を重視するため、これらの指標に良い影響を与える可能性があるが、メタアナリシスによってはATRへの効果が一貫しない結果も報告されている。

 

 

QOL・自己管理への影響

 

側弯症では、身体の見た目、装具装着、学校生活、スポーツ、心理的ストレスなどがQOLに影響する。

シュロス法は、患者が自分の身体を理解し、姿勢を自己修正する方法を学ぶため、自己効力感や治療参加意識を高める可能性がある。

 

エビデンスの読み方

シュロス法には肯定的な研究結果があるが、「全員に効く」「装具や手術が不要になる」とまでは言えない。

エビデンスは、対象者、病期、カーブタイプ、治療頻度、装具併用の有無、追跡期間によって解釈が変わる。

 

 

肯定的な意見と批判的な意見

 

肯定的な意見

 

シュロス法の肯定的な意見として最も大きいのは、側弯症に特化している点である。

一般的な体操や筋トレと異なり、側弯のカーブパターン、回旋、胸郭変形、姿勢習慣を前提に運動を組み立てる。

そのため、患者は自分の身体の特徴を理解しやすくなる。

 

また、シュロス法には患者教育としての価値がある。

自分の側弯がどの方向に崩れやすいのか、どの姿勢が負担になりやすいのか、どのように修正すればよいのかを学ぶことは、自己管理能力の向上につながる。

 

装具療法との併用という観点でも意義がある可能性がある。標準ケアにシュロスPSSEを追加した研究では、短期的にカーブ重症度の改善が示されている。

ただし、これは「装具の代わりになる」という意味ではなく、標準ケアに追加する補助的介入として有望だという意味である。

 

 

批判的な意見

 

一方、批判的な意見としては、効果が過大に宣伝されやすい点がある。

「側弯が治る」「装具不要」「手術を避けられる」といった表現は慎重に扱うべきである。

 

側弯症の進行には、年齢、性別、成長段階、初期Cobb角、カーブタイプ、装具装着時間など多くの要因が関わる。

運動療法だけで結果を保証することはできない。

 

また、シュロス法は専門性に依存する。カーブパターンの評価、修正方向、運動の難易度設定、成長期のリスク管理、装具との併用判断には、専門的知識と経験が必要である。

見よう見まねの動画学習だけで行うと、適切な修正方向が分からず、単なる姿勢運動になってしまう可能性がある。

 

 

日本での慎重な位置づけ

 

海外では、シュロス法はPSSEの一つとして研究・教育体系の中で扱われている。

SOSORTのガイドラインでも、保存療法の中でPSSEが取り上げられ、装具療法や評価、呼吸機能、スポーツ活動などと並んで検討されている。

 

一方、日本では、側弯症治療の中心は専門医による経過観察、装具療法、手術療法である。

日本側彎症学会は、医学的根拠のある有効な治療法として装具治療と手術治療を示し、軽度のカーブでは定期的なX線検査と整形外科医の診察、中等度では装具治療、高度では手術治療を説明している。

 

日本側彎症学会は、シュロス法などのPSSEについて、科学的なデータの集積は行われているものの、効果はまだ十分に検証されておらず、さらなるデータ蓄積が必要と説明している。

また、運動療法を行っている場合でも、側弯症の評価や治療法を考えるうえで専門医による定期的な診察は必須としている。

 

日本での現実的な位置づけ

海外ではPSSEとして研究・教育体系が進んでいる。

一方、日本ではまだ慎重な立場が強く、標準治療を置き換えるものではなく、専門医管理下での補助的・教育的な保存療法として位置づけるのが現実的である。

 

その他の治療方法との違い

 

シュロス法を理解するには、他の側弯症治療との違いを整理すると分かりやすい。

 

方法 主な目的 シュロス法との違い
経過観察 軽度側弯の進行確認 積極的な運動介入ではなく、定期的に進行を確認する
装具療法 成長期側弯の進行予防 外部から脊柱を支持・矯正する。シュロス法は自己修正を学ぶ
手術療法 高度側弯の矯正・固定 構造的矯正を目的とする侵襲的治療
一般的な体幹トレーニング 筋力・安定性向上 側弯カーブ別の3次元修正は必ずしも含まない
ピラティス・ヨガ 姿勢、柔軟性、呼吸、体幹制御 側弯症特異的評価に基づくとは限らない
SEAS 自己矯正と機能的運動 シュロス法とは別系統のPSSE
徒手療法・整体 疼痛軽減や可動性改善を目的に行われることが多い 側弯の進行抑制やCobb角改善の根拠とは分けて考える必要がある

 

ここで重要なのは、優劣で単純に比べないことである。

軽度側弯で成長リスクが低ければ経過観察が中心になることもある。

中等度で成長期なら装具療法が重要になる場合がある。高度側弯では手術が検討されることもある。

 

シュロス法は、その中で自己修正能力、姿勢認識、体幹制御、日常生活での姿勢管理を支える役割を持つ。

 

 

今後の展望

 

今後のシュロス法、あるいはPSSE全体の課題は、研究の質と臨床実装の両方にある。

 

研究面では、より大規模で長期的な研究が必要である。

短期的なCobb角や体幹回旋の変化だけでなく、成長終了までの進行抑制、装具との併用効果、手術回避率、QOL、痛み、呼吸機能、自己効力感、成人期への影響まで評価する必要がある。

 

臨床面では、医師、理学療法士、義肢装具士、運動指導者、家族が連携する体制が求められる。

特に成長期の側弯症では、運動療法だけでなく、装具装着時間、学校生活、心理的負担、身体イメージ、スポーツ活動、家族のサポートなどが治療継続に影響する。

 

日本では、PSSEを提供できる施設や専門職がまだ限られている。

今後は、標準治療との関係を明確にしながら、医療機関内で安全に運動療法を提供できる体制、教育プログラム、研究ネットワークが整備されることが期待される。

 

オンライン指導や動画教材の活用も広がる可能性がある。

しかし側弯症の運動療法は、カーブパターンに応じた個別性が高いため、動画を見て自己流で行うことには限界がある。

オンラインを使う場合でも、初期評価、修正方向の確認、定期的な専門家チェックが必要である。

 

 

まとめ:シュロス法は過信せず、軽視もしない

 

シュロス法は、側弯症に対する3次元的な運動療法であり、PSSEの代表的な方法の一つである。

単なる姿勢体操ではなく、カーブパターンに基づいた自己修正、回旋呼吸、姿勢認識、筋活動、日常生活動作への応用を含む。

 

エビデンス面では、思春期特発性側弯症に対して、Cobb角やQOLに良い影響を示す研究やメタアナリシスがある。

一方で、体幹回旋角への効果は一貫しない結果もあり、研究規模、追跡期間、介入方法のばらつき、長期効果の不確実性などの課題も残っている。

 

したがって、シュロス法は「側弯症を必ず治す方法」でもなければ、「エビデンスが不十分だから意味がない方法」でもない。

現時点では、専門医の評価と標準治療を前提に、側弯症患者の自己管理能力、姿勢認識、体幹制御、QOLを支える補助的な保存療法として捉えるのが適切である。

 

最も避けるべきなのは、シュロス法を信じすぎて専門医の診察や装具療法を中断することである。

一方で、慎重な医学的管理のもとで正しく行えば、患者が自分の身体を理解し、治療に主体的に関わるための有用な選択肢になり得る。

 

最終メッセージ

シュロス法は「魔法の体操」ではない。

しかし、側弯症を3次元的に理解し、患者自身が姿勢と身体の使い方を学ぶための有用なリハビリテーション・コンセプトである。

過信せず、軽視もせず、医学的管理の中で適切に活用することが重要である。

 

参考文献・リンク

 

  1. 日本側彎症学会「側弯症の治療はどのように行われるか?」
    日本における側弯症の標準的な治療説明を確認できる資料である。経過観察、装具治療、手術治療、PSSEに対する慎重な見解、専門医による定期診察の必要性を確認できる。
  2. 日本側彎症学会「患者の皆さまへのお知らせ」
    日本側彎症学会が、側弯症運動療法の効果に関する論文調査に基づき、ホームページの説明文を変更したことを確認できる資料である。
  3. Negrini S, et al. “2016 SOSORT guidelines: orthopaedic and rehabilitation treatment of idiopathic scoliosis during growth”
    思春期特発性側弯症の保存療法に関する国際的なガイドラインである。装具療法、PSSE、評価、スポーツ活動、呼吸機能など、側弯症保存療法の国際的文脈を確認できる。
  4. Weiss HR. “The method of Katharina Schroth - history, principles and current development”
    Katharina Schrothの歴史、シュロス法の原理、古典的シュロス法から現代的な発展までを確認できる基礎文献である。
  5. Berdishevsky H, et al. “Physiotherapy scoliosis-specific exercises – a comprehensive review of seven major schools”
    シュロス法、BSPTS、SEAS、Dobomed、Side Shiftなど、主要なPSSEの流派や特徴を比較して確認できる包括的レビューである。
  6. Schreiber S, et al. “Schroth Physiotherapeutic Scoliosis-Specific Exercises Added to the Standard of Care Lead to Better Cobb Angle Outcomes in Adolescents with Idiopathic Scoliosis”
    思春期特発性側弯症に対して、標準ケアにシュロスPSSEを追加した場合のCobb角への影響を検討したランダム化比較試験である。
  7. Schreiber S, et al. “Schroth physiotherapeutic scoliosis-specific exercises for adolescent idiopathic scoliosis: how many patients require treatment to prevent one deterioration?”
    シュロスPSSEを追加した場合に、側弯の悪化予防にどの程度寄与する可能性があるか、NNTなどの観点から確認できる研究である。
  8. Ceballos-Laita L, et al. “The effectiveness of Schroth method in Cobb angle, quality of life and trunk rotation angle in adolescent idiopathic scoliosis: a systematic review and meta-analysis”
    思春期特発性側弯症におけるシュロス法の効果を、Cobb角、QOL、体幹回旋角の観点から整理したシステマティックレビュー・メタアナリシスである。
  9. Li Y, et al. “Comparative efficacy of six types of scoliosis-specific exercises on adolescent idiopathic scoliosis: a systematic review and network meta-analysis”
    思春期特発性側弯症に対する複数の側弯症特異的運動療法を比較した2024年のネットワークメタアナリシスである。シュロス法だけでなく、SEAS、Dobomed、Side Shift、FITSなどとの比較文脈を確認できる。
  10. Zhu Y, et al. “Effectiveness of Schroth exercises for adolescent idiopathic scoliosis: a meta-analysis”
    2025年に発表されたシュロス運動のメタアナリシスである。Cobb角とQOLへの有意な効果、体幹回旋角への非有意な結果、平均変化が5度の臨床的重要閾値に達していない点、方法論上の限界を確認できる。
  11. Zhu H, et al. “Effect of exercise therapy on adolescent idiopathic scoliosis in mild to moderate: a systematic review and network meta-analysis”
    2025年に発表された軽度〜中等度の思春期特発性側弯症に対する運動療法のネットワークメタアナリシスである。Schroth exercisesのCobb角・ATRへの効果と、全体的なエビデンス確実性が低い点を確認できる。
  12. シュロスベストプラクティスジャパン「シュロス法とは」
    日本語でシュロス法の概要、3次元的矯正、前額面・矢状面・水平面の考え方を確認できる国内団体の解説資料である。研究論文ではないため、効果判定の根拠としてではなく、概念理解の補助資料として参照する。
  13. シュロスベストプラクティスジャパン「シュロスベストプラクティスとは」
    Hans-Rudolf WeissによるSchroth Best Practiceの考え方、カーブパターン、セルフコレクションの位置づけを確認できる国内団体の解説資料である。研究論文ではないため、エビデンス評価ではなく、流派・教育体系の理解を補助する資料として位置づける。

 

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