この記事では、リハビリや看護・介護でも使用頻度の高いパルスオキシメーターについて使い方や特徴を記載していく。
目次
パルスオキシメーターとは
パルスオキシメーターとは、指先に装着し、簡単に動脈血酸素飽和度(赤血球のヘモグロビンの何%が酸素と結び付いているか)を測定することができる機械のことである。
単位はSpO2(2は小さい文字:エスピーオーツー)で「サチュレーチョン(英語で飽和度の意味)」と呼ばれている。
酸素飽和度は以下の計算式で成り立つ。
『酸素と結び付いたヘモグロビンの量÷全体のヘモグロビンの量』
人が生命活動を維持するためには酸素が必要で、血中に取り込まれた酸素は各臓器の細胞に供給される。酸素が十分に運ばれていなければ、各種臓器の働きが低下し臓器不全に繋がってしまう。
そしてパルスオキシメーターは、必要な酸素が体に供給されているかを簡便に確認することができる優れた機械という事が言える。
パルスオキシメーターの仕組みと使い方
ここから先は、パルスオキシメーターの仕組みと使い方について記載していく。
パルスオキシメーターは、洗濯バサミのようになっている「プローブ」を指先に挟んで測定する機械である。
プローブ内側にはLEDライトがあり、指の内部まで光が透過することによって、採決することなく動脈血中に酸素を運んでいるヘモグロビンの割合を測定できる。
パルスオキシメーター測定の手順
パルスオキシメーターのタイプでは「プローブと計測本体がケーブルでつながっているタイプ」と「プローブと計測本体が一つになっているタイプ」がある。
いずれにしても、LEDライトの発光部が爪側になるように装着して測定する。
- 測定場所は母指以外の指で行う
プローブは一定の厚み(1cm)を想定して設計されえいるため、母指を除く4指が検出し易いとされている。麻痺や痛みの無い側で測定する - 指をプローブの奥まで差し込む
指をプローブの奥(光が爪の付け根を透過する位置)まで挿入する。 - 液晶の表示を読み取る
- 機種によって違うが、SpO2と脈拍(PRbpm)数が表示される。
以下は、実際にパルスオキシメーターを使用している動画である。
パルスオキシメーター測定時の注意点
パルスオキシメーターを使う際の注意点は以下の通り。
- 測定部位は動かさないで測定する。
- 周囲の光(照明灯・蛍光灯・赤外線加熱ランプ・直射日光)が強すぎる場合正しく測定できないため、強い光が当たらないようにする。携帯・家電製品などの電磁波にも注意する。
- 食事・排泄などの動作直後は安静時の正確な値が測定できなこともあるため、通常の脈拍数に戻ったことを確認してから測定。
- 一方で、運動療法によってどの程度SPO2が低下するかを確認するため、あえて活動直後に用いることもある。また、数値が表示されて、1分程度経過を観察することで「酸素飽和度の回復スピード」も把握することは有意義である。
- 爪のチェック
前述したようにパルスオキシメーターはLEDにより爪の付け根を透過することで測定される。
従って、マニキュアの塗布・白癬のある爪は光の透過を妨げるため避ける。
また、冬場に起こりやすいれいとして爪が青白っぽく指先が冷えている場合、血流が十分ではないために測定できないことがある。
これは冬場における「高齢者の訪問リハビリ」で結構起こる。なぜか自宅がキンキンに冷えており手も冷たく、手を温めるよう試みても中々測定が難しいこともある。
高齢者は(白癬などが生じていなくとも)爪が変色していて透過しないなどがある。そのような際は、別の指(人差し指で測定不能なら薬指など)で測定すれば普通に測定できる場合もあるので試してみよう
- 皮膚のチェック
・指のむくみはないか(むくみが強いと透過を妨げ、正確な測定ができない)
・指が汚れていないか
おススメなパルスオキシメーター(アマゾン)
パルスオキシメーターの測定精度は、メーカーによって様々らしい。
幾つものパルスオキシメーターを使ったことがないので検証はしていないが・・・
ただし、高性能なパルスオキシメーターは「他の機種では困難な測定状況」で正確に測定できるとされている。
っということは、私が訪問リハビリで用いているパルスオキシメーターは安物なのかもしれない・・・
ちなみに、アマゾンでは以下のパルスオキシメーターがダントツ人気で、値引きによって手頃な値段となっているため、おススメ商品として紹介しておく。
また、高価にもかかわらず人気の高い商品としては以下になる。
※値引きされているが、それでも高価だ・・・
※ただ、人気があるようなので、それだけ信頼がける商品という事か??
※個人的には、先ほどの商品で十分な気がするが、念のため掲載しておくので参考にしてみてほしい。
正常値について
パルスオキシメーターにおける酸素飽和度の正常値(安静時)は以下の通り。
健常者⇒96~98%
ただし、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有したクライアントではSpO2が90~95%でも日常生活に支障がない場合もある。
従って、クライアントの普段のSpO2と比較することが何より大切となってくる。
また、以下の場合は注意を要す。
- SpO2が90%以下の場合:
⇒呼吸不全の可能性もあり、速やかに医師へ報告する。
- 普段の数値より3~4%低下:
⇒急性疾患の可能性があるため、速やかに医師へ報告する。
測定の場面と対象
酸素飽和度には個人差があるため、パルスオキシメーターで定期的な測定を続けて、その人の安静時と各活動後(歩行・入浴・排泄など)の値を知っておくことが大事である。
また、安静時の数値は、時間帯によっても異なるため、パルスオキシメーターは同様な時間帯に測定することが望ましい。
パルスオキシメーターの測定が必要とされることが多い疾患には以下が挙げられる。
- 慢性呼吸不全:
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎など
- 慢性心不全:
心臓機能の低下で血液循環が低下しているため、日常の活動で低酸素状態になり易い。
- 肺がん
- 誤嚥性肺炎を繰り返すケース:
誤嚥性肺炎には典型的な症状がない場合もあり、日常的に酸素飽和度を測定していることで早期発見につながることがある。
呼吸不全と呼吸困難の違い
「呼吸不全」と「呼吸困難」は何が違うのだろうか?
呼吸困難とは「息苦しい」「息がしにくい」「胸に不快感がある」などの主観(訴え)が基準となる。
一方で、呼吸不全は「呼吸がうまくいかないために血中酸素が減った状態(低酸素血症)で、客観的な数値が基準となる。
したがって、「呼吸困難」を有した高齢者に対しては、「呼吸不全」に陥っていないかを評価することは大切となる。
その際の評価にパルスオキシメーターは有用であるし、合わせて「ばち指」や「チアノーゼ(唇や爪をチェックして)」のチェックも有用である。
呼吸困難を有した高齢者に対しては、「口すぼめ呼吸」や「腹式呼吸」が効果的なことがある。また、「楽な体位を保つこと」も重要となってくる。
酸素飽和度の低下がいけない理由
身体における「酸素飽和度の低下」が意味するものは以下の通り。
- 活動筋への酸素供給不足を招き、運動耐用能を低下させる:
酸素飽和度が低下すると活動筋へ十分な酸素を供給することができず、活動筋は酸素不足に陥ることになる。
酸素不足になった活動筋は好気的代謝が阻害されるため、乳酸などの疲労物質が蓄積し、運動耐容能が低下することになる。
- 活動筋への酸素供給不足は、呼吸困難感の増強を招く:
活動筋へ酸素供給が不足すると、それを補おうと換気亢進が生じる。
ここで、正常肺では(換気亢進に伴って)多くの酸素を体内に取り込むことが可能な場合もあるが、病気肺においては換気冗進が生じても酸素摂取量の増加につながりにくい。
そのためさらに悪循環に陥り、さらなる換気亢進⇒呼吸困難感増強の経過をたどることになる。
- 酸素飽和度低下が持続すると心臓に負担がかかり、心不全に陥る:
酸素飽和度の低下は活動筋への影響だけでなく、肺血管攣縮という病態を招き、肺高血圧症を呈す。
肺血管攣縮は低い酸素飽和度を呈した肺胞における血管床が減少することを指し、結果的に肺高血圧症を招く。
肺高血圧症が持続すると右室拡大(肺性心)を招き、その状態がさらに持続すると右心不全を呈す。
※この場合における心不全の治療は心不全自体ではなく、心不全の原因を作った疾患にフォーカスする必要がある。
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