生き延びたいという原始的な欲求が引き起こす体のストレス反応は、進化のたまものであり、それがなければ私たちは今ここにいない。

 

その反応は原因によって軽いものから重いものまで様々だ。

 

過剰なストレスは「闘争・逃走反応」と呼ばれる急激な反応を生じさせる。

 

それは体と脳を動かそうと体内の資源を総動員する複雑な生理反応で、その出来事の記憶は脳に刻まれることで、次の過剰なストレスを避けられるために活用される。

 

体の反応はかなり深刻な脅威でなければ起きないが、脳の基本システムはストレスの大小によらず活性化する。そのシステムが注意力、エネルギー、記憶を管理しているのである。

 

余分なものをそぎ落とすと、人間にもともと備わっているストレス反応は、

①危険に集中する

②集中した結果として様々な反応を起こす

③将来のためにその経験を記憶する
という3つに絞られる。

 

おそらく、この将来のための記録というのが『知恵』なのだろう。

 

ストレス反応を強く感じた状況を記憶しておくのは、適応行動の一つで、進化の上で明らかに有用だった。

 

人類が今日まで生き延びられたのは、そうした経験の記憶を共有してきたからであり、特にコルチゾールが果たした役割は大きい。

 

1960年代、神経内分泌学者ブルース・マキュアーンは、ラットの脳の海馬にコルチゾール受容体があることを初めて発見した。

 

彼は次いでアカゲザルにもそれを発見した。

 

現代では人間にもそれがあることが分かっている。

 

どうやらストレス反応と同じように、コルチゾールも単に良いか悪いかというものではなさそうである。

 

少々なら記憶を回路につなぐのに役立つが、多すぎるとその邪魔をする。そしてあまりに多いと、ニューロン同士の結合を蝕み、記憶を破壊してしまう。

 

記憶を刻む時、海馬は、いつどこで、何を、どのように、というコンテクストを整え、扁桃体は恐怖や興奮という感情を提供する。

 

海馬は前頭前野からの支持を受け、情報と記憶を比べて「心配しなくていい。これは棒で、蛇じゃない」と判断し、HPA軸を直接遮断してストレス反応を抑えることができる。

 

※ただし、興奮しすぎている場合は、この限りではない。