この記事では、肩甲帯・骨盤帯のPNFパターンを組み合わせた「マスフレクション」と「マスエクステンション」について記載していく。
目次
マスフレクションとマスエクステンションとは
以下の様なPNFパターンの組み合わせを「マスフレクション」「マスエクステンション」と呼ぶ。
マスフレクション
肩甲骨前方下制+骨盤前方挙上→体幹の屈曲・同側への側屈(縮む)を引き出す(回旋は最小限に・声かけは「押して」「縮まって」など
マスエクステンション
肩甲骨後方挙上+骨盤後方下制→体幹の伸展・反対側への側屈(エロンゲーション)を引き出す(回旋は最小限に)。
声かけは「押して」「伸びて」など
マスフレクションとマスエクステンションを動画で理解
以下がマスフレクション・マスエクステンションの動画となる。
※最初にマスフレクションを実施し、次にマスエクステンションを実施している。
※また、それぞれのパターンに関して、上下肢も動員したパターンも掲載されている。
マスフレクション・マスエクステンションの特徴
PNF手技にしては珍しく、歩行肢位ではなく、足をワイドベースに開いた肢位で実施する。
関連記事⇒『徒手療法に歩行肢位を活用しよう』
ADL的な適用としては、背臥位→側臥位・側臥位→背臥位の練習などで用いられることがある。
機能訓練(ADLを獲得すること以外)としては、インナーマッスルの促通に有用だが、特にマスフレクションは臨床でもよく用いられる。
他のテクニック同様に、最初はクイックストレッチを行う(縮める方向or伸展する方向へ)。
ただし、他のPNFテクニックとは異なりクイックストレッチ後は「その後の抵抗は最小限にして心地よい動きにする」という特徴がある。
※もちろん、目的如何では最大抵抗な事もあるが、傾向としては最小限の抵抗で用いることが多
例えばコアマッスルを鍛えるのに非常に効率的。
※もちろん、他のPNFパターンでもコアは働くが、特にこれが効果的。
誘導の仕方次第では寝返りの練習にもなるが、コアを鍛えるだけであればそこまでしない。
臨床ではマスフレクション⇔マスエクステンションを交互に実施したりする(これも一種のスローリバーサルか?切り替え時に緊張を途切れさせないのは難しいが・・)。
ただし、若者を対象にした場合はセラピストがパワー負けしてしまうため、高齢者を対象に実施する場合がほとんど(個人的には)。
もしマスフレクションが(動作を対象者が理解しにくいという意味で)難しいならエクステンションをしてから実施すると学習しやすかったりする。
声かけは「伸びて→縮んで」で十分通じる。
マスエクステンションが難しい場合は、逆にフレクションから開始する。
臨床では直ぐに実施するのではなく、肩甲骨・骨盤の運動をそれぞれ学習してもらってから組み合わせパターンへ入る。
また、その後にマスフレクションを実施して肩甲骨の動きより骨盤の動きの方が弱いと感じたら、骨盤だけを重点的に実施した後、再度マスフレクションを試みてみる。
マスフレクションのポイント
マスフレクションの詳細なポイントを記載していく。
- 肩甲骨前方下制+骨盤前方挙上
- 声かけは「縮まって」
- これ以外の複合運動も含めて肩甲骨・骨盤それ単独の運動が学習出来ているのが前提。出来ていないならまず学習させる。その後、マスフレクションをして出来なかったら、再度肩甲骨・骨盤それぞれのパターンを単独で練習する。
- 歩行肢位ではなく、患者のほうを向いて立つ(患者の背側で)。
- 烏口突起+ASISと腸骨稜の間に各手を接触。浅く接触するのではなく、大胸筋・腹筋群に触れて触知出来るくらいの深さで広く接触させた方が運動方向も患者分かりやすい。
烏口突起
⇒前面以外に触れないこと(外側や背側に母指が当たらないように)。
ASISと腸骨稜の間
⇒手が開いたまま(手指外転位で)タッチしやすいので、手を揃える(手指内転で指間を閉じる)。
⇒母指は橈側外転させ患者に接触させない(患者を別の運動方向へ誘導してしまう触刺激が加わるから)。
マスエクステンションのポイント
マスエクステンションの詳細なポイントを記載していく。
- 肩甲骨後方挙上+骨盤後方挙上
- 声かけは「ひろがって」
- 患者背側に歩行肢位ではなく仁王立ちになり、坐骨結節+肩峰後方にタッチ。
- 肩峰へのタッチは、点の刺激にならないように肩峰後方を含んだ肩後方へひろく接触させるように心掛ける。
一方で、肩外側や前面にまで手が接触してしまわないように注意する(別の運動方向への刺激になってしまう)。
- しっかり圧縮させるようなクイックストレッチ後、脇を絞るようにコントロールする。
- 弧を描くようにグルーブ内で可動させる。
- マスフレクションと同様に、圧縮クイックストレッチ後は、心地良い抵抗程度にとどめる。
私の場合は、運動により上位腰椎前彎を強くして代償するため、肩後方挙上だけでなく脊椎の回旋も加わってしまうので、そういう人には「まっすぐ肩は上げて」など臨機応変に運動方向を変えていく。
書籍やDVDでPNFパターンを理解
ここでは、視覚的にPNFパターンを学べるものを揃えてみた。
PNFパターンの様な運動は言語化した表現だけではピンとこないことも多いのので、ぜひ映像で理解してもらえればと思う。
上記は、書籍でありながらPNFの動画も網羅してあるので、コストパフォーマンスとしておススメである。
PNFパターンに関しても、ちゃんとした動画が観覧できる。
もう少しミッチリと動画でなびたいのであれば、『PNF の 治療 技術 : 臨床 応用 編1 ~ PNFの 最新 理論 と 腰痛 への アプローチ』 がおススメ。
PNFの基礎的な要素がかなり網羅されており、映像も踏まえて解説してくれた方が字面だけよりも頭に入ってきやすいと思う。
腰痛へのアプローチに関しても参考になる点が多かった。
※パート2PNF の 治療技術 : 臨床応用 編2 肩関節 への アプローチは個人的にイマイチだったが、こちらはおススメできる商品だと思う。
※もちろん、研修会に参加するのが一番である。研修会のメリットに関しては、以下でも言及しているので是非参考にしてみてほしい。
関節モビライゼーションの研修会・勉強会・講習会を教えます
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PNFパターンの組み合わせを紹介
上記リンク先には、マスフレクション・マスエクステンション以外の肩甲骨・骨盤の組み合わせ運動を紹介している。
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