この記事ではPNF(固有受容性神経筋促通法)における「PNFパターン」にフォーカスを当てて解説していく。

 

PNFパターンの動き

 

PNFパターンは「螺旋かつ対角線の要素もつパターンでの運動」を指す。

 

PNFパターンは「人間にとって動きやすいパターンがあるのでは」との考えに基づき開発されたと言われている。

 

例えば、日常生活において椅子から立ち上がる場合は、斜め方向に立ちあがる場合があったり、起き上がりも直線的に起き上がると言うよりは、螺旋かつ対角線の要素を持ちつつ起き上がったりすることも多い。

 

これらの例を挙げればきりがないが、私達の日常生活を考えると、「単に直線的な運動」を行うよりも、PNFパターンの様な「螺旋的かつ対角線の要素も取り入れた運動」の方が「機能的なアプローチ」と言える。

 

※PNFパターンを活用しましょうというよりは、これら「螺旋的かつ対角線の要素も運動に取り入れてみては?」という提案となる。

 

※個人的にはPNFパターン絶対主義ではない(当然、PNF法もPNFパターンを対象者へ当てはめろと説いているわけではない。PNFパターンは数ある促通要素の一つにすぎない)。

 

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上肢・下肢のPNFパターン

 

PNFパターンは、上肢・下肢・肩甲帯・骨盤帯に分類され、更にこれらのパターンを組み合わせた運動も存在する。

 

上肢・下肢のPNFパターンは、最終肢位における肩関節・股関節の名前で呼ばれる。

 

※例えば、「上肢の屈曲・内転・外旋」という名称のPNFパターンは、最終肢位の肩関節は屈曲・内転・外旋した肢位

 

※あるいは「下肢の屈曲・外転・内旋」という名称のPNFパターンは、最終肢位の股関節は屈曲・外転・内旋した肢位

 

具体的なパターンの詳細は以下を参照

PNFマニュアル 改訂第3版より引用

 

 

上肢のPNFパターン

 

 

 

 

 

下肢のPNFパターン

 

以下のリンク先には、上肢・下肢のPNFパターンの方法に関して、動画を交えて解説してある。

 

もしPNFパターンを全く知らない方は、こちらを先に観覧してもらった方がPNFパターンへの理解が深まると思う。

 

動画で解説!四肢のPNFパターン

 

 

PNFパターンの開始肢位について

 

先ほどのリンク先動画を見てもらえば分かるように、PNFパターンにおける開始肢位は動筋を伸張させた肢位となる。

 

※例えば「下肢の屈曲・外転・内旋」であれば、(動筋を伸長した肢位ということで)「股関節が伸展(屈伸0°)・内転・外旋された肢位」が開始肢位ということになる。

 

そして、このPNF開始肢位から「PNFパターンに沿った適切な抵抗運動」を実施していくこととなる。

 

PNF開始肢位からスタートする理由は、「単なる抵抗」よりも「動筋が伸張された状態での抵抗運動」のほうが更に筋放電が増強されると言われている点にある。

 

このことから、筋放電を増強するためにもPNFパターン運動を実施するにあたって、PNF開始肢位(=筋を伸張させた肢位)は重要となってくる。

 

もう少し具体的なPNF開始肢位の効果は以下の通り。

  • 固有受容器を通して、大脳皮質を非特異的に覚醒させる。
  • 脊髄運動細胞の興奮性を増大させる
  • 筋発生張力の増大、反応時間の短縮などの行動覚醒を生じる

 

 

また、PNF肢位からPNFパターン運動を開始する際に「(末梢の)主動筋」に更なる「瞬発的な伸張刺激(クイックストレッチ)を加えるのが一般的である。

 

このクイックストレッチによって、その直後に強く、かつ早く筋が短縮されることを狙っている。

関連記事⇒『PNFの主動筋テクニックの「開始肢位での反復伸張」を参照』

 

 

PNFパターンの抵抗について

 

PNFパターンを用いる際「(対象者に適した)最大抵抗を用いる」と言われることがある。

 

例えばMMT3は最大収縮の2%しか使用していないとの主張もあり、(この主張を当てはめるのであれば)負荷量の低い運動では、筋力増強効果は乏しい可能性がある。

 

※筋力増強効果は、筋肥大のみならず、神経系の要因も含めて起こる。

関連記事⇒『筋力と筋出力の違いを基に、高齢者の筋トレを考察!

 

そして、療法士の抵抗量が増えるほど筋力強化効果は高くなり、対象者に適した最大抵抗が筋力増強効果という意味では一番望ましいと言える。

 

※実際には、高齢者は関節を痛めたりしないような配慮など、単純に抵抗量を増やせば良いという話ではないのだが・・・・

関連記事⇒『運動単位の動員の動員とは?

 

ただし、徒手抵抗を用いることの目的は「最大筋力の発揮」「筋力増強」だけではない。
そして、抵抗量は目的によって異なる。

 

例えば、適度な抵抗によって適切な運動方向へガイドすることが可能であり、この利点は様々に応用可能である。

 

また、Ib抑制を目的とした収縮後弛緩テクニックでは最小の抵抗で構わないし、リスク管理上もその方が望ましい。

関連記事⇒『Ib抑制に関する最新の知見

 

※少し誤解を与えかねない表現かもしれないが、「Ib抑制を狙った収縮後弛緩テクニックは5g程度の抵抗で十分」とまで言われることがある。

 

※ただし、ある程度の抵抗量がある方がクライアントに理解しやすい。

 

※要は、クライアントが理解できる必要最低限の抵抗量で十分ということ。

 

 

Ib抑制(+α)を用いたアプローチは以下を参照。

関連記事⇒『等尺性収縮後弛緩テクニック一覧

 

※リラクゼーションを目的とするのであれば、どのテクニックも結局は同じ様な理屈を活用している。

 

 

PNFパターンを用いての評価

 

PNFパターンでの評価①:

PNF法ではPNFパターンの中で筋出力・運動の滑らかさ・可動域などを評価することが多い。

※ROMやMMTを測定しても構わないが、リンク先の「PNFの基本理念」でも記したように「機能的な要素」を最初から重視していく。

 

PNFパターンでの評価②:

グルーブ(PNFパターンにおける正常なの軌跡)内に自身が入っておくことで、PNFパターンの軌跡にブレがなくなる

※グルーブ内に入っていないと、知らず知らずに軌跡がブレてしまっていることがある。3次元的な動きなため微妙に軌道がブレやすい

※ただ、3次元的で効率の筋活動が可能な点がPNFの特徴なため是非とも実施していきたい。

 

PNFパターンでの評価③:

クライアントが上手くパターンが出来ない時に「何故できないか?」と考えていく。

 

PNFパターンでの評価④:

うまくパターンが出来ない時に他動運動で動きを理解してもらってから開始するのも良い。それ以外は、終了肢位から徐々に動きを増やしていったり、目的が中間域からの動きであれば無理に開始肢位から始める必要はない。

 

PNFパターンでの評価⑤:

私達の日常性生活の中で必要となる筋収縮様式は求心性・遠心性・静止性とあり、PNFでは徒手的な方法により、「単なる筋力」ではなく、これら3つの収縮様式の能力を評価することが可能となる。

関連記事⇒『筋の収縮様式を考慮した運動療法

※その他の「徒手抵抗を利用した運動」の利点としては、「目的・症状により抵抗の強さ、方向、時間などが自在に調節可能であることが挙げられる。

 

 

以下に記述は、PNFパターンを評価に組み込む事に関して示唆に富む内容だと思われる。

 

ICIDHやICF分類を用いてレベルごとに評価を行い、問題を整理していくのは患者にとってもセラピストにとっても手ごたえが乏しい。

 

しかも、患者の初回評価の日に、「今日はリハビリをしなかった」との感想を抱かせやすい。

 

しかしPNFの運動パターンなどを用いて評価し、運動操作・促通を行うことにより患者も参加しての評価が可能であり、評価が自然に治療に流れていくため患者の意欲も維持し易い。

 

セラピストは日々の臨床の中で細々とした問題にぶつかる。その都度評価を見直し問題点を整理すると、共通因子がその問題点の根底にあることに気付く。

 

たとえば座位姿勢の崩れが立位保持を困難にしているとする。

 

座位で骨盤前・後傾中間位に保持出来ないために、下肢の支持性が得られなければ、側臥位での骨盤パターンを行うことによって座位はもちろん、立位までもが改善される。

 

この様に、ある段階で困難な動作が先の段階へと与え得る影響を事前に予測し評価し、同時に治療していくことがPNFを治療の道具として使用することで可能になる。

PNFマニュアル 改訂第3版より引用~

 

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個人的なPNFパターン活用法

 

PNF法は様々な対象(アスリートも含む)に用いられており、私も臨床で活用する場合は多々ある。

 

ただし、(PNF法という概念ではなく)「PNFパターン」に関しては「よく活用するもの」と「あまり活用しないもの」に分かれている。

 

その理由は、自身の得意・不得意も関係しているかもしれないし、他に代替可能で使いやすい(と自分が思っている)方法を持っているからかもしれないし、様々だ。

 

そして、私が良く用いるPNFパターンは「上肢」と「肩甲帯・骨盤帯」である。

 

※とくに肩甲骨・骨盤帯のPNFパターンは凡庸性が高く、高齢者でも実践し易いのではと思う。なので、(PNF法が好きとか嫌いに関係なく)運動療法の「一つの引き出し」として習得しておいても損はない手法だと思う。

 

※ちなみに、私がPNFパターンを使用する対象者は一部の「高齢者」と「整形外科的疾患」に対してであり、この記事も「高齢者・整形外科的疾患」を想定して記載している。

 

※脳卒中を含めた中枢神経疾患にも活用できるのだろうが、個人的にはあまり活用しない。

 

PNF法を活用する際の注意点としては、(別記事でも記載しているが)PNFパターンはPNF法における「一つの促通要素」に過ぎず、PNFパターンに固執することが重要でない点への理解である。

 

※ちなみに特殊手技を含めた多くの概念は「PNFパターンを用いずとも活用可能なもの」も多い。

 

※例えば高齢者に関しては、バランス能力向上を目的にフックライングやリズミックスタビライゼーションなどはよく用いる。

 

 

PNFパターン活用時の補足

 

筋力低下を伴う筋萎縮が生じていると、短縮位になるほど筋収縮時に運動単位の動員が難しくなる。

 

そのため、「関節フルレンジの中間位での筋力はまずまずだが、最終域での筋力はとたんに弱くなる」といったことも起こり得る。

 

これをPNFパターンに当てはめると、特に「エンドレンジ付近における(短縮された目的筋への)抵抗量の調整」や「短縮位における筋収縮の強調」は重要だと感じる。

 

例えば、上肢挙上の最終域になるほど、体幹伸展や回旋で代償しようとしてしまう。この様な代償が身体の様々な部位で起こってくるので、「ADLの改善=問題筋の弱化が改善された」ではなく「ADLの改善=他の要素で代償出来るようになった」というように脳が別の運動性戦略を作ってしまっており、問題筋の弱化自体は改善されていない事を理学・作業療法士が見過ごしてしまっていることも多い。

 

これらのことから、弱化筋における短縮位での筋収縮は重要と言える。

 

 

肩甲骨・骨盤のPNFパターン

 

ここまでPNFパターンについて記載していたが、ここではPNFパターンの中でも「肩甲骨・骨盤のパターン」にフォーカスを当てて記載していく。

 

 

PNFパターンの種類

 

肩甲骨・骨盤のPNFパターンには以下の種類がある。

  • 肩甲骨後方下制
  • 肩甲骨前方挙上
  • 肩甲骨前方下制
  • 肩甲骨後方挙上
  • 骨盤後方下制
  • 骨盤前方挙上
  • 骨盤前方下制
  • 骨盤後方挙上

 

 

具体的な肩甲骨・骨盤パターン運動の詳細は以下のリンク先を参照

 

肩甲骨・骨盤のPNFパターンを動画で解説!

 

 

PNFパターンのグルーブを時計に例える

 

肩甲骨・骨盤帯のPNFパターンは以下の様に時計に準えてグルーブ(PNFパターンの軌跡)を表現することがある。

 

 

  • 前方挙上⇔後方下制パターンのグルーブは1時⇔7時の方向
  • 後方挙上⇔前方下制パターンのグルーブは11時⇔3時の方向

 

※療法士は、このグルーブと平行となるような抵抗運動を実施する。

※対象者の基本肢位は膝70~90°屈曲位だが、反応や得たい筋収縮によって肢位は微妙に変える。

 

 

リズム的開始法

 

肩甲骨・骨盤のPNFパターンは、(四肢のPNFパターンと比べて)動きがピンとこない人もいる。

 

そのため、リズム的開始法が用いられる場合が多い。

 

具体的な肩甲骨・骨盤帯パターンに対するリズム的開始法のポイントは以下の通り。

 

  • 他動運動→自動介助運動→抵抗運動(+最終域で時間的荷重も)の順に進める。

 

  • まずはpassiveで可動域の確認+患者の方向を理解してもらう

    ↓<

    自動介助で動かす(この際はテンポ良く行う)。

    抵抗運動(必要に応じてクイックストレッチ、時間的荷重、等尺性・遠心性収縮などの収縮様式も活用)

    ※時間的加重→最終域で「もっと上げて、もっと上げて、もっと上げて」など。

    ※特に骨盤は動きが小さいので、空間的荷重はあまり必要ない(最終域での等尺性収縮はありだが)。逆に肩甲帯は空間的荷重大切。

    ⇒『サイト:時間的荷重・空間的荷重とは??

 

 

肩甲骨・骨盤の組み合わせパターン

 

最後に、余談として肩甲骨・骨盤の組み合わせパターンをリンクしておく。

 

マスフレクション・マスエクステンション

 

その他の骨盤・肩甲骨の組み合わせパターン