この記事ではPNFの特殊テクニックのうち、「動筋テクニック」にフォーカスを当てて解説していく。

 

※PNF特殊テクニックは様々な分類方法があるが、ここでは「動筋テクニック」「拮抗筋テクニック」という分類のもとでの解説となる(拮抗テクニックに関しては、最後にリンクしている別記事を参照頂きたい)。

 

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PNFの動筋テクニックについて

 

動筋テクニックは以下の4つに分類される

 

  • リズミックイニシエーション(Rhythmic Initiation)

 

  • 等張性運動の組み合わせ(Combination of Isotonics)

 

  • リプリケーション(Replication)

 

  • 反復伸張(Repeated Stretch)⇒開始肢位or全可動域

 

 

リズミックイニシエーション

 

リズミックイニシエーションは「リズム的開始法」とも呼ばれる。

 

リズミックイニシエーションとは、要求する運動内の単一方向へのリズミカルな運動で他動運動から始め抵抗運動へと進む方法を指す。

 

 

リズミックイニシエーションの方法

 

リズミックイニシエーションの順序は以下の通り。

 

手順①
療法士は目的とする運動を、「他動運動」にて実施する。

何回か他動運動を繰り返し、リラックス出来ているかを確認しつつ、(後に対象者へ自動運動してもらう)運動の方向を理解してもらう。

 

手順②

今度は対象者にも少し努力させ自動介助運動に移っていく。

目標に達するように徐々に対象者の運動量を増やしていく。

 

手順③

最終的に目標に達するよう最大努力をさせる(目的によっては最大努力は必要ない)。

 

 

リズミックイニシエーションのポイント

 

  • 常に対象者が上手く行えるよう進めていく。

 

  • 例えば初めてPNFの上肢の屈曲・外転・外旋パターンを実施する際に、「(開始肢位からいきなり)手首を反らして、手を挙げて、外に外に」などと口頭指示と、抵抗による誘導だけでPNFパターンを試みても、対象者は「は?どういうこと?」とピンとこない場合も多い。

 

  • まずは、他動運動で動かしてあげて「こういう風に動かすのだな」というのを何となく理解してもらう。
    そして、自動介助運動に移行して、細かな修正を加えていく。
    更には軽く抵抗をかけながら、PNFパターンを誘導しつつ、ここでも細かな修正を加えていく。
    最後に、適刺激を抵抗として加えながら本格的な運動療法に移行していく。

 

※特に高齢者では、リズミックイニシエーションを丁寧にしてあげると理解し易い。

 

※定期的なリハビリが可能であれば、(高齢者であっても)何度か繰り返すうちに、リズミックイニシエーション無しでも最初からPNFパターンでの積極的な運動療法が可能となる。

 

 

リズミックイニシエーションの目的

 

  • 初期動作の促通
  • 協調性と運動感覚の改善
  • 運動速度の正常化(速すぎる場合・遅すぎる場合)
  • 目的とする運動を教える。
  • 患者の緊張を和らげる

 

 

リズミックイニシエーションの適用

 

  • 初期動作が困難な場合
  • 運動が遅すぎる場合、または速すぎる場合
  • 非協調性あるいはリズムの悪い運動
  • 緊張、信頼感の欠如、痛みなどによりリラックスが困難な場合
  • 目的とする運動が理解困難な場合
  • 運動が困難な原因を評価する場合の手段として
  • 疼痛が原因で運動学習障害を有する整形外科疾患に対して。

 

 

重複するが、特に「目的とする運動が理解困難な場合」という意味において、PNFパターンを初めて適用する場合には必ず用いる手法と言える。

 

※そして、この目的での活用であれば、PNFパターンのみならず様々な運動療法でも活用できる考えである。

 

 

等張性運動の組み合わせ

 

等張性運動の組み合わせは「主動筋の逆運動(reversal of agonists)」とも呼ばれる。

 

等張性運動の組み合わせとは、リラクゼーションの無い等張性筋収縮(求心性・遠心性収縮+αとして等尺性収縮)を用いた一群(主動作筋)における抵抗運動を指す。

関連記事⇒『筋の収縮様式(求心性/遠心性/静止性/等尺性/等張性収縮)

 

 

「等張性運動の組み合わせ」の方法

 

「等張性運動の組み合わせ」の順序は以下の通り。

 

手順①

目的とする運動の開始肢位から最終肢位に向けて抵抗をかけながら求心性に運動する。

 

手順②

次に最終肢位でホールド(等尺性収縮)し、収縮力が増してきたのを確認後出来るだけゆっくり開始肢位に向かって動いてもらう(遠心性収縮)。

 

 

これらの運動は対象者が収縮様式を変えることで起こるのであって、療法士は一定の抵抗量が変化しないよう注意する。

 

筋力が弱いところ、協調性に欠けるところでホールドし抵抗感が強くなるのを確認し更に開始肢位まで遠心性収縮によって運動を行う。

 

ゆっくりとした滑らかな動きができるまで繰り返す。

 

※必要に応じて「(後述する)クイックストレッチ」を用いても良い。

 

 

「等張性収縮の組み合わせ」を動画で理解

 

以下の動画が上肢のPNFパターンに関する「等張性運動の組み合わせ」となる。

 

 

※50秒から屈曲-内転-外旋パターンの求心性⇒遠心性収縮

 

※1分35秒から伸展-内転-内旋パターンの求心性⇒遠心性収縮

 

何となく理解していただけただろうか?

 

等張性収縮の組み合わせによって「求心性収縮として動いた後に、最終域で等尺性収縮に切り替わり、さらには最初の肢位まで遠心性収縮によって戻る」といった様に、療法士の抵抗量を変えず、対象者が収縮様式を変えることで複数の収縮様式でのトレーニングを実施していく。

 

なので、動画の見た目上「上肢が行ったり来たり」しているが、常に「屈曲-内転-外旋パターン」あるいは「伸展-内転-内旋パターン」の動筋しか収縮していない。

 

肩関節屈曲90°までの「等張性運動の組み合わせ」などは矢状面でのシンプルな運動なので、(実際の臨床で活用するかは別として)試しに職場の同僚とやってみてほしい。

 

慣れていなければ、抵抗が一定にならなかったりと意外と難しかったりする。

 

 

肩関節で難しければ、まず膝関節の伸展で試してみると簡単かもしれない。

 

手順①

端座位で、療法士は10の抵抗を加えたまま対象者にゆっくりと膝伸展を促す(求心性収縮)。

 

 

手順②

ゆっくりと伸展していき、完全伸展位になっても療法士は(適切な)抵抗を緩めずに、対象者に完全伸展位を保持してもらう(遠心性収縮:厳密には膝軽度屈曲位まででOK)

 

 

手順③

療法士は(適切な)抵抗を緩めずに、対象者にはゆっくりと開始肢位(端座位:膝90°屈曲位くらい)まで戻してもらう(遠心性収縮)。

 

※「適切な抵抗」とは、各レンジによって適切な抵抗(常にクライアントに10の努力が必要な抵抗)へ変化させた抵抗量という意味

 

※重複するが、セラピストの力加減(抵抗量)を一定に保つというわけではない。筋へ常に一定の張力が加わるのが等張性運動である(つまり、セラピストが力加減を調整することが大切)。

 

※また、セラピストが各レンジによって適切な抵抗を実施することで等速性運動にすることも可能。

 

※実際の臨床では、「等張性かつ等速性な収縮」となるような徒手抵抗を加えることが多い(ん~・・理解してもらえるかな・・・)。

 

※特に遠心性収縮では、療法士が張力を一定(例えば10の張力)を意識していても、各レンジによって張力が6になったり、13になったりとブレやすいので注意

 

※膝のセラピストの力加減が稚拙でも弊害が起こることは少ないが、肩などでは力加減が稚拙だと組織を損傷させてしまう可能性があるので、クライアントに試す前にまずは練習してみよう(特に遠心性収縮)。

 

※膝の伸展(伸筋群への求心性→(等尺性)→遠心性収縮)を練習したら、次に肩の屈曲(屈筋群への求心性→(等尺性)→遠心性収縮)をしてみよう。

 

※それができたら、PNFパターンなど3次元的な運動に対する求心性→(等尺性)→遠心性収縮も練習してみよう。

 

※「徒手的な遠心性収縮を引き出す抵抗」に馴染みがないと、3次元的になると急に難しく感じるかもしれないが、何度かやってると体が慣れてきて上手になってくる。

 

※例えば、肩関節屈曲0°から140°の間での運動では、「最初の抵抗は少なめ、90°付近では強め、そこから徐々に抵抗弱め」が「10の抵抗」として適しているかもしれない。

 

※徒手による抵抗の利点は、重錘バンドやセラバンドと異なり、関節角度に合わせて適切な抵抗量へ調節しながらの運動療法が可能な点にある。

 

※日常生活において、遠心性収縮が成される頻度が多く、この遠心性収縮の学習が「機能的な収縮」という意味では重要となってくる。

 

 

「等張性運動の組み合わせ」の目的

 

  • 単一方向の自動的で滑らかな協調された機能的運動の達成
  • 自動運動における関節可動域の拡大
  • 筋力増強

 

 

「等張性運動の組み合わせ」の適用

 

  • 目標とする運動方向での運動能力または協調性が不十分な場合
  • 遠心性コントロールが不十分な場合
  • 「他動運動最終域」と「自動運動最終域」の差が顕著な場合
  • 治療範囲での自動運動が不十分な場合

 

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リプリケーション

 

リプリケーションとは、目的とする運動パターンに対して、以下を段階的に実施することで習得していく手法を指す。

 

段階①

習得したい運動パターンの終了肢位での筋収縮

 

段階②

「終了肢位から少し開始肢位へ戻した角度」から「終了肢位」までのパターン運動

 

段階③

「終了肢位からある程度開始肢位へ戻した角度」から「終了肢位」までのパターン運動

 

段階④

徐々にスタートする角度を開始肢位へ近づけていく

※上手くいかなければ「スタートする角度を終了肢位」へ近づける。

 

段階⑤

最終的には開始肢位から終了肢位までの「習得したいパターン運動」をフルレンジで実施する。

これは冒頭で記載した「リズミックイニシエーション」と同様に、初めてPNFパターンで運動を実施してもらう際に活用される。

※リズミックイニシエーションと織り交ぜながら活用したりもする。

 

※要はPNFパターンを学習してもらえれば何でも良い。

 

※「リプリケーション」も「リズミックイニシエーション」も御大層なネーミングなため難解に感じてしまうかもしれないが、(PNFパターンのみならず)何らかのパターン運動を学習してもらいたいときに、一般的にも良く活用される手法ではある。

 

※PNF法における治療概念の多くに言えることだが、突き詰めて考えると、「特殊手技」というよりは「基礎運動学そのもの」といった側面も浮き彫りになってきたりするので毛嫌いしないで頂きたい。

 

 

反復伸張

 

反復伸張は「クイックストレッチ」とも呼ばれ、以下の2つに分類される

 

  • 開始肢位での反復伸張
  • 全可動域での反復伸張

 

反復伸張は、ザックリ言ってしまえば、「運動開始時や運動途中に伸張を加えると筋出力を引き出すことができますよ」ということである。

 

この作用には「伸張反射」が関与している。

 

 

伸張反射について

 

伸張反射は、筋が過度に強く引き伸ばされることによって生じる筋損傷などの危険を回避するための神経生理学的作用である。

 

伸張反射の機序は以下の通り。

 

  1. 筋が引き延ばされる
  2. 筋内の感覚受容器である筋紡錘が筋の伸張速度と長さを感知して興奮する
  3. 感覚神経(Ia線維)を介して脊髄にインパルスを伝える
  4. 脊髄を経由し、運動神経(α運動神経)を経て筋にインパルスを送る
  5. 筋の短縮が生じる。

 

※反復伸張(クイックストレッチ)によって短時間に大きな力が発揮できる要素の一つとされている。

 

※伸張反射による筋短縮は、事前の筋の伸張速度が速いほど大きくなる。

 

※伸張反射に関しては、以下の記事で動画も紹介しながら分かり易く解説しているので合わせてチェックしてみてほしい。

⇒『伸張反射/Ib抑制/Ia抑制(相反抑制)を極めて、ストレッチに活用!

 

 

開始肢位での反復伸張

 

開始域での反復伸張は以下の目的で実施される。

 

  • 初期運動の促通
  • 自動関節運動の増大
  • 筋力増強
  • 疲労の予防及び減少
  • 望ましい方向への運動ガイド

 

 

ただし、以下であれば禁忌だという点を理解しておくことは重要である。

 

  • 不安定な関節
  • 痛み
  • 骨折や骨粗鬆症など不安定な骨
  • 障害を受けた筋や腱

 

 

ちなみに、PNF開始肢位からPNFパターンの運動を開始する際の「更なる伸張(クイックストレッチ)」も、「開始肢位での反復伸張」と同じ意味合いがある。

「PNF開始肢位(筋伸張させた肢位)」に関しては以下を参照。

⇒『PNFパターンについて

 

PNF関連の講習会に参加して「PNFパターンの実技練習」をする際は、大体「PNF開始肢位でのクイックストレッチ」も組み込まれているのではないだろうか。

 

例えば、以下のPNFパターン動画も「開始肢位でのクイックストレチ」がなされている。

⇒『動画で解説!四肢のPNFパターン

※この動画におけるクイックストレッチが、「どれだけ伸張反射の効果を狙った上で施行されているか」というのは議論の分かれるところではある。

 

※もう少しカッチリとPNF開始肢位を保持し、その上でシッカリとしたクイックストレッチを施すのが(実技練習的には)理想的であったりする。

 

この「PNF開始肢位におけるクイックストレッチ」を含めた「開始肢位での反復伸張」は、運動学的には『ストレッチ・ショートニング・サイクル(伸張―短縮サイクル)』と呼ばれる機能を利用していると言える。

 

 

ストレッチ・ショートニング・サイクルとは

 

ストレッチ・ショートニング・サイクルとは、以下を指す。

 

『強くかつ早く伸張された筋(腱)が、その弾性エネルギーと筋内の受容器である筋紡錘の伸張反射作用により、直後に強くかつ早く短縮される機能である』

 

 

具体的には「反動をつけないジャンプよりも、反動をつけたジャンプのほうが高く飛べること」などが挙げられる。

 

しゃがみ込むことで、以下が起こる。

 

 

  • 同時に筋が収縮して引き延ばされることに耐えようとするため、弾性エネルギーとして力を蓄える。

 

  • しゃがみ込みから飛び上がる瞬間、筋の収縮力に加えて、腱の弾性エネルギーが解放されることで全体として大きな力を得ることができる。

 

 

筋が力を出し始めてから最大の筋力を発揮するまでには、わずかなタイムラグがある。

 

したがって、瞬発的な力が必要な瞬間から力を入れ始めたのでは最大筋力に達する前に動作が終わってしまうこともあり、ストレッチショートニングサイクルはタイムラグを埋めるための一つの要素とされている。

 

 

PNF開始肢位やクイックストレッチは促通要素の一つに過ぎない

 

「カッチリとPNF開始肢位を保持し、その上でシッカリとしたクイックストレッチを施す」のが実技練習的には理想的であると前述した。

 

ただし、それはあくまで「実技練習的」な話であり、「臨床的」な話となると、少し異なってくる点には注意が必要だ。

 

他の記事でも記載しているように「PNF開始肢位」や「クイックストレッチ」は促通要素の一つに過ぎない。

 

そして、「PNF開始肢位(伸張位での開始)」や「クイックストレッチ」が禁忌な場合もある(不安定性を有した関節など、前述した「禁忌」を参照)。

 

重複するが、開始肢位を伸張位からスタートすることやクイックストレッチに必ずしも固執する必要はない。(例えば高齢者に対してなど)

 

※どうしてもPNF講習会における実技練習では、健常者を相手にするため「PNFパターン=開始域での伸張」がイメージとして刷り込まれ易いが、必ずしもその限りではないということ。

 

※クイックストレッチを末梢関節に加える際、初学者は抵抗も強くしがちである。

 

※しかし、抵抗が強すぎて末梢関節の動きが不十分なまま近位な関節が動くのはPNFパターンとしては不正確な動きとなる。

 

※なので、クイックストレッチは加えても、抵抗は少なめにすることで末梢関節動の動きはしっかり出た状態でのPNFパターンとなるよう工夫する。

 

 

全可動域での反復伸張

 

「PNF開始肢位におけるクイックストレッチ」の他に、運動中にストレッチを加える方法があり、これを「全可動域での反復伸張」と呼ぶ。

 

※リピーテッドストレッチともよばれる。

 

「全可動域での反復伸張」の重要性は「収縮中にストレッチを加えると収縮力が高まるから」ということらしい。

 

可動域途中のどのレンジでも行って良いので、少し出力が弱いなと思った角度で「押して」などの指示と一緒に積極的に用いること。

 

 

開始肢位or全可動域

 

「全可動域での反復伸張」も「開始肢位での反復伸張」と同じ目的で実施される。

 

そして、「開始肢位での反復伸張は必ずしも必要ない」と前述したが、その代わりに全可動域での反復伸張を用いても同様な効果を期待できる。

 

重複するが、PNF開始肢位でのクイックストレッチが困難でも、PNFパターンにおける「グルーブ内」という原則を守った上であれば、いずれのタイミングで反復伸張を行っても構わない。

 

 

PNFの特殊手技(拮抗筋テクニック)の関連記事

 

この記事では「動筋テクニック」を記載しており、「拮抗筋テクニック」に興味がある方は以下を参照して頂きたい。

 

PNFの特殊手技(拮抗筋テクニック)を解説!