末梢神経には末梢から中枢へと感覚の情報を送る感覚神経だけでなく、中枢から末梢へと指令を送る運動神経も含まれる。身体の各部ではこれらの両方が一緒に走行しているが、脊髄付近で経路が分かれており、感覚神経は背側から入り、運動神経は腹側から出ている。

 

そして、背側で神経がまとまっている部分を後根(腹側で神経がまとまっている部分を前根)と呼び、後根が脊髄に入る前にあるふくらみを後根神経節(DRG:dorsal root ganglion)と呼ぶ。

 

つまり、DRGは痛みや触覚情報を伝える一次求心性神経の細胞体が集まっている場所と言える。

 

DRGは末梢側と脊髄側の両方に軸索線維が伸びており、侵害受容器で発生した活動電位は、そのまま脊髄後角に到達するものと、DRGへ到達するものに分かれている。

 

DRGから脊髄側にも軸索線維が伸びているため、一見すると末梢側からDRGに到着した活動電位はそのまま脊髄へ向かうと思ってしまう。

 

しかし、軸索線維は興奮した後しばらく興奮することができない不応期に入るため、実際には脊髄には向かわない。

 

したがって脊髄に伝わる活動電位は細胞体を経由していないということになる。

 

そうなると、細胞体は痛みの情報伝達に関与しないと思われるかもしれないが、実はそうではない。

 

グルタミン酸などの古典的な伝達物質は神経終末でつくられるが、ペプチド性伝達物質やイオンチャネル、酵素、神経細胞を構成するために必要な細胞骨格などは細胞体がつくり、軸索線維はそれらの物質を輸送する役割も果たしている。

 

神経線維が破損したという情報が伝わった場合には、DRGの細胞体は神経を修復するための物質や、正常時にはつくられない神経伝達物質やチャネルなどを作り、それらの物質は細胞体から末梢方向へ向かって輸送(順行性輸送)され、損傷された神経が修復される。

 

炎症が起こった場合には、活動電位を介して炎症情報が伝わるだけでなく、末梢の組織で産生された神経成長因子(NGF)と受容体との複合体が末梢で取り込まれて細胞体へ向かって輸送(逆行性輸送)され、細胞体では炎症に備えるための様々な遺伝子の発現が誘導される。