この記事では、軸索反射について解説していく。
軸索反射は、痛みに関与していると同時に、鍼灸や徒手療法にも関与しているので、是非参考にしてみてほしい。
軸索反射の発生機序
以下が軸索反射の機序となる。
軸索反射の機序① 求心性伝導
痛み刺激により侵害受容器から発生した求心性インパルスは、一次侵害受容ニューロンの脊髄側末端部にまで到達する。
そして、そこでグルタミン酸・サブスタンスP(SP)・カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)といった神経伝達物質を放出する。
※この様に末梢側から中枢側方向への伝導を『求心性伝導』と呼ぶ。
軸索反射の機序② 逆行性伝導
一次侵害受容ニューロンの末梢側(自由神経終末)は幾つもの枝に分岐しているといった特徴から、侵害受容器から発生した求心性インパルスの一部は、分岐部にさしかかった際に別の枝へと逆行性に折り返して末梢側へ戻ってしまう(逆行性伝導)。
そして、別の枝から末端部の侵害受容器(ポリモーダル受容器)にインパルスが到達してしまう。
軸索反射の機序③ ポリモーダル受容器から神経ペプチドを放出
別の侵害受容器に到達したインパルスは、末端終末部からSPやCGRPといった神経ペプチドを放出させる(=ポリモーダル受容器の『効果器』としての作用)。
そして、これらが周囲にある他のポリモーダル受容器を刺激する(=ポリモーダル受容器の『受容器)としての作用)ために痛みが損傷部周囲に広がる。
また、CGRPの血管拡張作用(血管が広がり血流が多くなる)により発赤や発熱が、SPの血管透過性亢進作用(血管から水分が外へ出やすくなる)により腫脹が生じる。
加えて、これらの神経ペプチドによって肥満細胞が刺激されるとヒスタミンが遊離し、血管拡張、血管透過性亢進が促され、発赤や主張は著しくなる。
一目瞭然! 軸索反射(神経性炎症)が一目でわかる画像
前述した「軸索反射の機序① ② ③」を分かりやすく示したイラストが以下となる。
※軸索反射・神経性炎症を一目瞭然に理解できる。
上記の図は『書籍:ペインリハビリテーション』より引用。軸索反射によって起こる神経性炎症が非常に分かりやすく図式化されているのではと感じる。
軸索反射とは
まとめとして、『軸索反射』という用語の意味を記載して終わりにする。
今まで求心性に伝導されていたインパルスが途中で向きを変えて遠心性に戻ってしまう伝導を『逆行性伝導』と呼ぶ。
そして、逆行性伝導の中でも、上記の機序により「侵害受容器に加わった求心性のインパルスが軸索の途中で折り返して末梢に戻ってくること」を『軸索反射』と呼ぶ。
軸索反射は「反射」という用語が使われているが、実際にはシナプスを経由せず軸索のみで折り返しているため『見かけの反射:false reflex』や『偽(性)反射:pseudoreflex』とも呼ばれる。
分かり易い一般例
皮膚を鈍器で軽くこすると、その場所に20秒以内に蒼白な線(蒼白反応)が現れる。
尖つた物体でさらに強くこすると蒼自ではなく、10秒くらいで充血のために赤い線が発
現する(赤色反応)。
次いでその赤い線の両側に1~ 2 cmに紅潮が引き続いておこる。
さらに数分たつと赤い線に沿つて皮膚が盛り上がってくる(腫脹)。
この3種類の反応は傷害に対する生体反応の一つであつて、交感神経性血管運動神経線維をすべて遮断した後でもまったく同じように出現するのが特徴である(⇒神経性炎症)。
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逆行性伝導には軸索反射以外に『後根反射』と呼ばれるものもあり、これらの反射によって生じる炎症は『神経性炎症』と呼ばれる。
※上記のイラストにも後根反射・神経性炎症は記載されているので、確認してみてほしい。
そして、鍼灸・徒手療法に重要な生理学と言うのは、厳密に言うと「軸索反射」ではなく、「軸索反射によって起こる神経性炎症」である。
そんな『神経性炎症』について深堀した記事が以下になる。
神経性炎症とは?疼痛や徒手療法との関連性を解説!
また、軸索反射・神経性炎症によって起こる生理的作用を活用した徒手療法の一つとして「キブラロール」があり、以下がスキンロールを深堀した記事になる。
※施行中は結構痛いので、活用するかどうかは別として、軸索反射・神経性炎症を理解する助けにもなると思うので観覧してみてほしい。