2020年に国際疼痛学会が「痛みの定義」を41年ぶりに改定した。
この記事では、その改定した内容を記載していく。
痛みの定義 2022年
国際疼痛学会における「痛みの定義」は以下の通り。
痛みは、実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験
An unpleasant sensory and emotional experience associated with, or resembling that associated with, actual or potential tissue damage.
これまでの「痛みの定義」
これまでの「痛みの定義」は以下の通り。
痛みは、実質的または潜在的な組織損傷に結びつく、あるいはこのような損傷を表す言葉を使って述べられる不快な感覚・情動体験である。
An unpleasant sensory and emotionalexperience associated with actual or potential tissue damage, or described interms of such damage.
付記 2022年
2022年における「痛みの定義の付記(Note)」は以下の通り。
- 痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、社会的要因によって様々な程度で影響を受ける。
- 痛みと侵害受容は異なる現象です。感覚ニューロンの活動だけから痛みの存在を推測することはできない。
- 個人は人生での経験を通じて、痛みの概念を学ぶ。
- 痛みを経験しているという人の訴えは重んじられるべきである。
- 痛みは通常、適応的な役割を果たすが、その一方で、身体機能や社会的および心理的な健康に悪影響を及ぼすこともある。
- 言葉による表出は、痛みを表すいくつかの行動の1つにすぎない。コミュニケーションが可能でないことは、ヒトあるいはヒト以外の動物が痛みを経験している可能性を否定するものではない。
これまでの「痛みの定義の付記」
- 痛みはいつも主観的である。
- 各個人は、生涯の早い時期の損傷に関連した経験を通じて、この言葉をどんなふうに使うかを学習している。
- 生物学者は、痛みを惹起する刺激は組織を損傷し易いことを認識している。
- したがって、痛みは実質的あるいは潜在的な組織損傷と結び付いた体験である。
- 痛みは身体の一か所あるいは複数個所の感覚であることは確かであるが、いつも不快であるので、痛みは情動体験でもある。
- 痛みに似ているが不快でない体験、例えばチクチクした感じは、痛みと呼ぶべきではない。
- 不快な異常体験(異常感覚)も、痛みであるかもしれないが、必ずしもそうとは言い切れない。なぜなら、主観的にみると、それらが痛みの感覚特性を持たないかもしれないからである。
- 多くの人々は、組織損傷あるいはそれに相当した病態生理学的原因がないのに、痛みがあるという。
- 普通、これは心理学的な理由で起こる。
- 主観的な報告から、このような経験と組織損傷による経験とは、通常区別できるものではない。
- もし彼らが自分の体験を痛みと思い、組織損傷によって生じる痛みと同じように報告するなら、それを痛みと受け入れるべきである。
- この定義は、痛みを刺激と結び付けることを避けている。
- 侵害刺激によって侵害受容器及び侵害受容経路に引き起こされる活動が痛みであるのではない。
- たいていの場合、痛みの主因は身体にあることを受け入れるにしても、痛みはいつも心理学的な状態である。
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⇒『ペインリハビリテーションに必要な、痛みの基礎知識(HP)』