IASP(International Association for the Study of Pain)は『国際疼痛学会』と訳される。
国際疼痛学会は、痛みのメカニズム解明とその治療の可能性を探る学際的な学会で、基礎研究者・医者・心理学者・歯科医・看護師・理学療法士・薬剤師など、痛みに関心を持つ他分野の専門家が参加する国際学会である。
学会では様々な分野での報告が行われ、その中には「痛みの神経因性要素」に関する報告も多く含まれる。
※神経因性疼痛に関しては、末梢組織に損傷があったとしても、可塑的変化が末梢組織の神経終末、DRG、脊髄内だけでなく、間脳や大脳皮質など神経系全体に及び、その結果、注意や認知などの高次脳機能まで可塑的変化を起こすことの報告も含まれる。
一方で、治療に関する報告が、全体の報告の大部分を占めるかというと、必ずしもその限りではない。
「神経因性要素」に関する治療に関しては、中枢神経系を標的に作用する薬の報告であったり、認知行動療法であったりが多くみられる。
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また、治療対象は主に可塑的変化した中枢神経系をターゲットにしたものが多く、針治療やTENSが脳内の下降性抑制系に関与する領域を賦活させるという報告など数題にとどまることも多い。
しかし、慢性痛は中枢神経系の病態であるとの考えが浸透し、認知行動療法などの心理学的アプローチなどに関心が向けられるあまり、組織の再生や治療という視点が薄れているように感じることがあるとの意見も多く聞かれる。