評価の際にあえて疼痛を誘発するような動作やテストをすることがある。

 

疼痛誘発テストの目的は様々だが、アプローチ後にその痛みがどの程度改善しているかを判定するために用いることもある。

 

しかし、重症なクライアントに安易に痛みを再現させた場合、誘発させた痛みがなかなか沈静化せず治療どころでは無くなってしまうので注意を要す。

 

とは言っても、どう注意すれば良いか分からなかったり、「痛みが残るのが怖いからそんなことしなくても良いのでは?」と考えてしまったりすることは無いだろうか?

 

前置きが長くなったが、今回はそんな悩みを解決するヒントをとして『イリタビリティー』について記載していく。

 

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目次

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イリタビリティーとは

 

メイトランドコンセプトでは『ある特定の動作・活動によって患者の症状がどれだけ容易に悪化するのか、あるいは如何にたやすく症状が沈静化するのか』をセラピストが知っておくことは、過剰な検査による症状悪化を防ぐためにも重要だとしている。

 

そして、「ある関節運動(あるいは活動)によって、症状悪化が引き起こされる可能性の程度」を『被刺激性』あるいは『イリタビリティー(irritability)』と表現する。

 

 

イリタブルとノンイリタブル

 

例えば『わずかな動作により、強い痛みが出現し、その痛みのために動作の中止を余儀なくされ、動作の中止後も痛みが持続し、痛みが動作前の状態に回復するまでに長時間を要す』ような状態ををイリタブル(Irritable)と表現する。

 

逆に、『かなりの量の動作後に痛みが出現するが、その動作を中止するほどではなく、動作の終了後は、痛みは速やかに動作前のレベルに回復するような状態』をノンイリタブル(non-irritable)と表現する。

 

 

イリタビリティーはどの様に決定するのか?

 

では、どの様にしてイリタビリティーを決定するかというと『問診』となる。

 

実際に刺激を入れても決定は出来るのですが、仮にイリタブルであった場合は刺激を入れてしまったが故にその日の治療は出来ずじまいになる、あるいは信頼関係が築けず次回来てくれなくなる可能性がある。

 

っというわけで『問診』となる。

 

下記のポイントを押さえながら『痛みが誘発されるような活動』について聞いていく。

 

  • 活動の強度
  • 症状の強度
  • 活動を休止してから、症状が消失あるいは軽減するまでの時間

 

この3点に照らし合わせて考えてみると、例えば『一度咳ばらいをした(軽度な負荷)だけで、腰に激痛(VAS8/10)が走り、その後も半日は歩くだけでも痛くなってしまった』という場合はイリタブルということになる。

 

あるいは『引越しのアルバイトで重いものを半日位運び続けている(強度な負荷)と、腰が急に痛くなってしまった(VAS3/10)。

 

だが、我慢できたのでその日の仕事は続けた。仕事が済んでしまえば、20分歩いて帰る間に痛みは気にならなくなった』という場合はノンイリタブルということになる。

 

関連記事⇒『(HP)理学療法士・作業療法士の問診が重要な件

 

 

イリタブルかどうかビミョーな症例はどうするの?

 

イリタブル・ノンイリタブルに関する例を前述したが、実際の臨床では例のような竹を割ったように極端なケースばかりではないため、『これってイリタブル?』と迷うことも多いのでは無いだろうか?

 

そんな際の簡単な目安として『活動に要した時間より活動を中止してから症状が回復するまでの時間が長い場合はイリタビリティーが高い』と考えるのもOK。

 

障害がノンイリタブルな場合は、症状を悪化させること無く、初日から全ての評価を行うことが出来ることが示唆される。

 

一方で、障害がイリタブルな場合は、そのイリタビリティーを考慮して、症状を悪化させないように評価・治療を修正しなければならない。

 

普段の臨床で『この人は重症度が高そうだから、過剰な刺激を入れるのは怖いな・・・』などと感覚的に判断して評価・治療を修正することはあると思いますが、こういう概念が存在していたことに驚いたことを覚えている。

 

こういう概念もクリニカルリーズニングに用いながらの臨床を心がけると良いかもしれない。