この記事では「腹部の見立て」について解説していく。
臨床において「腹部臓器の位置関係」を把握しておくことは、内臓の機能異常を推論するうえで重要となってくる。
この記事は、そんな「臓器の位置関係を整理」を目的としている。
また、症状部位から推測される疾患についてのフローチャートも記載しているので臨床推論に活用してみてほしい。
臓器の大まかな位置関係+身体部位の見立て(腹診)
臓器の大まかな位置関係は以下の通り。
各部位の疼痛と、疾患の推論
腹部は以下に分類される。
- 上腹部:心窩部、左右左季肋部
- 下腹部:下腹部・左右下腹部
各部位に疼痛が生じる疾患は以下の通り。
心窩部痛
- 食道炎
- 胃腸(胃炎・消化性潰瘍、胃癌)
- 膵臓(急性膵炎・慢性膵炎・膵臓癌)
- 急性心筋梗塞
- 単純性イレウス
右季肋部痛
- 胆嚢・胆管(胆石による胆嚢炎・胆管炎、胆嚢癌・胆管癌)
- 肝臓(急性肝炎・原発性肝癌・肝腫瘍・)
- 横隔膜(横隔膜下膿瘍・横隔膜炎)
左季肋部
- 大動脈破裂
- 大腸穿孔
- 右季肋部と同様(⇒胃潰瘍・急性膵炎・単純性イレウス)
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の圧痛点:
ボアスの圧痛点は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の圧痛点で「第10-12胸椎の左側」に出現する圧痛点。
下腹部痛
- 急性腸炎・腸重積・潰瘍性大腸炎・急性虫垂炎後期・S状結腸軸捻転・大腸憩室炎・卵巣嚢腫茎捻転・子宮外妊娠・癌(大腸・不妊科・泌尿器科系)・睾丸(炎症・腫瘍・捻転)
右下腹部痛
- 急性虫垂炎・回盲部重積
- クローン病
- 腸型ベーチェット病
- メッケル憩室炎
- 単純性潰瘍
- 大腸憩室症
- 右卵巣脳腫茎捻転
- 右鼡径・大腿ヘルニア
- 右腸腰筋膿瘍
虫垂炎の圧痛点:
- ランツの圧痛点は「左上前腸骨棘と右上前腸骨棘を結ぶ線を3等分し、右から1/3のところ」にある圧痛点。
- マックバーネーの圧痛点は「右下腹部(右上前腸骨棘と臍を結ぶ線を3等分し、右から1/3のところ)」にある圧痛点。
左下腹部
- 大腸炎(潰瘍性・虚血性)
- 腸間膜脂肪織炎
- S状結腸捻転
- 大腸穿孔
- 大腸憩室症
- 単純性イレウス
- 左鼡径・大腿ヘルニア
- 左腸腰筋膿瘍
腹部全体の痛み
- 汎発性腹膜炎・消化管穿孔・絞扼性イレウス・腸間膜動脈血栓症・腹部大動脈破裂
問診による腹部疾患の鑑別フローチャート
問診情報により「以下などの疾患を有している可能性」を推察できる。