この記事では、鎖骨骨折(fracture of clavicle)について解説している。

 

骨折後のリハビリ(理学療法)に関するクリニカルパスも掲載しているので、リハビリの参考にしてみてほしい。

 

目次

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鎖骨骨折の特徴

 

鎖骨骨折の多くは保存的に治療がなされていることが、鎖骨の外側部では、骨折部が不安定になるものがあるため、しばしば手術適応となることがある。

 

鎖骨骨折は全骨折の中でも、発生頻度の高い骨折である。

 

その好発部位は、彎曲度が最も強く、筋肉や靱帯による防御の少ない中1/3であり、介達外力によるところが多い。

 

外1/3では、肩鎖骨折脱臼と同様に直達外力によることが多く、烏口鎖骨靱帯と肩鎖関節が関与しているため治療上の注意が必要となる。

 

通常、中枢骨片は胸鎖乳突筋の牽引で上前方へ転位し、末梢骨片は上肢の自重により下前方に転位する。同時に骨折部での重複が生じ、鎖骨は全体的に短縮する。

 

男性が女性に比べて数倍多く、小児の場合も不全骨折も多く認められる。

 

 

受傷機転として上肢を伸展して転倒したり、肩部を下にして転倒した場合の介達外力によるものが多い。

※鎖骨部の直達外力による骨折もあるが、その頻度は少ない。

 

 

鎖骨骨折の症状・診断

 

鎖骨は皮膚の直下に接しているので、骨折部の腫脹や変形および圧迫が認められているため診断は比較的容易である。

 

※骨折後、筋肉の作用で鎖骨は長軸方向に短縮するので、正面からみると、肩幅が狭く見える。

 

骨折部位での圧痛、腫脹、軋音を認める。

 

また、疼痛を緩和するためには患者は、患側の肘を屈曲し、肩を内転、前腕部を体幹に当て健側の手で患側の前腕を保持する特徴的な姿勢をとる。

 

小児の不全骨折では骨折部の軽い彎曲と限局性圧痛を示すのみのことが多く骨折を見落とすことがあるので注意しなければならない。

 

鎖骨骨折の確定診断のためにはX線撮影を行う。

 

 

合併症と後遺症

 

鎖骨骨折の合併症と後遺症は以下になる。

 

  • 鎖骨下動脈の損傷による血腫
  • 腕神経叢の損傷による神経麻痺
  • 胸膜損傷による血胸・気胸
  • 過剰化骨や変形癒合による胸郭出口症候群
  • 偽関節や変形癒合
  • 肩鎖関節面損傷後の関節窩など

 

 

骨折のタイプ

 

中1/3の定型的骨折は、受傷後、遠位骨片は肩や上肢の重さにより下垂し、大胸筋と広背筋の作用にて内側に転位する。

 

一方、近位骨片は、胸鎖乳突筋の作用にて後上方に引き上げられる。

 

鎖骨骨折の分類としては、転位度と粉砕度を考慮している点が特徴な『Robmson分類』などがある。

 

また、Neerは「外1/3の鎖骨骨折」を以下の3つに分類している。

①Ⅰ型(烏口鎖骨靱帯の損傷はない)

②Ⅱ型(烏口鎖骨靱帯の損傷がある)

③Ⅲ型(肩鎖骨面に骨折がある)

 

 

鎖骨骨折の「保存的治療法」と「手術療法」

 

ここからは、鎖骨骨折の「保存的治療法」と「手術療法」について記載していく。

 

鎖骨骨折の保存的治療法

 

鎖骨骨折の治療としては、保存的治療が原則と言われている。

 

その理由として、保存的治療の方が一般的に化骨形成が早く、偽関節の頻度が少な点が挙げられる。

 

また、入院を必要としないため、社会生活や学校生活を継続することができ、女性には手術瘢痕が残らないため美容的にも良い。

 

それに対して手術療法の方が、むしろ遅延治癒・偽関節や感染など術後の合併症や術後のギプス固定による関節拘縮などの問題が少なくないからである。

 

※鎖骨骨折で転位の軽度な骨折や屈曲転位骨折では、「スリングや三角巾の使用」や「クラビクルバンドの使用」で対処する。

 

以下がクラビクルバンドになる。

 

 

クラビクルバンドは、以下の特徴が言われている。

  • 骨折整復後の患部の的確な固定保持
  • 加えてバンドの着脱が容易
  • 腋窩部への不用意な圧迫や疼痛の回避

・・・など。

 

 

鎖骨骨折の手術的治療法

 

(新鮮鎖骨骨折に対して)手術適応がある場合として、以下などがある。

  • 神経・血管損傷を伴う場合
  • 開放骨折
  • 靭帯損傷を伴い転位が高度の不安定型

 

NeerのⅡ型では、転位が高度で不安定なため、手術適応である。

 

烏口鎖骨靱帯断裂があれば修復を行う。

 

術式についてはキルシュナー鋼線による髄内固定が一般的であり、必要に応じて柔鋼線を用いた締結固定を追加したり、プレート固定を用いる場合などがある。

 

Ⅲ型で肩鎖関節痛が続くようであれば、鎖骨外側端の切除術が行われることがある。

 

 

鎖骨骨折のリハビリ(理学療法)

 

鎖骨骨折の理学療法は、以下など様々な要素でプログラム内容が変わってくる。

  • 患者の年齢
  • 骨折の部位や転移の程度
  • 整復保持の安定度
  • 合併症の有無
  • 保存的治療なのか手術的治療なのか

 

小児例:

小児例では、保存療法による固定で重複した変形はかなり改善される。

また相当強い変形が生じても、自然矯正されて機能障害を残すことはまったくない。

※合併症が無ければ、固定期間は2-3週間で良いとされている。

 

成人例:

成人では、特に中高年においては肩関節の可動域制限を残すことがあるので、これをいかに予防するかが理学療法における一つのポイントである。

 

 

鎖骨骨折のクリニカルパス

 

骨折の整復固定後にいずれの治療法をとるにしても、少なくとも2-3週間は肩関節の安静が要求されるので、肘・手関節および手指の自動運動を十分に行わせ、上肢一手部の腫脹を消退させると同時に拘縮を予防する。

 

特に高齢者では肩関節の拘縮を起こしやすいので、安静期間が過ぎれば早期より振子運動などを行わせ拘縮防止に努める。

 

骨癒合がみられたら、肩関節の可動域訓練(自動および滑車を利用しての他動運動)および三角筋の筋力増強訓練を中心に運動を行う。

 

 

上腕骨骨幹部骨折のリハビリ(理学療法)を実施するにあたって、以下のクリニカルパスは一つの目安になる。

あくまでも一例であり、医師の指示に従うこと

~『理学療法ハンドブック改訂第4版 4巻セット』より引用~

 

項目 ~1W 1~2W 4~6W 6~8W 8~12W
ROM運動 なし 適度な肩関節振り子運動。

6週目の終わりに固定装具・スリング除去、肩関節90°以上の外転と外旋運動を制限し、それ以外の適度な自動運動許可。

全方向で許可。

肩甲上腕リズムの再教育を行う。

全方向で許可
筋力トレーニング

受傷後3~4日で疼痛軽減認められれば、肘・手関節の等尺性運動許可。

肘関節自動屈伸運動も可。

三角筋の等尺性運動

6週目の終わりに回旋筋腱板の筋力トレーニング開始。

振り子運動は除重力位で行う。

---------- 肩甲帯筋、大胸筋、胸鎖乳突筋の等尺性・等張性運動。
荷重 なし なし なし

臨床的、X線で骨癒合確認されれば、肘をつくなどの動作許可。

全荷重許可
注意点 肩関節内転・内旋位置、肘関節90°屈曲位に保つ。 ---------- ----------

靭帯損傷、転移、拘縮の有無の評価。

ノンコンタクトスポーツの許可。

----------
骨癒合  

修復期の始まり。

線維骨形成。

修復期。

仮骨の器質化、層板骨の形成。

仮骨強度はねじり負荷に弱い。

修復期。

仮骨の器質化と層板骨の形成がさらに進む。

骨折線はX線上で不明瞭になってくる。

リモデリング期。

線維骨が層板骨によって置換される。

 

 

補足:

 

保存的には、いかに、良好な整復位を保ちながら肩関節の拘縮をいかに防ぐかが理学療法のポイントである。

 

手術的には、骨折部の固定性が良ければ早期のROM運動は可能であるが、屈曲・外転90°以上での鎖骨の軸回旋は十分考慮する必要がある。

 

また、理学療法を施行する中で肩甲帯周辺筋の筋スパズムや肩関節の痛みに対するアプローチも、リハビリとしては大切となる。

 

 

オススメ書籍

 

骨折のリハビリ(理学療法)をするにあたって、以下の書籍を一通りそろえておくと、非常に心強いと思う。

 

是非参考にしてみてほしい。

 

 

 

 

 

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