この記事では、急性外傷後・変形性股関節初期の「原因不明の痛み」の原因な可能性も指摘されれいる『股関節唇損傷』について解説していく。

 

目次

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股関節の関節唇とは?

 

股関節の関節唇は、関節窩(関節のくぼみ)の縁を取り巻くようについている線維性の軟骨を指し、以下の役割を担っていると言われている。

 

・静的機能

・動的機能(suction機能・sealing機能)

 

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静的機能

 

関節唇の静的機能として、寛骨臼の面積が27.8%、体積が30.5%増加すると言われている。

※Tan V. Seldes RM, Katz MA, et al. Contribution of acetabular labrum to articulating surface area and femoral head coverage in adult hip joints:an anatomic study in cadavera. Am J Orthop 2001;30:809-812.

 

 

動的機能

 

関節唇の動的機能として以下の機能があると言われている。

・suction機能

・sealing機能

 

以下のイラストの「①がsuction機能」、「②がsealing機能」を示している。

 

suction機能

股関節内を陰圧に保つことで、股関節にかかる引っ張りに抵抗する機能である。

 

sealing機能

sealing(密閉)によって関節内圧を高め、関節内の潤滑と安定性に寄与している。

これにより、少量の関節液で軟骨に効率よく栄養を供給する機能や、圧迫力を臼蓋関節軟骨に均一に負担させることができるとされている。

 

そして、何らかの理由で関節唇の機能が損なわれると、股関節の安定性が低下する。

 

また、関節唇損傷が、徐々に変形性股関節症へと進行していく原因の一つとも考えられている。となると考えられている。

 

 

股関節唇損傷とは

 

前述した関節唇が何らかの理由で損傷した状態を『股関節唇損傷』と呼ぶ。

 

股関節唇損傷は、あまり聞きなれない用語であり、レントゲン(やMRIでも)ハッキリとした所見が得られないケースもありマイナーな疾患と思われがちだが、慢性疼痛の中でも頻度の高い疾患であると主張する人もいる。

 

関節唇の損傷が痛みの原因になることもある

 

寛骨臼の縁には、軟骨の一種で、線維状の軟らかい組織である「関節唇」が付いている。で、この関節唇が傷ついたり、時に断裂することがある。

 

関節唇が断裂すると、その一部が関節軟骨と関節軟骨の間に挟まったり、関節の安定性がなくなって、周囲に炎症が起きて痛みが生じる。

また関節唇自体にも、一部、痛みを感じる神経が通っているため、痛みを感じる可能性がある。

 

 

関節唇損傷の原因

 

関節唇損傷は上内側部での損傷が多いとされ原因としては以下などが挙げられる。

 

・股関節インピンジメント(FAI: Femoroacetabular impingement)

・関節包弛緩

・臼蓋形性不全

・反復的な股関節負荷による損傷

 

 

股関節インピンジメント(FAI: Femoroacetabular impingement)

 

若年者では、スポーツや転倒、交通事故など大きな外力が股関節に加えられた時に股関節唇損傷が生じる可能性がある。

 

つまり、正常な股関節であっても、強い圧力などが原因で、関節唇が傷むことがある。

 

臼蓋形性不全(+関節包弛緩)

 

軟骨組織である関節唇は、寛骨臼の縁に付いていて、体重を支える面積を増やしたり、大腿骨頭との密着度を高めたりすることで、寛骨臼の補助をしている。

臼蓋形成不全があると、足りない寛骨臼を補うように体重による負荷を受けるため、損傷が起こりやすくなる。

また、元々関節が緩い場合(関節包弛緩)もインピンジメントを起こし易かったり、軟骨組織が摩耗しやすかったりする。

 

以下は「変形した股関節(っというか寛骨臼の大きさが足りない股関節)」を示している。

寛骨臼の大きさが足りないため、荷重によって関節唇に負荷が加わりやすく、前述した「正常なイラスト」よりも関節唇損傷を起こしやすいと言える。

 

 

反復的な股関節負荷による損傷

 

若いころは運動をあまりしていなかった人が、中高年になって「長時間のサイクリング(反復した股関節屈伸運動)」や「スポーツジムでの過負荷状態での股関節運度(例えば重たいバーベルを担いだ状態でのスクワットなど)」を始めるなどで損傷するケースもあるだろう。

 

関節唇損傷が生じやすい動作としては「股関節を深く曲げる動作」と「繰り返しの股関節運動」の因果関係が語られることがある(ただし、十分な解明はなされていないとの指摘もある)。

 

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股関節唇損傷の症状

 

股関節唇損傷による症状は以下などと言われている。

・痛み

・股関節の不安定感

・クリック音

 

これは「股関節唇損傷に特異的な症状」ではないが、問診時に「(前述した関節唇損傷の原因」に類似したエピソードは無いかも含めて総合的に判断するための材料の一つとして活用できる。

 

 

痛み

 

「急な外力が加わって、その後に生じた痛み」であれば、大きく股関節唇が損傷することが有り得る。

 

でもって、この様なケースでは、以下などにより痛みを誘発する。

  • 股関節周囲の滑膜に炎症が起る
  • 関節唇自体にも部分的に神経が存在するため損傷により痛みが誘発される
  • デブリ(関節軟骨のかけら)が遊離して炎症を引き起こす

 

自由神経終末は生理的な関節可動域の運動では刺激されないし、正常なContact area(関節同士の接触面)の軌道に沿った運動では痛みが起こらないとされている。

しかし、筋、腱、靭帯、半月板、関節唇等の損傷により、正常の軌跡から逸脱した「いびつな運動」が行われると、ねじれや引っ張りの力に敏感に反応する関節包、靭帯、および腱付着部の自由神経終末が刺激されて痛みが出る。関節運動の強度と関節構成体の強度との間に不均衡が生じても関節痛が起こる。

また、関節軟骨の摩耗により発生する壊死物質(debris)も滑膜炎を引き起こすことがしられている。

~引用『理学療法ハンドブック改訂第4版 』より~

 

変形性股関節症の疼痛評価で重要なことは、患者が訴える痛みが変形性股関節症由来のものか、他の疾患に由来するかの鑑別診断である。

 

でもって、FADIRや股関節内旋で鼠径部に疼痛が出現する場合は、関節唇損傷を否定することはできない(ただし、関節唇が徐々に摩耗して変形性股関節症に結び付く例とは区別して考える必要がある)。

※FADIRなどについては、後で再度記載している。

 

また、臼蓋形成不全を有する場合は早期の段階から関節唇損傷が確認されるため、痛みが強い場合は医師と相談し治療方針を再考する必要がある。

 

 

股関節の不安定感(不安定性)

 

股関節の不安定性に関しては近年報告が増えている。

大腿骨頭と臼蓋のインピンジメントと関節唇損傷は大腿骨頭不安定性が関与する可能性が高い。

 

寛骨臼の辺縁に位置する関節唇は、インビンジメントや関節不安定性により圧迫や剪断ストレスを受けやすく、損傷されやすい組織である。

変形性股関節症では、前股関節症でも約8割、初期股関節症ではほとんどの症例で何らかの関節唇損傷が存在するとされている。

~『書籍:理学療法評価学―障害別・関節別評価のポイントと実際』より引用~

 

運動器疾患において、発症してある程度期間が経過した後にも残存してしまっている慢性疼痛に関しても、侵害受容性疼痛が主因だと考えられる。

 

 

関節や軟部組織の変性などにより器質的変化が生じてしまっていることにより「侵害刺激が加わり易い状態」となってしまう場合がある。

 

例えば関節不安定性が生じている場合、軽微なメカニカルストレスでも侵害受容器を刺激してしまうことになるかもしれない。

 

股関節唇損傷では、通常では何ともない動作にも関わらず関節が不安定であるが故に、身体へ「関節がぐらついている」という不快感を伴いながらの疼痛が容易に出現してしまう場合がある。

 

そして、股関節ほどの自由度が高く、体重を支えながらの活動といったメカニカルストレスを余儀なくされる場合、よっぽど慎重に(なおかつ自分に適した)動作を考慮しなければ、損傷(関節唇を含む)は改善されず、下手をすると損傷は拡大してしまうかもしれない。

 

また、関節軟骨などが遊離している場合は、否応なしに炎症にさらされることにもなる。

この不安定性は厄介で、特に股関節は前述したように非常にメカニカルストレスにさらされ易い特徴を持っているだけに、不安定症と相性が悪い。

 

※脊柱の不安定症も問題として取り上げられることはあるが、各セグメントで見れば自由度は高くなく、ストレスを逃がすことも(股関節と比べれば)容易である。

 

関連記事⇒『関節副運動を補足します

 

 

クリック音

 

痛みのような緊急を要する症状ではなくとも、「(前述した)何となく関節が不安定な気がする(股関節を特定の方向に動かした際など)」や「ズボンを履く(股関節を屈曲して脚をズボンに入れて、足を延ばすために股関節を伸展する)際にポキッと音が鳴る(痛みは無い)」など、あまり気にも留めないような前兆から徐々に悪化してく場合もある。

 

※関節唇損傷は、長期的には変形性股関節症に繋がりやすいと指摘する人もいる。

 

ちなみに、『エビデンスに基づく整形外科徒手検査法 』では関節唇断裂の検出に関して以下の様なデータが記載されている(クリック音に関する記述もある)。

 

 

クリック音の有無を評価する整形外科テスト(不安定性の整形外科的テスト)として

ログロールテストLog Roll Test』があり、方法は以下の通り。

 

背臥位で、他動的に股関節を内外旋させて、運動中のクリック音の有無を評価する。

 

例えば、エンドレンジまで内旋した状態から戻す際に「ポクッ」とクリック音を認めたりする(ポイントはエンドレンジまでしっかり内外旋した状態から戻す際に音が鳴るかどうか)。

 

テストが陽性だった(クリック音が鳴った)からと言って、必ずしも疼痛が出現するわけではないが、関節唇損傷や不安定性を疑う。

 

一方でテストが陽性かどうかよりも、患者が「よく股関節がポクポク鳴る。足を動かしたら、股関節がグラグラする、抜けそうな感じがする」などといった主観的な情報のほうが役に立つ場合が多い(そんなことをいうと身も蓋もないが。。)。

 

以下の動画は、何となくLog Roll Testをイメージしてもらいやすいと思う。

 

 

 

 

関節唇損傷の診断・評価

 

軽微な関節唇損傷は、(X線検査はおろか)MRIでは発見しにくく、痛みを訴えても「(若干炎症は見られるようだが)股関節の構造には明らかな問題が無い」と判断され、経過観察となる場合も多い。

しかし、実は関節唇損傷であり「実際の損傷程度と主観的症状(痛み)」が乖離している場合、患者は原因不明の痛みに苦しまなければならないこともある。

 

※今まで、原因不明な股関節の痛みの中には、関節唇損傷が一定程度混じっていた可能性は否定できない。

 

で、関節鏡を挿入すれば損傷の有無が明らかになったり、そこから損傷部を手術することもある。

しかし、術後も痛みが残存するケースもあり、だからこそ「わざわざ関節鏡で侵襲してまで評価する必要があるのか、また評価した結果、関節唇に損傷見つかったとしてそれを治療して、それでも痛みが残存する場合もあることを考えると、経過観察でもう少し様子を見たほうが良いのではないか」と考える医師がいてもおかしくない。

 

※本当に、関節唇損傷を含めて股関節に構造上の問題が無く、股関節の機能障害のみで疼痛が出現している場合もある。あるいは他部位からの関連痛であったり、腰部に原因がありそれを庇うために股関節に痛みが生じる場合などもあるため、「経過観察」にしておいてよかったというケースもある。

 

俳優の坂口健二さんも、長年股関節痛に悩まされ、当初は関節唇損傷を疑われれていた。

結局、数年間の経過観察(保存療法としてリハビリはしていたのかもしれないが)でも改善されず、最終的に「特発性大腿骨頭壊死」と診断されたわけだが、若年者で激しいスポーツをしていて、急に股関節が痛み出した症例においても、MRIで構造上問題は無い(大腿骨頭を臼蓋が十分に覆っており、関節軟骨も十分に存在する)と判断されたケースでは関節唇損傷疑いと判断されるだけで、経過観察されることもあるようだ。

※よっぽど痛みが強く、日常生活に支障をきたす場合は別だと思うが。。

 

この種の傷害は寛骨臼の前方に沿って(関節軟骨や関節唇に)、損傷が起こる機械的な症候としてはほとんどの場合、クリック音、“catching”やbucklingである。

痛みは前方部以外にも存在する。

これらの症候がサッカー、ゴルフ、長距離走、バレー、野球といった運動と関係していれば、関節唇傷害の疑いは強くなる。

その他の関節唇傷害のメカニズムは、股関節脱臼、転倒、交通事故といった大きな外傷で起こる。

しかし、関節唇の損傷から起こる痛み症候は知らないあいだに進行し、特別なできごとと関係していないことがよくある。

残念ながら、関節唇の損傷は診断が難しく、関節鏡視下で観察されない限り、長年放置される。

~『書籍:筋骨格系のキネシオロジー』より引用~

 

余談として、坂口健二さんの報道を観ていると、専門医より「大腿骨頭壊死はレントゲンでは分からないが、MRIでは発見できる」とのこと。

 

つまり、関節唇損傷よりは診断が容易な可能性が高く、坂口さんのケースでは単に医師の診療が不十分であった可能性もぬぐえない(あくまで報道レベルの話。実際にはMRIでも発見できない大腿骨頭壊死があるのかもしれない。。)。

 

関連記事⇒『大腿骨頭壊死症とは | 症状・治療対象・治療方法など解説

 

 

股関節唇損傷に対する理学検査(評価)

 

股関節新損傷に対する評価としては、前述した症状や受傷機転(っというか関節唇損傷に結びつきそうなエピソード)も参考にしながら理学検査も実施しつつ、総合的に判断していく。

 

ちなみに、股関節不安定性を徒手検査で診断する検査はない。

 

しかし、以下などの徴候が認められた場合は、臼蓋に対して大腿骨頭の不安定性が存在する可能性は否定できない。

  • FADIR( flexion・ adduction・internal rotation:股関節屈曲・内転・内旋)
  • FABER(flexion・abduction・and external rotation:股関節屈曲・外転・外旋)
  • 股関節内旋運動、股関節過屈曲運動、開排運動などで股関節前面の痛み、ひっかかりかり感
  • FADIRやFABERなどの他動運動時におけるスプリングブロック(springy block)

 

スプリングブロック(springy block)とは:

跳ね返るようなエンドフィール(最終感域覚)。

関節運動の終末は、いろいろな抵抗感(endfeel)が存在する。

骨性の制限は急性で、動きの余裕は感じられない。これに対し、軟部組織による制限は、可動域終末に漸増的な抵抗感が感じられるのが特徴。ただし、関節内の問題によっては、通常では骨性の制限は通常考えられない部位・運度方向(可動域終末には必ず漸増的な抵抗感が感じられるはずの部位・運動方向)にあたかも骨性の制限に感じるような抵抗感が表れる。これを、springblock(スプリングブロック)と称する。例えば半月板・肩関節関節唇・股関節関節唇などが断裂・損傷し、それらが関節運動によって関節面に挟まるときに生じると推測されている。

 

関連記事

⇒『エンドフィール(end feel)で治療選択!関節可動域を改善しよう

 

屈曲・内転・内旋位は前方インピンジメントテストの肢位であり、伸展・外旋位は後方インピンジメントテストの肢位となる。

インピンジメントテストは、それぞれの肢位で疼痛の訴えがあれば陽性となる。

股関節でのインピンジメントテストの検者間信頼性は比較的高いとされているが、感度や特異度は報告によりさまざまであり一致した見解は得られていない。

しかし、前方インピンジメントテストの陽性的中率は高いと報告されており、結果が陽性であれば何らかの関節唇損傷を有している可能性が高いと考えられる。

また一般に、前方インピンジメントは寛骨臼の前上方部で生じるとされているが、接触部位は関節辺縁の上方から後方にかけて広範囲にわたるという報告もある。

前方インピンジメントテスト陽性例では、疼痛は鼠径部に限局することが圧倒的に多いが、これは、痛みを感じる自由神経終末が関節唇の前上方部に多く存在することと関係があるかもしれない。

~『書籍:理学療法評価学』より引用~

 

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関節唇損傷の治療① 保存療法(日常生活への配慮)

 

関節唇損傷の治療としては、「手術しない方法」と「手術する方法」がある。

 

でもって、画像所見が明らかに関節唇損傷(や断裂)を示しており、症状も重篤なケースでは手術で劇的な改善がみられる場合がある。

 

しかし一方で、以下などでは、とりあえず保存療法が選択される場合が多い。

  • 症状が軽度(違和感・不安定感・クリック音・若干と疼痛など)
  • MRIでも関節唇損傷とハッキリ分からない(内視鏡などで侵襲してみることで始めて分かる程度)

 

※症状が軽度で、MRIでもハッキリと関節唇損傷と分からないレベルで、内視鏡にて検査すると関節新損傷が発見される場合もあり、その場合は後述する関節唇部分切除術などの手術療法をそのまま選択することもある。

しかし、その場合の手術成績はマチマチ(良くなるケースもあれば、あまり変化が無い場合もある)。

 

で、保存療法に話を戻すと、以下によって自然修復を促進させることが何より重要である。

 

  • 股関節に症状が出現する(ような特定の)動作があるのであれば控える。
  • 「関節唇損傷に繋がり易いと言われているような行為」は控える

 

冒頭の「関節唇損傷の原因」でも述べたように、「股関節を深く曲げる動作」や「繰り返しの股関節運動」の因果関係が語られることがある。

 

これらに関しては、明らかなエビデンスがある訳ではないが、心当たりがある場合は、それらの動作は控えたほうが良い。

 

関節唇損傷のメカニズムは人それぞれであり、損傷はすべての年代で起こる。

高齢者の股関節において、関節唇の変性は非常に一般的な所見であり、しばしば無症候性である。

このことは関節唇の変性が股関節の自然な摩耗と関連していることを示唆している

関節唇の頻度は少ないが単独の損傷は若年または中年、活動的な人、股関節の反復または過度な動作後に起こる。

 

 

・・・・中略・・・・ 

 

 

長い圧迫の繰り返しによって、機的に疲労した関節唇は引き裂かれたり分断化され、部分的に骨化することがある。大腿骨-寛骨臼インピンジメントに対する二次性の関節唇の変性は寛骨臼の前上方部で頻繁に発生し、近接する関節軟骨の断片化と関係している。損傷を受けた関節唇は、さらに変形性股関節症の原因となることの多い要因である、関節の安定性と適合性が低下する。

大腿骨-寛骨臼インピンジメントの保存的療法は非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)を使用することとインピンジメントを起こす動作を修正することである。つまり、過度な股関節屈曲と股関節の前方部に過度な圧力を起こす動作を最小限にすることである

~『書籍:筋骨格系のキネシオロジー』より引用~

 

 

関節唇損傷の治療① 保存療法(ジグリング)

 

保存療法としての補足として『ジグリング』についても記載しておく。

 

 

「ジグリング」とは日本語で「びんぼうゆすり」のことを差し、このジグリングによって股関節の関節軟骨の修復が期待できる。

 

関節唇損傷の程度にもよるが、ジグリングによって即自的効果が得られたり、長期的には関節唇の修復に役立つ可能性もある。

 

また、ジグリングを提唱している井上明生医師は、ジグリングと併せて、関節へ負担のかかる動作を控えることの重要性も説いている。

 

この「関節に負担のかかる動作」は一概に言えないが、関節唇損傷のみにフォーカスするのであれば、この記事に書かれている内容はヒントにはなり得ると思う。

 

ジグリングについては以下の記事で詳しく解説しているので、合わせて観覧してみてほしい。

 

⇒『必読!「びんぼうゆすり 」で変形性関節症は治る! (ジグリングの有用性・可能性を解説するよ!)

 

 

関節唇損傷の治療② 手術療法

 

関節唇が損傷すると、周囲の滑膜に炎症が起こるが、損傷部分を切除することおで痛みが治まる。

 

つまり、多くは自然に固定されて痛みがなくなるが、損傷が大きい場合は、手術が行われることもある。

 

でもって、関節唇損傷が進行した場合に行われる「関節デブリドマンでは、痛みの原因となるデブリ(関節軟骨のかけら)を取り除き大腿骨頭と関節包の癒着をはがす。

 

また、関節デブリドマンに加え、骨棘の切除などで関節の接合面を整えたり、近医区の一部を切るのは「関節受動術」と言われる。

 

以下は関節唇部分切除術

 

 

ちなみに、手術に対する効果のほどは、以下の記事も観覧してみてほしい。

⇒『外部リンク:マインズガイドライン 変形性股関節症に対する関節鏡視下手術の治療効果は

 

 

余談:変形性股関節症と関節唇損傷

 

(日本における)変形性股関節症は、臼蓋形成不全を伴う二次性変形性関節症が多く、40~50代で発症し、女性のほうが罹患者は多いと言われている。

 

で、近年の股関節鏡の進歩により関節内の構成体の変化が視覚できることによって、大腿骨頭と臼蓋のインピンジメントや関節唇損傷などが存在することが明らかとなった。

 

特に、関節唇損傷は変形性股関節症へと発展するため、近年診断法および治療法に関して多くの報告がなされている。

 

以下は、そんな『変形性股関節症』について解説した記事になる。

興味がある方は合わせて観覧してみてほしい。

 

変形性股関節症を解説するよ