徒手理学療法には様々な学派が存在します。
系統立てられていてエビデンス(以下はサイエンスと表現して記載)を重視する学派から、テクニックなどのアート的要素を重視する学派まで様々です。
そして、系統立てられていてサイエンスを重視した学派の良いところは、アート的要素を重視する学派に比べて治療成績が安定しており、セラピストによる差が少ないところだと思います。
また、クリニカルリーズニングにより治療を展開していくので、場当たり的にテクニックを当てはめる行為を繰り返すのと異なり、一つ一つの理学療法がきちんと経験値として蓄積していき、成長できる点もメリットではないかと思います。
※海外の系統立てられた筋骨格系理学療法に関しては『HP:理学療法学派の分類』も参照
つまり、サイエンスを重視したアプローチは、いわゆる『ゴッドハンド』な人が用いるアート的な能力に依存したコンセプトのように「真剣に学んだが結局自分には身に着けることができなかった」といった事が起こりにくいのではと感じます。
ただし、肝に銘じておかなければならないのはサイエンスを重視したアプローチであっても、アートな部分を時間をかけて研鑽しなければ、活用できないということです。
例えば、メイトランドは書籍『メイトランド 脊椎マニピュレーション』にて「いかなる臨床家であっても、治療者の手によって患者の疼痛やその心理学を学ぶには、少なくとも10年は必要である(仮に先天的な素質があったとしても)」といった言葉を残しています。
そして、ある程度系統立てた介入が出来るようになった後も、『一定の治療成績以上の結果』であったり『更に安定した治療成績』として差が出てくるのも、やはりアートな部分だと思います。
つまり、昨今は「エビデンスに基づく理学療法」が叫ばれているものの、サイエンスばかりに目を向けていても、その技術を用いるアート的な部分が不足していては、単なる屁理屈野で終わってしまうという事になりかねない点は注意が必要と思います。