この記事では変形肘関節症について記載している。
変形性肘関節症とは
変形性肘関節症(osteoarthritis of the elbow)とは、関節軟骨の老化や磨耗によつて起こる軟骨と骨の進行性の変性疾患である。
「変形性関節症」と聞くと「変形性股関節症」や「変形性膝関節症」を連想してしまいがちである。
確かに、人間は二足歩行なため、股関節・膝関節(+足関節)などの荷重関節(体重がかかる関節)は関節軟骨に負担が加わりやすい。
一方で、非荷重関節(体重がかからない関節)である肩関節・肘関節・手関節の中でも、肘関節は変形性関節症を有しやすい関節とされている(荷重関節ほどではないが)。
変形性肘関節症の原因・症状・所見
非荷重関節である肘関節は肩関節と手関節の真中にあり、これらの関節と連動して複雑な動作が強いられため変形性関節症を起こし易い関節となる。
肘の使いすぎや振動工具を使用する方、肘に負担をかけすぎる活動(野球肘など)、肘の外傷(肘関節脱臼や上腕骨顆上骨折、橈骨頸部骨折、肘頭骨折)などを誘因として発症する。
※ただし、原因が全く特定できない症例も数多く存在するのだが。
変形性肘関節症の症状・所見
変形性肘関節症における症状の特徴は以下などになる。
- 肘関節部に徐々に痛みが出現し、特に肘を使用した後に痛みが強まる。
- 運動制限(肘関節の屈曲、伸展制限)。前腕の回内外制限は見られない。
診断はレントゲン検査にて変形や骨棘形成を認めれば確定される。
中には、変形によって尺骨神経が圧迫され肘部管症候群を併発する症例もあるので要注意である。
変形性肘関節症の治療
変形性肘関節症の治療は保存的治療が原則であり、具体的には以下などが挙げられる。
- 痛みに対しては基本的な痛み治療に則り、非ステロイド系抗炎症剤を処方する。
- リハビリテーション(理学療法)
- その他(関節内注射など)
リハビリ(理学療法)について
リハビリ(理学療法)としては以下などが施行される。
温熱療法:
関連記事⇒『温熱療法の作用まとめ!『温熱の良し悪し』を把握して臨床に活かそう♪』
肘屈曲筋・前腕回内外・手関節の収縮に関与する筋群のストレッチング:
→肘伸展位で前腕回外+手関節背屈(+橈屈)
→肘伸展位で前腕回内+手関節掌屈(+尺屈)
関節モビライゼーション:
腕尺関節のモビライゼーション
腕橈関節のモビライゼーション
関連記事⇒『モビライゼーション(肩・肘・手関節)の「方法」と「成功の秘訣」を解説!』
- 筋力増強訓練:
廃用性筋萎縮の予防
骨運動を伴うと疼痛が誘発される場合は等尺性収縮を用いる。
肘屈曲・前腕回内外・手関節掌背屈の筋力強化
負荷は痛みのない範囲で実施
等尺性収縮であっても関節副運動の異常で疼痛が誘発される場合があるので注意。
その他
難治例では関節内注射を試みる。
変形や不安定性を認める症例では、サポーターや肘関節装具の着用を勧める場合もある。
手術療法
変形性肘関節症の治療は、保存的治療(手術をしない治療)が原則であるが、以下などを対象に手術療法が背託される場合もある。
具体的な手術療法としては以下などがある。
- 肘関節形成術
- 肘頭窩開窓術(可動域改善目的)
- 神経剝離術(尺骨神経麻痺が合併している場合)
- 神経移行術(尺骨神経麻痺が合併している場合)