この記事では、『肘部管症候群』について記載している。

 

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肘部管症候群とは

 

尺骨神経は上腕の内側を下降し、肘関節部で肘部管(尺骨神経溝と線維腱膜から形成された管・尺骨神経溝から尺側手根屈筋への入口部までの区間)を通過し、前腕から指先へと下降していく。

 

でもって『肘部管症候群』とは、「何らかの原因で肘部管の内圧があがり、尺骨神経が圧迫、牽引されて引き起こされる疾患」である。

 

 

肘部管症候群の原因

 

先ほど肘部管症候群に関して「何らかの原因で肘部管の内圧が上がり・・」と記載したが、ここで言う「何らかの原因」としては以下などが挙げられる。

 

  • 肘の外傷による内・外反肘に変形(例えば肘関節脱臼・上腕骨顆上骨折・上腕骨外顆骨折・肘頭骨折など)
  • 変形性肘関節症
  • 野球肘
  • 腫瘍(ガングリオン・神経腫など)

 

 

肘部管症候群の症状・整形外科的テスト

 

初期には第4・5指の異常感覚(触った感覚がない、痛みを感じない、ピリピリする感じ)や疼痛を訴える。

 

萎縮する筋は、骨間筋・小指球筋・母指内転筋。

進行すると、つまむ力が落ちたり、指の筋肉が痩せたり、第4・5指が変形したり、指が伸びないなどと訴える(例えば、以下のような鷲手となる)。

レントゲン検査では特徴的な変化はないが、変形性肘関節症が誘発となった症例では骨棘などの異常所見を認める。

 

 

整形外科的テスト

 

チネル徴候Tinel sign):

(肘部管内で圧迫された尺骨神経を叩くと、第4・5指へ痛みが放散する所見)が陽性となる。

⇒『チネルテスト(チネル徴候)を解説するよ

 

フロメント徴候Froment sign):

患者に母指と示指の間に紙片をつかませる。

検者がこの紙を引き抜こうとしたときに、患者の母子末節骨が屈曲した場合、テストは陽性である。

⇒『フロメント徴候(Froment sign)を解説【動画でイメージ】

 

母指末節骨が屈曲する理由

母指内転筋の麻痺のために、代償的に正中神経支配の長母指屈筋が働く。

 

クロスフィンガーテストCloss finger test):

骨間筋の不全麻痺のため、指を交差させることができない。

 

 

肘部管症候群の治療

 

日常生活指導:

治療は以下などの日常生活動作の注意点を指導する(肘屈曲によって内圧が上がる動作を控える)

・重いものを持たない

・悪い肘をついて起き上がらない

・・・・などなど。

 

薬物療法・注射療法:

痛みや感覚異常に対して非ステロイド系抗炎症剤やビタミンB製剤を投与

難治例に対しては肘部管内に注射療法を検討。

 

 

リハビリ(理学療法・物理療法):

温熱療法や電気刺激療法(神経刺激療法)

 

 

肘部管症候群に対する手術療法

 

前述した保存療法を実施しても、肘部管症候群は経過とともに進行してしまうことも多い。

 

でもって、そのようなケースでは手術療法が必要となる。

 

手術肢位は、症例に応じて神経前方移行術や内側上顆切除術(king法)などが検討される。

 

本疾患は早期診断や早期治療、適切なタイミングが予後(治療成績)に大きな影響を与える。

 

 

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⇒『猿手・鷲手・下垂手(正中神経麻痺・尺骨神経麻痺・橈骨神経麻痺で生じる)をイラスト付きで紹介

 

⇒『フロメント徴候(Froment sign)を解説【動画でイメージ】