この記事では、リハビリ(理学療法・作業療法)の評価や治療にも活用されやすいタンデム肢位について記載いていく。
※補足としてタンデム歩行(継ぎ足歩行)についても記載。
タンデム肢位とは?
『タンデム肢位』とは、一方の足尖(つま先)ともう一方の踵を付けた立位を指す。
※タンデム肢位は『マン(Mann)姿勢』と呼ばれることもある。
臨床におけるタンデム肢位は、転倒予防のバランス練習、Mann Test(タンデム肢位のままバランスを崩さずに立っていられるかのテスト)及びバランスの評価指標であるBerg balance scaleなどで用いられている。
タンデム歩行とは「継ぎ足歩行」とも呼ばれ、(タンデム肢位と同様に)一方の足尖ともう一方の踵をつけながらの歩行であり、綱渡りをイメージしてもらうと分かりやすいのではないだろうか?
~http://ikikenko.nms.ac.jp/kenkou/exercise/バランス感覚を養う運動 より画像引用~
タンデム肢位、タンデム歩行ともに、支持基底面が「前後に広く、左右に狭い」ため、左右に動揺しやすく、その動揺に対するバランスの制御が求められる。
そして、これらを活用したバランス練習は高齢者でも容易に理解できると共に、難易度的にも「片脚立位保持は難しいが、比較的バランス能力が高い人」に対しても調度良いレベル」となる。
更なる難易度調整としては、以下が挙げられる。
タンデム肢位における難易度調整
- 閉眼での保持
- 外乱に対する姿勢制御
※例えば、PNFでは以下のアプローチが参考になる
・フックライング(関連記事⇒インナーマッスルの段階的トレーニング)
・リズミックスタビライゼーション、スタビライジングリバーサル(関連記事⇒PNF拮抗筋テクニック)
タンデム歩行における難易度調整
- 閉眼(目を閉じた状態)でのタンデム歩行
- タンデム後進歩行(うしろ歩き)
- タンデム後進歩行を閉眼で実施
タンデム肢位・タンデム歩行のおさらい
タンデム肢位(タンデム歩行)を専門用語をもちいておさらいすると、ポイントは以下となる。
身体運動学的観点から、姿勢調節には身体重心(COG)と足圧中心(COP)の位置関係が大きく関与する。
タンデム肢位では、COGが前後方向に対して左右方向が不安定となり、足圧中心(以下、COP)が主に左右方向の軌跡を示すとされている。
タンデム肢位は、支持基底面が前後に広く、左右に狭いことが特徴である。
そのため、タンデム肢位において、COGは前後方向よりも左右方向に大きく動揺することが知られている。
この記事では、タンデム肢位・タンデム歩行における姿勢制御を活用したバランス練習の一例を記載したが、ここに述べてあるポイントを参考に様々な活用をしてみてほしい。
もう少し詳しくCOG・COPの関係を知りたい方は以下の記事をおススメする。
※きっと、リハビリ(理学療法)にも役立つと思う。
⇒『足関節戦略・股関節戦略(+違い・筋活動)でバランスを考える』
⇒『支持基底面と重心と重心線』
ステッピング肢位もついでに解説
タンデム肢位と似た肢位に『ステッピング肢位』もある。
タンデム肢位が左右のつま先と踵を前後に接触させるのに対して、ステッピング肢位では両下肢を前後に開いた立位となる。
※前後に下肢を開けば開くほど難易度が高くなる。
ステッピング肢位もタンデム肢位と同様にバランス練習に活用されることがある。
※例えば、閉眼で様々な方向へ外乱刺激を加えるなど
難易度としては、支持基底面が狭いという理由から「タンデム肢位のほうがバランスを保ちにくい」という人がいる一方で、
「ステッピング肢位のほうが難しい」という人もいる。
※ステッピング位は前後へ脚を開くほどに「筋力」の要素を強く要求されるため、それらに問題のある人が難しいと感じる側面もあるのかもしれない。
いずれにしても、難易度としてタンデム肢位・ステッピング肢位のどちらが高いとは一概に言えない。
ステッピング肢位を利用した高齢者への簡単に実施できて、なおかつ効果的なバランス練習に関しては、以下の記事で記載しているので、こちらも是非観覧してみてほしい。
インナーマッスルの段階的トレーニングを解説!
タンデム肢位・タンデム歩行の関連記事
バランス・転倒予防を包括的に記載した記事としては以下ある。
併せて読めば理解が深まると思うのでおススメ。
永久保存版!バランス運動(トレーニング)の総まとめ
知らなきゃ損!バランス評価テストのカットオフ値まとめ
また、バランス練習とは関係ないが、徒手理学療法で活用されやすい肢位として「歩行肢位」というものがある(見た目はステッピング肢位と似ている)ので、興味がある方はこちらもどうぞ。