先日、理学療法学 第42巻第5号に、「背部痛 理学療法診療ガイドライン」というテーマで、背部痛に関するガイドラインの使い方について記載されていた。
背部痛に関する理学療法ガイドライン自体は以下になるので参考にしてみてほしい。
PT協会:背部痛 理学療法診療ガイドライン
理学療法学に記載されていた、背部痛に関するガイドラインの使い方は以下の通り。
背部痛には頚部痛と腰痛が含まれており、またその中でも急性期・亜急性期・慢性期では病態が異なる。
ガイドラインに記載されている推奨グレードやエビデンスレベルは頚部痛または腰痛のいずれかしか含まれないことがあることや、病期別にはなっていないことに注意が必要である。
特に理学療法介入の中には、例えば、物理療法は慢性腰痛には推奨されないというように、病期によって適応が異なる場合もあるので、単に推奨グレードだけを参照して安易に実施することは、かえって患者の不利益になりかねない。
また、推奨グレードが高いからと言って、単一的なアプローチに固執することも、ガイドラインの趣旨に反する。理学療法ガイドラインのみならず「European Guidelines for the Management of Chronic Non-Specific Low Back Pain」や「Neck Pain and the Decade of the Bone and Joint 2000-2010」をはじめ、世界各国の腰痛や頚部痛の診療ガイドラインでは、患者が受け身となりやすい依存的な特異的手技療法に傾倒することはほとんどなく、一般的な理学療法についてのエビデンスレベルや推奨できる介入とそのグレードなどが広く調査、公表されている。
実際の臨床場面では、運動療法、物理療法、徒手療法などを組み合わせて、患者が主体的に治療に参加することが重要といえる。
そのために、介入の選択肢を広くもち、個々の患者の状態や特性に応じて柔軟に介入方法を選択することが理学療法士に求められる。
また、どのような介入がどのような患者に有効、無効であったかについて整理することで、系統だった理学療法プロトコルの作成や新たなエビデンスの構築につながると考える。
エビデンスを活用する際のポイントは、理学療法士協会の「PT協会:ガイドラインに従ってもEBPTの実践にならないの?」にもイラスト形式で掲載されているので、ぜひチェックしてみて欲しい(全3話の中の1話目にリンクしている)。
『背部痛ガイドラインの使い方』を読んで私がポイントだと思ったのは下記の部分。
・急性期・亜急性期・慢性期では病態が異なり、病期によって適応が異なる。
・推奨グレードやエビデンスレベルは頚部痛または腰痛のいずれかしか含まれない
言われてみれば当然のことだが、ガイドラインを活用する場合はこれらの点を差し引きすることが必要である。
また、その他の注意点として、ガイドラインに記載されている文献によっては本来のコンセプトを恣意的に解釈して、否定的な結論に結び付けている可能性が皆無ではない点だ。
※この点に関する関連記事としては下記も参照
背部痛(の腰痛)評価に関するガイドラインを大まかにまとめたものとしては、こちらも参照してみて欲しい。
運動器リハビリテーションにおける徒手的理学療法に限局したガイドラインにフォーカスしたい方は、こちらも参照してみてく欲しい。
背部痛のガイドラインよりも徒手的理学療法について詳細に記載されているのでオススメだ。
理学療法ガイドラインに関しては、以下の記事も作成しているので、こちらも合わせて観覧してみてほしい。
『理学療法診療ガイドライン第一版』を紹介します