日本徒手理学療法学会が発行している『徒手理学療法 第15巻 第1号』にもガイドラインの活用について下記のように考えさせられる内容が掲載されていた。
診療ガイドライン作成過程には、ある疾患に対する疫学的視点が不可欠であり、その疾患の発症した年代、場所、対象者の年齢・性別、取り扱った医療機関、取り込み基準や除外基準、診断・評価の精度・手法、治療介入方法、結果(アウトカム)の妥当性・信頼性、解釈、報告方法に始まり、その研究報告を誰が、どのように組織し、どのような目的・意図のもとにガイドラインを作成するかなどなど、非常に多くの要因が複雑に絡み合っている。
したがって一般的には、上述した因子を考慮の上で構築したガイドラインこそ、最も重要な診療指針であると考えるのは当然であり妥当である。
しかし、一方でエビデンス至上主義に陥り、エビデンスや推奨レベルの低い診療行為や手段は評価されず、価値のないものと一刀両断に切り捨てる偏見が芽生えることも事実である。
診療ガイドラインにおいて高いエビデンスと示された場合、低いエビデンスより高く推奨されやすいことは容易に想像できるが、常にそうであるとは限らない。
例えば同様な効果を持つ薬物投与に関して、一方の薬効に関するエビデンスが観察研究レベルであったとしても、他方の薬物投与の強い推奨レベルを妨げることにはならず、むしろ前者の薬効が実証され、救われる患者もいることは事実である。
このように現時点での報告に基づいたガイドラインでは現実にそぐわないことも指摘されている。
つまり診療ガイドラインはあくまで携わった多くの関係者の主観におとづいて作成されたものであり、万能である訳ではない。
最終的には治療に携わる者が個々の患者に対し、いかに適切にガイドラインを活用するかが、臨床実践においてもっとも重要な鍵となろう。
また、up to dateで新しい情報に敏感になることも心にとどめてほしい。
『徒手理学療法』は日本徒手理学療法学会の会員であれば年に数回送られてくる会報誌ですが、毎回貴重な情報が記載されていて非常に勉強になる。
また、本号よりシリーズで徒手理学療法のエビデンスについてのレビューを開始するとのことで、内容が一層充実してきている。
本号で興味深かったのは、徒手理学療法におけるエビデンスのビュー(慢性腰痛・頚椎由来の上肢痛)のほか下記の内容でした。
・肩甲下筋に対する2種類のダイレクトストレッチにおける即時的効果の比較
・パリスアプローチの紹介
・疼痛制御機構とその異常適応による痛みの慢性化
興味のある方は是非会員登録してみて欲しい♪
ちなみに、日本徒手理学療法学会に関しては『理学療法士の講習会(研修会・勉強会)を紹介します(モビライゼーション)』でも紹介しているので、興味がある方はこちらも観覧してみて欲しい。