この記事ではFIM(機能的自立度評価表)のセルフケア(6項目)に関する採点基準を解説していく。
以下の目次からも各項目にジャンプすることができるので活用してほしい。
目次
FIMにおけるセルフケア6項目について
FIMにおけるセルフケア6項目は以下の通り。
・食事
・整容
・清拭
・更衣上半身
・更衣下半身
・トイレ動作
※ちなみに、セルフケア6項目は、FIMにおける「運動13項目」に含まれる。
※でもって「認知5項目」と合わせてFIM点数を算出する。
ではでは、順に記載していく。
食事(eating)の採点基準
FIMにおける食事の評価範囲
食事が用意された状態~嚥下するまでを評価する。
※食事が適切に用意された状態で、適切な食器を使って食物を口に運ぶ動作から咀嚼し、嚥下するまでが含まれる。
配膳・下膳は含まれない。
口に運ぶ・かき集める・飲み込むという動作を採点する。
FIMにおける食事の採点基準
6点に関して:
自助具や食事動作に使用する装具について、自身で着用出来れば6点となる。
※自身で着用出来ず、介助が必要な場合は5点となる。
「きざみ食」や「嚥下食」など食事形態の工夫は「採点場面外の出来事」ではるものの、『嚥下に関する食形態の配慮』となり6点に該当する。
5点に関して:
食事の実動作以外の部分を食事場面で介助してもらっている場合は5点となる(対象者に直接触れていないので「監視・準備」に該当)。
例えば以下が5点に該当する。
・肉を切る
・ふたを開ける
・エプロンをかける
・・・・・・・・・・・・・・・・・・など
4~1点に関して:
食事が用意された状態~嚥下するまでに介助(スプーンに載せる・嚥下時に口を閉じるなど、食物を集めたり、口に運ぶ・咀嚼や嚥下を手伝うなど)が必要な場合は4~1点になる。
食事の採点例
配膳前にきざんでもらってあり、1人で食べている⇒6点(すでに刻み食として配膳されているため)
口の中に食物が溜まっていないか、介助者が指で確認している場合→4点
自助具をつけてもらい、食物をスプーンにのせてもらうと、あとは自分で口に運び、嚥下する→3点(口に運ぶ・飲み込むの2つを行っているので、60%=3点)
咀嚼や嚥下は可能であるが全く口に運べない→1点(咀嚼や嚥下よりも、口に運ぶことのほうが採点の重みがあるため)。
整容(grooming)の採点基準
FIMにおける整容の評価範囲
整容は以下の5要素の評価が含まれる。
①口腔ケア
②整髪
③手洗い
④洗顔
⑤そして髭剃り(男性)または化粧(女性)
すなわち、歯磨きや入れ歯洗い、櫛かブラシで髪をとくことなども含まれる。
上記をそれぞれ1/5(20%)ずつと考えて、している%を計算する。
例えば、「整容」と「手洗い」は自分で実施している(他の3つは介助が必要)とすると、以下の様な計算になる。
2項目は自身で可能(つまり、2/5=40%しているということになる)
↓
「40%自身で実施している状況」は、FIMの基準におけるは「20%以上、50%未満」に該当
↓
つまり2点(20%以上、50%未満)と採点される。
ただし、「している」「していない」と割り切れなけなければ(あるいば上記5要素に本人が不必要なものが含まれている場合は)、この計算方法は使えず、『全体として本人がしている割合によって得点をつける』ということになる。
例えば、整髪と髭剃りが日常の整容で不必要な男性がいるとするならば、これらの項目は除外して考えなければならないため、残った項目の占めるパーセンテージも異なってくる。
FIMにおける整容の採点基準
7点に関して:
前述した5項目を全て自力で行っている場合は7点となる。
6点に関して:
時間がかかる、自助具を使用している場合は6点となる。
5点に関して:
監視や準備が必要な場合は5点となる。
ちなみに、整容の準備としては以下などが挙げられる。
・歯磨き粉を歯ブラシにつけてもらう
・タオルを準備してもらう
・自助具を準備・装着してもらう
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・など
1~4点に関して:
介助が必要な場合は1~4点となる。
※5項目それぞれで介助量(あるいは自立しているかどうかなど)が異なっているケースも多く、その場合は「整容の評価範囲」で記載したような解釈を用いる。
整容の採点例
清拭(bathing)の採点基準
FIMにおける食事の評価範囲
首から下(背中は含まない)を洗う・拭く動作を評価する。
※つまり洗髪は評価に該当しない。
浴槽入る、シャワー浴・タオルで体を拭くなど、いずれの方法でも『清拭』に該当する。
清拭には、以下の3つの動作が含まれる。
・洗う(洗体)
・すすぐ
・拭く
・乾かす
ただし、上記動作の中でも「洗う」の比重が大きいのが特徴となる。
※つまり、極論として洗体の介助量が多ければ、それ以外が完璧(自立)でも点数が低くなる(まぁ、そんなケースはほとんど無いだろうが・・)。
清拭の中でも重要な比重のある「洗体」に関しては、身体を以下の10か所に分けて考える。
・胸部
・会陰部前面
・殿部
・上肢×2
・腹部
・大腿部×2
・下腿部×2
※前述したように頭部・背部は評価の対象外。
そして、上記の洗体部位に対して「何か所を自分で洗えて、何か所介助しているか」を評価し相当的に採点する。
FIMにおける清拭の採点基準
7点に関して:
⇒身体を洗い・乾かすことが自立している
6点に関して:
⇒時間がかかる、自助具を使用している
5点に関して:
⇒監視・準備が必要
1~4点に関して:
⇒介助が必要
自助具の使用(6点)の具体例としては以下などが挙げられる。
・柄付きスポンジ
・ループ付きタオル(輪っかになっていて、タスキの様にかけると、片麻痺の人でも片手で洗える)
・滑り止めマット
・・・・・・・・・・・・・・などなど
準備(5点)の例としては、以下などを介助するケースが挙げらる。
・実際の動作が始まる前に、丁度良い温度になるよう湯加減を調節をする
・石鹸をタオルにつける、タオルをしぼるなどの動作を介助する場合。
要介助(1~4点)では、身体部位10カ所を各10%として考えて採点する。
例えば以下の通り。
身体部位10カ所のうち7カ所は自分で洗える(3カ所のみ介助が必要)
↓
7/10=70%は自身で洗えているということになる。
↓
自身で70%可能な状況は、FIMにおける「50%以上、70%未満」に該当。
↓
つまり3点(50%以上、70%未満)と採点される。
清拭の採点例
身体の80%は洗えるが、すすぎと乾かしは全て介助者が行う
→3点(洗体はかなり出来ているが、それ以外で減点されたパターン)。
10ヶ所のうち、3ヶ所は自分で洗っていて、7ヶ所は介助している(すすぎ、乾かしも介助)
→ 2点(3/10=30%している)
更衣(上半身)(dressing-upper body)の採点基準
FIMにおける更衣(上半身)の評価範囲
腰より上の更衣を評価する。
更衣における評価動作は以下の2つ。
・着る
・脱ぐ
入浴前後の着脱は特殊状況なので含まないが、入浴前後しか更衣が成されない場合(つまり、就寝・起床時に着替えない場合)は、その状況下(入浴前後)で評価する。
※ちなみに、更衣(上半身)における服に関しては、かぶり服でも前開き服でもOKなのだが、「社会的に受け入れられる衣服」との注釈がついている。
※なので、入院中にパジャマしか着ないのであれば、その衣服で評価してOKなのだが、「布団から出て、病棟へ出てこれるレベルのパジャマ(社会的に受け入れられる衣服)」な必要がある。
※「私、このパジャマのままじゃ、リハ室へは恥ずかしくて行けない」!といったパジャマでの評価は×(そんなパジャマがあるかどうかは別として・・・・・・・)。
FIMにおける更衣(上半身)の採点基準
7点に関して:
⇒自力でたんすから衣服を取り出し、服の着脱が可能
6点に関して:
⇒時間がかかる、改良した衣服や自助具を使用している
※自助具としては、「ボタン通し」などが該当
※あるいは前合わせをベルクロテープ留めにした衣服を使用して自立している場合も該当
5点に関して:
⇒「服をタンスから取り出したりしまったり」といった更衣における準備が必要。
1~4点:
⇒更衣自体に介助が必要
更衣(上半身)の採点例
更衣(下半身)(dressing-lower body)の採点基準
FIMにおける更衣(下半身)の評価範囲
腰より下の更衣を評価する。
更衣における評価動作は以下の2つ。
・着る
・脱ぐ
入浴前後の着脱は特殊状況なので含まないが、入浴前後しか更衣が成されない場合(つまり、就寝・起床時に着替えない場合)は、その状況下(入浴前後)で評価する。
※これに関しては、更衣(上半身)と全く同じ。
下半身における更衣の対象としては以下が挙げられる(下着、ズボンだけではない)。
・ズボン
・下着
・靴下
・ストッキング
・靴
・・・・・などが含まれます。
また、装具を着用している場合は、装具も評価対象となる。
※ただし、装具の場合は採点基準に注意が必要(後述する)。
FIMにおける更衣(下半身)の採点基準
7点に関して:
⇒自力でたんすから衣服を取り出し、腰から下の更衣・装具の着脱をしている
6点に関して:
⇒時間がかかる、改良した衣服や自助具を使用している
5点に関して:
⇒「服をタンスから取り出したりしまったり」といった更衣における準備が必要。
1~4点:
⇒更衣自体に介助が必要
装具の着脱も更衣(下半身)に該当すると前述した。
しかし、装具は「更衣の主な動作ではない」と判断されており、介助が必要な場合であっても(他の更衣が全て出来るのであれば)5点(準備・監視)までしか下がらないといった特殊性を持っている。
更衣に関しては、「ゆっくり時間をかければ自分でできる」といったケースでも、介助者の都合で介助してしまっているケースがよくある。
その場合、FIMは「しているADLの評価」なため、4点以下(要介助レベル)と判断される。
※「しているADL」「出来るADL」に関しては以下の記事も参照
※ちなみに、時間がかかりすぎる場合は自立していても6点(修正自立)となるのだが、では一体どの程度時間がかかる場合が該当するのだろうか?
その問いへの答えとしては、ザックリとだが「通常の3倍以上時間がかかる時は(いくら自立していても)6点」と判断する。
更衣(下半身)の採点例
トイレ動作(toileting)の採点基準
FIMにおける「トイレ動作」の評価範囲
トイレ動作は以下の3要素を評価する。
・服を下げる
・(お尻などを)拭く
・服を上げる
つまりトイレ動作で評価する内容は、「排尿・排便の前後にズボン・下着を上げ下げ」と「会陰部を清潔に保つこと」が該当する。
ベッド上で尿器を使用していれば、ベッド上の動作で評価する。
FIMにおける「トイレ動作」の採点基準
7点に関して:
⇒自力で衣服を下ろし、排泄後会陰部を清潔にし、衣服を再び上げている。
6点に関して:
⇒時間がかかる。あるいは自助具を使用している。
※自助具としては手すりが該当
※ちなみに、ウォシュレットは普及している物なので補助具とはとらえず、(手すりと異なり)減点対象とはならない
5点に関して:
⇒トイレ動作に監視・準備が必要
1~4点に関して:
⇒トイレ動作に介助が必要。
※オムツを使用しており、オムツの交換は全て介助で行っている場合(トイレ動作は全く自力で行っていない)は、当然1点となる。
介助が必要な場合は、以下の3つの動作のうち、いくつ自力でしているかを%で表す。
・ズボンなどを下げる
・ズボンなどを上げる
・(お尻などを)拭く
例えば、上記の3つとも自力で可能な場合は100%となり、7~5点と採点される。
一方で、2つのみ可能な場合は67%となり、FIMにおける基準では3点(50~75%可能)に該当する。
あるいは、1つのみ可能な場合は、33%となり、2点(25%~50%可能)に該当する。
トイレ動作においては、以下の様なケースでは点数の低い側を採用するといった決まりがある。
こんな時は低い方の点数をとる。
・排尿時と排便時で点数が違う
・日中と夜間で点数が違う(日内変動)
・その他時間帯によって点数が違う
トイレ動作の採点例
入院中によくあるケースとして、以下な場面をよく見かけないだろうか?
『日中は一人でトイレまで行って排泄できる。しかし、夜間は転倒してはいけないので尿瓶を使う。尿瓶はナースコールで持ってきえもらい、尿も捨ててもらう(つまり準備が必要)』
これでは「日中だけで考えると7点だが、夜間で考えると5点」ということになり、「時間帯によって点数が異なる場合は低い方で採点する」というFIMの特性から5点となる。
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FIMの概要や他項目に関する情報も記載したまとめ記事としては以下がある。
この記事と合わせて観覧すると理解が深まると思う。