この記事ではFIM(機能的自立度評価表)の『移乗の(3項目)』に関する採点基準を解説していく。
目次
FIMにおける移乗(transfer)の項目について
FIMにおける移乗3項目は以下の通り。
・ベッド・椅子・車椅子への移乗
・トイレへの移乗
・浴槽・シャワー椅子への移乗
※移乗3項目は、FIMにおける「運動13項目」に含まれる。
※でもって、「認知5項目」と合わせてFIM点数を算出する。
ではでは、順に記載していく。
移乗{ベッド・椅子・車椅子(bed・chair・wheelchair)}の採点基準
FIMにおける移乗(ベッド・椅子・車椅子)の評価範囲
ベッド、椅子、車椅子の間でのすべての移乗を含む(往復の動作)。
ベッドから車いすへの移乗に関しては、(比重は少ないものの)「起き上がり動作も含めて」評価対象となる。
乗り移れるように車椅子の位置を整えることは評価動作ではなく、その前の準備段階です(整える必要があれば5点)。
また、分かりにくいポイントとしては「歩行が移動の主要な手段である場合」は起立動作も『移乗』に該当するという点だ。
※つまり、「歩いて椅子までたどり着けるレベルの患者」な場合の「移乗項目」は、起立動作を評価することになる。
※また、起立は安定しているが(椅子に近づいてからの)方向転換や着座が難しい(パーキンソン病など)では、それらも含めて評価し採点する必要がある。
※この点は、「移動の項目」も参照してほしい。
FIMにおける移乗(ベッド・椅子・車椅子)の採点基準
7点に関して:
⇒装具や手すりが不要で自力で移乗している。
6点に関して:
⇒手すり(ベッド柵・椅子の肘かけ・車椅子のアームレスト)など必要。
※(歩行の前段階としての)立ち上がり動作の場合も同様(例えば杖を使用しての立ち上がりであれば6点
5点に関して:
⇒監視・準備が必要
※車椅子のブレーキや、椅子の位置決めに見守りが必要など
1~4点に関して:
⇒移乗に介助が必要
以下が、1~4点における採点の目安となる。
4点⇒患者にまさかの為に触れる程度
3点⇒軽く引き上げる
2点⇒しっかり引き上げる、回す
1点⇒全介助
移乗動作において、往きと帰りで得点が異なる場合は、「同じ動作の中での日内変動」ということで低い方の点数をつける。
※例:ベッドから車椅子へは一人で移乗できるが、車椅子からベッドへは軽く引き上げるよう介助が必要⇒3点
移乗{トイレ(toilet)}の採点基準
FIMにおける移乗(トイレ)の評価範囲
トイレへの乗り移りの往復が評価範囲となる。
これはポータブルトイレでも構わない(ただし、使用しているなら自立でも6点となる)。
ちなみに、以下は「トイレへの移乗」に該当しない。
・トイレに近づく行為は「移動」に該当
(関連記事⇒FIMの移動(歩行・車椅子・階段)の採点基準)
・ズボンの上げ下ろしは「トイレ動作」に該当
(関連記事⇒FIM(食事/整容/清拭/更衣上半身・下半身/トイレ動作)の採点基準)
FIMにおける移乗(トイレ)の採点基準
7点に関して:
⇒装具や手すりが不要で自力で移乗している。
6点に関して:
⇒移乗に時間がかかる
⇒移乗に手すりや自助具(下肢装具など)を使用している
⇒ベッド脇のポータブルトイレへ移乗している。
5点に関して:
⇒移乗に準備・監視が必要
※移乗動作に指示が必要であったり、ポータブルトイレの位置を移乗しやすいように修正するなどの準備が必要な場合。)
1~4点に関して:
⇒移乗に介助が必要
以下が、1~4点における採点の目安となる(ベッド・椅子・車椅子への移乗と同じ基準)。
4点⇒患者にまさかの為に触れる程度
3点⇒軽く引き上げる
2点⇒しっかり引き上げる、回す
1点⇒全介助
移乗{浴槽・シャワー(tub・shower)}の採点基準
FIMにおける移乗(浴槽・シャワー)の評価範囲
浴槽(またはシャワー椅子)への移乗動作の往復を評価する。
また、浴槽への移乗の場合は浴槽を跨いで湯船につかる(沈む)⇒湯船から出る⇒浴槽を跨いで出るまでが評価範囲となる。
※浴槽のそばまで近づく行為は「移乗」に含まない(これは「移動の項目の評価となる)
ちなみに、入院前よりADL能力が向上したが故に点数が下がるっといった妙なことも有り得る。
例えば、シャワーチェアーへの移乗が監視レベル(5点)だった人が、浴槽に入れるだけのADL能力を獲得したが故に点数が下がる(浴槽への出入りに軽度解除が必要⇒4点)など。
なので、浴槽への移乗なのか、シャワーチェアーへの移乗なのかを記載しておく必要がある。
FIMにおける移乗(浴槽・シャワー)の採点基準
7点に関して:
⇒装具や手すり、補助具などが不要で自力で移乗している。
6点に関して:
⇒移乗に装具(風呂用短下肢装具など)、手すり、補助具(滑り止めット・浴槽内チェアー)など必要。
5点に関して:
⇒移乗に監視、準備が必要。
1~4点に関して:
⇒移乗に介助が必要
1~4点の例は以下の通り。
4点
⇒足を片側またがせ介助が必要
⇒座位が安定しないために支えている必要があるが、支えていれば安全に入浴できる場合
3点⇒両足またがせ介助が必要
2点⇒かなり引き上げる必要がある
1点⇒二人で引き上げる必要がある
※機械浴利用者も1点
FIM関連記事
FIMの概要や他項目に関する情報も記載したまとめ記事としては以下がある。
この記事と合わせて観覧すると理解が深まると思う。